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ユニファイドコマースとは

ユニファイドコマースとは?事例から見るオムニチャネル・OMOとの違い

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現在、消費者の購買行動は多様化し、ECサイトやモバイルアプリを通じた商品の購入や、さまざまな決済サービスの利用など、利便性の高い方法が選ばれるようになっています。商品・サービスの販売を手がける事業者にとっては、ニーズに合わせてさまざまな販売窓口や決済方法を用意し、購入体験を向上させる工夫が求められる時代になりました。

同時に、IT技術の発展にともない、近年はマーケティングを自動化・効率化する手段が豊富に用意されています。たとえば、ユーザーの行動分析やデータ管理を容易にするツールの登場により、事業者は大量の顧客データを扱いながら、個別的な顧客アプローチを取れるようになりました。

こうした背景から、販売やマーケティングの手法は年を追うごとに高度化し、現在では「ユニファイドコマース」という方法論が重要視されています。多様な販売形式に対応しながら、大量のデータを統合的に管理し、ユーザー属性やセグメントごとにパーソナライズされたアプローチを取る手法として注目されているのです。

この記事では、ユニファイドコマースの概要について整理しながら、事例とともに「オムニチャネル」や「OMO」といった従来のマーケティング戦略との違いを解説していきます。

ユニファイドコマースとは

ユニファイドコマース

ユニファイドコマース(Unified Commerce)は、日本語で「統合された商取引」と訳される言葉です。「統合」という言葉にあるように、その本質は「これまで分散されていたデータの管理方法や分析システムを一元化する」ことにあります。

言い換えれば、ユニファイドコマースとは「顧客や商品についての情報を単一のプラットフォームに集約させる手法」です。このプラットフォームにはECや実店舗における在庫・売上管理のほか、顧客関係管理やユーザーの行動分析などに関するシステムが含まれます。

こうしたデータ管理・分析のシステムを集約することにより、「複数チャネルを統合的に管理」しながら「パーソナライズされた顧客へのアプローチ」を取ることが可能となります。たとえば、ECサイトやアプリ、実店舗での顧客情報を1つのシステムで管理し、それぞれの行動履歴などに応じて異なるレコメンド情報を発信する、といった形が考えられるでしょう。

総じて、ユニファイドコマースとは、オンライン・オフラインの多様な販売形態において、マーケティングから販売、アフターフォローまでのあらゆる情報の管理を自動化しながら、顧客へのアプローチを最適化するための総合戦略を指しているのです。

ユニファイドコマースとオムニチャネルの違い

ユニファイドコマースと似た意味をもつ言葉として、「オムニチャネル」が挙げられます。これは「販売チャネルや顧客とのコミュニケーション窓口を統合的に管理する」ことを指す言葉です。

どちらも「複数チャネルの統合」という点で共通していますが、ユニファイドコマースはオムニチャネルの性質に加えて「データ管理や分析にもとづくパーソナライズされたマーケティング」という側面をもっています。

この「パーソナライズされたマーケティング」は、後述の「One to Oneマーケティング」に見られる特性です。つまりさしあたり、「オムニチャネルとOne to Oneマーケティングを複合したもの」がユニファイドコマースだといえるでしょう。

なお、オムニチャネルについてはこちらの記事で詳しく扱っております。あわせてご参照ください。

ユニファイドコマースとOne to Oneマーケティングの違い

One to Oneマーケティングは、一人ひとりのユーザーに対して個別的なアプローチを取るマーケティング手法です。具体的には、ユーザー属性や行動履歴などの分析結果にもとづき、レコメンデーションやリターゲティング広告などを最適化することを指しています。

One to Oneマーケティングとユニファイドコマースは「アプローチをパーソナライズする」という点で共通しており、利用するツールなども重なる部分が多いです。一方で、One to Oneマーケティングという言葉には「複数チャネル間の統合」という側面は含まれておらず、もっぱら「個別的な訴求方法によるマーケティング効率の向上」という面に焦点があてられています。

ここから、One to Oneマーケティングはユニファイドコマースの一要素として位置づけることができます。先述のように、ここにオムニチャネルの要素を加えると、ユニファイドコマースの特性と合致するのだといえるでしょう。

One to Oneマーケティングについては、こちらの記事でさらに詳しく解説していますので、あわせてご参照ください。

ユニファイドコマースとOMOの違い

OMO(Online Merges with Offline)は、オンラインとオフラインを融合する戦略です。その要点は、実店舗とオンラインにおける購入体験をシームレスにつなぐことにあります。

「オンラインとオフラインをシームレスにつなぐ」という観点はユニファイドコマースにおいても重要であり、さらに「ユーザーの購入体験を向上させる」という目的面も共通していることから、両者を明確に区分することが難しいケースもあるでしょう。

ただし、OMOは導線設計などの「具体的な施策面」に焦点があてられるのに対し、一方のユニファイドコマースは「単一のプラットフォームでオンライン・オフラインの情報を取りまとめる」というシステム面に焦点があてられる傾向にあります。

たとえば「オンライン上の案内で実店舗の利用を促す」ための施策はOMOの一環として位置づけられ、その効果を高めるための顧客管理や分析のシステムはユニファイドコマースの一側面として考えることができるでしょう。

なお、OMOのより詳しい内容について、前掲の記事にて「オムニチャネル」との違いを含めて解説しております。こちらもぜひご参照ください。

ユニファイドコマースを構成する要素

マーケティング

ユニファイドコマースの要点は、「販売チャネルを一元的に管理できるプラットフォーム」と「パーソナライズされた顧客へのアプローチ」の2つにあります。以下ではこれを実現するうえで、どのようなポイントが必要になるのかを整理していきます。

販売チャネルの一元的管理

ユニファイドコマースにおいては、実店舗やECサイト、アプリやSNSなど、複数のチャネルで商品・サービスを扱いながら、それにともなう管理・分析のプロセスを一元的に管理していくことになります。

ここから、アカウントや会員情報を統括し、商品のレコメンドやキャンペーン情報の提供、来店予約やアフターフォローなど、顧客関係を集約的に管理できるプラットフォームが必要となるでしょう。CRM(顧客関係管理)やSFA(営業支援システム)、POSシステムやERP(企業資源計画)など、販売形態や管理形態に応じてシステム間の連携を図ることが求められます。

パーソナライズされた顧客アプローチ

大量のユーザーに対して、個別化されたアプローチを取ることでマーケティング効率を高めることもユニファイドコマースの要点です。

この際、ユーザーの属性や行動履歴から個々の関心に合わせた案内をしたり、見込み顧客のセグメントに応じたアプローチを取ったりと、複数の軸からパーソナライズされた情報やサポートを提供していくことが求められます。こうした複雑な処理を実現するためには、見込み顧客の管理を自動化してくれるツール(MAツール)などの導入を検討するとよいでしょう。

さらに、実店舗がある場合には、オフラインにおけるユーザー行動をどのように把握・分析すべきかを見定め、各システムと連携した情報管理の体制を構築する必要があります。

このように、ユニファイドコマースを実現するプラットフォームの構築方法は一様ではなく、状況に応じて各種ツールを導入しながら、それらを効果的に連携させることが望まれます。

ユニファイドコマースの事例

マーケット

ユニファイドコマースはさまざまな業種において効果的に取り入れられており、従来は「実店舗ありき」と考えられていたジャンルにおいても成果をあげています。

実店舗を含む複数のチャネルを統合的に管理しながら、パーソナライズされた効率的なマーケティングを実践している企業の例を紹介します。

株式会社インターメスティック

眼鏡の量販店「Zoff」を展開する株式会社インターメスティックは、「実店舗での購入が当たり前」とされていた眼鏡の販売においてオンライン施策を充実させ、ユーザーの購入体験を向上させています。

たとえば来店の手間を省けるように、会員登録によりECサイト上で以前に作成した眼鏡と同じ度数のレンズを購入できる仕組みが採用されています。さらにスマートフォン上でAR試着ができる「Zoff Virtual Counter」の導入により、店頭以外でもさまざまなフレームを試せるようになりました。

実店舗では気兼ねしてしまい多くのフレームを試着できないユーザーも気軽に利用できる環境を整えることで、購入体験を向上させています。

さらに、オンラインとオフラインをシームレスにつなぐうえで大きな役割を担うのが、アカウント情報をLINEと連携させるサービスです。LINE上で保証内容を確認したり、店舗利用の際に作業完了の通知を受け取ったり、家族間で情報を共有したりと、購入からその後にわたってフォローが可能なシステムを用意しています。

こうした戦略を展開するにあたって、同社は早い時期からCRMを導入し、顧客管理の基盤を整えていました。ユニファイドコマースを進めるにあたり、その後の発展性についてのビジョンが重要な意味をもつことを示す事例といえるでしょう。

(参照:INTERMESTIC INC.「スマホで試着ができるサービス「Zoff Virtual Counter」を導入開始。Zoffスタッフ約720名が17万枚の顔画像データを評価して生まれたオリジナルAIを採用!」、メガネのZoffオンラインストア「Zoff LINE公式アカウント」、 セールスフォース・ジャパン(事例紹介)「インターメスティック」)

株式会社カインズ

全国に200店舗以上のホームセンターを展開する株式会社カインズは、「IT小売企業」を目指しDX化を推進しています。実店舗・オンライン両面でのユーザーエクスペリエンス向上や、業務効率化に向けてさまざまな施策を展開中です。

代表的な施策としては、「カインズアプリ」が挙げられるでしょう。商品の購入はもちろん、商品の在庫情報や店舗内の陳列棚などを表示したり、DIYイベントの参加予約を行ったりと豊富な機能が搭載されています。

その他、オンラインで取り置きした商品を専用の駐車場やロッカーで受け取れるサービスなど、オンライン・オフライン間をシームレスにつなぐ施策を積極的に進めています。

マーケティング面でも、多角的なアプローチが顕著です。MAツールを用いてユーザーへの情報提供を最適化することはもちろん、現場の知識をコンテンツとして活用した「となりのカインズさん」など、さまざまな形でユーザーに訴求しています。

(参照:株式会社カインズ 採用情報サイト「ITで小売業の未来を創るカインズ | ホームセンター首位のデジタル戦略をリードするIT人材を募集」、セールスフォース・ジャパン(事例紹介)「株式会社カインズ」)

株式会社ワールドスポーツ

釣具店「釣具のキャスティング」を展開する株式会社ワールドスポーツは、MAツールの導入によりマーケティングの最適化に着手しています。それまでは主にチラシやDMの一斉送信といった方法を用いていたため、施策効果の分析はほとんどできずにいたそうですが、導入後は購買行動にもとづくユーザーへの案内により、確度の高いマーケティングが可能になりました。

ECサイトの展開はもちろん、自社サイトでは会員による「釣り自慢」といったコンテンツや、「釣り船予約」といったイベント予約機能を用意しており、釣具の購入以外にも多様な体験の場を提供しています。専用のスマートフォンアプリでも同様の機能を利用でき、今後はこれらのデータをふまえつつ、さらに顧客へのアプローチを最適化していく見込みです。

(参照:釣具のキャスティング 公式サイト 、カスタマーリングス活用事例「株式会社ワールドスポーツ様」)

ユニファイドコマースの実施には入念な準備を

成功へのプラン

ユニファイドコマースの基盤を構築することで、情報管理やデータ分析、顧客へのアプローチなど多くの場面で効率化を図ることができるでしょう。

一方で、ユニファイドコマースの基盤づくりには相応のリソースやコストが必要になります。関係する部門間でのフローや、チーム編成なども全面的に見直さなければならない可能性があり、準備に時間を要することを念頭に置かなければいけません。

ユニファイドコマースを推進するうえでは、「ユーザーエクスペリエンスの向上」といった大目標に向けて、現状分析を通じて課題を洗い出しておくことが重要です。販売チャネルごとの状況や、顧客へのアプローチのあり方、業務プロセスにおける負荷など多方面にわたる課題を整理しながら、システムを統合することで解決しうるポイントを明確に見通しておきましょう。

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この記事を書いた人

鹿嶋 祥馬
大学で経済学と哲学を専攻し、高校の公民科講師を経てWEB業界へ。CMSのライティングを300件ほど手掛けたのち、第一子が生まれる直前にフリーへ転身。赤子を背負いながらのライティングに挑む。

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