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薬機法とは?気をつけるべきポイントやNG表現・言い換え表現をチェック!

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※この記事は薬機法管理者が執筆しています。

薬機法では、医薬品等の製造や販売、広告が規制されています。ヘルスケア領域でビジネスを展開している場合は特に、処罰の対象にならないためにも、数少ないビジネスチャンスをモノにするためにも、確実に理解しておきたい法律です。

また、ビジネスにおいて薬機法がかかわってくる範囲は思いのほか広いことから、規制対象の商品を直接扱っていない企業であっても、内容を理解しておけば大きな強みになるでしょう。

この記事では、薬機法の内容をわかりやすく解説するとともに、罰則や違反事例、具体的なNG・OK表現、気をつけるべきポイント、さらには一緒に理解しておきたい法律まであわせて解説します。

目次

薬機法とは

薬機法(正式名称:医薬品、医療機器等の品質、有効性及び安全性の確保等に関する法律)とは、医薬品、医薬部外品、化粧品、医療機器、再生医療等(以下「医薬品等」)に関するルールを定めた法律です。

医薬品等の品質・有効性・安全性を確保して危害の発生や拡大を防ぐとともに、危険な薬物を規制したり、医療上特に必要性の高い医薬品等の発展をサポートしたりすることによって、保健衛生を向上させることが目的とされています。

(参照:医薬品、医療機器等の品質、有効性及び安全性の確保等に関する法律 第一条

1943年(昭和18年)に制定された「薬事法」に端を発しており、以降、たびたび改正がくり返されています。

薬機法のしくみ

薬機法を理解するためには、その条文だけを理解しているのでは不十分です。薬機法の条文はあくまで、医薬品等の取り扱いに関して大まかな指標を示しているにすぎません。抽象的な部分も少なくありませんので、ビジネスに活かすためには、条文のほかに「通知」の内容や具体的な事例も知っておく必要があるでしょう。

通知とは、厚生労働省からたびたび発令されるお知らせのことです。運用を受けての見解や追加された規定が記載されているので、これを確認しておくことでより実務に即した知識を得ることができます。具体的な事例も同様で、「どのようなケースにおいて実際にどのような対応がなされたか」という生きた知識を与えてくれるでしょう。

薬機法はなぜ必要なのか

医薬品等を規制する法律がない場合、例えば、誰でも医薬品と名のついたものを製造・販売することができるようになります。パッケージや広告にも好きなように効能を書き込むことが可能になり、専門的な知識を持たない人々は安心して医薬品を購入できなくなるでしょう。品質の悪い医薬品や詐欺が横行し、病気に対していまよりも怯える生活を送らなくてはいけないかもしれません。

そのため、医薬品等かかわる製造・販売・広告の指標が示されている薬機法は、人体に著しく影響を与える分野を管理し、健やかな世のなかの形成に大きく寄与している重要な規定だといえるでしょう。

薬機法と薬事法の違い

薬機法とよく混同されるものに「薬事法」があります。

先述したように薬事法とは、1943年(昭和18年)に制定された、現在の薬機法の前身となった法律です。2014年に「薬事法等の一部を改正する法律」が施行されたことによって、名称が「医薬品、医療機器等の品質、有効性及び安全性の確保等に関する法律(略称:医薬品医療機器等法、薬機法)」に改められました。

また、この改正を機に、規制対象として「再生医療等製品」が新たに追加され、その特性を踏まえた安全対策等の規制が設けられました。

薬機法が規制するもの

薬機法が規制するのは、大きく分けて以下の5つです。

・医薬品
・医薬部外品
・化粧品
・医療機器
・再生医療等製品

医薬品

医薬品の定義について、薬機法の条文では以下のように書かれています。

この法律で「医薬品」とは、次に掲げる物をいう。

 日本薬局方に収められている物

 人又は動物の疾病の診断、治療又は予防に使用されることが目的とされている物であつて、機械器具等(機械器具、歯科材料、医療用品、衛生用品並びにプログラム(電子計算機に対する指令であつて、一の結果を得ることができるように組み合わされたものをいう。以下同じ。)及びこれを記録した記録媒体をいう。以下同じ。)でないもの(医薬部外品及び再生医療等製品を除く。)

 人又は動物の身体の構造又は機能に影響を及ぼすことが目的とされている物であつて、機械器具等でないもの(医薬部外品、化粧品及び再生医療等製品を除く。)

医薬品、医療機器等の品質、有効性及び安全性の確保等に関する法律 第二条 第一項

「日本薬局方」とは、日本における医薬品の企画基準書です。日本国内でよく使用されている医薬品が中心に掲載されています。

また、二と三の末尾に「機械器具等でないもの」や「医薬部外品、化粧品及び再生医療等製品を除く」といった記載があることから、医薬部外品、化粧品、医療機器(機械器具等)、再生医療等製品で同様の特徴を持っているものと、医薬品が区別されていることもわかります。

つまり、下記の要素を含むものが医薬品と定義されます。

①    「日本薬局方」という医薬品の規格基準書に収められているもの
②    人もしくは動物の病気の診断や治療への使用を目的しているもの
③    人もしくは動物の身体の構造や機能に影響を及ぼすことを目的としているもの
④    ①②③に該当するもののうち、医薬部外品、化粧品、医療機器(機械器具等)、再生医療等製品に該当しないもの

<医薬品の例>

・医療用医薬品
医師の処方箋に基づいて薬剤師が調剤する薬。高い効果が期待できる一方、副作用が出る可能性もあるため、医師や薬剤師の書面を用いた説明が義務付けられています。

・OTC医薬品
処方箋がなくても薬局やドラッグストアで購入できる薬。薬剤師が書面を用いて説明する義務があり、インターネット等では販売できない「要指導医薬品」と、使用に必要な注意の度合いによって、第一類医薬品、第二類医薬品、第三類医薬品に分けられる「一般用医薬品」が含まれます。

医薬部外品

医薬部外品の定義について、薬機法の条文では以下のように書かれています。

この法律で「医薬部外品」とは、次に掲げる物であつて人体に対する作用が緩和なものをいう。

 次のイからハまでに掲げる目的のために使用される物(これらの使用目的のほかに、併せて前項第二号又は第三号に規定する目的のために使用される物を除く。)であつて機械器具等でないもの

   吐きけその他の不快感又は口臭若しくは体臭の防止
   あせも、ただれ等の防止
   脱毛の防止、育毛又は除毛

 人又は動物の保健のためにするねずみ、はえ、蚊、のみその他これらに類する生物の防除の目的のために使用される物(この使用目的のほかに、併せて前項第二号又は第三号に規定する目的のために使用される物を除く。)であつて機械器具等でないもの 前項第二号又は第三号に規定する目的のために使用される物(前二号に掲げる物を除く。)のうち、厚生労働大臣が指定するもの

医薬品、医療機器等の品質、有効性及び安全性の確保等に関する法律 第二条 第二項

ここでの「厚生労働大臣が指定するもの」は、指定医薬部外品のことを指しています。指定医薬部外品とは、規制緩和にともなって医薬品から医薬部外品に移行されたものです。この移行により、それまで薬局でしか販売できなかった医薬品の一部が、医薬部外品としてコンビニやスーパーでも販売できるようになりました。

つまり、下記の要素を含むものが医薬部外品と定義されます。

①    人の身体への作用が緩やかなもの
②    吐き気をはじめとする不快感、口臭、体臭、あせも、ただれ、脱毛を防止するもの
③    育毛や除毛ができるもの
④    人や動物に危害を与えるねずみ、はえ、蚊に類する生物を防除するために使用されるもの
⑤    ①②③④に該当するもののうち、医薬品の使用目的をあわせ持っていないもの
⑥    医薬品の使用目的を持つもののうち、指定医薬部外品に含まれているもの
⑦    ①②③④⑤⑥該当するもののうち、医療機器(機械器具等)に該当しないもの

<医薬部外品の例>

・薬用化粧品
・殺虫剤
・歯磨き粉
・ビタミン剤
・制汗剤

化粧品

化粧品の定義について、薬機法の条文では以下のように書かれています。

この法律で「化粧品」とは、人の身体を清潔にし、美化し、魅力を増し、容貌を変え、又は皮膚若しくは毛髪を健やかに保つために、身体に塗擦、散布その他これらに類似する方法で使用されることが目的とされている物で、人体に対する作用が緩和なものをいう。ただし、これらの使用目的のほかに、第一項第二号又は第三号に規定する用途に使用されることも併せて目的とされている物及び医薬部外品を除く。

医薬品、医療機器等の品質、有効性及び安全性の確保等に関する法律 第二条 第三項

化粧品の定義を見ると、身体の表面に対して作用するものに限定されていることがわかります。

つまり、下記の要素を含むものが医薬部外品と定義されます。

① 人の身体への作用が緩やかなもの
② 人の身体を清潔にし、美しくし、魅力を増やし、見た目を変えるもの
③ 皮膚もしくは髪の毛を健やかに保つために、身体に塗布や散布、もしくはそれに類する方法で使用されるもの
④ ①②③に該当するもののうち、医薬品の使用目的を持たないもの、医薬部外品に該当しないもの

<化粧品の例>

・ボディミルク
・クレンジング
・シャンプー
・洗顔料
・トップコート
・化粧水
・入浴剤

医療機器

医療機器の定義について、薬機法の条文では以下のように書かれています。

この法律で「医療機器」とは、人若しくは動物の疾病の診断、治療若しくは予防に使用されること、又は人若しくは動物の身体の構造若しくは機能に影響を及ぼすことが目的とされている機械器具等(再生医療等製品を除く。)であつて、政令で定めるものをいう。

医薬品、医療機器等の品質、有効性及び安全性の確保等に関する法律 第二条 第四項

ここでの「政令」とは、「薬機法別表第一(第一条関係)」に示された医療機器のことを指しています。

つまり、下記の要素を含むものが医療機器と定義されます。

① 人や動物の病気の診断や治療、予防に使用されることを目的としているもの
② 人や動物の身体の構造や機能に影響を及ぼすことを目的としているもの
③ ①②に該当する機械器具等のうち、再生医療製品等ではなく、薬機法別表第一(第一条関係)に定められているもの

<医療機器の例>

・コンタクトレンズ
・メガネ
・補聴器
・メス
・MRI
・人工呼吸器
・内視鏡

再生医療等製品

医療機器の定義について、薬機法の条文では以下のように書かれています。

この法律で「再生医療等製品」とは、次に掲げる物(医薬部外品及び化粧品を除く。)であつて、政令で定めるものをいう。

 次に掲げる医療又は獣医療に使用されることが目的とされている物のうち、人又は動物の細胞に培養その他の加工を施したもの

   人又は動物の身体の構造又は機能の再建、修復又は形成
   人又は動物の疾病の治療又は予防
   人又は動物の疾病の治療に使用されることが目的とされている物のうち、人又は動物の細胞に導入され、これらの体内で発現する遺伝子を含有させたもの

医薬品、医療機器等の品質、有効性及び安全性の確保等に関する法律 第二条 第九項

ここでの「政令」とは、「薬機法別表第二(第一条の二関係)」に示された再生医療等製品のことを指しています。また「培養」とは、生物の細胞や組織の一部を人工環境で育てることです。

つまり、下記の要素を含むものが再生医療等製品と定義されます。

① 人や動物の細胞に培養をはじめとした加工をすることによって、身体の構造や機能を再建、修復、形成することを目的としたもの
② 人や動物の細胞に培養をはじめとした加工をすることによって、病気を治療、予防することを目的としたもの
③ 人や動物の病気の治療に使用することを目的としているもののうち、細胞に導入され、体内で発言する遺伝子を含ませたもの
④ ①②③に該当するもののうち、医薬部外品や化粧品ではなく、薬機法別表第二(第一条の二関係)に定められているもの

<再生医療等製品の例>

・ハートシート(ヒト(自己)骨格筋由来細胞シート)
・ジェイス(ヒト(自己)表皮由来細胞シート)
・オキュラル(ヒト(自己)口腔粘膜由来上皮細胞シート)
・キムリア点滴静中(チサゲンレクルユーセル)
・ジャスミン(メラノサイト含有ヒト(自己)表皮由来細胞シート)

薬機法が定めるルール

薬機法が定めるルールを分類すると、以下の3つに分けられます。

・医薬品等の製造・販売に関するルール
・広告に関するルール
・医薬品等の取り扱いに関するルール

「知らなかった」を防ぐため、その多面的な構造を理解しましょう。

医薬品等の製造・販売に関するルール

医薬品を製造・販売するためには、薬機法が定める手順に基づいて許可や登録を受けなければなりません。許可・登録を必要とする主な行為は以下のとおりです。

※()内には薬機法における掲載箇所を記載しています。

許可を必要とする主な行為

<都道府県知事の許可が必要>
・薬局の開設(第四条第一項)
・医薬品の販売(第二十四条第一項)
・高度管理医療機器等の販売業、貸与業(第三十九条第一項)

<厚生労働大臣の許可が必要>
・医薬品、医薬部外品、化粧品の製造販売(第十二条第一項)
・医薬品、医薬部外品、化粧品の製造(第十三条第一項)
・医療機器、体外診断用医薬品の製造販売(第二十三条の二第一項)
・再生医療等製品の製造販売(第二十三条の二十第一項)
・再生医療等製品の製造(第二十三条の二十二第一項)
・医療機器の修理(第四十条の二第一項)

登録を必要とする主な行為

<都道府県知事の許可が必要>
・医療機器、体外診断用医薬品の製造(第二十三条の二の三第一項)

医薬品等の取り扱いに関するルール

薬機法は、医薬品等の取り扱いについて細かく規定しています。特に製造・販売にかかわるルールは必ず押さえておきましょう。

医薬品等の取り扱いに関して定められているのは以下の6つです。

・毒薬及び劇薬の取扱い
・医薬品の取扱い
・医薬部外品の取扱い
・化粧品の取扱い
・医療機器の取扱い
・再生医療等製品の取扱い

それぞれの項目について一例を紹介します。

毒薬及び劇薬の取扱い

・毒薬の容器に関する規制(第四十四条)
厚生労働大臣が毒性の強いものとして指定した医薬品には、直接の容器や被包に、黒字に白枠か白文字で「毒」と記載されていなければならない。

・毒薬または劇薬の貯蔵や陳列に関する規制(第四十八条)
毒薬または劇薬はほかのものと区別して貯蔵・陳列しなければならない。また、毒薬を貯蔵・陳列する場所には鍵をつけなければならない。

医薬品の取扱い

・処方箋医薬品の販売に関する規制(第四十九条)
正当な理由がない限り、処方箋の交付を受けていない人に医薬品を販売・授与してはならない(相手が薬剤師であれば販売・授与が可能)。処方箋医薬品を販売・授与した記録は帳簿に記載し、最後の記載から2年間保存しなければならない。

・医薬品に添付する文書、容器、被包の記載禁止事項に関する規制(第五十四条)
その医薬品に関して虚偽の情報や、誤解を招く恐れのある事項を記載してはならない。承認されていない効能、効果、性能を記載してはならない。保健衛生の観点から危険な用法、用量、使用期間を記載してはならない。

医薬部外品の取扱い

・直接の容器等に記載する事項に関する規制(第五十九条)
医薬部外品は直接の容器や被包に、「製造販売業者の氏名・名称及び住所」「『医薬部外品』の文字」「製造番号・製造記号」「厚生労働大臣が指定する成分の名称(厚生労働大臣が指定する成分を含む医薬部外品のみ)」など、12の事項を記載しなければならない(厚生労働省令で別段の定めをした場合は除く)。

化粧品の取扱い

・直接の容器等に記載する事項に関する規制(第六十一条)
化粧品は直接の容器や被包に、「製造販売業者の氏名・名称及び住所」「名称」「製造番号・製造記号」「厚生労働大臣が指定する成分の名称(厚生労働大臣が指定する成分を含む化粧品のみ)」など、7つの事項を記載しなければならない(厚生労働省令で別段の定めをした場合は除く)。

医療機器の取扱い

・容器等に記載する符号等に関する規制(第六十三条の二第二項)
主に一般消費者の使用が目的とされている医療機器や、ほかに厚生労働省令で定められた医療機器に添付する文書、容器、被包には、その医療機器に関する最新の知見に基づいて、「使用方法や取り扱い上の注意」「厚生労働大臣が指定する医療機器の場合、その保守点検に関する事項」をはじめとした、4つの事項を記載しなければならない(厚生労働省令で別段の定めをした場合は除く)

再生医療等製品の取扱い

・販売、製造等の禁止に関する規制(第六十五条の五)
「異物が混入・付着している再生医療等製品」「病気の原因となるものに汚染されているか、汚染されている可能性がある再生医療等製品」をはじめとした、6項目のいずれかに該当する再生医療等製品は、販売、授与、もしくは販売や授与の目的で製造、輸入、貯蔵、陳列してはならない。

広告に関するルール

薬機法には、医薬品等の広告に関する厳しいルールが定められています。製品を買ってもらうことばかり意識しすぎると、ルールを逸脱した広告を展開してしまう可能性があります。

また、薬機法の広告規制はすべての人を対象としています。医薬品等の広告を扱うのであれば、いかなる立場の人であっても内容を知っておく必要があるでしょう。

薬機法における広告の定義

薬機法における広告は、1998年(平成10年)9月29日に出された厚生省医薬安全局監視指導課長通知において、以下のように定められています。

1. 顧客を誘引する(顧客の購入意欲を昂進させる)意図が明確であること。
2. 特定医薬品等の商品名が明らかにされていること。
3. 一般人が認知できる状態であること。

薬事法における医薬品等の広告の該当性について(平成10年9月29日 医薬監第148号)

上記の3つに該当していれば、媒体に限らず広告と見なされる可能性があります。

薬機法において禁止されている広告

薬機法の第十章には、禁止または制限されている広告について記載されています。

■誇大広告等の禁止(第六十六条)
第六十六条では、次のものを禁止項目として挙げています。

・医薬品等に関する虚偽や誇大な記事の広告、記述、流布
・医薬品等の効果や性能を医師などの人が保証したと誤解される恐れのある記事の広告、記述、流布
・堕胎の暗示、わいせつにわたる文書または図画

■特定疾病用の医薬品及び再生医療等製品の広告の制限(第六十七条)
第六十七条では、がんや白血病といった特殊疾病に使用する医薬品等について、医薬関係者を除く一般人に向けて広告することを禁止しています。

■承認前の医薬品、医療機器及び再生医療等製品の広告の禁止(第六十八条)
第六十八条では、承認や認証を得ていない医薬品等の名称、製造方法、効能、効果または性能に関する広告を禁止しています。

「医薬品等適正広告基準」が指標になる

医薬品等の広告をつくるうえでは、医薬品等適正広告基準が指標になります。医薬品等をめぐる広告の整備を目指したもので、「目的」には次のように示されています。

この基準は、医薬品、医薬部外品、化粧品、医療機器及び再生医療等製品(以下「医薬品等」という。)の広告が虚偽、誇大にわたらないようにするとともにその適性を図ることを目的とする。

医薬品等適正広告基準の解説及び留意事項等について 第1

また、「広告を行う者の責務」に次のような内容も記載されています。

1. 医薬品等の広告を行う者は、使用者が当該医薬品等を適正にしようすることができるよう、正確な情報の伝達に努めなければならない。
2. 医薬品等の広告を行う者は、医薬品等の本質に鑑み、医薬品等の品位を損なう又は信用を傷つけるおそれのある広告は行ってはならない。

医薬品等適正広告基準の解説及び留意事項等について 第3

そのほかにも、医薬品等の名称についてのルールや効果効能の表現範囲に関するルールなど、医薬品等の広告におけるあらゆる基準がここでわかりやすく示されています。あらかじめ禁止事項を確認し、広告の薬機法違反を未然に防ぎましょう。

薬機法におけるNG表現・言い換え表現

薬機法に定められたルールをふまえると、どのような表現が可能なのでしょうか。薬機法違反になる表現は条件によっても変わります。ここでは、NG表現の例を紹介します。

サプリメントの広告において「◯◯で抵抗力を高める!」

サプリメント等の健康食品は医薬品等に含まれておらず、身体の機能に影響を及ぼすような表現(機能的表現)は認められていません。「◯◯で元気を手に入れる!」といった抽象的な表現であれば問題ないでしょう。

一般化粧品の広告において「育毛促進効果のある◯◯!」

育毛効果の標ぼうは医薬部外品にしか認められていません。「◯◯で汚れをしっかり落として頭皮環境を整える!」など、清潔にすることで髪の環境を整えるといったロジックであれば表現できるでしょう。

化粧品の名称に「◯◯薬」

化粧品やサプリメントを医薬品と誤認させるような表現は認められていません。承認を受けていなければ名称に使えないという語句もあるので注意が必要です。

「確実に結果が出ます!」

効き目や安全性の保証になるような表現は認められていません。そのため、「どなたでも安心してお使いいただけます」といった表現もできません。

「◯◯病院でも使用されています」

権威のある人や団体による推薦は認められていません。一方で、化粧品や医薬部外品を、美容ライターやインフルエンサーといった「権威の裏付けがない人」が推薦することは、現時点では認められています。

「最高級のカルシウムを配合」

「最高級」「最大級」「画期的」といった最上級表現は認められていません。

「シワを解消する」

シワについては「乾燥による小ジワを目立たなくする」という表現、もしくはメイクをすることによって目立たなくなるという意味の表現しか認められていません。「シワを伸ばす」「シワを予防する」「顔の溝がなくなる」といった表現はすべてNGです。「気になる目尻に」「肌年齢が気になる方に」といった表現に言い換えましょう。

「A社の◯◯に含まれるコラーゲン量の5倍です!」

たとえデータが提示されたとしても、他社を誹謗する表現は認められていません。「これまでにない」といった抽象的な表現でもNGです。自社の他製品と比較するのであれば問題ありません。

「アンチエイジングに効果が期待できます」

年齢に逆らうという意味で捉えられる「アンチエイジング」という表現は認められていません。また、「若返ります」という表現もNGです。虚偽広告や誇大広告になる可能性がありますので、年齢にあったお手入れという意味の「エイジングケア」や「若々しい肌へ」といった表現に言い換えましょう。

薬機法に違反したらどうなる?

薬機法に違反すると指導や罰則の対象になります。処罰の内容は大きく分けて以下の3つです。

① 行政指導を受ける
② 課徴金の納付命令を受ける
③ 刑事罰を受ける

ひとつずつ解説します。

行政指導を受ける

行政指導のなかには、業務改善命令、業務停止命令、措置命令、承認・許可・登録の取消といった内容が含まれます。多くの違反事例において、まずはこの行政指導が入ります。

製品や材料の廃棄・回収命令(第七十条第一項)

医薬品等やその材料、原料が薬機法に違反していると発覚した場合、製造販売業者は廃棄や回収の命令を受ける可能性があります。

業務改善・停止命令(第七十二条第一項)

医薬品等の品質管理や製造販売後安全管理の方法が、定められた基準に適合していない場合、製造販売業者は業務改善命令(または改善を行うまで業務停止命令)を受ける可能性があります。

措置命令(第七十二条の五の第一項)

薬機法の広告ルール(虚偽・誇大広告の禁止、承認前医薬品等広告の禁止)に違反していると発覚した場合、措置命令を受ける可能性があります。措置命令では、違反広告の掲載中止や再発防止策の実施や公示が命じられます。

承認・許可・登録の取消(第七十四条二の第一項、第七十五条の第一項、第七十五条の二の第一項)

一度承認を受けた医薬品等がその承認に値しないと判断された場合、薬事・食品衛生審議会の意見を聴いて、承認が取り消される可能性があります。

また、医薬品等を製造や販売、修理する許可・登録を受けた業者が、許可や登録の基準を満たしていないと判断された場合、また薬機法に違反した場合、許可・登録が取り消される可能性があります。

課徴金の納付命令を受ける

虚偽・誇大広告の禁止に違反した場合、課徴金の納付命令を受ける可能性があります。

課徴金は、「対象商品の売上額×4.5%」で算出される罰金です。虚偽・誇大広告の増加にともない、2021年(令和3年)の薬機法改正で導入されました。対象期間は違反開始日から最長3年とされており、金額の上限はないため、場合によっては膨大な金額を支払うことになりかねません。

一方で、「課徴金額が225万円(対象品目の売上げ5000万円)未満の場合」は課徴金納付命令が行われません。また、危害の発生・拡大が軽微な場合も、課徴金納付命令が行われない可能性があります。

また、次のケースにおいては、課徴金が減額される可能性があります。

・同一の事案で、景品表示法の課徴金納付命令が出ている場合(売上額×3%に減額)
・課徴金対象行為が発覚する前に違反者が自主的に報告したとき(50%に減額)

(参照:課徴金制度の導入について

刑事罰を受ける

悪質な違反の場合は刑事摘発され、刑事罰を受ける可能性があります。刑事罰を受けた場合、罰金刑であっても前科一犯になります。

罰則については薬機法の第十八章(第八十三条の六〜第九十一条)に明記されています。

たとえば、指定薬物を製造・輸入・販売・授与・所持した場合は、5年以下の懲役か500万円以下の罰金、もしくはその両方が科せられる可能性があります(第八十三条の九)。虚偽・誇大広告の禁止(第六十六条)に違反した場合は、2年以下の懲役か200万円以下の罰金、もしくはその両方が科せられる可能性があります(第八十五条)。

上記は一例ですが、刑事摘発の対象になっている行為は決して少なくありません。関係する領域のないようはあらかじめ確認しておきましょう。

刑事摘発された場合、多くは略式裁判で済ませられ、罰金を支払うことで釈放されますが、正式裁判になるケースもあります。略式裁判であっても正式裁判であっても、刑事罰によって前科一犯になる点は変わりません。

行政指導と刑事摘発に順番はないため、行政指導を受けていなくても刑事摘発される可能性があります。また、必ずしも特別悪質なケースだけが刑事摘発や刑事罰につながるわけではなく、物的証拠が揃っていれば刑事摘発される可能性があると覚えておきましょう。

薬機法の違反事例

薬機法に違反した場合の指導や罰則を紹介しましたが、では、これまでの薬機法違反にはどのようなケースがあるのでしょうか。以下に3件の事例を紹介します。

無許可でサプリメントの製造販売

2023年5月31日、無許可で製造した医薬品を販売したとして、ジャパン・メディア・システムズの社長ら3人が薬機法違反の疑いで書類送検されました。

同社は動物用と人間用のサプリメントを製造しており、動物用と同じ原料で製造した医薬品を「人間にも効果がある」とうたって販売していました。違法な販売をくり返した結果、約9千万円の利益を得ていたと見られています。

また、同社はほかにも「銀座DAXDACHS」というミニチュアダックスフント専門のペット用品店も運営しており、ここでも「人間の抗がん作用」をうたったサプリを販売していたようです。

3人は「いきなり取り締まりは受けないと思っていた」と話していたとのことで、少しの油断が命取りになる薬機法違反の特徴がよくわかる事例です。

水の広告で「インフルエンザウイルスを1分で99.99%不活性化させる」

2023年6月6日、ミネラルウォーターの広告でインフルエンザへの効果をうたったとして、超ミネラル総研の社長と従業員ら4名が薬機法違反の容疑で逮捕されました。

同社は医薬品として承認されていないミネラルウォーターの広告について、「インフルエンザウイルスを1分で99.99%不活性化させる」などとうたっていたとのことです。

該当のミネラルウォーターは「超ミネラル水 岩の力」と名付けられており、成分はただの水にもかかわらず、2リットルあたり約1万円で販売されていました。2017年からネット販売され、約5年間で4億円ほどを売り上げていたようです。

未承認医薬品成分を含むチョコレートを販売

2023年6月、未承認の医薬品成分が含まれたチョコレートを販売する目的で陳列・貯蔵したとして、薬機法違反の容疑でベトナム国籍の夫婦が書類送検されました。

該当のベトナム産チョコレート「Detoxeret」に含まれていたのは「シブトラミン」という医薬品成分で、一部の国では食欲を抑える成分として承認されています。一方で、血圧や心拍数の上昇といった副作用が確認されていることもあり、日本国内では承認されていませんでした。

2人は、このシブトラミンを含んでいるチョコレートにダイエット効果があるとうたってインターネットで販売しており、これを購入した女性が「食べて体調不良になった」と保健所に相談したことから発覚につながったとのことです。

薬機法違反を避けるために気をつけるポイント

薬機法違反は、自社の評判や資金面に大きなデメリットをもたらす可能性があります。せっかく必死に商品を開発して広告しても、不必要な損失を被ってしまってはふりだしどころかマイナスになってしまうでしょう。

薬機法違反を避けるためには、薬機法や製品に対する深い理解を、該当の商品や広告に携わる全員に持ってもらうことが大切です。主に気をつけたいポイントを以下に解説します。

製品が属するカテゴリを理解する

サプリメントや医薬品等は、属するカテゴリによって可能な表現が異なります。サプリメントと医薬品の間ではもちろん、化粧品と医薬部外品や、特定保健用食品と機能性表示食品、含有されている成分量によっても使用できる表現の範囲には違いがあります。

自社の製品、もしくは広告したい製品がどんなカテゴリに所属しているのかを確実に理解することで、的確な表現はもとより、可能な範囲で攻めた表現も可能になるでしょう。他製品との差別化を図るうえでも、消費者に製品の強みをピンポイントで伝えるためにも、製品の理解を深めることは大切です。

薬機法に対する共通認識をつくる

製品の製造や広告はひとりではできません。携わる人が増えれば増えるほど、それぞれで認識のズレが生じる確率は高まるでしょう。

薬機法やその対策を全員が理解できていない場合、知らないうちに社員が違反してしまったり、対処の方向性にばらつきが出たりする可能性があります。薬機法対策が属人化してしまっている場合は特に、認識の統一にかなりの労力が必要ですし、ズレが生じている場合も見落としてしまうかもしれません。

スピーディーかつ正確に認識を統一させるためには、自社で薬機法のガイドラインをつくるのがおすすめです。遵守すべき項目をまとめ、パッケージや広告に携わるメンバーに共有しましょう。

最新情報を欠かさずチェックする

薬機法は適宜発行される通知や改正によって定期的に内容がアップデートされます。最新情報の収集を怠っていると、ビジネスチャンスを逃してしまうかもしれませんし、薬機法違反を犯してしまうかもしれません。

すでにあるガイドラインにしっかりと目を通しておくとともに、薬機法関連のニュースもこまめに確認する習慣をつけましょう。

薬機法と一緒に知っておきたい法律

薬機法はいくつもの領域にまたがった法律です。そのため場合によっては、そのほかの法律とも絡んでくる可能性があります。

薬機法と一緒に確認しておきたい法律は以下の5つです。

・景品表示法
・健康増進法
・食品表示法
・特定商取引法
・あはき法・柔道整復師法

業種や扱っているサービスによってそれぞれの重要性は変わってきます。

景品表示法(景表法)

景品表示法(正式名称:不当景品類及び不当表示防止法)は、消費者のよりよい購買活動を守ることを目的とした法律です。商品やサービスに関して偽りの情報を伝えてはいけないことや、景品(贈り物)の最高額の制限などが定められています。消費者庁のほか、自治体でも扱うことができます。

不実証広告規制(広告の表示を裏付ける合理的な根拠になる資料の提出を求めることができ、不十分な資料が提出された場合は違法な広告と認定することができる制度)が導入されているため、事業者に対して広告の正当性を厳密に追求することが可能です。違反が認められた場合、措置命令や課徴金納付命令を受けることになります。

対象範囲が広く、薬機法に違反していない場合でも景品表示法に違反している可能性があるため要注意です。

健康増進法

健康増進法は、国民に対して健康な生活習慣に対する関心や理解、自分の健康状態の自覚、健康の増進などを求めた法律です。医療制度改革の一環としてつくられ、健康づくりを国民の責務と定めています。

薬機法とともに覚えておきたいのが、第六十五条第一項の虚偽誇大広告等禁止規定です。ここでは、食品(医薬品を除く)の広告において誤認を招く表現で健康増進効果をうたうことを禁じています。違反した場合は消費者庁の勧告や措置命令が出され、それでも従わないと6か月以下の懲役もしくは100万円以下の罰金を科せられます。

一般食品や健康食品の広告を扱う場合にかかわってくる法律です。

食品表示法

食品表示法は、食品の表示に関する規定を一元化した法律です。栄養成分表示や原材料原産地表示、製造固有記号などについて定められています。食品のパッケージや広告に携わるケースにおいて重要になってくるでしょう。

たとえば、栄養成分および熱量には、多く含まれることや少なく含まれること(「無」「低」など)を強調するための基準量が定められています。基準を満たしていないにもかかわらずパッケージや広告で強調した場合、食品表示法違反になります。

特定商取引法(特商法)

特定商取引法(正式名称:特定商取引に関する法律)は、通信販売、訪問販売、テレマーケティング、ネットワークビジネス(連鎖販売取引)などの無店舗販売に関する規制を中心とした法律です。事業者による悪質な勧誘から消費者を守ることが目的とされています。

消費者の意に反して契約させる行為が特定商取引法違反になります。たとえば、インターネット通販におけるガイドラインでは、「最終確認画面で定期コースの内容をすべて示すこと」が定められています。

あはき法・柔道整復師法

あはき法(あん摩マッサージ指圧師、はり師、きゅう師等に関する法律)には、医師以外がマッサージを行う場合のルールが定められています。また、柔道整復師法には、柔道整復師の職務や資格について定められています。

それぞれ、あん摩マッサージ指圧師、はり師、きゅう師、柔道整復師として開業するには国家資格が必要である旨が明記されています。「マッサージ」という用語も、国家資格を有した者がいる施設のみ、広告に使用することが認められています。

開業に資格や許可が必要ないエステサロンや整体院、カイロプラクティックサロンなどが抵触しやすいため、該当する店舗は知っておく必要があります。

キホンをおさえつつ適宜アップデートを

薬機法を扱ううえでは、まずは基本をしっかりとおさえることが重要です。規制の範囲や罰則の種類など、法律のポイントを理解しましょう。この際、自社と薬機法の位置関係も把握しておくと対策を立てやすくなります。

一方で、運用に生かしていくには基本の知識だけでは不十分です。厚生労働省から発行される通知や違反事例、関連団体の発信などにアンテナを伸ばし、知識に厚みを持たせて汎用性を高めるとともに、内容を適宜アップデートしましょう。生きた知識を手に入れることで、あらゆるケースに柔軟性を持って対応できるようになるでしょう。

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この記事を書いた人

滿留悠平
一男一匹の父。大学で比較文学を専攻し、論文集への掲載を経験。IT企業のシステム講師を務めたのち、ライターとしてふたたび文章の世界へ。座右の銘は「謙虚に貪欲に」。薬機法管理者。コスメ薬機法管理者。

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