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フォーバル GDXリサーチ研究所

フォーバル GDXリサーチ研究所による中小企業の実態調査から見える経営者が今後すべきこと

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中小企業のGDXに関する実態調査を研究する「フォーバル GDXリサーチ研究所」の所長、平良 学氏にインタビュー。設立の経緯、発信しているブルーレポートの重要性、そして今後の中小企業の経営のヒントをお聞きしました。

フォーバル GDXリサーチ研究所とは

フォーバル GDXリサーチ研究所は、「『新しいあたりまえ』で、新しい世界を創る FORVAL」という理念を掲げる、次世代経営コンサルタント集団である株式会社フォーバルが2022年10月1日に開設した研究機関。

中小企業のGDX(※)化について実態調査し、積極的に情報を発信することで、中小企業の現状に対する国や行政の理解を深め、最適な支援施策のアイデアを創出する機会を生み出しています。

※ GDX(Green Digital Transformation):企業や組織が脱炭素化など環境意識をもって活動を行うことで新たな価値創造、利益を生むGX(Green Transformation / グリーントランスフォーメーション)、デジタル化を通じて新たな価値創造、利益を生むDX(Digital Transformation / デジタルトランスフォーメーション)を組み合わせた戦略。

現在、日本に存在する法人の99%以上が中小企業だといわれています。気候変動問題や生産性の低下、人手不足などさまざまな課題を抱える中小企業の1社1社が、その解決のためにGX、DXを適切に実現できるようになれば、社会そのものの成長につながるといえるでしょう。

フォーバル GDXリサーチ研究所は、中小企業の支援を目的に、国や行政が最適な施策、対策を講じられるよう、それらをつなぐ役割を目指しているのです。

設立の経緯

フォーバル GDXリサーチ研究所 所長 平良 学さん
(フォーバル GDXリサーチ研究所 所長 平良 学さん)

―早速ですが、フォーバル GDXリサーチ研究所設立の経緯についてお伺いできますか?

フォーバル GDXリサーチ研究所 所長 平良 学さん(以下、平良さん):株式会社フォーバルは43年間、一貫して情報通信技術を用いながら中小企業の経営を良くしていくお手伝いをしてまいりました。

通信自由化(※2)の時代から、今だと「GDX」という文脈で、特にコロナ禍以降はますます加速させて支援を進めています。

※2 通信自由化:1985年、経営の効率化、テクノロジーの高度化などを目的に、それまで国や公共企業体が独占していた電気通信事業を民営化させた政策のこと。

平良さん:そのなかで見えてきたのは、行政が中小企業に対してさまざまな支援策を打ち出しても、残念ながらうまく届かないという現状です。

また「中小企業」といっても範囲は広く、僕らが向き合っているところには、ほぼ経営者1人の企業や従業員が10名以下の企業、もしくは30名~50名程度の中堅どころに近い企業も存在します。
これだけ幅があると、それぞれの課題も変わってきます。

そこで、僕らがリアルタイムで中小企業に関する情報を収集し、調査分析して行政に届け、行政がそれをベースに政策を立てれば、より中小企業のGDXが進むのではないか、という考えから、民間企業の一部ではなく中立的な機関として情報を発信していこうと、昨年フォーバル GDXリサーチ研究所を立ち上げました。

独自の強み

―フォーバル GDXリサーチ研究所の独自の強みはなんですか?

平良さん:ひとつめは、我々は長年、中小企業を見続けてきましたので、通信の歴史とともに経営手法もアップデートしていくなかで、経営者がどこで戸惑い、なにに課題を持つのか知っているということ。

ふたつめは、中小企業で働く方々が実際に活用している通信情報技術、たとえばネットワーク環境やデバイスなどを可視化することができるので、経営者からヒアリングする定性的な情報と数値化されたデータの両方を持っていることです。

精度の高い情報を取得し、それを行政や世の中に発信できるのは強みであり、使命だと考えています。

―令和元年から(株式会社フォーバルとして)ブルーレポートを発信されていますが、くわえて2023年3月からプレスリリースも配信されています。
なにか狙いはあるのでしょうか?

平良さん:ブルーレポートは最初、我々なりに中小企業の実態を調査して「白書」というかたちでまとめていたものだったのですが、コロナ禍に政府が4つの分野に関する方針を発表(※3)し、我々もいろいろなかたちでそれらに取り組んでいくなかで、想定以上に高い評価をいただくようになりました。

※3 政府は2021年6月に「経済財政運営と改革の基本方針2021」(「骨太方針2021」)を閣議決定。このなかで、①グリーン②デジタル③活力ある地方創り④少子化対策といった4つの分野に重点投資していくことを明確に発表した。

いずれも以前より顕在化していた課題だが、新型コロナウィルス蔓延によって世界的に大きな構造変化が起き、どう対応していくか急務として問われるようになった。

平良さん:今までは民間の中小企業のサポートをすることが多かったのですが、自治体の方からお声をかけていただく機会が増え、地方へ行くと「DXはどうやって始めればいい?」といった質問をされるようになりました。

中小企業だけでなく自治体、行政サービス、個人の生活者、すべてはつながっているので、もっと発信力を高め、全国に情報を届ける必要があると気づいたんです。

そこで新たに広報チームを立ち上げて、定期的にプレスリリースを配信し、より多くの方々に情報を届けることで、政府が掲げている4つの成長戦略を加速させていきたいと考えています。

中小企業経営者の約6割がよく知らない「リスキリング」

―貴所が配信されている「中小企業のDXに関する実態調査」を拝見して、中小企業の経営者の約6割の方が「リスキリング」について「よく知らない」「知らない」とお答えしていると知り、昨今はニュースなどでもよく耳にする言葉なので、少し驚きました。

平良さん:そもそもリスキリング教育が注目されるようになった背景には、デジタルが前提の社会でありながら、そのツールを使いこなせる人が少ないという課題があります。

新しいことを学び、スキルを身につけ、実践するというリスキリングが必要になるのですが、次々に生まれるデジタルツールを使えればいいというわけではありません。

たとえば企業の公式SNSなどで失言をしてしまって、批判を浴びたり炎上したりするケースも見られるようになりましたよね。
デジタルをベースにした社会では、情報を適切に取り扱う知識を身につけることも求められます。

また同調査によって、中小企業の約9割以上がリスキリングを実施できていないという現状も見えてきました。

特に約7割は「行う予定もない」と回答しており、リソース的に行えないケースもあると思いますが、DX人材を育成する必要性について自分事化できていないのではないかと推察しています。

―こういった認知度の低い言葉が知れわたり、自然と自分事化して捉えられるようになるには、どういった要素がきっかけになるのでしょう?

平良さん:中小企業が一番影響を受けるのは、仕事を受ける際に川上にいる大手企業であることが多いと考えられます。
そして大手企業はやはり、国が発信するメッセージや時代の変化についてキャッチアップするのが早く、非常に感度が高いです。

求められる要素を細分化して専門に研究する部隊が作られることもあり、そうするとよりスピーディーに動きます。

一方で中小企業の経営者は、経営だけでなくプレイヤーとしてやらなくてはいけないこともたくさん抱えていることが多く、情報をキャッチしても、どうしてもワードだけが先走って、本質的にそれをどう自社の経営に活かせばいいのか考えるとなると難しいのかなと思います。

ただ、早いタイミングで対応する企業はマーケットから選ばれやすくなります。
感度が低く、あとから気づいて参戦するのでは、もう市場から退場させられてしまうということもあるでしょう。

だから僕らがお伝えしているのは、中小企業はたしかにルールを作る側になることは難しいですが、ルールが変更されたときにどれだけ早くキャッチアップして、世の中の変化、自社の環境の変化に対応するかによってチャンスは広がりますよ、ということですね。

―中小企業がキャッチした最新の情報やルールを自社経営に活かすコツなどはありますか?

平良さん:中小企業の経営者というより行政に対して、今でいう“DX”の文脈で“IT”という言葉が使われていたころから一貫してお伝えしているのですが、いくら道具を提供しても日本の情報化は進みません。

最新のデジタルツールを調達しても、それを経営に活かさなければどうにもならないんです。

行政による中小企業支援策というと、今までは新しいデジタル機器を導入することに対して補助金を給付するということが多く見られました。

僕らはブルーレポートなどで、その道具をどう利活用するのか考えて伴走してくれる人をセットで提供しないとうまくいかない、ということをお伝えしています。

むしろ伴走してくれる人こそが重要で、中小企業と二人三脚で道具を使いながら経営をアップデートしていくことが、これからの変化が激しい時代では特に必要なんです。

そのようなことをお伝えしつづけ、ここ数年でようやく「モノ」以外の部分に対する補助金、「ヒト」に対する助成金制度も設けられるようになった(※4)ので、我々の言っていることが少しずつ届いてきたのかな、と思っています。

※4 新型コロナウィルスの影響による社会変革に対応するため、新分野の展開、あるいは事業の再編などを試みる中小企業を支援する「事業再構築補助金」(2021年~)や、働き方改革、インボイスなどによって変更される制度に対応するため、新しいサービスを開発したり生産プロセスを改善したりする中小企業を支援する「ものづくり・商業・サービス生産性向上促進補助金」(2020年~)など、DXのサポートを目的に「専門家経費」が補助の対象となる制度も増えてきた。

新入職員が最初に覚える仕事はFAXの操作?

平良 学さん

―世界的に見て、日本のGDXの進み具合はどのくらいなのでしょうか?

平良さん:正直なところ、遅れていると思います。
コロナ禍でも、印鑑が押印された紙書類しか受けつけられないということで、ハンコを押すためだけに出社せざるをえないケースがあり、話題になりましたよね。

地方へ行くと、未だにFAXを利用している自治体も少なくありません。
「地域の優秀な若者が入職して、最初に覚える仕事はFAXの操作」なんてこともいわれています。

若い職員を集めて学生時代にFAXを使ったことがあるかどうか聞いてみると、「一度もありません」って答えられるんですよね。
なのに社会人になったら使い方を覚えなくてはいけない、このギャップは深刻だと考えています。

でもコロナ時代を経て、経営者の方々がZoomやTeamsといったツールを用いてリモートでつながるということに慣れることができたのはよかったのではないかと思います。

―最近では、業務上出社が必要のない職種でも出社体制に戻すといった企業が増えており、せっかく慣れたデジタルツールを手放すような状況になっていくのではないかという懸念もあるような気がします。

平良さん:ポイントはデジタル、アナログと分けずにハイブリッドに取り入れていくことだと思います。

すべてリモートで済ませる必要はないです。
やはり人がFace to Faceで対面するということには、付帯する情報があったり、科学変化も起きたりするものなので。

もちろんデジタルをベースにした社会であることは前提として、そのうえでマーケットがいろいろと変革していくなかで自社はどうしていくのか、しっかり経営者が考えていくべきだと思います。

そのときにやはり、さまざまな専門家に伴走してもらうことが重要なのではないでしょうか。
一番避けたいのは経営者が専門家に対して「考えといて」と丸投げしてしまうこと。

それでは自社経営でなくなってしまうので、自身の経営のありたい姿は自身でしっかり考えたうえで、専門家にはあくまでも伴走していただき、あらゆる手法をどうハイブリッドに取り入れていくかを考えていくべきだと思います。

そしてその費用に関しては、もっと行政の後押しを活用していくのがベストでしょうね。

重要なのは自社の経営が可視化できているかどうか

DXについては中小企業経営者の約半数が「取り組めていない」と回答したという実態調査も拝見しましたが、これについても、やはり情報をいち早くキャッチアップして専門的な知識を持った方に伴走していただくというのがソリューションになるのでしょうか?

平良さん:先ほど、“DX”という言葉がなく“IT”という言葉で語られていたときから情報通信について見つめつづけてきたと言いましたが、ネーミングが変わっても本質的なところは変わっていないんですよね。

それは、自社の経営がきちんと可視化できているかどうかがポイントになるということです。

なにかを取り入れようとしたときに、そもそも現状を可視化できていないと、どこをどういうふうに変えていけばいいのかわからないですよね。

でも中小企業の経営者とお話ししていて思うのは、経営はよく、ヒト・モノ・カネ・時間・情報の5大リソースで成り立つといわれるものの、現状はあまりこれらを見ずに、勘で動いて「出たとこ勝負!」という経営をされている方が非常に多いということです。
特にお金まわりが見えていない方が多いのではないかと思います。

たとえば、コロナ禍で政府は中小企業を支援するためにゼロゼロ融資(※5)を始めましたが、本来であれば借りたお金と自分たちで稼いだお金はセパレートして経営をしていかなくてはいけないのに、一緒になってしまっているということもあるようです。

※5 ゼロゼロ融資:新型コロナウィルス蔓延の影響で売り上げが落ち込んでしまった企業に対して、実質無利子・無担保で融資する仕組みのこと(2020年3月~2022年9月)。「無利子無担保融資」や「新型コロナウイルス感染症特別貸付」とも呼ばれる。

平良さん:債務超過の企業はおそらく10%~20%ほど増えているのではないでしょうか。
もちろん政府もそこまで予算がないので、このあとコロナ禍のようにどんどん融資するというようにはいかないと思います。

なので、自社の経営をしっかり可視化できていて、融資を受けた猶予期間内に自分たちで稼ぐ力をつけていかないと、中小企業の中でも取捨選択をされて、マーケットからドロップアウトしてしまうことになると考えられます。

それを物語るように、政府側も電帳法(※6)やインボイス制度を導入させることで、会計のデジタル化を推し進めようとしていますが、現場を見ると、一番後押ししなくてはいけないはずの税理士が対応していないなど、停滞している現状があるんですよね……。

※6 電帳法:電子帳簿保存法のこと。各税法で保存が義務づけられている帳簿・書類の電子データ保存を可能とする法律。1998年7月施行、2022年改正。電子取引における電子データ保存義務化は、2023年12月31日まで猶予期間が設けられている。

10年後の中小企業にとっての「あたりまえ」とは

平良 学さん

―株式会社フォーバルには「『新しいあたりまえ』で新しい世界を創る」という理念がありますが、これからの10年後、中小企業にとってどういったことが「新しいあたりまえ」になっていると考えられるでしょうか?

平良さん:先ほどから申し上げているような「経営を可視化する」ということは当たり前になっているでしょうね。
ヒト・モノ・カネ・時間・情報がきちんと見えているうえで、経営者はいつでも意思決定ができるようになると思います。

僕らは「計器飛行(※7)」といっていますが、数値がきちんと見えている状態で、企業はマーケットの変化に対応していかなくてはいけません。

※7 飛行機が飛行する際には、目視で行う「有視界飛行」と現状をモニタリングしている計器を確認しながら行う「計器飛行」の2種類があり、しばしばビジネスの場でも、客観的な計器を作って現状を把握することが求められることから経営を計器飛行になぞらえられる。

平良さん:消費者のニーズ、またはマーケットがどういう価値観を持っているのか、こういったことが可視化されている状態で経営を行うことが当たり前になってきます。

また、気候変動をふくめた環境課題に配慮した経営というのも、これからどんどん当たり前になり、配慮しない企業は、マーケットのドレスコードからはじかれるようになると思います。

そのため、大手だけでなく中小企業もDXとGXのどちらも意識して経営するというのが、ここ10年くらいではもっとも必要になるのではないでしょうか。

「GDXリサーチ研究所アワード」の開催も検討

―最後に、今後の展望についてお伺いできますか?

平良さん:今年が初年度になる、立ち上げて間もない研究所なので、ブルーレポートを自治体、中小企業の経営者の方々にまず見ていただいて、たとえば同じ境遇の経営者でも異なる視点や考え方があるんだ、と参考にしていただけるようなものにどんどんブラッシュアップさせていきたいと思っています。

それと、ブルーレポートを経営に活かして、さまざまな手法を試みてくださった方々を表彰できるような「GDXリサーチ研究所アワード(仮)」といったイベントを実施し、中小企業経営の道しるべになるような方々を輩出していければ、と考えています。

―今後その賞が中小企業で働く人々にとってひとつの目標になりそうです。

平良さん:やはり人って、なかなかイメージできないものに向かって進むのは難しいものだと思うので、具体的なロールモデルになるような方をそれぞれの段階ごと、ポジションごとに表彰して、スポットを当てていきたいですね。

GXを進めるにはDXも欠かせない

オフィスからの景色

先日フォーバル GDXリサーチ研究所が発表した「中小企業のGXに関する実態調査」によると、GX推進部門やプロジェクトを設置している中小企業は約4%のみ、しかもDXは約半数が取り組めている一方で、GXは4人に1人しか取り組めていないということがわかりました。

2050年カーボンニュートラルに向け、脱炭素に取り組む企業も増えてきていますが、同調査によると、中小企業経営者の9割以上がGXについて「よく知らない」と回答しているそうです。

たしかに一口に「グリーントランスフォーメーション」といわれても、具体的になにを行えばいいのか思いつかないかもしれません。そして人は、よくわからないことに対して消極的であるものです。

今回の取材で平良さんがおっしゃっていたように、中小企業の経営者というと、管理する立場でありながらプレイヤーとしての側面も求められることが多々あり、そうなるとなおさらリソース的にも新しい分野に取り組むということが難しくなるでしょう。

そこでまずは現状を可視化して理解することが重要といえます。そして可視化するには、おそらくデジタルツールが必要になるため、DXも推進する必要性が強まります。

環境に配慮した経営は10年後、中小企業にとって新しい当たり前になっているというお話がありましたが、これを本当に常態化させるためにはDXが欠かせません。

身近な例を挙げてみても、ペーパーレス化はDX、GXどちらも推進することになりますし、テレワークもCO2を排出する機会を減少させると捉えれば、やはりどちらも推進することになります。

つまりGXに注力するならDXにも目を向けなくてはいけないということ。フォーバル GDXリサーチ研究所がこの2つをまとめて「GDX」と称するのは、併せて同時に取り組むことで企業はより成長できると、長い歴史のなかで予測できていたためでしょう。

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この記事を書いた人

浦田みなみ
元某ライフスタイルメディア編集長。2011年小説『空のつくりかた』刊行。モットーは「人に甘く、自分にも甘く」。自分を甘やかし続けた結果、コンプレックスだった声を克服し、調子に乗ってPodcastを始めました。BIG LOVE……

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