
ステルスマーケティングとは?違法性やリスクについて解説【ステマ規制】
2023年3月に景品表示法でステルスマーケティングの規制が開始されました。これにより、ステマに関する情報がネット上に増え始めています。ですが、消費者庁のホームページだとわかりづらいという人もいるはずです。
そこで本記事では、ステルスマーケティングとはどういうものかをわかりやすくまとめました。ステマの主な規制や、ステマに当てはまる行為と事例、企業側のリスクと回避方法まで解説しているので、ぜひ参考にしてください。
目次
ステルスマーケティング(ステマ)とは

ステルスマーケティング(以下ステマ)とは、広告・宣伝であることを隠しながら、自社に有利な情報を広めようとする行為のことを指します。
たとえば、自社に対する口コミを第三者を装って良いように自分で記載するのも、ステマに当てはまります。
店頭販売などにおいて仕込み客を用いる「サクラ行為」のように、ステマに類する手法は問題視されてきました。現在では、SNSや口コミサイトの利用者増を背景に、ネット上でのステマが横行している状況にあると言えるでしょう。
ステルスマーケティングの主な手法
ネット上やSNSにおけるステマは、主に「なりすまし型」と「利益提供型」の2つです。
なりすましは、第三者を装って自社に関する良い情報を宣伝するものです。利益提供型は、インフルエンサーなどへ報酬を支払いし、広告であることを隠して宣伝する行為となります。どちらも「広告であることを隠している」点が共通します。
ステルスマーケティングは景品表示法違反になる

2023年10月1日から「不当景品類及び不当表示防止法 第五条第三号」により、ステルスマーケティングは規制の対象となりました。
不当表示の対象となるのは、「一般消費者が事業者の表示であることを判別することが困難である表示」です。つまり、事業者の広告であるにもかかわらず、消費者側がそれを広告と判断することが難しいものが規制対象とされます。
なぜステマが規制されたのかというと、それが「広告の誇張・誇大」や「誤認」を招く可能性があるためです。 もともと広告業界では、過剰な表現や誤解を与える表示は禁止されており、ステマもこれに該当すると判断されました。
ステルスマーケティングにあたる行為
ステルスマーケティングにあたる主な行為は以下の通りです。
- 広告であることを明示せずに投稿
- 企業の依頼で書いたことを伏せる
- 報酬や提供を受けたのに開示しない
- 自社関係者が第三者を装って称賛する
- インフルエンサーに開示なしで依頼する
- やらせ口コミを大量に投稿させる
これらはいずれも、消費者に誤解を与える不当表示と判断される可能性があります。少しでも大丈夫と思っていた行為が、法令違反と見なされるケースも少なくありません。
ステルスマーケティングの実例
消費者庁がステルスマーケティングの措置命令を出した実例を2つ紹介します。
1つ目は、大正製薬が健康食品「NMN taisho」の販売促進のため、インフルエンサーにInstagramでPR投稿をさせた事例です。インフルエンサーの投稿には「#PR」などの表記がありましたが、その投稿を自社のランディングページに転載する際に広告であることを明示していなかった点が問題視されました。
2つ目は、医療法人社団祐真会が行った、Googleマップの口コミ評価のステマです。来院者に対し、ワクチン接種費用の割引を条件に高評価の口コミを投稿させたことが、やらせと判断されました。
ステルスマーケティングにおける企業側のリスク

ステルスマーケティングは、企業側にも大ダメージを与えてしまいます。主に、以下の5つのようなリスクがあることを忘れてはいけません。
- ブランドイメージが悪くなる
- 取引先・パートナーからの信用低下
- 炎上によるSNS拡散と風評被害
- 広告・広報コストの損失
- 景品表示法違反による罰則
それぞれのリスクについて、もう少し解説していきます。
ブランドイメージが悪くなる
ステマが発覚すると、企業の誠実性や透明性に疑問を持たれ、ブランドイメージが大きく損なわれます。消費者の信頼は企業活動の基盤であり、失ってしまうと商品やサービスの魅力も色あせて見えてしまいます。
一度失われた信頼を取り戻すには多大な時間とコストがかかり、他の優良なマーケティング活動にも影を落とします。「ステマをする会社」という印象は、検索結果や口コミとしてネット上に長く残り、企業の評判を引きずることになるでしょう。
取引先・パートナーからの信用低下
コンプライアンス意識の高い企業にとって、ステルスマーケティングを行っている企業は「リスクのある相手」と見なされます。信頼を基盤にしているBtoB取引では、1件の違反でもビジネス関係に大きな影響を及ぼします。
とくに上場企業や外資系企業では、取引先の不正行為が自社のイメージにも影響するため、関係解消に発展するケースもあります。悪質な場合はブラックリスト化や取引停止の判断を下されることもあるため、無視できないリスクです。
炎上によるSNS拡散と風評被害
SNS時代において、ステルスマーケティングの発覚は一瞬で「炎上」に発展します。PRであることを隠していた事実が拡散されれば、「騙された」と感じたユーザーの怒りが一気に広まり、企業アカウントへの批判が殺到するでしょう。
また、火がついた投稿はまとめサイトやニュースメディアにも取り上げられ、収拾がつかなくなります。結果として、他の製品やサービスにまで悪影響が及び、売上の低下や顧客離れにつながることも珍しくありません。
広告・広報コストの損失
ステルスマーケティングに依存した施策が失敗すれば、初期にかけた広告費や制作費が無駄になるだけでなく、その後の信頼回復に向けた広報活動にも多くのコストがかかります。風評払拭のための謝罪広告やSNS運用の見直しなども必要です。
社内では対応に追われて通常業務が停滞し、人的リソースにも負担がかかります。広報チームの疲弊やモチベーション低下も起こりやすく、組織全体へのダメージが長期化する可能性も捨てきれません。
景品表示法違反による罰則
2023年10月から、ステルスマーケティングは景品表示法により明確に規制の対象となりました。違反と判断された場合、消費者庁から措置命令や課徴金納付命令が出され、行政処分を受けることになります。
処分内容はネット上で公開され、企業名も公表されるため、社会的な信頼を大きく損なう結果となります。メディア報道やSNSで拡散されれば、企業イメージの悪化に拍車がかかり、回復には長い時間と費用を要するでしょう。
ステルスマーケティングを回避する方法

ステルスマーケティングを回避するには、広告表記のルールを守るだけでなく、社内の仕組みや確認体制も重要です。誤って違反してしまうことがないよう、日頃から意識しておきましょう。
- PRであることを明示する
- 投稿内容のルールの明確化
- ステマに該当しないか事前チェックを徹底
上記の3つは、企業がすぐに実践できる基本対策です。確実に実行することでステマによるリスクを防げます。
PRであることを明示する
ステルスマーケティングを避けるうえで最も基本かつ重要なのが、「広告・PRであることを明示する」ことです。投稿やコンテンツの冒頭に「#PR」「提供:◯◯社」などの記載があるだけで、消費者に誤解を与えるリスクを大きく減らせます。
たとえ自然な紹介風の投稿であっても、企業から報酬や提供を受けている場合は広告表示義務が生じます。SNS投稿・記事・動画など媒体を問わず、分かりやすい場所に広告表記を加えることを徹底してください。
投稿内容のルールの明確化
インフルエンサーや外部ライターにPRを依頼する際は、事前に「どこまで企業が指示を出すか」「広告表記のルールはどうするか」などの投稿ルールを明文化しておくことが重要です。
文書化されたガイドラインがあることで、依頼者・投稿者間での認識のズレを防げるでしょう。テンプレートや契約書に「広告であることの明示義務」などを盛り込み、ステマを未然に防ぐ環境づくりをしてください。
ステマに該当しないか事前チェックを徹底
施策の実施前に、ステマ防止用のチェックリストを作成しておきましょう。とくに消費者庁が示している判断基準をもとに作成しておけば、相違はないはずです。
具体的には、広告表記の有無、報酬の提供有無、投稿内容への企業関与の有無などを整理しておくのがおすすめです。実施前の確認が、最も有効なリスク回避策になります。
ステルスマーケティングに関するよくある質問

ステルスマーケティングについてのよくある質問を、ネット上から集めてみました。
- Q1.ステマと普通の口コミの違いは?
- Q2.無料提供した商品でもステマになるの?
- Q3.個人でもステマは違法になる?
- Q4.アフィリエイト広告とステマの違いは?
- Q5. 「PR」って投稿のどこに書けばいい?
それぞれの質問について、簡潔に回答していきます。
Q1.ステマと普通の口コミの違いは?
自発的な感想であれば通常の口コミですが、「報酬や商品提供を受けていて、その事実を伏せて投稿しているもの」はステマに該当します。
投稿者が企業と関係しているにもかかわらず、それを明示しない点が大きな違いです。
Q2.無料提供した商品でもステマになるの?
たとえ金銭が発生していなくても、商品やサービスの無償提供は「対価」と見なされます。
提供を受けた上で紹介する場合は、報酬の有無にかかわらず広告であることを明示する必要があります。
Q3.個人でもステマは違法になる?
場合によっては、個人でもステマと見なされる可能性があります。
とくにフォロワーが多いインフルエンサーや、企業から依頼されて投稿しているケースでは、表示義務を怠ると法的リスクを負う可能性があります。
Q4.アフィリエイト広告とステマの違いは?
アフィリエイト広告は「広告であることを開示している」点で、基本的にステマとは異なります。
ただし、開示が不十分だったり、口コミを装って書く場合はステマと判断されることもあります。「PR」「アフィリエイト広告」などの明記で事前対策しておきましょう。
Q5. 「PR」って投稿のどこに書けばいい?
投稿の冒頭や目立つ場所に記載することが原則です。
ハッシュタグの最後や本文の末尾に小さく書くだけでは、読者が広告と気づけない可能性があり、違反と判断されることがあります。
まとめ

ステルスマーケティング(ステマ)は、一見すると効果的なプロモーション手法に思えるかもしれません。しかし実際には、景品表示法違反にあたる可能性がある重大なリスクが潜んでおり、企業やブランドの信頼を一瞬で失う恐れがあります。
誤ってステマと判断されないためには、「広告であることを明示する」「投稿ルールを明文化する」「施策前にチェック体制を整える」など、日頃からの丁寧な運用とルール徹底が必要不可欠です。
知らなかったでは済まされない時代だからこそ、正しい情報発信を積み重ねて、ユーザーとの信頼関係を築いていきましょう。
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