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リーンスタートアップについて

リーンスタートアップとは~時代遅れ?アジャイルの手法が使える?

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リーンスタートアップと呼ばれるマネジメント手法に対して、漠然と言葉だけは聞いたことがあるけれども内容に関してはご存知でない方、おそらく一定数いらっしゃるように思われます。もしくは、(彼、彼女らは)少なからずその概念やビジネスモデルに触れる機会があったとしても、より踏み込んだ情報にまでは辿り着けていないかもしれません。

検討する前段階から“時代遅れ”と揶揄される声に引っ張られ、不要なものと切り捨ててきた向きもあるでしょう。はたまた比較されがちなアジャイル開発と混同されるケースも、実際のところ見受けられます。

そうした現況を鑑み、リーンスタートアップについて網羅的に解説しているのが本記事です。定義や経緯、具体的な手法、事例、件の「時代遅れなのか否か」「アジャイルが使えるのかどうか」に対する回答まで幅広く言及します。

リーンスタートアップとは?意味と基本概要

リーンスタートアップとは?意味と基本概要

リーンスタートアップとは、顧客の満足につながる製品やサービスを最低限のコストで作り出すために用いるマネジメント手法のことです。一般的には、試作段階から市場に送り、早々に顧客の反応ひいてはニーズを把握したうえで、速やかに改良を加えていくやり方が該当します。私たちはつい顧客に対して先入観を抱きがちですが、リーンスタートアップの実践によって間違った思い込みを回避し、無駄を省けるというわけです。

リーンスタートアップが生まれた背景

そもそもリーンスタートアップは、アメリカ人の起業家エリック・リースの提唱に端を発します。2008年、彼自身の起業失敗を契機に生まれた考え方です。なお、2012年、同名の著書が日本でも出版されています。

エリック・リースはまず“スタートアップ”を持ち出し「不確実な状態で新しい製品やサービスを創り出さなければならない人的組織」と解釈しました。そこに「痩せた」「脂肪の無い」などの意味、転じて“無駄のないもの”と捉えたリーンをつなげます。すなわち「無駄のない新たな事業を作り出す人的組織」が彼の定義するリーンスタートアップです。

リーンスタートアップの仕組み

リーンスタートアップでは、事業を複数のフィードバックループに分けて運用します。大まかには仮説から芽吹いた戦略やアイデアを、顧客にとって有意義な製品へと昇華し、反応を計測したうえでそのデータを基に試行錯誤していく流れです。主要プロセスの「構築」「計測」「学習」はそれぞれの英語(Build、Measure、Learn)の頭文字を取ってBMLとも呼ばれます。

これらは後述する手法であり検証・改善の一環と捉えてもいいでしょう。それぞれ、顧客に必要とされる新しい製品やサービスを作り続けるには必須のプロセスです。もちろん、方向転換や路線変更も状況に応じて行われます。

リーンスタートアップを成立させる手法

リーンスタートアップを成立させる手法

前項でも触れた通り、リーンスタートアップは一連のプロセスに則り実現されます。いわばこれらの細かなステップこそが手法です。以下、詳しく取り上げます。

仮説立案

仮説立案では、ターゲットに選定した顧客層のニーズを満たすべく情報収集を行い、そのうえで短期、そして中長期的に評価基準を設ける必要があります。売れるかどうかの「価値仮説」と事業の持続や拡大が見込めるか否かの「成長仮説」の両軸で考えていかなければなりません。いわゆる革新会計の概念が適用されます。

MVPの開発・構築

仮説を基に最低限の価値や要素を組み込み開発・構築した製品をMVP(Minimum Viable Product)と呼びます。まずはMVPで顧客の反応をうかがい、早い段階でずれを無くすことが目的です。

計測・実験

リリースしたMVPの計測・実験を行います。一般的な世論の回収に加え、少人数の顧客にヒアリングを行うなどして得たフィードバックを基に、構築済みの仮説を検証する作業です。

学習

仮説検証を経て得た学びの部分に当たります。具体的には、計測・実験結果から浮かび上がってきた顧客のニーズを、細かく分けた開発項目と照合していくフェイズです。

この時点で、思い通りの結果が出なかった場合、製品やサービスの改良に留まらず、そもそもの方針から軌道修正を余儀なくされることも考えられます。が、たとえそうなっても過剰に悲観する必要はありません。むしろ、この学習によって事業の成功に近づけられるともいえます。

意思決定

学習を踏まえて今後の方針を判断していくフェイズです。

いわゆる「我慢」か「ピボット」か。前者は、既定路線でそのまま製品の研鑽に努めることを指します。対して後者は、方向転換や路線変更などを意味します。

リーンスタートアップのメリット、デメリット

リーンスタートアップのメリット、デメリット

リーンスタートアップに対して理解を深めるうえで、メリットとデメリットは両方おさえておく必要があります。取り入れるか否か決定する局面ではぜひ、長短ともに念頭に置き、視野を広げて検討しましょう。

メリット

リーンスタートアップでは、端から完成品を目指すやり方と比較して、大いにコストを削減することが可能です。また、MVPを市場に出すことで手っ取り早く製品の感触も掴めます。一旦、ニーズやリアクションを確かめることができれば、その時点で方向性は定めやすいでしょう。たとえ失敗したとしても、ダメージは極力少なく、以降の製品改良にも有意義な形で寄与することになります。何より、フィードバックループを素早く回せれば、その分野・領域において市場を牽引する側に立てるかもしれません。結果、中長期的にはさらなるシェア拡大も見込めます。

デメリット

リーンスタートアップを隙の無い万能なビジネスモデルだと考えることは危険です。意思決定がスムーズにいかず、何度もピボットを要する場合は、メリットだったはずの開発コストが嵩む一方となり、むしろデメリットに転じてしまいます。また、オープンな環境で開発を進めることにも注意が必要です。この場合、真似られてしまうリスクを警戒しなければなりません。生き馬の目を抜く競合他社の動きによって、後塵を拝する結果に堕する可能性は少なからずあります。

リーンスタートアップが時代遅れといわれてしまう理由

リーンスタートアップが時代遅れといわれてしまう背景

リーンスタートアップに対して、一部では時代遅れだと述べる向きもあります。その一因がビジネスシーンを巡る環境や技術の変化です。

たとえばSNSの拡散。これによって良くも悪くも情報は一瞬で広まります。仮にMVPに対する悪評が多くの人の目に触れたなら、その時点でリカバリーできないほどのダメージを追うかもしれません。改良のチャンスが失われてしまっては本末転倒です。

また、顧客の意見に翻弄されることで周囲からの信頼を損ねるケースも見受けられます。そもそも、ピボットの繰り返しは前述したデメリットに当たる行為です。なかには“リーンスタートアップよりも一貫した戦略で突き進んだ方が良い結果を期待できる”といった声もありますが、なるほど確かに頷けます。

さらには、最新技術を導入しているケースだと、まさしくコストとの兼ね合いも問題になってきそうです。初期費用だけでなく、何度も開発、改良を繰り返し発生する運用への投資は、そう易々と軽視できません。

と、いくつかネガティブな要素を挙げましたが、それでも今なお筆者はリーンスタットアップに価値を見出しています。ただし、慎重に扱わなければならないのはその通りでしょう。が、裏を返せば扱い方次第で有用だということです。

SNSを意識するなら、最低限とはいえ精度の高いMVPに仕上げることや先回りしてユーザーを巻き込んでいくなど開発や公開方法に一工夫入れてみるのも大事でしょう。あるいは、ピボット後、リニューアルの段階ではサービス名を変更するのも一つの手です。

コスト面に関しても、それを上回るパフォーマンスに目を向けることで捉えた方は変わってくるでしょう。業界を見渡したうえで中長期的に考えれば、これから伸びそうな分野は多々あると思われます。そもそも試行錯誤が必須の最先端分野では、リーンスタートアップは決して時代遅れとはいえないのではないでしょうか。むしろ本領発揮が期待されます。カスタマイズ可能な化粧品や車のセミオーダーメイド、AIやRPA(ロボティック・プロセス・オートメーション)……等々、開発に十分余地の残る分野ではリーンスタートアップは好相性だと考える次第です。

さらには、前提から見直してもいいかもしれません。MVPを大々的に市場へ送り出すのではなく、特定の顧客のみ提供する形でも問題無いはずです。

いずれにせよ、リーンスタートアップを用いる際は、時代を加味したうえで向き合うことが大事だと考えます。

リーンスタートアップとよく似たアジャイル開発について

リーンスタートアップとよく似たアジャイルについて

リーンスタートアップと混同しやすいのがアジャイル開発です。

「素早い」「機敏な」といった意味を持つ通り、システムやソフトウェアの開発期間の短縮につながる手法として機能しています。

リーンスタートアップと異なる点は、“アジャイル開発”の呼称が基本的に「企画」「設計」「実装」「テスト」に分割されて行われるウォーターフォール開発に限って使われていることです。そして、これらの独立した各プロセスで検証、改善が実施されます。つまり、リーンスタートアップの工程をより細分化したものと捉えていいでしょう。

たとえば「企画」では、用意した要件定義を軸に具体的な開発計画が立てられます。ポイントはそこで一度見直しが入ることです。同様に「設計」も計画書を基にシステムを構築した際、一度確認が行われます。状況に応じて修正も必要です。続けて「実装」「テスト」も同じ要領で処理されます。まさしく反復の作業です。

リーンスタートアップの事例

リーンスタートアップの事例

有名なあのサービスも、実はリーンスタートアップを活用しています。

具体的に事例を知れば、おそらくイメージが膨らみ、同時に理解も深まることでしょう。

以下、いくつか紹介します。

食べログ

株式会社カカクコムが運営するグルメサイト「食べログ」は、リーンスタートアップの典型的事例として大いに参考になり得ます。

食べログは今でこそ知名度かつクオリティの高いメディアとして君臨していますが、当初は書籍の情報を基に手打ちのデータベースから事業を始めたといいます。ユーザーも決してすぐに増えたわけでなく、100人満たないなかでも地道に試行錯誤を重ねたようです。改善要望を掲示板で募り、その声をヒントに改良を進めた結果が現在に至ります。フィードバックをスピーディーにサービスへ反映、実装させたことも、飛躍的な成長の一因でしょう。まさにリーンスタートアップの賜物です。

Instagram

今や世界的に人気を博すInstagram、通称“インスタ”ですが、立ち上げ時は「Burbn」という位置情報を共有するアプリケーションサービスでした。当初、MVPの段階ではパッとせず、度重なる仮説、構築、計測、学習を要したといいます。結果、写真の共有機能が人気であることが判明し「写真投稿」「コメント」「いいね」の3機能を搭載し確立。ここに真のInstagramが生まれます。

なお、リリース後もインスタはBMLのプロセスを回し、機能追加が繰り返され、ご存知の通り圧倒的成功を収めるほどに成長しています。

Dropbox

インターネット上でのファイルの保管や共有を可能にするいわゆるオンラインストレージのなかでも、Dropboxは世界屈指の利用者数が多いサービスです。と同時に、リーンスタートアップの代表的な事例の一つでもあります。

設立当時はインストール型のサービスを展開。しかし、ニッチ市場だったこともあってか、ターゲットの顧客層を取り入れることに苦戦し、方向転換へと踏み切ることに。そこから状況は好転します。

ユーザーの行動パターンやGoogle広告から読み取れるニーズなどを徹底的かつ速やかに調査し、短期間で多くの施策を遂行。失敗を糧にしながらリーンスタートアップをうまく活用した末に、今の人気へとつなげていきます。

リーンスタートアップをうまく応用しよう!

リーンスタートアップをうまく応用しよう!

時代遅れといわれながらも、リーンスタートアップを取り入れたビジネスモデルは今も根強く残っています。それは、使い方次第で高い価値を生み出せるからでしょう。リーンスタートアップをきっかけにノベーションにつなげる企業、つながるサービスは今後もおそらく出てくるはずです。

リーンスタートアップは必ずしもうまくいくわけではないにせよ、起業、事業開発、人事、組織改革、その他経営の課題諸々に対して、少なからず役立つ側面を持っています。導入においては状況を見誤らず、メリット、デメリットを念頭に置くことが肝要です。ぜひ、うまく応用してみてください。

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この記事を書いた人

ヒゴ
無知、無能、無粋、無才、無点法……。SEOやアクセス解析に腐心しつつも、それらはまるで逃げ水のように追いかけては遠く離れ、ようやく掴んだと思った矢先にはシビアな現実を突きつけられる有様です。あるいはライターとして名を連ねることに気後れしながら、日曜大工のスタンスで恣意的かつ箸にも棒にもかからない駄文をまき散らしています。隠し切れない底意地の悪さ。鼻持ちならない言い回し多数。どうかご容赦ください。

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