
CMSに潜むセキュリティリスクと具体的な対策方法を解説!
企業がCMS(コンテンツ管理システム)を導入する際、機能性や使いやすさに注目しがちですが、セキュリティ対策こそが最も重要な検討事項です。顧客情報を預かる企業にとって、CMSのセキュリティ不備は法的責任を問われるリスクがあり、一度のセキュリティ事故が企業存続を脅かす事態に発展する可能性があります。
本記事では、CMSにセキュリティ対策が必要な理由や、最低限行うべきセキュリティ対策について解説しています。顧客情報保護に強いCMSの選び方はもちろん、セキュリティ事故を防ぐ運用体制や、セキュリティ診断についても紹介しています。ぜひ参考にしてください。
目次
CMSにセキュリティ対策が必要な理由

CMSを狙ったサイバー攻撃は年々増加しており、企業規模に関係なく被害が報告されています。特に顧客情報を扱う企業では、セキュリティ事故が発生した場合の影響は計り知れません。
そのため、以下のような理由からCMSでもセキュリティ対策はしておくべきだと言われています。
- 顧客情報を預かる企業の法的責任とリスクがある
- 情報漏洩による損害は中小企業でも数千万円単位
- 中小企業はとくに狙われやすい
- セキュリティ事故が企業存続に与える影響が大きい
セキュリティ対策を怠った結果、法的責任を問われるだけでなく、高額な損害賠償や企業の信頼失墜につながるリスクがあります。中小企業こそ狙われやすい傾向にあるため、事前の対策が不可欠です。
顧客情報を預かる企業の法的責任とリスクがある
個人情報保護法により、企業は預かった顧客情報を適切に管理する法的義務があります。CMSから個人情報が漏洩した場合、企業は個人情報保護委員会から行政処分を受ける可能性があり、悪質なケースでは刑事罰の対象になります。
法的責任だけでなく、情報漏洩を起こした企業は社会的信用を大きく失います。顧客からの信頼回復には長期間を要し、その間の売上減少や対応コストは企業経営に深刻な影響を与えるでしょう。
情報漏洩による損害は中小企業でも数千万円単位
日本ネットワークセキュリティ協会(JNSA)の最新調査によると、インシデントが発生した場合、各種の事故対応ほか、被害者からの損害賠償請求、事業中断による利益喪失などを想定するに、中小企業においても数千万円単位、場合によって億単位の損失が発生することが明らかになっています。
具体的な損害額のイメージ
- 事故原因・被害範囲調査費用:300~400万円
- コールセンター費用(3ヶ月対応):700~1,000万円
- 見舞金・見舞品(1万人への対応):650万円
- システム復旧費用:数百~数千万円
- 再発防止費用:数百~数千万円
中小企業にとって数千万円から億単位の損失は経営を根底から揺るがす重大な打撃となります。予防にかかるセキュリティ対策費用と比較すると、事前対策の重要性は明らかです。
▶参照:2024年版インシデント損害額調査レポート|JNSA
中小企業はとくに狙われやすい
サイバー攻撃の標的は大企業から中小企業にシフトしています。中小企業が狙われやすい理由は以下の3つです。
1つ目は、セキュリティ対策が不十分な企業が多いことです。大企業に比べてセキュリティ専門人材が不足しており、対策が後回しになりがちです。2つ目は、IT予算の制約により、セキュリティ製品の導入が進んでいないことが挙げられます。
3つ目は、大企業への攻撃の踏み台として利用される点です。取引先の大企業にアクセスするための入り口として、セキュリティの弱い中小企業が標的にされるケースが増えています。
セキュリティ事故が企業存続に与える影響が大きい
セキュリティ事故は単なる一時的なトラブルではなく、企業の存続に関わる深刻な問題です。情報漏洩が発生すると、既存顧客の離脱だけでなく、新規顧客獲得も困難になります。
さらに深刻なのは、取引先企業からの契約解除です。セキュリティ事故を起こした企業との取引を継続することは、取引先にとってもリスクとなるため、長年の信頼関係が一瞬で崩れる可能性があります。実際に、セキュリティ事故をきっかけに廃業に追い込まれた中小企業の事例も報告されています。
CMSに潜むセキュリティリスク

CMSは種類によってセキュリティリスクの特徴が異なります。オープンソース型、パッケージ型、クラウド型それぞれに固有のリスクがあり、導入前にこれらを理解しておくことが重要です。
どの種類のCMSを選択する場合でも、完全にリスクゼロにすることは不可能です。重要なのは、各CMSのリスクを正しく把握し、適切な対策を講じることです。
オープンソース型CMSの3大リスク
WordPress含むオープンソース型CMSには、3つの主要なセキュリティリスクがあります。最も深刻なのは、ソースコードが公開されているため、攻撃者が脆弱性を発見しやすい点です。
2つ目のリスクは、プラグインの品質にばらつきがあることです。個人開発者によるプラグインの中には、セキュリティ対策が不十分なものも多く、これらが攻撃の入り口となる可能性があります。3つ目は、利用者数が多いため攻撃対象になりやすく、新たな攻撃手法が次々と開発される点です。
パッケージ型CMSでも注意すべき点
パッケージ型CMSはベンダーがセキュリティ対策を行うため安全と思われがちですが、注意すべき点があります。サーバーの管理は自社で行う必要があり、サーバーセキュリティの設定不備が全体のセキュリティを脅かす可能性も捨てきれません。
また、カスタマイズを行う際に新たな脆弱性が生まれるリスクもあります。機能追加や改修を外部に委託する場合は、セキュリティ要件を明確に伝え、適切な開発が行われているか確認することが重要です。
クラウド型CMSの安全性と落とし穴
クラウド型CMSは、ベンダーがインフラとセキュリティを一括管理するため、最も安全性が高いとされています。自動アップデートや24時間監視などの恩恵を受けられ、企業側の管理負担も軽減されます。
しかし、データが外部サーバーに保存されるため、ベンダーのセキュリティレベルに完全に依存することになります。ベンダー選定時は、セキュリティ認証の取得状況やデータセンターの場所、障害時の対応体制などを詳しく確認する必要があります。
CMSで最低限行うべきセキュリティ対策

CMSのセキュリティ対策は、導入時の基本設定と運用時の継続的な管理の両方が重要です。特に初心者の場合、何から始めればよいか分からないケースが多いため、段階的にアプローチすることをおすすめします。
外部に委託する場合でも、発注者として最低限の知識を持っておくことで、適切な要件定義と品質管理が可能になります。
【基本編】導入時に必ず行う4つの設定
CMSを導入した直後は、セキュリティが最も脆弱な状態です。サイバー攻撃者は新しく公開されたサイトを狙って攻撃を仕掛けてくるため、運用開始前に必ず以下の基本設定を完了させましょう。
- 強固なパスワード設定
- 不要なプラグイン・機能の削除
- SSL証明書の導入
- 管理画面のアクセス制限
これらの設定を怠ると、運用開始から数日で不正アクセスを受ける可能性があります。実際に、初期設定のまま運用を開始したサイトの約30%が、1ヶ月以内に何らかの攻撃を受けているという調査結果もあります。
【運用編】月1回チェックすべき4項目
CMSのセキュリティは「設定して終わり」ではありません。新しい脅威が日々発見される中、定期的なメンテナンスが被害を未然に防ぐ重要な防御線となります。
- システムアップデートの確認
- ログインログの確認
- バックアップの動作確認
- セキュリティプラグインの動作確認
月1回のチェックを習慣化することで、セキュリティインシデントのリスクを大幅に削減できます。忙しい日常業務の中でも、カレンダーにリマインダーを設定して確実に実行してください。
外部委託時のセキュリティ要件の確認方法
CMS構築を外部業者に委託する場合、セキュリティ要件を明確に伝えることが重要です。委託先のセキュリティレベルを事前に確認し、適切な契約を結ぶ必要があります。
確認すべき主要項目として、過去のセキュリティ事故の有無、セキュリティ認証の取得状況、開発時のセキュリティテスト実施体制などがあります。また、納品後のサポート体制や緊急時の対応方法についても詳しく確認しておきましょう。
顧客情報保護に強いCMS選定ガイド

顧客情報を扱う企業がCMSを選定する際は、機能性よりもセキュリティ性を最優先に検討する必要があります。特に金融や医療など、機密性の高い情報を扱う業界では、業界固有の要件を満たすCMSを選択することが重要です。
CMS選定は長期的な投資判断でもあります。初期費用だけでなく、運用コストやセキュリティ対策費用も含めた総合的な評価を行いましょう。
導入前に確認すべき10のチェック項目
CMS導入前に必ず確認すべきセキュリティ関連のチェック項目をまとめました。
- SSL/TLS暗号化への対応状況
- WAFの標準搭載
- 二段階認証機能の有無
- アクセスログの記録・分析機能
- 自動バックアップ機能の充実度
- セキュリティアップデートの提供頻度
- 24時間監視体制の有無
- インシデント発生時の対応体制
- データセンターのセキュリティレベル
- 第三者セキュリティ認証の取得状況
これらの項目を事前にチェックすることで、セキュリティレベルの高いCMSを選定できます。
金融・医療業界でも選ばれるCMS3選
セキュリティ要件が厳しい金融・医療業界でも採用実績のあるCMSを3つ紹介します。これらのCMSは高いセキュリティレベルを誇り、顧客情報を扱う企業にとって安心して利用できる選択肢です。
HeartCore:基幹システム連携対応の企業向けCMS
HeartCoreは、企業の基幹システムとの連携に優れたパッケージ型CMSです。ヘッドレスCMSとしての機能も持ち、フロントエンドとバックエンドが分離されているため、セキュリティ性が高く、リリースから14年間情報漏洩や改ざんなどのトラブル報告件数ゼロを達成しています。
WAF、脆弱性対応、データ暗号化、操作ログ取得など、企業が求めるセキュリティ機能を包括的に提供します。外部システムとの安全な連携機能により、既存の顧客管理システムとシームレスに統合できる点も大きな特徴です。
ShareWith:上場企業シェアNo.1の信頼性
ShareWithは上場企業での導入シェアNo.1を誇るクラウド型CMSです。AWS環境での堅牢なインフラ基盤と、24時間365日の監視体制などにより「多重防衛」と称する高いセキュリティ機能を保持しています。
また、ISO27001やSOC2などの国際的なセキュリティ認証を取得しており、コンプライアンス要件の厳しい企業でも安心して利用できます。災害時のBCP対策も充実しており、事業継続性の観点からも信頼性の高いCMSです。
NOREN:静的生成でセキュリティを強化
NORENは静的サイト生成機能を持つCMSで、動的処理を最小限に抑えることでセキュリティリスクを大幅に削減しています。パスワード変更時に本人のみにパスワードを通知する機能など、きめ細かいセキュリティ設定が可能です。
中規模サイトに適したCMSで、更新頻度がそれほど高くない企業サイトでは、静的生成による高いセキュリティ性能を発揮します。また、表示速度も高速で、SEO効果とセキュリティを両立できる点も魅力と言えるでしょう。
CMSのセキュリティ事故を防ぐ運用体制

CMSのセキュリティ対策は技術的な設定だけでなく、適切な運用体制の構築が重要です。社内の役割分担を明確にし、外部専門業者との連携体制を整えることで、継続的な安全性を確保できます。
小規模な企業でも、最低限の運用ルールを定めておくことで、セキュリティ事故のリスクを大幅に削減にもつながるでしょう。
社内セキュリティ担当者の役割分担
CMSのセキュリティ管理には、明確な役割分担が必要です。規模の小さい企業でも、最低限の管理体制を整えておくことが重要になります。
管理責任者は、セキュリティポリシーの策定と全体統括を担当します。日常的な管理業務を行う担当者は、定期的なアップデート作業やログ監視を実施してください。また、緊急時の対応責任者を事前に決めておくことで、インシデント発生時の迅速な対応が可能です。
外部専門業者との連携方法
自社だけでは対応困難なセキュリティ業務については、外部専門業者との連携が効果的です。セキュリティ監査、脆弱性診断、緊急時対応など、専門知識が必要な分野では積極的に外部リソースを活用しましょう。
連携先の選定では、24時間対応の可否、過去の対応実績、料金体系などを総合的に評価します。また、定期的な連絡会議を設定し、最新の脅威情報や対策状況を共有する体制を構築することも重要です。
緊急時対応マニュアルの作成手順
セキュリティインシデントが発生した際の対応手順を事前にマニュアル化しておくことで、被害を最小限に抑えられます。対応の遅れは被害拡大につながるため、迅速な初動対応が重要です。
マニュアルには、インシデント発見時の連絡体制、システム停止の判断基準、お客様への連絡方法、復旧作業の手順などを具体的に記載します。また、年1回以上の訓練を実施し、マニュアルの実効性を確認することも大切です。
定期監査とセキュリティ教育の実施方法
継続的なセキュリティレベルの維持には、定期的な監査と従業員教育が欠かせません。四半期に1回程度の内部監査で、セキュリティ設定や運用状況をチェックしましょう。
従業員向けのセキュリティ教育では、最新の攻撃手法やフィッシングメールの見分け方、パスワード管理の重要性などを継続的に啓発します。特にCMSに触れる機会の多い担当者には、より詳細な教育プログラムを提供することが重要です。
初心者でも安心なCMSセキュリティ診断方法

CMSのセキュリティレベルを自己診断することで、潜在的なリスクを早期発見できます。専門知識がなくても利用できる無料ツールが多数提供されており、定期的な診断を習慣化することが重要です。
診断結果に問題が発見された場合は、速やかに対策を講じる必要があります。自社で対応困難な場合は、専門業者への相談を検討しましょう。
無料で使えるセキュリティ診断ツール
初心者でも簡単に利用できる無料のセキュリティ診断ツールを紹介します。これらのツールを定期的に活用することで、基本的なセキュリティ問題を発見できます。
「WPScan」はWordPress専用の脆弱性スキャンツールで、既知の脆弱性を自動検出します。「SSL Server Test」では、SSL証明書の設定状況を詳しく分析可能です。また、「OWASP ZAP」は、Webアプリケーション全般の脆弱性診断に利用できる包括的なツールとなっています。
脆弱性情報データベースの確認方法
最新の脆弱性情報を把握するために、信頼できる情報源を定期的にチェックすることが重要です。「JVN」は、日本で発見・報告された脆弱性情報を提供する公的データベースです。
使用しているCMSやプラグインに関する脆弱性情報が公開された場合は、速やかに対策を実施してください。また、CMSベンダーの公式サイトやメーリングリストに登録し、セキュリティアップデートの情報を見逃さないようにしましょう。
まとめ|CMSのセキュリティ対策は導入前の検討が最も重要

顧客情報を預かる企業にとって、CMSのセキュリティ対策は法的責任を果たすための必須要件です。情報漏洩による被害額が数千万円単位という事実を踏まえ、事前の対策投資の重要性を認識してください。
中小企業こそサイバー攻撃の標的となりやすく、一度のセキュリティ事故が企業存続を脅かす可能性があります。導入前の慎重な検討と、運用開始後の継続的な管理体制が、企業の安全性を支える基盤となるでしょう。
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