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「RTmetrics」の使い方マニュアル~話題のアクセス解析ツール~

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「RTmetrics(アールティーメトリックス)」というアクセス解析ツールをご存じでしょうか?

サイト上のユーザーの動線や、離脱率を分析できるアクセス解析ツールの使用は、いまやWebマーケティングを行う上で大前提となっています。Googleアナリティクスをはじめ、さまざまな解析ツールが存在していますが、「実際にどれを導入すればいいのかわからない」という方も多いでしょう。

アクセス解析の重要性はビジネスシーンだけではなく、行政機関においても認知されるところとなり、2020年8月、厚生労働省が初めて「Webマーケター」の募集を開始しました。ユーザーがほしい情報にスムーズにアクセスできるよう、サイト構築を大幅に見直す構えです。

ところで、この厚生労働省によるWebマーケターの募集要項には、 〈厚生労働省ではアクセス解析ツールとして「RTmetrics」を使用している〉という旨が記載されています。

(参照:厚生労働省「広報分析専門官の募集について」※画像赤枠部分は筆者による)

行政機関による公布の中でその名前が出たことで、RTmetricsはアクセス解析ツールとして一層の注目を集めることになりました。
この記事では、RTmetricsの機能や使い方のマニュアルについて解説し、Googleアナリティクスなど他ツールとの比較も行っていきます。

「RTmetrics」とは?

RTmetricsは、オーリック・システムズ・ジャパン株式会社の提供するアクセス解析ツールです。
多彩な解析システムを採用することで、リアルタイムかつ詳細な分析が可能となっており、実際に月間数億PVもある大規模サイトにも導入されています。
PC用サイト・スマートホン用サイトの別を問わず、また異なるサーバー上のデータについても柔軟に対応しうるソフトウェアです。

とりわけビッグデータを扱うビジネスにおいて導入される傾向にあり、大手口コミサイトやネットワーク事業者、ニュースメディアや官公庁のサイトにおいても採用事例が見られます。
それでは具体的に、RTmetricsはどのような面で評価されているのでしょう。

「RTmetrics」でできること

RTmetricsは、「ユーザーがサイト内でどのように動いているか」「どのような経路からサイトにたどり着いているか」ということを、多角的な分析手法によって導出することが可能なツールです。個々の訪問者の動きを細かく追跡でき、ユーザーの動きの因果関係を把握するための機能を揃えています。
セッション時間やコンバージョン率、流入経路や離脱までのページ遷移、ユーザーの属性など、膨大なデータを条件ごとに抽出し、「どこがボトルネックになっているのか」を浮き彫りにします。

アクセス解析ツールとして柔軟な使い方に対応するRTmetricsですが、その最大の特徴はデータの収集方式にあります。「パケットキャプチャ型」「タグ型」「ログ型」の三つの方式に対応した、ハイブリッドタイプの解析ツールなのです。

RTmetricsの主軸となる「パケットキャプチャ型」は、トラフィック上の情報をリアルタイムに取得でき、サーバーへの負荷も少ないため、月間PVが億を超えるような大規模サイトにおいても問題なく対応が可能です。
「タグ型」は「Webビーコン型」とも呼ばれ、HTMLソースにスクリプトを埋め込むことで作動します。Googleアナリティクスをはじめ多くの解析ツールに採用される方式であり、タグを貼り付けるだけで導入でき、コストも低めですが、ページ量の多いサイトではタグの貼り忘れのリスクがあるなど、大規模なサイトを解析するには注意と手間が必要です。
「ログ型」はサーバー上のアクセスログをもとにデータを解析します。HTMLを書き替える必要なく導入でき、シンプルな環境ゆえにセキュリティも維持しやすくなっていますが、ユーザーの識別方式が限定されており、再訪者の測定には不向きです。

三方式すべてにおいて、自社ドメインのサーバサイドCookieを採用した形式となっており、ビジネスにおける多様なニーズ・環境に合わせた導入が可能です。

「RTmetrics」のメリット

RTmetricsの特徴は、「リアルタイムに」「ビッグデータを」「高解像度で」分析できる点にあります。それぞれの要素について、詳しいメリットを説明していきます。

(1)リアルタイム性
サイト上の課題に対し、改善策を練ることはもちろん重要ですが、具体的なソリューションに至るには「実際の検証」が必要となります。パケットキャプチャ方式を軸とするRTmetricsは、サイトの構造を変化させた際にタグを新たに埋め込む必要がなく、またタイムラグのない解析が可能なため、検証結果のフィードバックがスピーディに得られるメリットがあります。

(2)ビッグデータへの対応
複数拠点にサーバーが設置されていたり、PV数の多さからアクセスログが膨大になったりと、企業のホームページを管理することには困難が伴います。
RTmetricsは解析対象となるサーバーの、上位スイッチにおけるトラフィックを補足するため、上位スイッチの下に複数サーバーが配されていても一元的に管理することが可能です。
整理することの難しい分散したデータを一元化することで、拠点や部署ごとに異なっていた解析の手法や基準についても共有しやすくなるでしょう。
「データをどう管理するか」という問題は、「データをどう扱うか」「データから何を読み取るか」ということと無関係ではありません。数値にもとづいて課題を発見し、改善の道を探る上で、データ管理の一元化は大きな役割を担うはずです。

(3)高解像度の情報
アクセス解析ツールを使いこなすポイントは、「データをどう読み取るか」「データをどう抽出するか」というところにあります。単純にPV数やコンバージョン率の推移だけを見ていても、具体的な改善案を導く「発見」にはつながりません。
RTmetricsは、ピックアップしたい情報に合わせた条件設定が豊富かつ容易となっています。データをセグメントごとに分類したり、特定条件を追加・除外したりといった操作が、開発レベルの知識も必要なく行えます。ピントを合わせる操作が容易にできることで、サイト上のユーザーの行動がより鮮明に浮かび上がり、課題を明確に見定めることが可能となります。

「RTmetrics」の使い方を知ろう!

RTmetricsは、Webにおけるさまざまな課題に対し、具体的数値をもとにしたPDCAサイクルの構築を可能としてくれます。
豊富なデータをどのように活かすのかはビジネスの形態により異なりますが、ここでは一般的な課題として「コンバージョン率を向上させる」ことを念頭に、RTmetricsの機能をどのように用いていくかをマニュアル化します。

流入経路を把握する

ユーザーがどのような経路からサイトにたどり着いているかを把握することで、SEOや広告が適切に機能しているかをチェックしましょう。
RTmetricsの「広告分析」は、バナー広告やオプトインメール、リスティング広告や、検索ワードなどの区分ごとに解析を行う機能です。流入元のページや検索ワードについて一覧できるため、「ページのキーワードと検索ワードが合致しているか」「広告効果が高いのはどの媒体か」など、現在の集客方法に問題がないか確認できるでしょう。

また、「パス解析」の機能を使えば、訪問者がどのような経路からそのページに行き着いたのか、またその後どのようにサイト内を動いたかが把握できます。「この語句で検索して来たユーザーは、このページに留まりやすい」「バナー広告からの流入では、サイト表層部で離脱する傾向がある」など、ユーザーの動きの因果関係を見通すことができるでしょう。

サイト内の導線を見直す

「パス解析」の機能と複合的に使いたいのが、「ホットスポット」の機能です。サイト上に配置されたリンクのうち、どれが頻繁にクリックされているのかが、サイト上に「赤い円」の形で表示されます。クリック数の多いものほど大きく表示されるため、ユーザーの動きの傾向が直感的にわかります。

さらに、ランディングページの分析機能では、ページ内の画像やキャッチ、リード文などの要素ごとに、効果を分析できるようになっています。ユーザーに響いている箇所とそうでない箇所を明確にすることが可能です。
「ユーザーがサイトをどう動いているか」「どの部分に関心を持っているか」ということが明確な数値として表されるため、導線を検証する際に有力なデータとなってくれます。

ボトルネックの特定

「離脱率分析」の機能を使えば、指定した複数ページについて、それぞれの離脱率をグラフ化することが可能です。先のホットスポットやランディングページ分析と組み合わせることで、「どのページの、どの部分でユーザーが引っかかっているか」を特定できるでしょう。

パス解析も参照しながら、「コンバージョンに至るパターン」を見出すことで、各コンテンツの配置や階層を見直したり、活かしきれていない部分について検討したりと、改善への具体策が導かれるはずです。

満足度を知る

サイトに対するユーザーの満足度は、実際に可視化できるものではありません。しかし、解析されたデータの見方次第で、指標を作ることはできるでしょう。
たとえば、「再訪問の頻度」が高いページは、それだけユーザーにとって有益な情報を提供していることになります。RTmetricsは、サーバサイドCookieへの対応により、ユーザーの再訪問に対して精度の高いデータ収集が可能となっています。

その他のアクセス解析ツールとの比較

ここまで、RTmetricsの特徴や機能、使い方についてお伝えしてきました。アクセス解析ツールには多種多様なものが存在するため、ビジネスの形態や目的、自社の環境などにより導入すべきツールは異なります。ここでは、RTmetricsとその他のアクセス解析ツールとを比較し、それぞれの特徴を紹介していきます。

Googleアナリティクスとの比較

「アクセス解析ツール」として、もっとも名前が知られているのはGoogleアナリティクスでしょう。無料ながら豊富な機能を揃えており、多くの企業によって導入されているツールです。
ユーザーの流入経路はもちろん、ページごとの離脱率や滞在時間、コンバージョン率と、「サイトのどこに問題があるか」を見定める上で必要となるデータがグラフ上で確認でき、アクセス解析ツールとしての基本的な要素が揃っています。また、Googleの有する広告データと連携し、ユーザーの年齢や性別、関心領域などについても把握できることが大きなメリットです。

一方、有料であるRTmetricsは、先に述べたように「一つひとつの情報における解像度の高さ」が特徴。データの幅広さだけではなく、要素の分類や条件の設定・除外など「どのように情報を抽出するか」という選択肢が豊富に備わっているので、必要な情報へのアクセスが容易です。

データの収集方法については、Googleアナリティクスが「タグ型」であり、トラッキングコードを埋め込むだけで導入が可能なのに対し、RTmetricsは「パケットキャプチャ型」を軸としたハイブリッド形式であり、通信負荷を気にせずリアルタイムな情報をキャッチできます。

情報の鮮度と解像度を特徴とするRTmetricsですが、導入の手間やコストがそのメリットに見合ったものなのか、自社のケースにおいて十分に検討しておきたいところです。

その他の有料ツールの紹介

有料の解析ツールとして、特徴的なものを三つピックアップし、RTmetricsと対照してみたいと思います。

(1)User Insight(ユーザーインサイト)
グラフィカルなヒートマップを特徴とする、タグ型解析ツールです。デザイン性の高いUIが採用されており、鮮やかで直感的な解析画面は「データ処理が苦手」という方にも抵抗感なく受け入れられるでしょう。

(2)Ptengine(ピーティーエンジン)
登録から利用開始までの手間が少ない、万人向けのタグ型解析ツールです。User Insight同様、ビジュアル的に見やすいUIを備えており、シンプルな操作で必要な情報を把握することができます。

(3)Adobe Analytics(アドビ アナリティクス)
Adobe社の提供するタグ型解析ツールで、高度な設定による詳細な分析が可能です。多岐にわたる計算指標や分析方法に対応し、ほしい情報を柔軟に導き出せることが特徴ですが、機能が複雑な分ツールへの熟達が必要となります。
その他のAdobeサービスと連携しながら、ホームページの制作からマーケティングまでワンストップで対応できる体制も整えています。

RTmetricsの位置づけ

上で見たように、アクセス解析ツールにもさまざまなタイプが存在し、「導入のしやすさ」「操作の簡単さ」「情報の精度」「設定の自由度」など、重視するポイントによって選ぶべきツールが異なります。
自社ドメインのサーバサイドCookieを活用するRTmetricsは、導入におけるハードルという面では決して低いとは言えません。その反面、情報の精度や柔軟性という面において強みを持つタイプのアクセス解析ツールであると言えます。
さらに、最大の特徴である「ハイブリッド型」のデータ収集方式を活かし、ビッグデータへの対応やリアルタイム性という点においても強みを持っていると言えるでしょう。

「RTmetrics」の将来性

「Webマーケティング」という概念はいまや一般的なものとなり、冒頭で述べたように厚生労働省が専属Webマーケターを募集するなど、その必要性は誰もが認めるところとなりました。
「課題」と「改善策」を、明確な数値を根拠に提示できるデータ解析のスキルは、今後一層重要性を高めていくでしょう。

解像度の高い分析を行う上で、必要なデータを適切に収集できるツールは欠かせません。現在注目を集める「RTmetrics」も、これからさらに機能を発展させていくことが見込まれます。2020年に入ってからも、AWS VPC Traffic Mirroring(トラフィックミラーリング)経由のデータに対応するアップデートや、分析用UIの改修をはじめ、製品改良に余念がありません。

膨大なデータから、改善のために必要な情報を抽出する技術は、「ツールにどれだけ習熟しているか」という要素に左右されます。5Gの時代が到来しつつある現在、ビッグデータの処理に長じたRTmetricsの機能や使い方を知っておくことで、今後さまざまなビジネスに貢献できる場面が出てくるかもしれません。

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この記事を書いた人

鹿嶋 祥馬
大学で経済学と哲学を専攻し、高校の公民科講師を経てWEB業界へ。CMSのライティングを300件ほど手掛けたのち、第一子が生まれる直前にフリーへ転身。赤子を背負いながらのライティングに挑む。

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