
ヘッドレスCMSとは?従来のCMSとの違いやメリット・デメリットを解説
CMSにはいろいろな種類がありますが、2018年以降に注目されているのが「ヘッドレスCMS」というものです。聞き慣れない言葉で、導入するのに躊躇する人もいるでしょう。
そこで本記事では、ヘッドレスCMSとは何か、従来のCMSとの違いを分かりやすく解説します。ヘッドレスCMSのメリット・デメリットや、代表的なヘッドレスCMSも紹介しているので、ぜひ参考にしてください。
目次
ヘッドレスCMSとは

ヘッドレスCMSとは、「フロントエンド(ユーザーが見る表示画面)」を持たないCMSのことです。 コンテンツの管理はバックエンド(データや管理画面側)で行い、APIという仕組みを使ってWebサイトやアプリなどに表示させる仕組みとなります。
フロントエンドとバックエンドが分かれているため、デザインの自由度が高く、スピードやセキュリティ面でもメリットがあります。 一方で、APIや開発の知識が必要になるため、ある程度スキルのある人向けのCMSと言えます。
ヘッドレスCMSと従来のCMSとの違い

WordPressのような従来のCMSは、表示部分(フロントエンド)と管理部分(バックエンド)が一体型になっています。 それに対してヘッドレスCMSは、管理と表示を分けてAPIで連携させる仕組みです。
構造の違いから、使い方や強みも大きく変わってきます。 ここでは、構造・出力先・自由度・安全性など、両者の違いをわかりやすく見ていきましょう。
構造の違い
従来のCMSは、1つのシステムの中で記事作成・管理・表示まで完結します。書いた内容がそのままテンプレートに反映される仕組みです。
ヘッドレスCMSは、コンテンツの管理と表示を別々に扱います。管理側はデータを持ち、フロント側がそれをAPI経由で受け取って表示します。設計が分かれているので、柔軟な構築が可能です。
出力先の自由度の違い
従来のCMSは、主にWebサイトに向けて表示することが前提です。スマホアプリやIoT機器に展開するには、別の手間がかかります。
ヘッドレスCMSは、API経由で複数の出力先に対応できます。Webはもちろん、アプリやデジタルサイネージにも、同じコンテンツを使いまわせます。
フロントエンドの開発自由度の違い
従来のCMSでは、あらかじめ決まったテンプレートやテーマを使ってサイトを作ります。細かいカスタマイズには制限があることもあります。
ヘッドレスCMSでは、表示部分は自分で自由に作れます。ReactやVue.jsなどの最新技術も使えるので、デザインや動きにこだわったサイトが作りやすくなります。
セキュリティとパフォーマンスの違い
従来のCMSは、管理画面やデータベースがWebサイトと同じ場所にあるため、攻撃の対象になりやすい面があります。更新やアクセスが増えると、表示が遅くなることもあります。
ヘッドレスCMSは、表示側と管理側が分かれているため、公開サイトに管理画面が存在しません。API経由で静的データとして配信できるため、表示も速くセキュリティ面も安心です。
運用と管理の違い
従来のCMSは、ブラウザから直感的に操作できることが多く、記事の追加や修正も簡単です。ノーコードでも扱いやすく、初心者にも向いています。
ヘッドレスCMSは、管理と表示が分かれているぶん、設定や運用には少し知識が必要です。エンジニアの協力があると、よりスムーズに活用できます。
ヘッドレスCMSのメリット

従来のCMSとの違いが分かったところで、ヘッドレスCMSのメリットを紹介します。
- アプリやWebに一括対応
- デザインを自由に作れる
- ページ表示速度が速い
- セキュリティに強い
- 機能追加も柔軟にできる
それぞれのメリットについて見ていきましょう。
アプリやWebに一括対応
ヘッドレスCMSは、コンテンツを「API」という仕組みで外部に送ることができます。これにより、Webサイトだけでなく、スマホアプリやデジタルサイネージなどにも同じ内容を表示できます。
たとえば「お知らせ情報」を一度登録すれば、Webにもアプリにも自動で反映されます。管理の手間を減らし、情報を一括で発信したい企業にとって便利です。
デザインを自由に作れる
従来のCMSでは、あらかじめ決まったテンプレートの中でデザインを組み立てることが多く、思い通りのレイアウトにしづらいこともあります。
ヘッドレスCMSは、フロントエンドが完全に分かれているので、HTMLやCSS、Reactなどを使って、自由に画面をデザインできます。オリジナリティのあるサイトを作りたい人にぴったりです。
ページ表示速度が速い
ヘッドレスCMSでは、コンテンツをあらかじめ静的なデータにして配信できる場合があります。サーバーの処理を減らせるため、ページの表示がとても速くなります。
表示スピードが速いと、ユーザーの離脱を防げるだけでなく、SEO対策としても有利になります。とくにスマホ利用者の多いサイトには大きなメリットです。
セキュリティに強い
従来のCMSは、管理画面やデータベースがWebサイトと一体になっているため、不正アクセスのリスクが高くなりがちです。
ヘッドレスCMSは、表示部分と管理部分が分かれているので、公開側には管理画面が存在しません。攻撃される可能性が低く、セキュリティ面でも安心です。
機能追加も柔軟にできる
ヘッドレスCMSは、「フロントエンドが自由」「APIで連携できる」という特徴があるため、後から必要な機能を追加しやすい構造になっています。
たとえば決済機能を加えたり、別の外部サービスと連携したりなど、柔軟に拡張が可能です。サイトを育てながら成長させたい企業に向いています。
ヘッドレスCMSのデメリット

ヘッドレスCMSには、以下のようなデメリットも存在します。
- APIの専門知識が必要
- 初期コストがかかる
- ノーコードでは使いにくい
- 更新が逆に手間になるケースがある
- 日本語サポートがないCMSもある
それぞれのデメリットについてもう少し解説していきます。
APIの専門知識が必要
ヘッドレスCMSでは、コンテンツを表示するために「API」という仕組みを使います。APIとは、データをやり取りするための“橋渡し”のようなものです。
このAPIを正しく使うには、プログラムの知識が必要になります。初心者が一人で使うにはややハードルが高く、エンジニアのサポートがあると安心です。
初期コストがかかる
ヘッドレスCMSは自由度が高いぶん、導入時に開発や設計の工数が必要です。最初から使えるテーマや機能が少ないため、構築に時間と費用がかかることがあります。
とくにデザインやシステムをゼロから作る場合は、従来のCMSよりもコストが上がりやすいです。長期的に見るとメリットもありますが、導入時はしっかり計画しておくことが大切です。
ノーコードでは使いにくい
従来のCMSでは、画面上でドラッグ&ドロップしたり、テンプレートを選んだりするだけでページが作れるものも多くあります。
ヘッドレスCMSは、管理画面ではコンテンツしか扱えず、デザインや表示は自分で作る必要があります。コードを書かずに操作したい人にとっては扱いづらく感じるかもしれません。
更新が逆に手間になるケースがある
ヘッドレスCMSは「フロントエンド(表示)」と「バックエンド(管理)」が分かれているため、表示側を更新するときに毎回コードを書き換える必要が出ることもあります。
たとえば、見出しの大きさやボタンの位置など、小さな修正でも開発者に依頼する必要がある場合があります。内容の更新だけでなく、表示方法まで変えたい場合は注意が必要です。
日本語サポートがないCMSもある
ヘッドレスCMSは海外製のものが多く、管理画面やサポートがすべて英語のケースも珍しくありません。チュートリアルやマニュアルも英語のみということがあります。
英語が苦手な場合や、日本語でのサポートが必要な企業には使いにくさを感じる可能性があります。国内製のCMSや、日本語対応の有無を事前にチェックしておくと安心です。
代表的なヘッドレスCMS
ここでは、代表的なヘッドレスCMSを5つ紹介します。CMSによって特徴が異なるので、自社にあったものを選択しましょう。
Contentful
公式:Contentful
Contentful(コンテントフル)は、ヘッドレスCMSの先駆けとなる存在です。2013年にドイツで開発され、今現在もSpotifyなどの大企業で使われているほど有名なCMSとなります。クラウドサービスですが、無料プランも用意されています。とりあえず、どんなCMSか触ってみたいという人にも向いているでしょう。
管理画面で作成したコンテンツをAPIで柔軟に出力できるのが魅力です。項目ごとにフィールドを細かく設定でき、Webサイトやアプリ、デジタルサイネージなど、さまざまな媒体に同じ情報を一括配信できます。デベロッパー向けのドキュメントも充実しており、開発チームでの運用にも適しています。ただし、日本語対応はしていません。
Strapi
公式:Strapi
Strapi(ストラピ)は、誰でも無料で使えるオープンソース型のヘッドレスCMSです。Node.jsがインストールされているパソコンであれば、ローカル環境でも使用できます。
コンテンツの作成・管理がしやすい管理画面と、柔軟なAPI設計が特徴です。REST APIとGraphQLのどちらにも対応しており、さまざまな開発スタイルに合わせて使えます。プラグインによる拡張やカスタマイズも自由で、エンジニアが自社の要件に合わせて細かく構築できるのも強みです。
Prismic
公式:Prismic
Prismic(プリズミック)は、インフラ管理も行える特殊なヘッドレスCMSです。管理画面のインターフェイスを通じて、クラウド上で操作できます。1ユーザーのみで使用する場合は、月間400万回のAPI呼び出しまで無料で使えるのも魅力です。
Prismicは、あらかじめ用意された「スライス」と呼ばれるコンポーネントを組み合わせて、コンテンツをブロックごとに作成できます。デザイナーとエンジニアが役割分担しながら、スムーズに開発を進められるでしょう。また、コンテンツのバージョン管理やスケジュール公開にも対応しているため、運用管理も効率的です。
microCMS
公式:microCMS
microCMS(マイクロ・シーエムエス)は、2019年に登場した国産のヘッドレスCMSです。「コンテンツAPI」「画像API」「マネジメントAPI」の3つのAPIを提供しており、スムーズな編集ができるようになっています。
また、プログラミング言語の縛りがないため、PHP、Ruby、Next.js、Vue.js、GO言語など好みのものを使えます。社内にいるエンジニアのスキルに合わせやすいのも特徴と言えるでしょう。
HeartCore
公式:HeartCore
HeartCore(ハートコア)は、コンテンツ管理の一元化が得意な国産CMSです。大規模サイトのような大量のコンテンツでも、瞬時に必要なものを抽出できます。
アカウントごとに編集画面をカスタマイズできるのが大きな特徴です。役職や部署、知識レベルに応じて、必要な機能のみを付与できます。ログイン直後に表示されるダッシュボードもユーザーごとに設定可能です。
ヘッドレスCMSの導入に向いている企業

以下の5つの項目に当てはまる企業であれば、ヘッドレスCMSの導入に向いています。
- Webとアプリを両方運用している
- UIやUXにこだわりたい
- サイトの表示速度を重視している
- セキュリティを強化したい
- エンジニアが社内にいる
なぜヘッドレスCMSの導入に向いているのか、もう少し見ていきましょう。
Webとアプリを両方運用している
ヘッドレスCMSは、1つのコンテンツ管理画面からWebサイトやスマホアプリ、その他のデバイスへ一括でデータを送ることができます。情報をそれぞれ別々に更新する手間が省けるのが大きな特徴です。
たとえば「新商品の情報」などを1回入力すれば、Webにもアプリにも同時に反映できます。複数チャネルを展開している企業には、効率よく情報管理できる点が大きなメリットになります。
UIやUXにこだわりたい
ヘッドレスCMSは、フロントエンド(見た目や操作性の部分)を自由に開発できる仕組みです。デザインの制約が少なく、独自性のあるインターフェースを実現しやすくなります。
見た目の印象や使いやすさ(UI/UX)を重視したサイトを作りたい場合には、テンプレートに縛られないヘッドレスCMSが適しています。ブランドイメージを大切にしたい企業に向いています。
サイトの表示速度を重視している
表示速度はユーザーの満足度やSEOにも大きく影響します。ヘッドレスCMSでは、静的なデータとして表示内容を事前に生成できるため、ページが非常に速く表示されます。
特にスマホ利用者が多いサービスや、読み込みにシビアなECサイトなどでは、このスピード感が大きな差につながります。表示速度を大事にしたい企業にとって、大きな強みとなるでしょう。
セキュリティを強化したい
従来型のCMSは、公開サイトに管理画面やログイン機能があるため、攻撃の対象になりやすいです。セキュリティ対策にも手間がかかります。
ヘッドレスCMSは、公開側と管理側を切り離して運用できます。管理画面が表に出ないため、外部からの攻撃リスクが低くなります。情報管理を重視する企業や、セキュリティ要件の厳しい業界にもおすすめです。
エンジニアが社内にいる
ヘッドレスCMSは柔軟な分、導入やカスタマイズに一定の開発スキルが必要です。API連携やフロントエンドの設計には、エンジニアの知識が活かされます。
もし社内にエンジニアがいれば、スムーズに構築・運用できます。外注に頼らずに改善を重ねられる点でも、自社開発体制を持つ企業には向いているCMSと言えます。
ヘッドレスCMSまとめ|自社に合うかどうかを見極めよう

ヘッドレスCMSは、従来のCMSとは異なる構造を持ち、柔軟性・表示速度・セキュリティなどの面で多くのメリットがあります。一方で、開発の知識が必要だったり、導入コストが高くなったりといった注意点も忘れてはいけません。
Webやアプリなど、複数チャネルでの展開を視野に入れていたり、フロントエンドを自由に設計したい場合には非常に有効な選択肢となるでしょう。社内にエンジニアがいる企業や、サイトを成長させながら運用したいチームにとって、ヘッドレスCMSは強力な武器になります。
まずは無料プランのあるCMSから試してみて、自社に合うかを見極めてみてはいかがでしょうか。
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