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職場環境が整う「分煙」とは?まつわる法律やその対策を学ぶ

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職場環境を整えるうえで、「従業員のストレスを軽減する」という視点は重要でしょう。しかし、従業員によって「快・不快に感じるポイント」は異なるため、誰もが快適な環境を用意するのは簡単ではありません。

とくに健康に影響を及ぼしうる「喫煙」は、立場がはっきりと分かれやすく、職場としての適切な対応が求められます。喫煙の場を設けつつも、受動喫煙を予防できる環境を提供するには、しっかりとした「分煙対策」が必要です。

一口に「分煙」といっても、オフィスの環境によって取るべき措置は異なります。対策を進めるにあたっては、健康増進法や厚生労働省のガイドラインなどをふまえ、「どんな対策をする必要があるか」をしっかり見定めておきましょう。

この記事では、分煙の基本的な考え方や、関連する法律をふまえ、必要な対策について解説していきます。

分煙とは

分煙とは一般に、喫煙可能なスペースをその他の場所から区切って設けることをいいます。広義の分煙は、屋内外におけるさまざまなゾーニングの形を含んでいます。「路上に簡易的な仕切りを設けた喫煙所」や「喫煙を目的に独立させた部屋」など、煙を遮断できている度合いにも幅があるでしょう。

これに対し、狭義に用いられる「分煙」は、屋内施設において健康増進法に定められた基準を満たす形で喫煙専用室などを設置する対策を指します。とくに改正健康増進法が全面的に施行された2020年4月以降、「分煙」はこの意味で用いられるケースが増えてきたと考えられます。

分煙に関する法律

厚生労働省は、健康増進法改正の趣旨として以下の3点を挙げています。

  1. 望まない受動喫煙をなくす
  2. 受動喫煙による健康影響が大きい子ども、患者等にとくに配慮
  3. 施設の類型・場所ごとに対策を実施

ここから、改正後の健康増進法には「多数の者が利用する施設」における原則屋内禁煙が定められています。この「施設」には一般の事業所も含まれており、分煙の措置を講じる場合には所定の基準を満たす喫煙スペースを設けなければいけません。

なお、健康増進法に定められる施設ごとの禁煙範囲は以下の通りです。

施設の種別 禁煙の範囲
第一種施設
(学校・児童福祉施設、病院・診療所、行政機関の庁舎など)
原則敷地内禁煙
(屋外喫煙所の設置は可)
第二種施設
(一般の事務所や工場、飲食店など、
第一種施設以外の喫煙を目的としない施設)
原則屋内禁煙
(喫煙専用室などの設置・屋外喫煙所の設置は可)
既存の小規模飲食店
(客席面積100㎡以下、
個人または中小企業による経営)
店内で喫煙可能
(その旨を掲示する必要あり)
喫煙目的施設 施設内喫煙可能

(参照:厚生労働省「受動喫煙対策」

屋内禁煙の原則に違反した場合、もしくは設置した喫煙専用室が基準を満たしていなかった場合には、管理権原者や喫煙した者に対して都道府県知事等から指導や勧告が行われ、改善が見られない場合には罰則が適用されます。管理権原者には最大で50万円、喫煙した者に対しては最大30万円の過料が科せられます。詳しい違反内容と罰則については、厚生労働省の専用ページをご覧ください。

敷地内の屋外に喫煙スペースを設ける場合には、現在のところ法的基準は設けられていません(第一種施設の「特定屋外喫煙場所」を除く)。ただし、周囲の環境には十分な配慮が必要です。近隣施設への影響や、敷地内における人々の動線などを鑑みながら、適切な形でスペースを区分けることが求められます。

20歳未満の従業員に対する措置

健康増進法においては、職場に喫煙可能区域を設ける場合に、20歳未満の従業員がそのエリアに立ち入らないよう対処する義務が定められています。健康増進法にもとづく管理権原者の具体的な対処義務は、厚生労働省の「職場における受動喫煙防止のためのガイドライン」にまとめられています。

これによれば、たとえ清掃業務などの場合であっても、20 歳未満の従業員が喫煙専用区域に立ち入ることは避けなければならず、また喫煙可能な客室や業務車両などへの立ち入りを防止する措置も講じなければいけません。

その他、勤務シフトやフロアなどを工夫するなど、望まない受動喫煙を可能な限り予防するための努力義務が定められています。

求人票への表示義務について

2020年の健康増進法の改正にともない、職業安定法施行規則の一部が変更され、企業が従業員を募集する際には「受動喫煙防止のための取り組み」を求人票などに明示する義務が定められました。

一般の事業所の場合、屋内を完全に禁煙にする場合には「屋内禁煙」、喫煙専用室などを設けて分煙とする場合には「喫煙専用室設置」など、受動喫煙対策への取り組み状況が求職者に伝わるよう記載する必要があります。

(参照:厚生労働省・都道府県労働局・ハローワーク「「受動喫煙防止」のための取組を明示してください」(PDF資料))

具体的な表示形式については、厚生労働省のパンフレットなどに参考例が挙げられているため、これを参照するとよいでしょう。

(参照:厚生労働省・都道府県労働局「「受動喫煙防止」に向けた取組について」(PDF資料))

分煙に求められる喫煙専用室の基準

分煙の際に設ける屋内の喫煙スペースは、用途によって細かく区分されており、「喫煙専用室」「加熱式たばこ喫煙専用室」「喫煙目的室」「喫煙可能室」の4つです。このうち先の「第二種施設」にあたる一般の事業所に設置可能なのは、「喫煙専用室」「加熱式たばこ喫煙専用室」の2つに限られます。

「喫煙専用室」においては、紙巻きたばこを含め喫煙が可能ですが、飲食行為はできません。一方の「加熱式たばこ喫煙専用室」は、喫煙は加熱式たばこに限定されますが、スペース内での飲食が可能です。

喫煙可能区域の種別 可能な行為の種別 第二種施設への設置
喫煙専用室 喫煙(飲食不可)
加熱式たばこ喫煙専用室 加熱式たばこの喫煙(飲食可)
喫煙目的室 喫煙(主食を除き飲食可) 不可
喫煙可能室 喫煙(飲食可) 不可

なお、喫煙専用室と加熱式たばこ喫煙専用室を別個に設置することは可能です。

(参照:厚生労働省「飲食店/事業者のみなさん|なくそう!望まない受動喫煙。」および同サイト内「各種喫煙室早わかり」)

各種専用室を設置する際には、施設入り口などに標識で喫煙可能区域がある旨を掲示する必要があります。表示形式に明確な規定はありませんが、厚生労働省から例が示されていますので、こちらのページを参照するとよいでしょう。

喫煙専用室に求められる基準

喫煙専用室または加熱式たばこ喫煙専用室において、満たすべき基準としては以下のものがあります。

1. 喫煙室の出入口において、室外から室内に流入する空気の気流が、0.2m毎秒以上であること

2. たばこの煙が室内から室外に流出しないよう、壁、天井等によって区画されていること

3. たばこの煙が屋外または外部の場所に排気されていること

(参照:モバイル政府広報オンライン「具体的にどのようなルールになるの?」)

つまり、喫煙専用室とその他のエリアが明確に分けられており、さらに専用室からの煙の流出を防ぎつつ排気できる機構を備えていなければ、所定の基準を満たすことはできません。こうした専用室の設置が難しい場合には、以下の「喫煙ブース」の導入を検討することになります。

喫煙ブース・分煙機による対策

借用しているビル管理者から設置許可が下りないなど、職場の管理権原者の責によらない理由により、排気構造を備えた喫煙専用室が設置できない場合には、経過措置として「脱煙機能付き喫煙ブース」の設置が認められています。ただしその場合、以下の基準を満たす必要があるため注意しなければいけません。

  1. 喫煙専用室等に向かう気流:開口面の全ての測定点で0.2 m/s以上
  2. TVOC(総揮発性有機化合物)濃度:除去率が95%以上であること
  3. 浮遊粉じん濃度:排出口濃度で 0.015mg/m3以下

(参照:厚生労働省「脱煙機能付き喫煙ブースの性能を確認するための測定方法の例」)

喫煙ブースや分煙機を製造するメーカーのうちには、こうした基準に適合する専用ブースを販売しているものもあります。状況に応じてメーカーによる分煙相談なども利用しながら、基準を満たせる環境を用意していきましょう。

分煙対策の進め方

上述のように、施設内に設置する喫煙専用室には明確な技術的基準が定められています。そのため屋内での分煙環境を整える際には、行政の相談窓口や分煙機メーカーによるコンサルティングなど、専門家からアドバイスを得ることが望ましいでしょう。

その他、分煙対策を講じるにあたっては、事業所の環境やコスト面を考慮することはもちろん、従業員側の声にもしっかりと耳を傾けながら対策を進めていくことが大切です。

現状の問題を把握

これから喫煙専用室を設置する場合、まずはしっかりと所定の基準を満たすことが絶対条件となります。環境測定には専用の装置などが必要になりますが、まずは厚生労働省から職場の受動喫煙対策をめぐる相談業務を受託している「一般社団法人 日本労働安全衛生コンサルタント会」などに職場の状況を伝え、アドバイスを求めるのが望ましいでしょう。同法人は状況に応じて、事業所に専門家を派遣し、指導や助言を無料で行っています。

現時点で喫煙専用室を設置している場合にも、こうした窓口を通じて現状の対策に問題がないかを確認しておくとよいでしょう。

(リンク:日本労働安全衛生コンサルタント会「職場における受動喫煙防止対策に関するご相談」)

分煙機メーカーなどへの委託も選択肢

トルネックス株式会社」や「クリーンエア・スカンジナビア株式会社」など、分煙機の製造を手掛けているメーカーの多くは、職場の環境測定から適切な対策を提案するコンサルティングを行っています。とくにレンタルオフィスなど制約が大きい場合には、状況に応じて柔軟な選択肢が用意されるため有効な手段になりうるでしょう。

分煙機メーカーの多くはメンテナンスなどの管理業務もまとめて任せられるプランを用意しており、喫煙専用室の設置から測定、維持にかかる手間を軽減できると考えられます。

助成金の活用も

厚生労働省は、受動喫煙防止に取り組む中小企業主に向け、喫煙専用室などを設置する際の費用を一部助成する制度を設けています。

「受動喫煙防止対策助成金」は、飲食店以外の事業所が「喫煙専用室」または「加熱式たばこ喫煙専用室」を設置する場合に、100万円を上限に費用の2分の1(飲食店の場合は3分の2)を助成する制度です。

なお、2021年度の申請は終了しており、2022年度の申請分については再度案内が発表される見込みです。

(参照:厚生労働省「受動喫煙防止対策助成金」)

こうした助成を活用しながら、それぞれの従業員が互いに快適に過ごせる職場環境を整えていきましょう。

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この記事を書いた人

鹿嶋 祥馬
大学で経済学と哲学を専攻し、高校の公民科講師を経てWEB業界へ。CMSのライティングを300件ほど手掛けたのち、第一子が生まれる直前にフリーへ転身。赤子を背負いながらのライティングに挑む。

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