シニアマーケティングとは?成功事例や世代の特徴、効果を高める戦略を解説
「シニア向けにアプローチしても反応が薄い」「高齢者向けと打ち出すと逆に敬遠される」こうした悩みを抱える担当者は少なくありません。
シニアマーケティングは、拡大を続ける成長市場である一方、65歳以上を一括りにした従来のアプローチでは成果が出にくくなっています。健康状態や経済状況によって消費行動が大きく異なるため、シニア層特有の心理を理解した戦略設計が欠かせません。
本記事では、シニアマーケティングの基本的な考え方からシニア世代の特徴、成功させるための具体的なコツ、そして日清食品や象印マホービンなど企業の成功事例まで分かりやすく解説します。
目次
シニアマーケティングとは?

シニアマーケティングとは、65歳以上を中心とする高齢者層をターゲットにしたマーケティング活動です。シニアマーケティングでは、年齢だけでシニアをひとまとめにするのではなく、健康状態や経済状況、ライフスタイルの違いに応じたきめ細かなアプローチが求められます。少子高齢化が進む日本において、数少ない成長市場として多くの企業が注目している分野です。
シニアの定義
シニアとは、一般的に65歳以上を指します。法的に明確な定義はありませんが、介護保険制度で65歳以上を第1号被保険者として扱っていることなどから、実務上はこの年齢を基準とするケースが多く見られます。
2024年5月23日の経済財政諮問会議では、民間議員から65歳以上とされる高齢者の定義を5歳延ばすことを検討すべきとの提言がありました。これに対し、厚生労働大臣は高齢者の定義にかかわらず年金の支給開始年齢を引き上げる考えはないと説明しています。また、介護保険制度についても、被保険者の範囲を直ちに見直す予定はないと述べています。
シニアマーケティングが必要とされる背景
シニア層には、失敗を避けたい心理や商品を見極める経験値の高さから、購買までのハードルが現役世代より高いという特徴があります。年金や貯蓄による安定した経済基盤を持ちながらも、慎重に消費を判断する傾向が強いためです。
そのため、現役世代と同じ訴求をそのまま使っても効果は出にくく、年齢層ごとの価値観や不安を理解した専用の戦略が必要になります。
シニアマーケティングが重要な理由

シニアマーケティングが重要な理由は、高齢化によってシニア層の市場における存在感が高まっていることに加え、金融資産を比較的多く保有する世帯が多いためです。今後も高齢化が進む日本では、シニア層の人口規模や購買力を踏まえたマーケティングが、さまざまな業種で重要になると考えられます。
ここでは、シニアマーケティングが重要とされる2つの理由を詳しく解説します。
理由①:人口増加と高齢化の加速
シニア人口は今後も高い水準で推移すると見込まれています。2025年9月15日時点で、65歳以上の人口は約3,619万人、総人口に占める割合は29.4%と過去最高を更新しました。さらに、国立社会保障・人口問題研究所の推計によると、65歳以上の人口割合は今後も上昇し、2040年には34.8%、2050年には37.1%に達すると見込まれています。
2040年には、3人に1人を超える人が65歳以上となる見込みであり、シニア層を主要なターゲットに据えた事業戦略の重要性は今後さらに高まると考えられます。
理由②:豊富な金融資産を持つシニア層
シニア層は、金融資産の保有状況から見ても重要な消費者層です。内閣府によると、世帯主が60歳以上の世帯は、2019年時点で家計の金融資産全体の63.5%を保有しています。世帯主が65歳以上の二人以上世帯では、貯蓄現在高の中央値が1,604万円となっており、全世帯の1,107万円を上回っています。
こうした金融資産の保有状況から、シニア層は企業にとって有力な市場の一つと考えられます。高齢者向けの商品・サービスだけでなく、旅行、金融、住宅、生活支援など、シニアの生活に関連する幅広い分野で需要を取り込むことが重要です。
シニア層の4つの分類

シニア層は、経済状況や健康状態、消費傾向によってアクティブシニア・ディフェンシブシニア・ギャップシニア・ケアシニアの4つに分類できます。
| 分類 | 経済状況 | 健康状態 | 消費傾向 | 有効な訴求軸 |
|---|---|---|---|---|
| アクティブシニア | 年金・貯蓄に余裕あり | 心身ともに健康 | 旅行・趣味・高価格帯商品にも積極的 | 「人生を謳歌する」前向きな訴求 |
| ディフェンシブシニア | 年金中心で余裕は限定的 | 健康状態は良好 | 生活必需品中心、節約志向 | コストパフォーマンス、長期的な安心 |
| ギャップシニア | 年金中心、将来への不安あり | 要介護ではないが衰えを実感 | 消極的、生活必需品中心 | 補助具・健康食品、社会とのつながり |
| ケアシニア | 年金中心、公的制度の影響大 | 要介護認定あり | 本人ではなく家族が意思決定 | 家族・ケアマネジャー向けの安全性訴求 |
アクティブシニア
アクティブシニアとは、心身ともに健康で、旅行や趣味、デジタル活用に積極的な層です。60代前半から70代前半が中心で、経済的な余裕から高価格帯の商品にも投資する傾向が見られます。
この層には高齢者向けという表現よりも、人生を謳歌するといった前向きなメッセージが響きやすくなります。SNSやYouTubeを活用する人も増えているため、デジタル広告での接点もおすすめです。
ディフェンシブシニア
ディフェンシブシニアとは、年金が主な収入源で大きな出費を控える節約志向の層を指します。健康状態は良好なものの経済的な余裕が限られており、消費行動は慎重になりがちです。
4分類のなかで最も人口が多いとされるディフェンシブシニアには、低価格でコストパフォーマンスの高い商品や、長期的な安心につながる保険・生活サポートサービスを提案することで需要を取り込めます。
ギャップシニア
ギャップシニアとは、要介護ではないものの、身体機能の衰えや将来への不安を感じている層です。できることとしたいことの間にギャップを感じ、趣味などへの参加に消極的になりがちなことが特徴としてあげられます。
ギャップシニアの層にアプローチする場合は、日常生活をサポートする補助具や健康食品、無理なく始められる健康維持プログラムのほかに、社会とのつながりを提供するコミュニティサービスを提供すると良いです。
ケアシニア
ケアシニアとは、要介護認定を受けている日常生活にサポートが必要な層です。商品やサービスの利用判断を本人ではなく、家族やケアマネジャーなど第三者がおこなう点が特徴です。
そのため介護用品や見守りサービスは、本人ではなく家族や医療関係者に向けた訴求が欠かせません。安全性・機能性・介護負担の軽減を明確に伝える設計が求められます。
シニアマーケティングを成功させるコツ

シニアマーケティングを成功させるためには、ペルソナ設定・表現の配慮・集客手段の併用・安心感の提供が大切です。年齢だけでシニアを一括りにせず、生活実態に即したペルソナを描き、警戒心を招かない言葉選びをすることで自分ごととして受け止めてもらいやすくなります。そのうえでデジタルとオフラインを併用し、購入前後の不安を解消する設計を加えると、シニア層の心に響く施策につながります。
コツ①:ペルソナを年代・ライフスタイルで絞り込む
ペルソナは年代やライフスタイルで具体的に絞り込みましょう。65歳と85歳では求めるものが大きく異なり、対象年代を広げすぎるとメッセージが誰にも刺さらなくなってしまうためです。
年齢だけでなく、日常の過ごし方や趣味嗜好、価値観まで踏み込んでペルソナを設定するとターゲット像が明確になり、訴求内容の精度も高まります。
コツ②:「高齢者向け」表現を避け、事実ベースの言葉を選ぶ
「高齢者向け」「お年寄りの方へ」といった表現は避けましょう。多くのシニアは高齢者扱いされることに抵抗感を持ち、自分をシニアだと思っていない人も少なくありません。
例えば、敬老の日にお祝いされたいと感じるシニアは少数派で、多くが祝われることに抵抗を示す傾向があります。高齢者向けではなく、70歳以上の方向けのように年齢という事実で括ることで、抵抗感を抑えながら自分ごととして受け止めてもらいやすくなります。
コツ③:デジタルと紙媒体・電話窓口を併用する
デジタルの集客手段と、紙媒体や電話窓口といったオフラインの集客手段は併用しましょう。シニア層のインターネット利用率は年々上昇していますが、デジタルだけでは十分にサポートしきれない場面がまだ多く残っています。
60代ではテレビに次いでインターネットの利用が多く、デジタル接点の重要性がうかがえます。一方で新聞や雑誌といった紙媒体も一定の影響力を保っているため、困ったときにすぐ相談できる電話窓口を用意することも、デジタル施策への抵抗感を和らげる手段の一つです。
コツ④:納得感・安心感を与える設計をする
商品やサービスには、納得感と安心感を設計段階から組み込みましょう。シニア層は失敗を避けたい心理が強く、本当に価値があるかを慎重に見極める傾向があるためです。
具体的には、購入前に体験できるトライアルやモニター機会の提供、実際に利用したシニアの口コミ・体験談の掲載、専門家の推薦や客観的データの提示などが有効です。無料体験や返金保証で導入ハードルを下げる工夫も、安心感につながります。
シニアマーケティングの成功事例5選

ここでは、実際に企業が行うシニアマーケティングの成功事例を5つご紹介します。
シニアマーケティングの成功事例
- 日清食品:最適化栄養テクノロジーで健康寿命延伸・フレイル対策を訴求
- イオンリテール:介護用品を一括で扱う「MySCUE」で家族の購入負担を軽減
- 象印マホービン:生活家電に見守り機能を組み込み、家族の不安に応える設計
- 明治:「メイバランス ミニ」で無理なく続けられる低栄養対策を実現
- カーブスジャパン:30分・女性専用ジムでシニア女性の継続利用を後押し
日清食品:健康を意識した取り組み「最適化栄養テクノロジー」
日清食品は、「最適化栄養テクノロジー」を通じて、シニアの健康寿命延伸やフレイル対策につながる食品開発に取り組んでいます。シニア向けの最適化栄養食では、高齢者に不足しがちなタンパク質やn-3系脂肪酸などを強化した食品を用いた研究も行われています。
また、シニア向けフードサービスの展開を通じて、健康寿命の延伸や介護負担の軽減を目指しています。単に「健康に良い食品」を提供するだけでなく、おいしさと栄養の両立を図りながら、シニアの食生活を支える点が特徴です。
イオンリテール:シニアケアのプラットフォーム「MySCUE」
イオンリテールは、介護用品や健康関連商品を一括して扱うオンラインモール「MySCUEシニアケアモール」を展開し、ケアシニア・ギャップシニア層のニーズに応えています。分散しやすい介護関連商品を一つの窓口に集約し、購入のハードルを下げている点が特徴です。
ケアシニア層は本人ではなく家族が意思決定をおこなうため、専門知識がなくても選びやすい商品説明や比較のしやすさが重視されます。オンラインで完結できる導線は、店舗を回る時間が取りにくい家族層への対応にもなっています。
象印マホービン:日常家電を活用した「みまもりほっとライン」
象印マホービンの「みまもりほっとライン」は、電気ポットの使用状況を離れて暮らす家族にメールで知らせるサービスです。カメラやセンサーのような監視されている印象を与えず、日常的に使う生活家電へ自然に見守り機能を組み込んでいる点が特徴です。
利用者は主に離れて暮らす子ども世代で、月額料金を支払って親の安否確認をおこなう形が中心です。本人への直接的な訴求ではなく、家族側の気づいたときには手遅れにしたくないという不安に応える設計が、他の見守りサービスとの差別化要因になっています。
明治:少量で栄養を摂れる「メイバランス」
明治の栄養補助食品「メイバランス」は、少量でも必要な栄養を摂れる設計になっており、食が細くなったシニア層の低栄養対策として支持を集めています。一般的な栄養ドリンクでありがちな「飲まなければいけない」という負担を解消したのが、ミニサイズならではの強みです。
食欲低下や小食化はギャップシニア・ケアシニア層に共通する悩みであり、本人だけでなく介護をおこなう家族にとっても関心の高いテーマです。頑張って飲むのではなく無理なく続けられるという切り口で商品価値を伝えたことが、シニア層と家族層の双方への訴求につながっています。
参照:明治|メイバランス ミニ
カーブスジャパン:シニア女性向けの30分フィットネス
カーブスジャパンは、女性専用・30分の運動サーキットジムとして、シニア女性を中心に会員を獲得しています。着替え不要・短時間・女性だけの空間という設計により、従来のジムが持つ本格的で続けるのが大変というイメージのハードルを下げました。
アクティブシニア層の健康志向の高まりに加え、通いやすさや同世代とのコミュニティ形成という側面も、継続利用につながる要因になっています。運動そのものよりも「無理なく続けられる」「一人でも通いやすい」という安心感を軸にした訴求が、シニア女性の心理に合致しています。
参照:カーブスジャパン
シニアマーケティングまとめ

シニアマーケティングとは、65歳以上を中心とする高齢者層に向けたマーケティング活動です。人口の増加や豊富な金融資産を背景に、今後も成長が期待される市場の一つです。
シニア層は健康状態や経済状況によって、アクティブ・ディフェンシブ・ギャップ・ケアの4つに分けられます。そのため年齢だけで一括りにせず消費傾向に合わせて施策を考えることが重要です。
実際に日清食品や明治、象印マホービン、カーブスジャパンなどの成功事例を見ると、シニア本人だけでなく家族にも受け入れられやすいサービス設計が行われています。自社サービスが「誰のどんな悩みを解決できるのか」を明確にし、適切な集客方法を実践することがシニアマーケティングでは大切なので、それぞれの特徴を踏まえて施策に反映していきましょう。
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