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株式会社スマートメディアインタビュー

柔軟性が成功の鍵!株式会社スマートメディア代表・成井五久実さん

最終更新日:
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女性起業家として最年少・最短・最高額で設立1年の会社を売却、そして株式会社スマートメディアの代表取締役へ。成井五久実さんのビジネス哲学、積極的に取り組んでいるESG経営・ウェルビーイングなど、気になることをたくさんインタビューしました!

株式会社スマートメディア・成井五久実さんについて

成井五久実さん
(株式会社スマートメディア 代表取締役 成井五久実さん)

株式会社スマートメディアは、2018年7月に設立された、メディア事業を主軸に、企業のオウンドメディア運営、SaaS型CMS提供、SNSアカウント運用、動画制作、インフルエンサーキャスティングといったwebコンテンツマーケティングを展開する企業。

女性起業家である成井五久実さんが立ち上げた、男性向けキュレーションメディア「JION」を運営する株式会社JIONや「笑うメディア クレイジー」を運営する株式会社LAUGHTECH、各界の最前線で活躍している編集者たちが執筆・参画しているメディア「OPENERS」を運営する株式会社OPENERSといった、バックボーンにメディア事業を抱える3社が統合した企業で、のちに株式会社メディコマ、ラグル株式会社も加わったことで、より領域を広げながら展開しています。

代表取締役を務めるのは、先にご紹介した成井さん。2016年に設立した株式会社JIONを女性起業家として最年少・最短・最高額(3億円)で株式会社ベクトルに事業売却し、その後スマートメディアをV字回復させた手腕を持つ方です。

「人の想いとテクノロジーで世界に彩りを」をVISIONに掲げ、情報を求めている人々に適したかたちでお届けするかたわら、女性起業家を支援する活動も行っています。

起業家になったきっかけ

―起業家を志すようになったきっかけを教えていただけますか?

株式会社スマートメディア 代表取締役 成井五久実さん(以下、成井さん):両親が起業家だったので、ビジネスというものが幼いころから身近にあり、自身も憧れていました。

父はバブル時代にゴルフ場の建設などをしており、私が中学2年生のころに倒産してしまったんですが、母がカウンセリングルームを開業して成功していく姿を見ていたので、自分らしく働くには起業が向いていると感じました。

―いつごろから具体的に、こういった会社を立ち上げたいというビジョンを持ち始めたのでしょうか?

成井さん:小さいころから漠然とした興味はあったんですけど、具体化したのは大学時代に、「東大起業サークルTNK」という起業サークルに入ってからかな、と思います。

「TNKマフィア」という言葉が生まれるくらい、多数の起業家やビジネスパーソンを輩出しているサークルだったので、実際に学生起業している先輩もいましたし、みんなで起業に関する勉強会などを行っていくことで視座が高まりました。

―サークル出身者はやはり卒業後、起業される方が多いのでしょうか?

成井さん:そうですね、起業される方もいますし、あとは私もそうだったんですけど、株式会社ディー・エヌ・エーのようなアントレプレナーシップ(※)のあるベンチャー企業に入って、その後立ち上げるという方も多いですね。

※ アントレプレナーシップ:日本では「起業家精神」と訳されることが多い。起業家的な精神と資質・能力を育むこと。

女性起業家として最年少・最短・最高金額で株式譲渡

成井五久実さん

―実際に起業されてから、一番苦労したことはなんでしょうか?

成井さん:男性向けキュレーションメディアを運営する株式会社JIONを設立したのが2016年の3月だったんですけど、その年度末にキュレーションメディア問題(※2)が起きてしまって、売り上げが大幅に減少してしまったのは、いま考えると大変な局面でした。

※2 2016年末ごろ、大手医療キュレーションサイトに掲載されていた情報に大きな誤りがあることが判明したことをきっかけに、多数のキュレーションメディアが、記事数を優先させるあまり情報の正確性の確認を怠るなど、ずさんな制作方法をとっていることがあかるみになり、当時検索上位だった多くのサイトがクローズせざるをえなくなった。

―当時は市場が激変したと思いますが、その後、成井さんは女性起業家として最年少、最短、最高額での事業売却に成功されていますよね。

成井さん:そうですね、キュレーションメディア問題が起き、会社を続けるには事業資金や人材が必要だと思ったので、M&Aというかたちを選択し、今の親会社である株式会社ベクトルに株式を譲渡しました。

―素人目線での質問なのですが、ご自身が起業した会社を手放す際に不安などはありませんでしたか?

成井さん:売却後もその会社の代表を任せてもらえているので、あまり不安はなかったですね。
でもそれも、若かったからかもしれません(笑)。

売却をすることで自分にできなくなることがあるかどうか、といったことをそんなに考えていなかったのかもしれないです。
株式をすべて親会社に渡すということよりも、資本が増えることでどんな挑戦ができるか、といった新しい展開にワクワクしていました。

会社は大きくなり、個人資産も増えて、いいことしかないので、いま考えてもネガティブな気持ちはなかったです。
29歳というまだ若い年齢での意思決定でしたが、いい選択をしたと思います。

―なるほど。
M&Aって日本ではまだネガティブなイメージを持っていらっしゃる方もいるかなと思うのですが、会社を維持するだけでなく大きくすることを目的としたとき、自社だけではまかなえない力で支えてもらえることになるので、かなり有効ですよね。

成井さん:はい。特にJIONの場合は、最初からベンチャーキャピタルなどに投資していただいていたのですが、エクイティファイナンス(※3)をしているという時点で、投資家からなにかしらのゴールを求められると思うんです。

※3 エクイティファイナンス:企業が新株を発行して、事業のための資金を調達すること。

成井さん:そのゴールというのはM&AかIPO(※4)しかないと思うので、私の場合はM&Aという選択をすることで、出資していただいた投資家への責任を果たしたと考えています。

※4 IPO:「Initial Public Offering」の略称。「新規公開株」や「新規上場株式」と訳されることが多く、未上場企業が株式を投資家に売り出し、証券取引所に上場することで、だれでも株取引できるようにすること。

成井さん:IPOを目指して起業される方は多いと思いますし、投資してもらっていないのであれば、自分でできるところまでがんばってみてもいいと思うのですが、やはり資金調達をしながら運営しているスタートアップだと、IPOかM&Aの2択、そしてIPOのハードルはすごく高いと思うんです。

なのでM&Aを選ぶ企業というのは、今後どんどん増えていくのではないでしょうか。

個人的にはM&Aというのは非常におもしろいと感じています。
……というのも売却後、興味をなくしてしまったり辞めてしまったりする起業家が多いんですね。

このときにどうオンボーディングしていくかというのは、経営者界隈ではよく話題にもなる共通課題です。

V字回復にも成功

―その後、株式会社スマートメディアの代表に就任され、大きくV字回復されました。
その背景もお伺いできますか?

グラフ
(2019年~2023年(予想)の粗利(左)と営業利益(右)のグラフ/株式会社スマートメディア提供)

成井さん:スマートメディアの出発点というのは、まず株式会社JIONを売却し、その後JIONふくめ5社を統合したところに始まります。

5人の会社からいきなり50人の会社になったので、とりまとめるのは非常に大変でしたが、スマートメディアという新梢で新しいメンバーを迎えたり、大きなアライアンスを組んだり、最短で事業を拡張してきたことで、V字回復に至りました。

2018年からのこの4年間は経営者冥利に尽きるといいますか、いろんな問題にどう対処するのか、経営者としてとても鍛錬させられたので、勉強になりましたね。

IPOを目指してほしいと親会社からリクエストをいただいたので、今は第二の出発をしたところだといえます。

順風満帆な歩みのように聞こえますが、成井さんのポジティブな気持ちが難題を解決してきているんだな、と思います。

成井さん:ポジティブなんですかね?
私としては、起業家として活動している以上、社会的インパクトを残せないと意味がないと思っているので、資本などの数が大きくなることはとても前向きで、減速すること、維持することのほうが耐えられないんです。

起業・独立を目指す方へのヒント

成井五久実さん

―その時々の状況に臨機応変に対応されていることが多いと思うのですが、そうできるように普段から心がけていることなどありますか?

成井さん:柔軟性はビジネスをやっていくうえで絶対に必要だと思っています。

たとえばキュレーションメディア事業から始まった企業ですが、先ほどお話ししたキュレーションメディア問題によって、第三者メディア(※5)がGoogleの検索上位に上がりづらくなりました。

※5 第三者メディア:ユーザーやカスタマーなど第三者が運営するメディアのこと。「アーンドメディア(Earned Media)」ともいい、ブログや口コミサイト、SNSなどもふくまれる。

成井さん:そのときに、今度は企業の信頼性の高いドメインの発信力が高まると考え、オウンドメディア事業を始めました。
デジタル領域において、何十年もまったく同じ事業を行うことはないと考えています。

市況変化を敏感に感じ取って一歩先を行く、ということをずっと続けていかないと会社は育たないと思うので、生き残るためにも柔軟性と先を見据えることは意識してやってきたかな、と思います。

―たしかに起業家や経営者には、柔軟性も予測する力も求められると思いますが、そう思ってもなかなか実際に行動できないという人も多いんじゃないかと思います。

成井さん:そうですね……、私がなぜ柔軟に変化に対応できているのかというと、起業家であるという自負が強いからかもしれません。

起業や独立するときに選ぶ事業内容には、自分の好きなこと、得意なこと、社会に必要とされていること、稼げること、という4象限が存在すると思っています。
その中で好きなことや得意なことを選ぶ場合は、「起業」というよりも「フリーランス」に近いのかな、と思うんです。

起業となると、パブリックカンパニーとしてIPOを目指すなど、社会のためになること、そして稼げることが非常に大事だと思います。

どちらがいい・悪い、ということではなく、好きなことをやっていきたい場合は、規模などよりもそれをどれだけ継続できるかが大事になってきますし、社会に必要とされることで稼ごうとする場合は、社会デビューするうえで事業や起業規模を大きくすることも求められるでしょう。

私は起業家として、社会の需要に応えることと稼げること、そしてそれらに自分のやりたいことや強みを掛け合わせられる瞬間を軸に活動しているので、変化せざるをえないという感じなんですよね(笑)。

―めちゃくちゃ納得です。

成井さん:ありがとうございます。
好きなことをして自分が食べていける分だけ稼ごうとフリーランスになることを「起業」とおっしゃる方もいますが、私はその場合は「独立」で、何者かになりたいと思って、世間に対してインパクトのある事業を創生することにワクワクする場合は「起業」なんじゃないかな、と思っています。

もちろんバランス良くすべてを網羅できたら、それが最高地点だと思いますが、個人開業はプロフェッショナル、起業はパブリックで、それぞれ違う方向を向いているイメージですね。

会社を作ったほうがいいのか、フリーランスで活動したほうがいいのか、といった相談は、特に女性の方から受けることが結構あるので、悩まれている方が多いのかなって思います。

フリーランスを続けてみて、もっと事業を拡大させたいと考えたときに従業員を抱える、それでもし失敗してしまったらまたフリーランスに戻る、といったふうに行ったり来たりするのもアリですよね。

―私の周りでも特に女性の方から、一人でやっていくか、従業員を雇用して拡大していくか、といったお話はたびたび聞きます。
働き方が少しずつ多様化していることで、選択肢が広がった部分もあるのかもしれないですね。

真の女性活躍社会に求められるもの

成井五久実さん

―今の話にもつながるかもしれないんですが、成井さんは女性起業家を支援する活動もされています。

今の日本は「ガラスの天井」という言葉があるとおり、まだまだ女性が活躍する社会という意味では未熟だと思うんですが、それを変えていくにはどういった変化が必要だと思いますか?

成井さん:そうですね……、最近エドテックを取り入れる友人もいて、そういった教育の部分から見直していかないのかな、と思うんですけど、企業ができることでいえば、女性に責任を負わせてみることから始めてもいいのではないかと思います。

女性は男性よりも自己肯定感が低いといわれていて(※6)、なにか責任者や代表を決める際に「私にはできない」と考えてしまうケースもあると思うんです。

※6 一般的にいわれていることだが、実際に内閣府による平成30年度の「我が国と諸外国の若者の意識に関する調査」を見ても、アメリカやフランス、ドイツなど調査対象国7か国の中で日本がもっとも「自分への満足感」が低く(p.8)、そのうえでさらに男性よりも女性のほうが低い(p.18)ことがわかる。

▶参考:内閣府, 我が国と諸外国の若者の意識に関する調査 (平成30年度), 第2部 調査の結果 第1章 人生観関係

成井さん:でも、実際に「じゃあこのセクションの代表お願いね」って頼むと、がんばってくれるんですよね。

できるかできないかなんて、最初はだれにもわからないじゃないですか。
なので、雇用主はどんどん芽が出そうな人に責任を渡していったほうがいいと思います。

もともと私も、最初から社長だったわけではなくて、社長職が長くなって板についてきたと思っているので。
キャリア論としては、ヤドカリのように最初に自分の肩書きや器を大きくして、そこに体を合わせて大きくなっていけばいいと考えているんです。

女性活躍の鍵は、裁量権を女性に与えて任せてみること。
それによって、その女性も自分の体をその役職に合わせられたら非常にいいなと思います。

ただ、今は「女性リーダーの割合を増やすこと」が目的になってしまって、帳尻合わせのように事業シナジーの生まれない女性社外取締役を呼び入れて、実質は男性が権力を持っている、といったケースも見られますが、それでは本末転倒ですよね。

やはりリーダーをやりたいと考えている方、資質のある方に任せないと意味がないので、日本社会のなかで、社内の女性を育てる環境がもっと築いていければいいと思います。

―そうですね、「見せかけの女性活躍」は問題視されている部分ですよね。

成井さん:女性活躍だけでなく、ESG経営や環境問題においても、見せかけは多いですよね。

SDGsに注目が集まる今、環境保全に取り組んでいたリ、ダイバーシティを実現させていたりすることは社会性が高く、企業イメージを高めることにもつながるので、やりたがる企業が多いのだと思いますが、グリーンウォッシュなどの問題も見られ、このまま見せかけの資本主義になってしまうと良くないと危惧しています。

―それは本当に思います。
ただ、環境問題に関しては、きちんと現状の問題点を理解したうえで適切に取り組んでほしいと思う一方で、ダイバーシティ経営に関しては、見せかけでもいいからまずは女性や多様な人材を抜擢して、パッケージだけでも形成する、という期間を経ないと、本当の多様化社会は訪れないのかな、という気もします。

成井さん:そうですよね、難しいですね。
だからこそ、まずは企業内で女性従業員をどんどん抜擢していくということが必要で、そうすることで、社会全体に変化が起こるのではないかと思います。

―そうですね、役職を持った女性が社内に増えることで、女性が活躍しやすい企業になれば、そういった企業が増えるだけで社会そのものが変わることになりますもんね。

働く人のことを第一に考えるESG経営

成井五久実さん

―先ほど「ESG経営」というキーワードも出てきましたが、御社では積極的に取り組んでいらっしゃる部分だと思います。
特に重視していることはなんでしょうか?

成井さん:そうですね、今の話とつながりますが、ダイバーシティ経営といいますか、本質的な意味での抜擢、やりがいといった面で、人材の部分に非常に力を入れています。

私は「自己実現」の定義を「自分の強みを発揮して、それが社会に受け入れられていくこと」だと捉えていて、そのうえで対価が生まれ、稼ぐことができれば、その好循環こそが真の自己実現に近い状態なのかな、と思います。

自分の強みを発揮しているだけで社会に受け入れられなかったり、お金にならなかったりする状態だと、自己実現というより自己満足の域なんじゃないかと思うので、やはり社会性が必要だと考えているんです。

そういったものを従業員の方々に感じてもらえるような組織づくりが肝だと思い、具体的には会社負担で受けられる健康診断の内容を増やしました。

それまでベンチャーだったこともあって最低限の内容しか受けられませんでしたが、今年から乳がんや子宮がんなど婦人科系の幅を広げています。
やはり体が資本なので、一人ひとりに自分自身を大事にしてもらいたいです。

それと「プロフェッショナル制度」というものを導入し、書籍購入、有料セミナー、資格取得にかかる費用もほぼ全額支給しています。

たとえばライターさんだったらライティング能力、ディレクターさんだったらディレクション能力、そういった個人の強みを発揮するというプロフェッショナリズムに対して会社が投資していく姿勢は、長期的に見ると、先ほど申し上げた自己実現につながっていくと考えています。

このように、まずは健康面とスキル面での支援を始めてみることにしました。

―実際に利用されている方はいますか?

成井さん:はい、実際に健康診断で病気が早期発見できた従業員がいました。

病はその人の人生に深く関わることだと思うので、企業の意思決定者がこうして取り組むだけで、一人でも多くの人生が変わることがある、というのは、かなり重要性を感じます。

あとは、みんなが自分のやりたい仕事をできているのかというところで、経営者はどうやってやりがいを提供していくべきか、日々考えています。

―健康診断は自費で受けるとなると後回しにしがちなものだと思うので、もしかしたらその病を早くに見つけることができなかったかもしれないと思うと、かなり深いですね……。

ウェルビーイングに直結する事業

―ウェルビーイングにもこだわりを持っていらっしゃると思いますが、その思いをビジネス面に反映させることはありますか?

成井さん:今年の5月にESG特化型オウンドメディアサービス「Ownd for ESG」をリリースしました。

最近、上場企業を中心に「サステナビリティレポート」という、環境問題にまつわる活動や人的資本を開示して、よりパブリックに認められる企業を目指すアクションが増えており、その発信をサポートするサービスです。

そういうことって、ライターさんでもなかなか社内にいると書けないことも多いじゃないですか。
なので、こちらで代行して執筆して、ネット上に公開するということを行っています。

ウェルビーイングに直結する事業なので、非常に大事だと感じています。

―どういった会社が導入されているんですか?

成井さん:想定していたところではあるのですが、今は高い意識を持ったエンタープライズ企業が多いですね。

たとえば伊藤忠商事さんの『EQUALLY BEAUTIFUL』というサステナビリティに関するオウンドメディアを運営しており、ファンの多い企業なので、取り組みをきちんとユーザーに伝える大事なハブになっているんじゃないかと思います。

ただ、一過性のトレンドではなく、今後も続いていくものだと思っているので、これから中小企業なども増えてくると予測しています。

オウンドメディアを開設するなら押さえておきたい3点

成井五久実さん

―アフタークッキー時代に入ることで、広告効果は減少するといわれているじゃないですか。
よりオウンドメディアの需要が高まっていくと思うんですけど、後発で始めるにはどうしてもファンを集めるのに苦労するんじゃないかと思います。

今からオウンドメディアを始めようと検討している方へ、なにかヒントはありますか?

成井さん:おっしゃるとおり、ただ作るだけで読まれなかったら意味がないと思うので、集客装置をきちんと作ることは必要だと思っています。

主に3つあり、まずはSEO。
やはりGoogleからの検索というのは、大きなインパクトがあると思うので、どんなにニッチなキーワードでも、その会社のサービスにつながるものを上位に表示されるようにするということ。

2つめは、多くの方が既に取り入れているInstagramをはじめとしたSNSからの接点を作るということ。

3つめは、リファラルですね。
シナジーが見込める第三者メディアと提携して、相互送客を行うこと。
これらはメディアづくりの基本だと考えています。

―第三者メディアへの掲載は、既に多くの企業が行っているため、すぐに埋もれてしまうんじゃないかとお悩みの方もいらっしゃいそうです。

成井さん:そうですね。
でも、いかにその瞬間、瞬間の面を増やせるかが大事だと思うんです。
すぐに流れてしまうからといって掲載しないのでは、可能性は増えない一方なので、一人でも多くの人の目に留まってもらうためにも、「面を増やす」ということを戦略の中に組み込むと、自社のメディアをどこに露出するべきかが見えてくるんじゃないかと思います。

―なるほど。
そのためには、じっくり戦略を練ることができるように、専任の担当者なり他社のバックアップなりを強化するところにも気を配らないといけないですね。

拡大するSaaS市場における差別化ポイント

―御社ではSaaS(※7)にも注力していますが、国内市場は大きな伸び率で成長を続けており、競合が多いなか、どういったところで差別化を図るのかという点もお伺いできますか?

※7 SaaS:「Software As A Service」の略称で、クラウドサービスにあるソフトウェアをインターネットを経由することでどこでも利用できるようになるというサービスのこと。

成井さん:そうですね、まず当社ではオウンドメディア事業に振り切っていくという決定をしていて、SaaSの商品というのはCMS(※8)でオウンドメディアを運営できるシステムを指しているので、事業として軸が通っているということで注力しています。

※8 CMS:「Contents Management System」の略称で、そのまま「コンテンツ・マネジメント・システム」と呼ばれることもある。webサイトのコンテンツを構成するテキストや画像、デザインといった要素を一元管理できるシステムのこと。

成井さん:差別化できるポイントとしては、そのシステム上でワンストップで記事を仕上げられたり、集客戦略まで立てられたり、といったところが他社にはない強みだと思います。

たとえばオウンドメディアを作って、PVがなかなか伸びないというときに、担当者さんが管理画面から相談することができたり、記事を発注できたり……、システム起点でコンテンツ制作もグロース戦略もコンサルティングできるようなプラットフォームの構築を企画しているんです。

もちろん自身で記事を書くことも可能ですが、発注もその場でできてしまうと、オウンドメディアをはじめとする企業の発信力というのも発展するんじゃないかと思っています。

―たしかに、オウンドメディアを立ち上げたいと思っても、まずライターやエディターなど、担当者を採用するところから始めないといけないという企業も多そうですよね。

成井さん:そうなると、どうしても形になるまで時間がかかってしまうじゃないですか。

制作費や人材費用をふくめるとミニマムでも月に300~400万円くらいはかかってしまうと思うので、どんどんアウトソース化が進んでいくのかな、と思います。

―それによって働き方も広がるといった側面もありそうですね。
ちなみにSaaSについては特定の業界に向けたものが発展していくといわれていると思うんですけど、御社でもなにか特化型のシステムの開発などはされていますか?

成井さん:昨年2021年にリリースした「Clipkit for EC」という、ShopifyとAPI連携したEC事業者向けオウンドメディア構築ツールは引き続き注力していきたいと考えています。

D2Cなどネットを通じて商品を販売するブランドや企業が多いなかで、デジタル上でモノのストーリーを伝えることは、その購買時に絶対大きな影響を与えると感じているんです。

あとはDXが加速していることによって、内製化もどんどん進むと思うんですね。
自社サイト上で情報を発信して、同時にユーザーの予約受付や会員登録までできる企業が非常に多くなると考えています。

なので、宿やレストランなどの予約機能を持った企業とAPI連携させていただいて、独自ドメインで予約できるようなサイトを構築するという企画をいま進めています。

―すべて同一のサイト上で完結できたら、とても便利ですね。

成井さん:さまざまなお店や宿の情報を集めた予約サイトのシェアも拡大していくとは思うんですが、でもそういったサイトを介すと、企業側には手数料や仲介料などがかかるじゃないですか。

利益の15%だとして、積み重ねると大きなものになりますよね。
それを自社ドメインを成長させるための軍資金に利用したら、長期的な目線では、こちらのほうが採算がとれると思うんです。

―たしかに、そうなればユーザーに向けた特典を作ることもできますし、いろいろと施策の幅も広がりそうです。

ウェルビーイングを体現しながら「オウンドメディア」の第一想起企業に

成井五久実さん

―最後に、今後の展望についてお聞かせいただけますか?

成井さん:やはり先ほど申し上げたとおり、ESG、特にウェルビーイングをきちんと体現した会社づくりをしていきたいですね。

「持続可能性」という言葉は本当に深いと思うんですが、地球環境を維持するための責任を負わなくてはいけないというのはもちろん、人が長く生きがいをもって働いていける社会にするために、今まで以上に企業がコミットしていかないといけない時代だと考えています。

なので、健康面、スキル面などを強化して人の資本を増やしながら、そのうえで、ほかの企業さまがESGに関わる部分でなにかを伝えようとしたときに、「オウンドメディア」で第一想起を獲得できるような企業に発展していきたいです。

―なるほど、時代に即した組織づくりは、まさしく4象限でいうところの「社会に求められること」を重視されている成井さんならではの視点だと思います。

シナジーを生み出すには

株式会社スマートメディア

繰り返しになりますが、Cookie制限によって広告効果が以前よりも期待できなくなったことはマーケターであれば周知の事実でしょう。それによってコンテンツマーケティングを重視するために、オウンドメディアの運営を始める企業は今まで以上に増えることが想像できます。

もともと「メディア(media)」とは「媒介物」を意味し、つまりオウンドメディアとは、いうまでもなく「自ら発信する」ことを選んだ者が行き着く目的地といった体裁といえます。

個々の情報がより大きな意味を持つようになるWeb3.0時代において、「ただ発信するだけ」の器としてのオウンドメディアは求められていません。企業には自社ならではの情報を見出し、それを求めている人のもとへ届けるという業務が増えることになるわけです。

今までであれば、専任の担当者を雇用するまで稼働できない、あるいは、もしかしたらリソースを生みだせないまま見切り発車してしまう、というケースが多かったのではないでしょうか。

しかし多様性こそが力となる時代では、自社でまかなえないものは、それが得意なところにアウトソーシングすることが可能になりました。

向き不向きを均すのではなく、向きも不向きもあることを認める社会へ。不得意な部分を他者に任せることができれば、もっと得意な部分を伸ばすことができます。

これは企業の話ですが、その組織は人によって成り立っているので、人と人との関わり合いも同じといえるかもしれません。そう思うと、人も企業も、外との結びつきによってどんどん強まっていくように感じます。

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この記事を書いた人

浦田みなみ
元某ライフスタイルメディア編集長。2011年小説『空のつくりかた』刊行。モットーは「人に甘く、自分にも甘く」。自分を甘やかし続けた結果、コンプレックスだった声を克服し、調子に乗ってPodcastを始めました。BIG LOVE……

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