
エンタープライズCMSとは?普通のCMSとの違いと導入すべき企業の特徴
企業のWebサイト運営において、セキュリティ対策や運用効率の向上は避けて通れない課題です。一般的なCMSでは限界があるため、エンタープライズCMSの導入を検討する企業が増えています。しかし、「本当に必要なのか」「高額な投資に見合う効果があるのか」という疑問を持つ担当者も多いでしょう。
本記事では、エンタープライズCMSとはなにかを初心者向けにわかりやすく解説しています。導入すべき企業の特徴や、普通のCMSとの違い、削減できる隠れたコストや、エンタープライズCMSの選び方はもちろん、おすすめCMS5選も紹介しています。ぜひ、導入時の参考にしてください。
目次
エンタープライズCMSとは

エンタープライズCMSとは、企業の大規模サイト運営に特化したコンテンツ管理システムです。WordPressやWixなどの一般的なCMSとは異なり、セキュリティ機能やワークフロー管理、多言語対応などの企業向け機能を標準搭載しています。
最初からWebサイトの企業利用を想定して設計されているため、個人ブログ向けのCMSを後から企業仕様にカスタマイズする手間がありません。導入コストは高めですが、長期的な運用コストや安全性を考慮すると、多くの企業にとって最適な選択肢となるでしょう。
エンタープライズCMSが必要な企業の特徴

すべての企業にエンタープライズCMSが必要というわけではありません。導入コストが高いため、自社の状況を正しく把握してから検討することが重要です。
以下の特徴に当てはまる企業は、エンタープライズCMSの導入を検討すべきでしょう。
- 大規模サイト運営でセキュリティを重視
- 複数部署・多拠点でサイト管理を行う
- 海外展開・多言語サイトを計画している
1つでも該当する場合は、将来的なリスク回避の観点から導入を検討することをおすすめします。
大規模サイト運営でセキュリティを重視
月間100万PV以上のサイトや、会員情報・決済情報を扱うサイトを運営している企業は、エンタープライズCMSが必要です。一般的なCMSではセキュリティ対策をプラグインで後付けしますが、プラグイン自体に脆弱性があるリスクが常に存在するからです。
エンタープライズCMSならセキュリティ機能が標準搭載されているため、プラグインに依存することなく安全なサイト運営ができます。情報漏洩による企業への損害を考えると、導入コストは必要経費と言えるでしょう。実際に、多くの企業サイトでWordPressの脆弱性を狙った攻撃が増加しており、セキュリティ対策の重要性は年々高まっています。
複数部署・多拠点でサイト管理を行う
営業部、マーケティング部、総務部など複数の部署がサイト更新を行う企業や、本社・支社・海外拠点でサイト管理が分散している企業には、エンタープライズCMSの導入がおすすめです。一般的なCMSでは権限管理や承認フローの設定が複雑で、運用が困難になりがちです。
エンタープライズCMSなら部署別・拠点別の権限設定や、複数段階の承認ワークフローが標準機能として利用できます。「誰が」「いつ」「何を」更新したかの履歴管理も自動化されるため、コンプライアンス対応も万全です。
海外展開・多言語サイトを計画している
海外進出を計画している企業や、既に多言語サイトを運営している企業には、エンタープライズCMSが不可欠です。一般的なCMSで多言語対応を行う場合、各言語ごとに別々のサイトを構築する必要があり、管理工数が膨大になります。
エンタープライズCMSなら一つのシステムで複数言語を一元管理できるため、コンテンツの更新や翻訳作業を効率化できます。機械翻訳機能や翻訳業者との連携機能も標準搭載されており、グローバル展開のスピードアップにも貢献するでしょう。
普通のCMSとエンタープライズCMSの違い

普通のCMSとエンタープライズCMSの違いを理解することで、自社にとって本当に必要かどうかを判断できます。単純に機能の差だけでなく、運用面やコスト面での違いも把握しておくと良いです。
- セキュリティレベルの根本的な違い
- コンプライアンス対応費用の大幅削減
- カスタマイズ自由度と保守性が非常に良い
上記の3つの観点から、両者の根本的な違いを解説します。
セキュリティレベルの根本的な違い
普通のCMSとエンタープライズCMSの最大の違いは、セキュリティへのアプローチです。
WordPressなどの一般的なCMSは、基本機能にセキュリティ対策を追加プラグインで後付けする構造になっています。プラグインは第三者が開発するため、品質にバラつきがあり、脆弱性のリスクが常に存在します。
エンタープライズCMSは開発段階からセキュリティを考慮した設計になっており、必要な機能がすべて標準搭載されています。プラグインに依存しないため、外部要因による脆弱性リスクを大幅に削減可能です。また、定期的なセキュリティアップデートもベンダーが責任を持って実施するため、安心して運用できるでしょう。
コンプライアンス対応費用の大幅削減
企業サイトの運営では、個人情報保護法やGDPR(一般データ保護規則)などの法的規制への対応が必要です。一般的なCMSでコンプライアンス対応を行う場合、専門業者への委託や追加開発が必要になり、年間数百万円の費用がかかることも珍しくありません。
エンタープライズCMSならコンプライアンス対応機能が標準搭載されているため、追加費用を大幅に削減できるでしょう。アクセスログの自動記録、データの暗号化、プライバシーポリシーの自動生成など、法的要件を満たす機能が最初から利用可能です。監査対応の工数削減効果も含めると、導入コストを短期間で回収できるケースがあります。
カスタマイズ自由度と保守性が非常に良い
一般的なCMSは柔軟性が高い反面、カスタマイズを重ねることでシステムが複雑化し、保守が困難になる傾向があります。プラグイン同士の競合や、アップデートによる機能停止などのトラブルも頻発します。
エンタープライズCMSは企業利用を前提とした設計のため、大規模なカスタマイズにも対応できる柔軟性と、長期間安定して運用できる保守性を両立しています。ベンダーの認定パートナーのみがカスタマイズを行うため、品質も保証されます。システムの寿命も長く、5~10年という長期間での利用を前提とした投資判断ができるでしょう。
エンタープライズCMS導入で削減できるコスト

エンタープライズCMSの導入を検討する際、初期費用の高さがネックになることがあります。しかし、一般的なCMSでは見えにくい「隠れたコスト」を考慮すると、長期的には大幅なコスト削減が期待できます。
以下の4つの隠れたコストを削減できることで、エンタープライズCMSの導入効果を最大化できるでしょう。
- セキュリティ事故による損失リスクの回避
- プラグイン管理・更新作業の人件費削減
- システム障害時の機会損失防止
- 法的対応・監査コストの軽減
これらのコストは企業規模が大きいほど影響が大きくなるため、慎重に検討してください。
セキュリティ事故による損失リスクの回避
情報漏洩事故が発生した場合の企業への損害は、直接的な対応費用だけでも数千万円から数億円規模になります。加えて、信用失墜による売上減少、顧客離れ、採用への悪影響など、間接的な損失は計り知れません。実際に、個人情報漏洩事故を起こした企業の株価は平均で20~30%下落するというデータもあります。
エンタープライズCMSの導入により、これらのリスクを大幅に軽減できます。仮に年間1,000万円のエンタープライズCMS運用費用がかかったとしても、一度のセキュリティ事故を防げれば十分に元が取れる計算になるでしょう。
プラグイン管理・更新作業の人件費削減
一般的なCMSでは、セキュリティ維持のために定期的なプラグイン更新が必要です。企業サイトで使用するプラグインは平均20~30個にのぼり、月1回の更新作業に2~3日を要します。システム担当者の人件費を月40万円と仮定すると、年間で約100万円のコストが発生する計算です。
エンタープライズCMSならプラグインに依存しないため、これらの作業が不要になります。システム担当者は本来の業務に集中でき、人的リソースの有効活用が可能です。外部委託している場合は、委託費用の削減効果も期待できるでしょう。
システム障害時の機会損失防止
一般的なCMSでは、プラグイン更新やサーバー負荷によるシステム障害が発生しやすく、サイトが停止するリスクがあります。ECサイトであれば1時間の停止で数百万円の売上機会を失うケースも珍しくありません。BtoBサイトでも、見込み客の離脱や問い合わせ機会の損失により、間接的な機会損失が発生します。
エンタープライズCMSは高い可用性と安定性を備えており、システム障害のリスクを最小限に抑えられます。冗長化やロードバランサーなどの機能も標準搭載されているため、ビジネス継続性の観点からも大きなメリットがあるでしょう。
法的対応・監査コストの軽減
個人情報保護法やGDPRなどの法的規制への対応は、専門知識が必要な複雑な作業です。一般的なCMSで対応する場合、法律事務所や専門コンサルタントへの委託が必要になり、年間数百万円のコストが発生します。また、監査対応のためのログ収集や文書作成作業にも相当な工数がかかります。
エンタープライズCMSはコンプライアンス機能が標準搭載されているため、これらのコストを大幅に削減可能です。自動化されたログ収集機能により、監査対応の工数も最小限に抑えられます。法的リスクの軽減効果を考慮すると、導入効果は更に高くなるでしょう。
エンタープライズCMSの選び方

エンタープライズCMSの選定では、自社の状況を正確に把握した上で、最適な製品を選ぶことが重要です。高額な投資になるため、導入後のミスマッチを避けるためにも慎重な検討が必要でしょう。
- コスト面
- 技術面
- 事業面
上記の3つの観点から総合的に判断することで、失敗のないCMS選定が可能になります。それぞれの観点で自社の状況を整理し、優先順位を明確にしてから検討を進めてください。
コスト面:初期費用vs長期運用費
エンタープライズCMSの選定では、初期費用だけでなく長期的な運用コストを含めたTCO(総所有コスト)で判断することが重要です。初期費用が安い製品でも、カスタマイズ費用やライセンス料が高額になるケースがあります。5年間の総コストで比較検討しましょう。
また、現在の一般的なCMSにかかっている隠れたコスト(セキュリティ対策費、運用工数、リスク対応費)を正確に算出することで、エンタープライズCMSの実質的なコストパフォーマンスが見えてきます。投資回収期間を明確にした上で、経営陣への提案を行うことが成功の鍵となるでしょう。
技術面:社内リソースと外部委託
エンタープライズCMSの運用には、一定の技術力が必要です。社内にシステム担当者がいる場合は運用しやすい製品を、いない場合はベンダーサポートが充実した製品を選ぶことが重要でしょう。自社の技術レベルと製品の要求水準のマッチングが、導入成功の分かれ目になります。
外部委託を前提とする場合は、信頼できるパートナー企業の存在も重要な選定要素です。製品選定と同時に、長期的な保守・運用を任せられる企業との関係構築も進めることをおすすめします。技術面での不安がある場合は、導入支援が手厚いベンダーを選ぶことが安全でしょう。
事業面:将来的な事業拡大計画
現在のニーズだけでなく、3~5年後の事業計画を考慮してCMSを選定することが重要です。海外展開、M&A、新規事業などの計画がある場合は、それらに対応できる拡張性を持った製品を選ぶ必要があります。後からシステムを変更するのは困難なため、将来の成長を見越した投資判断が必要でしょう。
また、金融機関の厳格なセキュリティや、医療機関の個人情報保護など、業界特有の要件がある場合は、それらに対応した実績を持つ製品を選ぶことが重要です。同業他社での導入事例や成功事例を参考にしながら、自社に最適な製品を見つけてください。
エンタープライズCMS導入前に確認すべき注意点

エンタープライズCMSの導入は大きな投資であり、失敗すると企業に大きな損失をもたらします。導入前に潜在的なリスクを把握し、適切な対策を講じることが成功の鍵となるでしょう。
- 導入期間と人的リソースの確保
- 既存システムとの連携可能性
- ベンダーサポート体制の評価
上記の3つの注意点を事前に確認することで、導入リスクを最小限に抑えられます。とくに初めてエンタープライズCMSを導入する企業は、これらの点を入念にチェックしてください。
導入期間と人的リソースの確保
エンタープライズCMSの導入には、一般的に6ヶ月から1年程度の期間が必要です。この間、社内のキーパーソンが継続的にプロジェクトに参加する必要があるため、通常業務との兼ね合いを十分に考慮しましょう。プロジェクト期間中の人員配置や業務分担を事前に決めておくことが重要です。
また、導入後の運用体制も並行して検討する必要があります。システム管理者の教育・訓練期間も含めて、全体のスケジュールを組み立てることが成功の秘訣でしょう。無理なスケジュールは品質低下やトラブルの原因になるため、余裕を持った計画立案をおすすめします。
既存システムとの連携可能性
企業では既にCRM(顧客関係管理)、SFA(営業支援)、基幹システムなど複数のシステムが稼働しているケースがほとんどです。新しいCMSがこれらのシステムと連携できるかどうかは、導入成功の重要な要素になります。API連携の可能性や、データ移行の複雑さを事前に評価しておきましょう。
とくに顧客データベースや在庫管理システムとの連携が必要な場合は、技術的な制約や追加開発費用が発生する可能性があります。ベンダーとの打ち合わせでは、既存システムの詳細を正確に伝え、連携方法を具体的に確認することが重要です。
ベンダーサポート体制の評価
エンタープライズCMSは長期間使用するシステムのため、ベンダーのサポート体制が導入成功の鍵を握ります。日本語対応の有無、サポート時間、レスポンス時間、技術者のスキルレベルなどを詳細に確認しましょう。海外製品の場合は、日本法人の体制や代理店のサポート能力も重要な評価ポイントです。
また、将来的なアップデート対応やセキュリティパッチの提供方針も確認が必要です。ベンダーの財務状況や事業継続性についても、可能な範囲で調査しておくことをおすすめします。長期的なパートナーシップを築けるベンダーを選ぶことが、安定したシステム運用につながるでしょう。
エンタープライズCMSおすすめ5選
市場には多数のエンタープライズCMS製品が存在しますが、それぞれ異なる特徴と強みを持っています。自社のニーズに最適な製品を選ぶために、代表的な5つの製品の特徴を比較検討してみましょう。
以下で紹介する製品は、いずれも企業での導入実績が豊富で、信頼性の高いソリューションです。それぞれの特徴を理解し、自社の要件と照らし合わせて検討してください。
Adobe Experience Manager(AEM)
Adobe Experience Manager(AEM)は、デジタルマーケティングに特化したエンタープライズCMSです。コンテンツ管理だけでなく、パーソナライゼーション機能やA/Bテスト機能も標準搭載されており、マーケティング施策の効果測定まで一元的に行えます。Adobe Creative Cloudとの連携により、デザイナーとの協業もスムーズです。
グローバル企業での導入実績が豊富で、多言語・多通貨対応も万全です。ただし、導入・運用コストが高額なため、年商数百億円規模の大企業向けと言えるでしょう。マーケティング活動を重視する企業には最適なソリューションです。
Drupal
公式:Drupal
Drupalは、オープンソースベースでありながらエンタープライズレベルの機能を提供するCMSです。政府機関や大学などでの採用実績が多く、セキュリティレベルの高さで定評があります。多言語対応機能が標準搭載されており、100以上の言語に対応可能です。
オープンソースのため初期費用を抑えられる一方、運用には高度な技術力が必要です。社内にエンジニアがいる企業や、技術力の高いパートナー企業と連携できる企業におすすめします。カスタマイズ性が非常に高く、独自の要件にも柔軟に対応できるでしょう。
Sitecore
公式:Sitecore
Sitecoreは、顧客体験の最適化に特化したデジタルエクスペリエンスプラットフォームです。CMS機能に加えて、顧客行動の分析、パーソナライゼーション、マーケティングオートメーション機能が統合されており、一元的な顧客体験管理が可能です。
BtoB企業での導入事例が多く、リード獲得から商談化までのプロセスを効率化できます。日本法人もあり、日本語サポートも充実しています。中堅から大企業まで幅広い規模の企業に適用可能で、ROIの測定もしやすいソリューションでしょう。
Movable Type
公式:Movable Type
Movable Typeは、シックス・アパートが提供する国産エンタープライズCMSです。官公庁や大手企業での導入実績が豊富で、日本の商習慣や法的要件に特化した機能を提供しています。静的サイト生成によりサイト表示速度が速く、サーバー負荷も軽減できます。
国産のため日本語サポートが充実しており、導入から運用まで安心して任せられます。比較的導入コストも抑えられているため、中堅企業でも手が届きやすい価格帯です。セキュリティ要件の厳しい業界にも対応できる信頼性の高いソリューションでしょう。
NOREN
公式:NOREN
NORENは、株式会社アシストが開発した国産エンタープライズCMSです。金融機関や官公庁での導入実績が豊富で、極めて高いセキュリティレベルを実現しています。日本の法的要件や業界規制に完全対応しており、コンプライアンス面での安心感は他の製品を大きく上回ります。
とくに金融、保険、証券などの厳格なセキュリティが要求される業界では、NORENの導入メリットが大きいでしょう。株式会社アシストの豊富な導入支援実績と組み合わせることで、単なるCMS導入を超えた業務改善効果も期待できます。国産の安心感を重視する企業には最適な選択肢です。
まとめ:エンタープライズCMS導入の成功ポイント

エンタープライズCMSの導入成功には、自社の現状と将来計画を正確に把握した上で、最適な製品を選定することが最も重要です。初期費用の高さに目を奪われがちですが、隠れたコストやリスクを含めた長期的な視点で判断しましょう。セキュリティ事故や機会損失のリスクを考慮すると、多くの企業にとって投資対効果の高い選択となるはずです。
導入を検討する際は、まず自社が本記事で紹介した「エンタープライズCMSが必要な企業の特徴」に該当するかを確認してください。該当する場合は、コスト面・技術面・事業面の3つの観点から総合的に検討し、長期的なパートナーとなるベンダーを慎重に選定することが成功への近道となるでしょう。
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