最先端のWebマーケティングを発信するメディア

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広告における「メディアミックス」とは?成功例からメリット・デメリットを学ぶ

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インターネットの普及とともに、多くの人が日常的にWeb上のサービスを利用するようになりました。さまざまなWebサービスのなかでも、現在ではSNSをはじめとした「利用率の高いプラットフォーム」が世間に定着しています。

従来のテレビや、現在のSNSのように、「多くの人が頻繁に触れるメディア」は、企業にとって自社の商品やサービスを訴求するのに適した場となります。Web上のメディアが発展することは同時に、効果的に広告を打ち出せる場が広がることを意味するでしょう。

一方で、広告媒体の多様化により、「適切な出稿先」を選ぶことが難しくなっている面もあります。テレビCMや新聞の折り込み広告、電車内の中吊り広告なども依然として影響力を持つなかで、Web広告の新たなサービスも続々と登場しており、「どれを選べばいいのかわからない」というケースも少なくありません。

今後の広告施策においては、場面やターゲットに合わせ、「媒体を使い分けていく」という視点が重要になっていくでしょう。その際、複数の媒体で広告を展開する「メディアミックス」の手法が、施策の成否を分かつポイントになります。

この記事では、広告施策におけるメディアミックスの概要やメリットについて、事例とともに解説していきます。

 

広告におけるメディアミックスとは

メディアミックスとは、「複数の媒体を用いて同種の情報を発信すること」を指しています。広告施策の場面では、たとえば「テレビCMと自社ホームページで同じ商品・サービスについて紹介する」といった形が考えられるでしょう。

メディアミックスという言葉は、エンターテイメント業界においても定着しつつあり、この場合には「作品の他媒体への転用」という意味で用いられます。「漫画をアニメに」「小説を映画に」というように、同作品を異なるメディアで展開する手法です。

しかしもともと、メディアミックスは「企業の広告手法」を指す言葉として用いられてきた背景があります。従来は「テレビと街頭ポスター」というように、媒体を変えることで「マス」と「ローカル」の両面に訴求する手法として取り入れられてきました。

時代が進むとともに、インターネットの普及により広告媒体が多様化し、より多くの媒体を組み合わせながら自社の商品・サービスを周知できるようになりました。これにより、広告施策において「細かなターゲット設定」や「場面に合わせたアピールポイントの設定」が可能となっています。

このように、「広告施策の柔軟性・応用性」が向上している背景から、広告媒体を適切に使い分けつつ組み合わせていく「メディアミックス」の手法があらためて注目されているのです。

広告に用いられるメディアの変化

インターネット普及以前にも、複数メディアにまたがる広告は頻繁に用いられてきました。「新聞」や「テレビ・ラジオ」など、マスメディアを通じた広告のほか、駅のポスター、フリーペーパーなど、ローカルな認知を広めていく手法も長らく取り入れられており、現在でも一定の影響力を保っています。

一方で、Web上の広告媒体は急速に多様化しており、オウンドメディアを通じた広報活動のほか、GoogleやYahoo!といった検索プラットフォームに紐付いた広告、あるいはSNSや動画プラットフォームにおけるプロモーションなど、訴求したい層や広告の内容に応じてメディアを細かく選択できるようになりました。

それぞれのメディアには異なる特徴があり、またユーザー層もさまざまに分布しているため、適切に複数のメディアを組み合わせることで、広告効果の向上を見込める環境が整ってきているのです。

メディアミックスを実践するメリット

メディアミックスの強みは、媒体ごとに異なる特性を活かしながら、それに合わせた広告施策を打ち出していける点にあります。以下では、さらに具体的なメリットについて、ポイントごとに解説していきます。

より広い客層に、繰り返しアピールできる

さまざまな媒体に情報を掲載することで、訴求する対象を広げられることが、メディアミックスの大きなメリットです。メディアごとに主なユーザー層が異なっているケースも多いため、ターゲットに合わせて媒体を決定することで、狙った効果が得られやすくなる点もポイントでしょう。

さらに、広告に触れるユーザーの数が増えるだけではなく、同じユーザーが広告を目にする回数が増える点も、広告効果を高めるうえで有効に働きます。繰り返し商品・サービスの情報に触れることで印象が強まり、実際に商品・サービスを選択する場面でも思い起こされやすくなるでしょう。

補完効果と相乗効果

テレビCMとWebサイトで伝えられる情報の性質が異なるように、メディアの種類によってユーザーの「受け取り方」は異なり、適切なアピール方法も変わってきます。広告効果を高めるうえでは、動画や音声、画像やテキストというように、メディアに合わせた情報の伝え方をすることが重要になります。

商品やサービスの魅力をさまざまな角度から知ってもらいたい場合、1つのメディアだけでは、提供できる情報の幅がどうしても限られてしまうでしょう。打ち出したいポイントに合わせてメディアを選び、適宜組み合わせることにより、それぞれのウィークポイントを補いながら訴求できるようになると考えられます。

たとえば、短い動画でユーザーの興味を引き、画像とテキストを用いてより詳しい情報を解説するというように、メディア間で導線を設計することで、興味や関心を段階的に深められるようになります。さらに「具体的な利用シーン」を伝える動画や、「お役立ち情報」を伝えるコラムなど、メディアの特性を活かして関連情報を発信することで、ユーザーとの距離も縮められるかもしれません。

ターゲットの目線に合わせた情報や、ほかにはない角度からの情報は、新規顧客への訴求はもちろん、既存顧客の親近感や信頼性を高めることにもつながります。自社の商品・サービスについて、「購入した後の楽しみ方」まで提示することにより、ユーザーからの関心を高く維持することができ、固定ファンの獲得も見込めるようになるでしょう。

このように、メディアミックスの本質的な効果は、「メディア間のシナジー」にあります。メディアごとに役割を分担することで、ユーザーが求める情報を適切に伝えやすくなり、多面的かつ段階的な訴求が可能になるのです。

効果測定がしやすい

現在、広告施策にメディアミックスの手法を取り入れる際には、ほとんどの場合Web上の施策を組み込むことになるでしょう。リアルタイムに、また広い層に対して情報を発信するうえで、今やSNSやオウンドメディアをはじめとするWeb媒体は欠かせないものとなっています。

さまざまなWeb広告に共通する強みとして、施策効果を把握しやすい点が挙げられます。ユーザー数やユーザー層の分布、サイト上での行動履歴など、多くのフィードバックが得られるため、「どの施策がどんな効果につながったか」が理解しやすいのです。

他媒体と組み合わせる場合にも、たとえば「テレビCMを見てサイトを訪れるユーザーがどれだけ増えたか」「新しいユーザー層は、これまでの層とどのように違うか」といった情報が得られるため、Webを通じてその他の媒体に関する分析も可能になります。広告効果に関する材料が多く得られることにより、結果をふまえた施策の再検証や、改善策の検討プロセスも効率化できるでしょう。

メディアミックスを実施する際の注意点

メディアミックスのメリットは、広告間のシナジーを生み出せる点にありますが、そのためには適切な媒体の選択や、入念な導線設計が必要です。メディア間の役割分担をうまくコントロールできなければ、複数媒体への出稿コストばかりが嵩み、それに見合った効果が得られないケースも考えられます。

以下では、メディアミックスによる施策の失敗を回避するうえで、留意すべきポイントについて解説します。

メディア間の補完関係を意識する

メディアミックスにおけるコスト削減の手法として、「まったく同じ広告素材を複数メディアで流用する」という方法が採用されることがあります。しかし、せっかく複数の媒体で広告を展開していても、それぞれの特性に合わせて素材の最適化を行わなければ、メディア間の補完関係や相乗効果は引き出しにくくなるでしょう。

たとえば形式の似ている「テレビCM」と「YouTube広告」であっても、ユーザーがそれを目にする状況や、広告からの導線の引き方などは異なります。素材の流用は有効ですが、それぞれの媒体において「ユーザーがどのような形でそれを目にするのか」を十分に検討し、メディアごとにアレンジした形へと仕上げていくことが大切です。

「そのままの素材流用」では効果が薄くなり、かえって費用対効果を悪化させることにもつながります。媒体ごとにターゲットを明確化し、それに合わせた訴求方法を打ち出していきましょう。

ユーザー目線に立った導線設計を

Web広告を施策に取り入れる場合にはとくに、メディア間の導線設計が重要なポイントです。

メディア間の導線を特段意識せず、複数のメディアを切り離して考えることも1つの方法ですが、やはりユーザーの目線から見れば、「気になった広告の詳細情報にすぐにアクセスできる」ような導線設計が望ましいでしょう。

導線を整理するうえでは、ユーザーの興味・関心の高まりに応じた情報提供を意識する必要があります。興味を引く段階から、商品・サービスの概要を知ってもらう段階、購入を検討してもらううえで多角的に吟味してもらう段階というように、ステップごとに「何の情報をどのように提示するか」を見定めることが重要です。

メディアミックスの成功例

広告媒体の多様化により、メディアミックスにおいて「どの方法を組み合わせるか」という選択肢も複雑になり、「何が最適か」が見定めにくくなっています。以下では、さまざまな形で複数メディアを横断的に使い分け、施策を成功に導いている事例を紹介していきます。

サントリーホールディングス株式会社

大手飲料メーカーとして知られる「サントリーホールディングス株式会社」は、広告施策においてメディアごとの役割分担を巧みに行い、ユーザーのニーズに合わせた情報を提供しています。テレビや新聞、中吊り広告や、オウンドメディア、SNSなど、幅広く広告を展開し、それぞれのメディアに最適化した形でターゲットに訴求しているのです。

たとえばテレビCMにおいては、「ハイボールを作るシーン」における氷の音や炭酸の泡立つ音など、視覚・音声情報を活かして視聴者に訴えかけています。Web媒体も適切に使い分けており、キャンペーン情報や新製品情報といった速報性の高い内容をTwitter上で発信しながら、お酒やそれに合わせた料理のレシピをホームページ上で公開し、さらにYouTubeでは動画でハイボールやカクテルの作り方を解説するなど、メディアの特性をフルに活用しています。

メディアごとにユーザーの求める情報を明確に把握しながら、自社商品の楽しみ方を具体的に伝え、新規顧客から既存顧客にまで幅広く訴求することに成功している事例といえるでしょう。

アットホーム株式会社

不動産情報サービスなどを手掛ける「アットホーム株式会社」は、テレビCMとYouTube動画を利用したメディアミックスにおいて、施策効果を改善することに成功しています。

同社は当初、テレビとYouTube間で、同様の素材を流用していました。コスト削減のうえで、流用は有効な選択肢ですが、媒体ごとの特性の違いに留意しなければ、メディアミックスの十分な効果を引き出せないこともあります。

同社は流用した素材がYouTube広告に適しているかを見直し、Googleの「ABCDフレームワーク」を用いて素材動画の最適化を図りました。テレビCMよりもテンポを意識し、メッセージをシンプルに打ち出すことで、Web媒体に適した広告動画へとアレンジすることに成功しています。

結果として、動画広告接触者による検索数はそれまでの3.2倍に向上。素材を他媒体に流用するうえでも、「メディア特性に合わせたカスタマイズ」が成否の鍵を握ることが伺えます。

(参照:Think with Google「段階的なYouTube 広告活用でマーケティングをデジタル化──タウンワーク、アットホーム、 WOWOW」)

株式会社JR西日本コミュニケーションズ

旅客事業・鉄道事業を手掛ける「株式会社JR西日本コミュニケーションズ」は、「株式会社リコー」「リコージャパン」と協同し、電車内の中吊り広告をARコンテンツと連動させた情報提供サービスを実践しました。アプリを起動し、カメラを広告にかざすと、商品のさらなる情報や、スタンプラリーやクイズといったコンテンツにアクセスできるサービスです。

従来の中吊り広告やポスターは、効果測定が難しく、実際にどれほどのユーザーに興味を持たれているのかが掴みにくい面がありました。今回の取り組みのように、従来はアナログ媒体として利用されてきたメディアも、Webサービスとシームレスに連動させることにより、効果測定が容易になり、実際の利用者像も把握しやすくなります。

メディア間のシームレスな連動は、施策の効果測定だけではなく、機会損失を防止するうえでも有効です。目を引かれるポスターなどがあったとしても、「検索のひと手間」がハードルになり、詳細情報へのアクセスがなされず、そのまま関心が失われてしまう可能性もあるでしょう。「気になるところ」に直感的にアクセスできるAR技術により、ユーザーにとってストレスの少ない形で次々に情報を提示できるようになると考えられます。

広告に対する驚きや興味を、フレッシュな状態で「ユーザーの次の行動」につなげていけるAR技術は、メディアミックスの施策に新たな展望をもたらすかもしれません。この取り組みはアナログとデジタルを横断した広告の将来を模索する実証実験として行われたものですが、これからも技術の発展に伴い応用の幅が広がっていくことが期待できるでしょう。

(参照:リコー「リコー、リコージャパン、JR西日本コミュニケーションズ ARを用いた電車内広告の実証実験を開始」)

まとめ

現在、企業が広告を掲載できるメディアは多様化しており、ユーザー層や商品・サービスのアピールポイントに応じて媒体を選ぶことが重要になっています。複数の媒体を利用したメディアミックスの手法においてはとくに、それぞれの媒体の性質を活かした「メディアの役割分担」が施策の鍵を握るでしょう。

Web上での広告施策は、フィードバックが得られやすく、オウンドメディアとSNS、動画サイトなど、媒体間の移行も促しやすい長所があります。ユーザーエクスペリエンスを意識した導線設計により、関心の度合いに合わせて適切に情報を提供できる仕組みを作ることが大切です。

AR技術をはじめ、アナログとデジタルをシームレスにつなぐ手法も、今後の広告施策において多く用いられるようになるでしょう。ユーザーが受け取るだけの広告ではなく、主体的に没入できる形の広告を取り入れていくことで、メディアミックスの幅はさらに広がっていくと期待できます。

総じて、商品やサービスの特性、訴求したいターゲット層を分析し、「どんなシーンで何を伝えるべきか」を入念に検討することが成功への近道です。媒体に合わせたメッセージを発信し、ユーザーの関心を的確に引き出していきましょう。

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この記事を書いた人

鹿嶋 祥馬
大学で経済学と哲学を専攻し、高校の公民科講師を経てWEB業界へ。CMSのライティングを300件ほど手掛けたのち、第一子が生まれる直前にフリーへ転身。赤子を背負いながらのライティングに挑む。

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