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インプレゾンビとは?X(Twitter)に蔓延する理由や対策方法について徹底解説

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現在、SNSは社会のコミュニケーションツールとして発展し、価値観や世論の形成という面でも影響力を発揮しています。マーケティングにおいてもSNSの活用は有効とされ、企業や個人を問わず幅広い運用法が見られるようになりました。

プラットフォーム上で収益を得られるSNSも登場するなか、このところX(旧Twitter)上では、「インプレゾンビ」と呼ばれるアカウントによる投稿が問題視されています。この記事では、インプレゾンビの概要や問題点をふまえ、有効な対策方法について解説していきます。

インプレゾンビとは?

インプレゾンビとは、主にX上に見られる「閲覧数を伸ばすことのみを目的とする投稿」および「そのような投稿を繰り返すアカウント」を指す言葉です。コンテンツの表示回数を表す「インプレッション」と、ホラー作品などに登場する「ゾンビ」をかけ合わせた造語として用いられています。

インプレゾンビの典型的な手法としては、「注目度の高い他アカウントの投稿」に対し、即座に関連性の薄い内容の返信を行うことで、便乗的に閲覧数を伸ばそうとする手口が挙げられます。

その際の投稿は、絵文字や外国語、あるいは文脈を無視した定型文であるケースが多く、相手とのコミュニケーションを目的としたものではありません。このような「心が通っていない様子」に加えて、「注目度の高い投稿にこぞって群がる様子」から、ゾンビのイメージに喩えられているようです。また、インプレッション稼ぎのために「リプライ」を主な手段としている点から、「リプライゾンビ」と呼ばれることもあります。

インプレゾンビの投稿は、無内容かつ大量のアカウントによってなされることから、X上で情報収集をしている一般のユーザーにとってノイズとなり、迷惑行為として問題視されているのです。

インプレゾンビが増加する背景

「インプレゾンビ」という言葉が普及する以前にも、SNS上で閲覧数を伸ばすことを目的とする投稿は珍しくなかったといえます。しかし、とくに2023年の8月に実施されたXのプラットフォーム変更から、他者への迷惑を顧みないインプレッション稼ぎが散見されるようになりました。

このプラットフォーム変更のうち、インプレゾンビに直接的に関係するのは「広告収益分配プログラム」の導入です。同プログラムは、Xの有料サービス「X Premium(旧Twitter Blue)」に加入しているユーザーのうち、一定の条件を満たしたアカウントに対して、インプレッション数に応じて広告収益を還元することを趣旨としています。

つまりシンプルにいえば、「X上で閲覧数を伸ばせば、そのぶん収入が得られる」というシステムが導入されたのです。インプレッションを伸ばすことに直接的なメリットが生まれたことで、目先の収益を得るために、体裁を気にせず閲覧数を稼ごうとするアカウントが見られるようになったと考えられます。

インプレゾンビの行為により得られる収益は

インプレゾンビはさまざまな手法により閲覧数を稼いでいますが、他ユーザーの円滑な利用を妨げる行為によって得られる金銭的なメリットはどの程度のものなのでしょうか。広告収益分配プログラムのシステムをふまえ、考察していきます。

広告収益分配プログラムの収益構造

多くのユーザーに対して収益化のチャンスを提供している広告収益分配プログラムですが、その還元率については公式に発表されていません。ただし、インプレッション数と収益とを公表している著名なアカウントの投稿から、大まかな目安を推測することはできるでしょう。

たとえばアメリカ合衆国のアパレル企業Twin Birch(ツインバーチ)の共同創設者であるSawyer Merritt(ソーヤー・メリット)氏は、「6.5億インプレッション」に対して「6,465ドル(約96万円)」が支払われたことを明らかにしています。

上のメリット氏のケースでは、「10万インプレッションあたり1ドル」程度の還元率という計算になるでしょう。たとえば1日あたり合計100万インプレッションを獲得したとしても、得られるのは日本円にして1日1,500円ほど、月間でも5万円弱という計算です。

インプレゾンビが得る収益は限定的

先にインプレッション数と収益との関係について触れましたが、実際のところ、広告収益分配プログラムの収益は「投稿そのもののインプレッション数」から計算されるわけではありません。公式による説明では、当の投稿を通じた「広告表示回数」によって収益が算出されるものと規定されています。

(参照:X Help | Creator Ads Revenue Sharing

具体的には、自身が投稿したポストの返信欄に挿入される広告や、自身のプロフィール内の過去ポストに挟まれる広告が表示されることにより、収益につながるのだと考えられるでしょう。

さらに、Xのオーナーであるイーロン・マスク氏のポストには、収益が「認証ユーザーへの広告表示回数によって算出される」とする記載も見られます。

こうした事実からは、インプレゾンビに該当する行為によって形式的にインプレッションを稼いだとしても、広告表示につながらなければ還元率の向上は期待できないことが窺えます。

つまり多くの場合、インプレゾンビの収益はきわめて限定的であり、それだけで生活が成り立つようなものではないでしょう。しかしそれでも、とくに賃金・物価が低い国や地域においては相当の稼ぎになりうることから、日本国内の投稿に対して他言語による無関係なリプライを飛ばすなどの行為も見られるのが実情だといえます。

信用低下のデメリットは計り知れない

上述のように、インプレゾンビが得られる金銭的メリットは決して大きなものではなく、反対にその行為によって失う信用・信頼はきわめて大きいといえるでしょう。

とくに現状、インプレゾンビの投稿は一般ユーザーの使い勝手を大きく低下させており、長期的にはユーザー離れの原因となる可能性も考えられます。

ここから、形式的なインプレッション稼ぎに対しては、X運営による根本的な対策が期待されます。プラットフォームの仕様変更や、広告収益分配プログラムのアルゴリズム改善などの対策がなされれば、現状のインプレゾンビやそれに類する行為は淘汰されていくでしょう。

このように、インプレゾンビによって得られる金銭的メリットは大きくなく、さらに手口としても短期的に通用しているにすぎません。一方で、他アカウントによるブロックや、スパム報告の蓄積によるアカウントの凍結など、信用を失うリスクは非常に大きいといえます。

インプレゾンビに見られる手法

インプレゾンビに該当する方法の多くは、閲覧数を伸ばすためのテクニックを悪用したものであり、プラットフォームの仕様を逆手にとることで形式的にインプレッションを稼ぐ手口です。

以下に例示するように、インプレゾンビの手口のなかには単に迷惑であるばかりではなく、社会的な混乱を巻き起こすケースや、違法行為に該当するような悪質なケースもあります。個人のユーザーとしても、そうした手口に惑わされないよう注意が必要です。

閲覧数の多い投稿に対するリプライ

先に挙げたように、閲覧数の多い投稿に対して無意味なリプライを送る方法が、インプレゾンビの常套手段とされています。X上では特定の投稿を表示した際、それに対するリプライも下方に表示されるので、「多く閲覧されている投稿への返信」も閲覧数が伸びやすいのです。

もちろん、注目度の高いアカウントに対し、頻繁にリプライを送っているアカウント自体は珍しくありません。ところがインプレゾンビのリプライは、「即座に」かつ「元の投稿とは関係のない内容」を返信することを特徴としているのです。

Xのプラットフォーム上の仕様として、ある投稿につけられたリプライは、投稿時間が早いほど上位に表示されやすく、他ユーザーの目に留まる時間も長くなる傾向にあります。またX Premiumアカウントによる投稿は優先的に表示されるため、とにかくスピードだけを重視した「元の投稿とは無関係な文面」が上位に表示されてしまうケースもあるのが実情です。

さらに、閲覧数の急増している投稿に対して自動的にリプライを送る「bot(ボット)」の存在も指摘されており、返信欄が元投稿とは異なる言語や絵文字などで埋められてしまっている例も見られます。

トレンド入りしているハッシュタグの大量記載

ハッシュタグの活用は、一般的にもSNS上でインプレッションを増やすテクニックとして頻用されています。とくにX上では、トレンド入りしているハッシュタグについて検索するユーザーも多く、うまく活用することで自身の投稿を多くの人の目に届けられるのです。

この際、実際にハッシュタグに関連する内容を投稿していれば何ら問題はなく、むしろ推奨される使い方だといえます。しかしインプレゾンビに該当するケースでは、「とにかくトレンド上位のハッシュタグを羅列する」「ハッシュタグとまったく関係のない扇情的な文面や画像で気を引く」といった手法が多く用いられています。

こうしたハッシュタグの濫用は、現在話題になっている事柄について知りたいユーザーにとってのノイズとなり、利用上のストレスにつながっています。

虚偽情報の拡散

Xはきわめて拡散性の高いプラットフォームであり、センセーショナルな情報や、ショッキングな情報などが瞬く間に広まっていくケースが多く見られます。インプレゾンビのなかには、このように「人の心を大きく揺さぶるような情報」をでっち上げ、デマによって閲覧数を伸ばそうとするアカウントも珍しくありません。

とくに緊急性の高い情報や、他者の善意に訴えかける情報などが虚偽である場合には、社会に対して大きな迷惑を及ぼすことがあります。2024年1月に起きた能登半島地震の際には、救援を呼びかける虚偽のツイートが拡散され、大きな混乱を招くケースも見られました。

(参照:時事ドットコム | 架空住所から「たすけて」◆救助要請コピペ、Xの仕様変更も背景?

こうした虚偽情報の拡散は、人の生命や財産に危害を及ぼしかねない行為であり、社会的に強く批判されています。

他アカウントによる投稿の利用

注目されている他アカウントの投稿を、あたかも自分のオリジナルであるかのように投稿し、インプレッションを稼ぐ行為も多く見られます。以前より「パクツイ(ツイートをパクる=盗む)」というスラングで問題視されてきた行為であり、広告収益分配プログラム開始以降も横行している手口です。

文面や画像・動画をそのまま使い回す剽窃から、小さな編集を加える改変まで、バリエーションはさまざまですが、いずれも著作権法に違反する可能性のある悪質な行為として位置づけられるでしょう。

インプレゾンビへの対策方法

現在、インプレゾンビの存在は多くのXユーザーにとって利用上のストレスとなっており、運営による抜本的な対策が求められています。

今後、広告収益分配プログラムのアルゴリズムが改善されれば、インプレッション稼ぎのみを目的とする無内容な投稿は淘汰されていくと期待されます。しかし現状のところ、インプレゾンビの勢力に衰えは見られず、ユーザー各自による対策が必要とされる状況です。

対象アカウントのブロック

まず考えられる対策は、インプレゾンビに該当する行為を見かけ次第、都度そのアカウントをブロックしていく方法です。ただ、方法として確実ではあるものの、地道な作業が必要とされ、イタチごっこになってしまう面もあるでしょう。

実際のブロック方法は、該当ポストの右上に表示される「…」のアイコンから、「○○さんをブロック」を選択するのみです。それ以降、そのアカウントのポストはタイムラインや検索結果に表示されなくなります。

なお、対象となるアカウントが自身とフォロー関係にある場合には、ブロックすることで双方のフォローが強制的に解除されます。フォローを解除させずに投稿を非表示にしたい場合には「ミュート」機能を用いるとよいでしょう。

対象ポストをスパム報告

インプレゾンビと思われるアカウントに対し、一般ユーザーからのスパム報告が蓄積すれば、運営によるアカウント停止など、強制的な措置につながる可能性があります。

個人のユーザーにとって即効性のある方法ではありませんが、報告の蓄積により強い是正効果が期待できるので、明確な迷惑行為については積極的に報告していきたいところです。

スパム報告の方法は、対象となるポストの右上に表示される「…」のアイコンから、「ポストを報告」を選び、表示されるカテゴリのなかから該当するものを選択して送信します。インプレゾンビによる行為は多くの場合、「スパム」のカテゴリに該当するでしょう。

スパム報告と同時に、対象アカウントをブロックまたはミュートすることも可能です。ブロックのみ、ミュートのみの場合と手間はほとんど変わりませんので、スパム報告とブロックをセットで実施するとよいかもしれません。

ブラウザ拡張機能を利用

主にWebブラウザ上からXを利用している場合には、ブラウザに拡張機能をインストールする方法もあります。ただし現状のところ、インプレゾンビを自動的に判別して非表示にするような機能は実現が難しく、部分的な対策に留まるものが多いといえます。

Chromeブラウザの拡張機能としては、XのUIや表示方法を自分好みにカスタマイズする「Control Panel for Twitter」などが有効に機能しうるでしょう。インプレゾンビに特化した拡張機能ではないものの、認証済みユーザーによるリプライを非表示にしたり、サイドバーのトレンド欄を非表示にしたりと、ニーズに応じて設定をカスタマイズ可能です。

その他、インプレゾンビ対策として開発されたChrome拡張機能も見られますが、現段階では公式のChromeウェブストアに登録されておらず、インストールおよび使用は自己責任で実施する必要があります。

自身の返信欄に対するインプレゾンビの投稿を防ぐには

自身の返信欄にインプレゾンビと思われる投稿が見られる場合には、コメント欄を一時的に封鎖する方法が有効です。

インプレゾンビは「投稿から短時間で閲覧数を伸ばしているポスト」に対してリプライを送る傾向にあるので、閲覧数が大きく変動する初動時のみコメント欄を封鎖し、必要であればその後にコメント欄を開放する、という対策が効果的だといえます。

リプライを受け付ける範囲については、投稿時に設定できるほか、投稿後に自身のポストにある「…」のアイコンから「返信できるユーザーを変更」を選択し設定することも可能です。

まとめ

インプレゾンビはXのプラットフォームの仕様を悪用し、形式的にインプレッションを伸ばすことで収益を得ようとする行為であり、Xに蔓延する迷惑行為として問題視されています。

SNSにおいて閲覧数を伸ばそうとする行為そのものは、認知拡大やブランディングなどの目的からして不可欠なものでしょう。しかし、インプレゾンビに該当する行為に共通しているのは「無内容」で「閲覧数のみを目的としている」という点です。

こうした性質から、インプレゾンビは多くのユーザーにとってストレスとなり、場合によっては大きな社会的損失につながるケースも見られます。発端となった広告収益分配プログラムのアルゴリズム改善など、X運営による根本的な対策が求められますが、2024年2月の時点では、インプレゾンビが蔓延する状況が続いているといえます。

現状では個人による対策が求められる一方、さまざまな手口を網羅的に防ぐことは難しく、個別的にブロックやスパム報告などの対応をしていくほかない状況です。使用環境に合わせてブラウザ拡張機能を導入するなど、可能な範囲で対策を講じていきましょう。

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この記事を書いた人

鹿嶋 祥馬
大学で経済学と哲学を専攻し、高校の公民科講師を経てWEB業界へ。CMSのライティングを300件ほど手掛けたのち、第一子が生まれる直前にフリーへ転身。赤子を背負いながらのライティングに挑む。

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