最先端のWebマーケティングを発信するメディア

最先端のWebマーケティングを発信するメディア

環境省推進の「サーキュラーエコノミー」とは?事例や先進企業も紹介します!

投稿日:
SHARE
FacebookTwitterLineHatenaShare

この記事では「サーキュラーエコノミー」について紹介します。

サーキュラーエコノミーとは「廃棄物を生むこと」や「環境汚染」などの人間の経済活動に伴うマイナスの側面(負の外部性と呼ばれる)をなくすことで、人間社会や個人の成長・発展と環境への負荷を切り離そうという経済上の考え方です。

2020年から日本では「行動の10年」が掲げられ、行政や企業主導でにわかにSDGsへの関心が高まっています。その流れのひとつとして、サーキュラーエコノミーなど持続可能性の高い経済活動のあり方が模索されている最中です。

以前にも「リデュース・リユース・リサイクル」の「3R」活動に代表されるような、廃棄物を減らし、限られた資源をできるだけ長く使おうという動きはありました。しかしサーキュラーエコノミーと3R活動は、明確に区別される概念です。

今回は、サーキュラーエコノミーとはどのような思想か、3Rなどの似た概念と比べてどう違うのか、また推進している企業の事例を紹介し、その輪郭をつかみます。

サーキュラーエコノミーとは「資源循環型」の経済モデル

サーキュラーエコノミーとは「サーキュラー(circular:円環)」という言葉が表すイメージのとおり、「資源循環型」の経済モデルのことです。

専門的な定義にはさまざまなものがありますが、英国に本拠地を置き、ヨーロッパ、北米・南米、アジアの各地域でサーキュラーエコノミーの普及に務めるエレン・マッカーサー財団によれば、サーキュラーエコノミーは次の3つの原則にもとづいているとされています。

・廃棄物と環境汚染をなくす

・製品や素材を最も価値の高い状態で循環させる

・自然を再生する

The circular economy is based on three principles, driven by design:

・Eliminate waste and pollution

・Circulate products and materials (at their highest value)

・Regenerate nature

What is a circular economy?|Ellen MacArthur Foundation

また、日本のサーキュラーエコノミー普及団体である「一般社団法人サーキュラーエコノミー・ジャパン(CEJ)」は、サーキュラーエコノミーを次のように定義しています。

資源や製品を経済活動の様々な段階(生産・消費・廃棄など)で循環させることで、資源やエネルギーの消費や廃棄物発生を無くしながら、かつその循環の中で付加価値を生み出すことによって、経済成長と環境負荷低減を両立するための国際的かつ協調的取り組みです。

日本でも類似した概念として、資源や製品の循環を通して環境への負荷を低減する「循環型社会」がありますが、CIRCULAR ECONOMYでは、資源の循環利用や効率化を促進するだけでなく、「経済発展・成長と新たな雇用創出」を実現する道筋を作ろうとしている点に大きな相違があります。

About CEJ | CIRCULAR ECONOMY JAPAN | 一般社団法人サーキュラーエコノミー・ジャパン

日本の環境省が報告する「循環・循環型社会・生物多様性白書(令和3年版)」でも、「循環経済」としてサーキュラーエコノミーの概念が紹介されています。

これまでの経済活動は、「資源の採集・採掘→大量生産・大量消費→大量廃棄」という一方通行の「リニア(直線)型」が主でした。しかし世界人口の増加や技術の発展などにより、リニア型経済では資源の再生が追いつかず、いずれは枯渇してしまうことが予想されています。

一方でサーキュラーエコノミーの理念にもとづいて作られた製品は、基本的に「廃棄」という概念を持ちません。製品は一度使用されたあとも価値を失うことなく、再度使用されたり、回収して別の製品の素材として使用されたりします。

設計・デザイン段階から「循環」することを前提に作られるのが、サーキュラーエコノミーの特徴といえるでしょう。

3Rとの違い

「資源を循環させる」というと、はじめに「リデュース・リユース・リサイクル」の「3R」が思い浮かぶ人も多いのではないでしょうか。しかしサーキュラーエコノミーと3Rは似て非なる思想です。

リデュース(廃棄物の削減)、リユース(物の再利用)、リサイクル(資源の再利用)により廃棄物をできるだけ減らし、限られた資源を長持ちさせようというのが3Rの取り組みです。

廃棄物は減りますが、ゼロにはならないところがサーキュラーエコノミーとの大きな違いです。3Rはいずれ資源が尽きることが前提の、延命措置的な施策ともいえるかもしれません。

サーキュラーエコノミーは3大原則にも見られるように「自然を再生すること」も目的に含まれており、自然から搾取するだけの経済活動からの脱却を目指しています。

SDGsの中のサーキュラーエコノミー

最近話題のSDGsにおいても、サーキュラーエコノミーは重要な立ち位置を占めています。

SDGsとは「持続可能な開発目標(Sustainable Development Goals)」の略称で、17の大きなゴールと169の細かなターゲットから構成されている全世界的な目標のことです。いわゆる「エコ」的な文脈で理解されがちですが、貧困・人権・健康・福祉といった分野にも目標が設定されています。SDGsについてはこちらの記事で詳しく解説しています。

関連記事:SDGs(エスディージーズ)とは?取り組み企業としてアプローチ!

SDGsの17のターゲットの中でも「12.持続可能な消費と生産」の達成には、サーキュラーエコノミーの考え方が色濃く反映されています。

たとえば「12-2 2030年までに天然資源の持続可能な管理及び効率的な利用を達成する。」や「12-5 2030年までに、廃棄物の発生防止、削減、再生利用及び再利用により、廃棄物の発生を大幅に削減する。」などは、サーキュラーエコノミーの実現そのものといっても良いでしょう。

サーキュラーエコノミーの5分類

ビジネスコンサルティングファームのアクセンチュアは、「無駄を富に変える循環型経済」としてサーキュラーエコノミーに早期から注目しています。アクセンチュアはサーキュラーエコノミーを実現できるビジネスモデルとして、5つの類型を提案しています。

  • サーキュラー型サプライチェーン:再生可能な素材を使った製品で、環境負荷を低減する。
  • シェアリングプラットフォーム:モノや資産を不特定多数の人間で共有するためのプラットフォームづくりをする。
  • PaaS(サービスとしての製品、Product as a Service):製品を「消費」するのではなく、サービスとして「使用」する。
  • 製品寿命の延長:修理、再販、アップデートなどで1製品を長く使う
  • 回収とリサイクル:寿命を迎えた製品を企業が回収し、別製品に再生する

サーキュラーエコノミーを推進する企業の事例

従来のリニア型経済とは設計段階から大きな違いがあるだけに、すべての企業がサーキュラーエコノミーを自社製品・サービスに取り入れることは一朝一夕で達成できないでしょう。

しかし実際にサーキュラーエコノミーの理念にもとづき、製品やサービスを提供し始めている企業も存在します。本記事では3つの企業の事例を紹介します。

ナイキ

ナイキ

「ナイキ」は、アクセンチュアの5分類でいえば「サーキュラー型サプライチェーン」を構築している企業の代表例です。ナイキでは製品の原材料に循環型の資材を利用したり、一度利用された製品を廃棄せず、別製品の素材として再生させたりといった取り組みを続けています。

たとえばナイキの人気製品であるフライレザーには、従来は捨てられていた革の端材が原料の50%程度使用されています。また、型紙に合わせて布地を切り縫い上げる従来の製造方法では捨てられるだけの端材が生じてしまうため、糸から直接靴の布部分を織り上げるタイプの製品を開発し、販売しています。

参考ページ:ナイキのサステナビリティへの取り組み。Move to zero 日本

LUUP(ループ)

LUUP(ループ)

「LUUP」は電動キックボードや電動自転車を街中でレンタルできるサービス。「ポート」と呼ばれるエリアからアプリ経由で車体をレンタルすることができ、乗り終えたら好きなスポットに返却できます。利用者は乗った時間に応じて利用料を支払います。

利用者一人ひとりがキックボードや自転車を所有するのではなく、使いたいときに使いたいだけ、サービスとして製品を利用することで価値が循環する「PaaS型」の事例といえるでしょう。

参考ページ:LUUP(公式サイト)

メルカリ

メルカリ

フリーマーケットアプリ大手の「メルカリ」もサーキュラーエコノミーの一端を担うサービスです。シェアリングプラットフォームとして、不要なものやもう使わなくなったものを捨てるのではなく、他の欲しい人にゆずるという「モノの循環」を支えています。

メルカリは「メルカリ寄付」サービスの寄付先にサーキュラーエコノミー推進団体を追加するなど、フリマサービス以外の面でもサーキュラーエコノミーの普及に力を入れています。

参考ページ:メルカリ(公式サイト)

サーキュラーエコノミーの実現は「個人」にかかっている

サーキュラーエコノミーはこれからも長く世界を維持していくために有効とされている考え方です。思想の規模が大きく、国や大企業が取り組み、実現していくものだと考えられがちな面もあります。しかしパワーのある大組織がサーキュラーエコノミーを普及させようとしても、結局は一人ひとりの行動が変わらなければ根本的な変化は望めないでしょう。

大きな組織に任せるのではなく、世の中の動きに目を向けること、サーキュラーエコノミーを正しく知ること、取り組んでいる企業の製品やサービスを選ぶことなど、中小企業や個人のレベルでもやれることはあります。

新たな考え方を取り入れたり、行動を変えたりすることは「面倒くさい」かもしれません。それでも世界を変える一番の近道は、一人ひとりが変化することです。

まずは今日、サーキュラーエコノミーに取り組む企業の製品を手に取ることから始めてみてはどうでしょうか。案外、自社のサービスに取り入れられる視点が見つかるかもしれませんよ。

SHARE
FacebookTwitterLineHatenaShare

この記事を書いた人

イワタ ヨウスケ
大学時代は外国語、宗教関連の研究に従事。コーポレートサイトやWebメディアのライティング、書籍の出版に携わる。好きな動物は猫。ちゅ〜るは歌いながらあげる派。

UPDATE 更新情報

  • ALL
  • ARTICLE
  • MOVIE
  • FEATURE
  • DOCUMENT