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シェアリングエコノミーとは?メリットや事例も含めてわかりやすく解説

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近年、人々のライフスタイルが多様化し、通信技術などが向上するにつれ、消費者の価値観にも変化が見られるようになりました。消費スタイルの変容としてとくに顕著なのは、「モノを所有する」という意識が薄まりつつある点でしょう。

従来、モノやサービスは「購入して自分のものにする」ことがスタンダードとされていました。ところが現在では、サブスクリプションやシェアリングサービスといったモデルが普及し、「必要な時に、必要なモノを利用する」というスタイルが広まっているのです。不動産やモビリティといった生活手段から、書籍や映像作品といった趣味嗜好の分野まで、多くの資産が「所有」ではなく「共有」の対象となりつつあります。

こうした変化のなか、資産を共有することで、関係する経済主体にさまざまなメリットをもたらす「シェアリングエコノミー」が注目されるようになっています。この記事では、シェアリングエコノミーの具体例を紹介しつつ、その概要をわかりやすく解説していきます。

シェアリングエコノミーとは

シェアリングエコノミー(Sharing Economy)は、日本語で「共有経済」と訳される言葉です。資産を分かち合うことで成立するビジネス全般を指しますが、使用される文脈によって包含する範囲が異なることがあります。

狭義には、個人が仲介業者などを通じて「所有しているモノを使っていない間に貸し出す」ことで収入を得るビジネスモデルを指しています。カーシェアリングや民泊など、一般的に認知される「資産のシェアモデル」はこれに該当するといえるでしょう。

広義には、「モノやサービスを共同で利活用するビジネスモデル」を包括する言葉です。たとえば金融分野でのクラウドファンディングや、個人の技能をサービスとして取り引きするスキルマーケットなども広義のシェアリングエコノミーにあたります。

なお、総務省による定義づけにおいては、シェアリングエコノミーは「個人が保有する遊休資産(スキルのような無形のものも含む)の貸出しを仲介するサービス」とされています。

(引用:総務省「平成27年版 情報通信白書|シェアリング・エコノミーとは」)

総じて、シェアリングエコノミーは「アクティブでない状態の資産やスキルを有効に活用するために、一時的な利用にモノやサービスを供するビジネスモデル」を指す言葉だといえるでしょう。

シェアリングエコノミーの市場規模

シェアリングエコノミーはさまざまな分野でプラットフォームが構築・整備されており、年々市場規模も拡大傾向にあります。「一般社団法人シェアリングエコノミー協会」の調査によれば、2021年度の日本国内における市場規模は2兆4,198億円にも上ったとのことです。さらに同調査では、2030年度に14兆円以上の規模へと拡大していく予測も示されています。

(参照:一般社団法人シェアリングエコノミー協会「【Press release】2021年、日本のシェアリングエコノミー市場規模が、過去最高の2兆4,198億円を記録。2030年度には「14兆2,799億円」に拡大予測。」)

世界的な市場規模も大幅な飛躍が見込まれており、たとえばイギリスの調査機関PwCの調査では、2025年におけるシェアリングエコノミーの収益機会が全世界で3,350 億ドルに上るとの予測が示されました。これは従来のレンタル事業全体と同等の規模とされており、大きなビジネスチャンスが潜在していることを示す結果だといえるでしょう。

(参照:PwC Japanグループ「シェアリングエコノミー ‐ コンシューマーインテリジェンスシリーズ」)

シェアリングエコノミーの領域と事例

広義のシェアリングエコノミーが包含する領域は幅広く、「どこまでがシェアリングエコノミーに該当するのか」という区分けはメディアなどによって異なることがあります。先の「一般社団法人シェアリングエコノミー協会」による分類では、「Space(空間)」「Skill(技能)」「Mobility(移動手段)」「Money(お金)」「Goods(モノ)」の5つがシェアリングエコノミーの類型として提示されています。

以下ではこの区分に従い、それぞれの領域における事例を紹介していきます。

Space(空間)に関するシェアリングエコノミー

不動産はその運用において、利用されない期間や時間帯が多くなりやすい一方で、権利上・法律上の問題から「ニーズに合わせて利用することが難しい」という性質がありました。

このミスマッチを解消するにあたって、アメリカ合衆国発の「Airbnb(エアビーアンドピー)」は、空き部屋を持つホストと部屋を借りたいユーザーとをマッチングさせるプラットフォームを構築。自宅の空き部屋を観光客の宿泊などに提供できる環境を整備し、シェアリングエコノミーの先駆けとなりました。

さらに、貸し会議室やコワーキングスペースなど、労働空間をシェアするサービスもシェアリングエコノミーに含まれます。たとえば「株式会社スペースマーケット」のように、ワークスペースのほか古民家やジム、撮影スタジオなど個性的な貸し出しスペースを扱い、ビジネスから趣味まで多様な用途に応えている例も見られます。

Skill(技能)に関するシェアリングエコノミー

シェアリングエコノミーにおいては資産だけではなく、「個人のスキル」も取り引きの対象となります。プログラミングやデザインなど個人がさまざまなスキルをマーケット形式で販売する「ココナラ(運営:株式会社ココナラ)」のように、「一時的にスキルを必要としている個人」と「空き時間にスキルを提供できる個人」とをつなぐプラットフォームが代表的なモデルでしょう。

さらに、ライティングやデザインといった業務を外注したい企業と、仕事を探す個人事業主などをマッチングする「ランサーズ(運営:ランサーズ株式会社)」などもこれに含まれると考えられます。

その他、「AsMama(運営:株式会社AsMama(アズママ))」のように、子育てについてコミュニティ間で頼りあうためのプラットフォームを提供しているケースも見られます。

個人のスキルは千差万別であり、それを求めるニーズも多種多様であることから、これらを仲介するサービスも多岐にわたっているといえるでしょう。

Mobility(移動手段)に関するシェアリングエコノミー

自動車をはじめとするモビリティは、「所有」から「共有」へと消費モデルが移行している最たる分野だといえます。購入や維持に少なからず費用がかかることや、駐車場の問題などがネックとなりうることから、シェア利用の合理性が見直されているのだと考えられます。

たとえば「株式会社 DeNA SOMPO Mobility」の運営する「Anyca(エニカ)」は、個人間での自動車の貸し借りを仲介するプラットフォームです。地域ごとにさまざまなタイプの車両が貸し出しに供され、ユーザーは目的に合わせた車種を近隣エリアで見つけて借りることができます。

その他、「株式会社Luup(ループ)」は、電動キックボードや電動アシスト自転車を東京や大阪、横浜や京都といった都市部のポートから利用できるサービスを展開。スマートフォンアプリだけで手軽に移動手段が借りられる環境を整えています。

また、アメリカ合衆国発の「Uber Technologies(ウーバー・テクノロジーズ)」がライドシェアリングの分野を開拓したことをきっかけに、世界各地で「タクシーの相乗り」を可能とするサービスが展開中です。日本においても2021年11月にライドシェアリングを認める制度が整備され、今後の拡大が予想されています。

(参照:国土交通省「報道発表資料:新たにタクシーの「相乗りサービス」制度を導入します!」)

Money(お金)に関するシェアリングエコノミー

ビジネスにおいて必要となる融資を、不特定多数の出資者から募る「クラウドファンディング」も、広義のシェアリングエコノミーに含まれます。

クラウドファンディングには、出資者に利子付きで借受金を返済する「融資型」や、事業収益の配当を分配する「投資型」、支援額に応じた商品を受け取れる「購入型」、金銭的なリターンの定められていない「寄付型」などがあります。これらのいずれも、「余剰資金を経済活性化の用に供する」という意味ではシェアリングエコノミーに該当するといえるでしょう。

たとえば株式会社マクアケは、クラウドファンディングのプラットフォーム「Makuake」を展開し、事業のプロジェクトに対して融資を募る事業者と、出資者とをつなぐ場を提供しています。独創的な商品開発のプロジェクトも多く見られ、出資者にとっても「夢やロマンを応援する喜び」など、金銭を超えた価値を見出せる場となっているようです。

Goods(モノ)に関するシェアリングエコノミー

モノやサービスのシェアやレンタルを媒介するプラットフォームも、シェアリングエコノミーの一例に数えられます。

たとえば「ラクサス・テクノロジーズ株式会社」の運営する「ラクサス」は、人気のブランドバッグなどをシェアできるプラットフォームです。バッグを所有するユーザーが使っていないものをラクサスに預け、それを一時的に利用したいユーザーに貸し出すサービスを提供しています。

また、「シェアリングファクトリー(運営:株式会社Sharing Factory)」のように、企業間のシェアリングプラットフォームを展開している例も見られます。同サービスは製造業で用いる機器・設備の貸し借りに加えて、加工・製作業務を外注する際のマッチングサービスも提供しており、「Goods」と「Skill」の両面を含むシェアリングエコノミーの事例といえそうです。

シェアリングエコノミーのメリット

今後、シェアリングエコノミーの拡大は、一時的な経済動向であることを超えて、社会のあり方にも大きな影響を及ぼしていくことが予想されます。

「所有」ではなく「共有」という関係性を通じて、新たなコミュニティの形や、柔軟な働き方、資源の有効活用といったメリットが社会的にもたらされると考えられるのです。

以下では具体的に、シェアリングエコノミーの展開によって生じうる多面的なメリットについて考察していきます。

個人による経済活動の活性化

需要のあるモノやサービス、スキルを所有している個人は、これまで活用できていなかった資産や技能を使って収益をあげるチャンスが得られるようになるでしょう。シェアリングサービスを提供する事業者のプラットフォームが整備されることで、一般の個人でも簡単な手続きで参加できる環境が整ってきています。

使っていない所有物を貸し出すことはもちろん、UberEatsの配送パートナーの例にも見られるように、空き時間を有効に活用した新しい働き方も増えていくと考えられます。シェアリングエコノミーを通じて、モノやサービスだけでなく、ヒトの動きも流動的かつ柔軟になり、個々の価値観や環境に応じてワークスタイルを選択しやすくなっていくことが期待できるでしょう。

「ムダ」の削減

モノやサービスの利用者側にとっては、所有のコストを要さず、「必要なモノを必要な時に借りられる」ことが最大のメリットとなります。生活に必要な道具や、体験や思い出を特別なものにするためのサービスなど、コストを抑えつつ暮らしを充実させる一助となるでしょう。

企業間における設備や機器のシェアリングも、「あまり使わない設備を購入・維持するために多額のコストをかける」という状況を避けることにつながります。

さらに環境負荷の面でも、1つのモノを多くの利用者が最大限使う意義は大きなものです。「買ったモノを数回使って捨ててしまう」といったムダをなくしていくことは、大量生産・大量消費の構造に対するブレーキになると考えられます。

なおシェアリングエコノミーは、不特定多数による資産の利用や、遊休資産の活用による廃棄物の削減といった点で、環境に配慮した取り組みとして注目される「サーキュラーエコノミー(循環経済)」と通じる部分があります。たとえば個人間でモノの貸し借りを可能とするプラットフォームは、「1つの資源を最大限使うことにより、環境負荷を低減させる」という意味で、シェアリングエコノミーにもサーキュラーエコノミーにも該当するといえるでしょう。

「サーキュラーエコノミー」については「環境省推進の「サーキュラーエコノミー」とは?事例や先進企業も紹介します!」で詳しく解説しておりますので、あわせてご参照ください。

コミュニティの形成

モノやサービスをシェアする際には、利用者側に「誰かのものを使わせてもらう」といった意識が生じやすい傾向にあります。大切な資産を共同で利用するには、少なからず相互の信頼関係が求められるのです。

シェアリングエコノミーのこうした性質から、扱うモノやサービスによっては、金銭で成り立つ関係を超えた「シェアを通じたコミュニティ」の形成も期待できるでしょう。

たとえばAsMamaの展開する「子育てシェア」のプラットフォームにおいては、親同士が交流する機会も積極的に案内されており、子育ての不安を一人で抱え込んでしまうケースに対しても意義のある取り組みとなっています。

このように、シェアリングサービスの拡大は、ビジネスのなかでも「金銭関係を超えた人のつながり」が形成される可能性を広げていくと考えられます。ムダの削減や収益機会の増加といった面でも注目されるシェアリングエコノミーですが、「交換」と「贈与」が重なりあうような、新しい経済主体間の関係を構築することにも寄与するかもしれません。

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この記事を書いた人

鹿嶋 祥馬
大学で経済学と哲学を専攻し、高校の公民科講師を経てWEB業界へ。CMSのライティングを300件ほど手掛けたのち、第一子が生まれる直前にフリーへ転身。赤子を背負いながらのライティングに挑む。

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