
ブランディングとは?意味や効果、実践方法を初心者にもわかりやすく解説
多くの企業がブランディングの重要性を認識している一方で、その本質や実践方法を深く理解しているケースは少なくありません。
ブランディングとは、企業や商品、サービスが「なぜ選ばれるのか」を明確にし、価格競争に巻き込まれずに価値で勝負できる状態をつくることです。
本記事では、ブランディングの基本から意味・やり方・マーケティングとの違いまで、わかりやすく解説。
成功事例やよくある失敗パターン、実践ステップなど、実践に役立つ情報をお届けします。
ブランディングを通じて、価格ではなく価値で選ばれる企業を目指しましょう。
目次
ブランディングとは?簡単にわかりやすく解説

ブランディングとは、企業や商品・サービスが「選ばれる理由」を明確にし、顧客との関係を築くための取り組みです。価値の伝達と体験を通じて信頼や共感を育てていくプロセスといえます。
ブランディングの定義と役割
ブランディングとは、企業や商品・サービスに独自の価値やイメージを持たせ、顧客の心に「選ばれる理由」を作る活動を指します。
簡単に言えば、単に商品を売るだけでなく、「なぜその商品を選ぶのか」「なぜその企業から買うのか」に答える価値を作り、伝えることがブランディングの本質です。
近年は、市場には類似する商品やサービスがあふれており、機能や価格だけでは選ばれにくくなっています。そんななかで他社との差別化を図るには、明確な価値を提示し、それを一貫性のある体験やメッセージとして伝えていく必要があります。
たとえば、同じような性能のスマートフォンが複数ある中でAppleが選ばれるのは、製品のスペックだけでなく、「世界観」や「信頼感」といったブランドの価値が伝わっているからです。ブランドは企業が一方的につくるものではなく、顧客の頭の中に存在するものであり、共感されるストーリーや体験を通じて築かれていきます。
だからこそ、ブランディングは顧客との関係を深め、選ばれる企業・サービスになるために欠かせない活動だといえるでしょう。
また、ブランディングの役割は、顧客との信頼関係を築き、「自社を選んでもらう理由」を明確にすることです。
商品やサービスが溢れるなかで、ただ存在するだけでは選ばれません。必要なのは、他社と違う価値を伝え、それを体験として届けることです。
このようにブランディングによって、認知・信頼・差別化・ロイヤルティといった価値を一貫して生み出すことができます。
ブランディングの本質
ブランディングと聞くと、ロゴや広告、デザインを思い浮かべがちですが、それは一部にすぎません。
ブランディングの本質は、企業の価値をどう言語化し、どのように顧客体験として届けるかにあります。一貫した価値提供こそが、顧客の信頼を生む源です。
単なるロゴやデザインだけでなく、商品やサービスに込められた「約束」や「信頼」、企業そのものが持つ“個性”を、消費者の心に定着させることがブランディングの本質と言えます。
たとえば、「安心・安全」を掲げる企業であれば、問い合わせ対応の丁寧さやアフターフォローの誠実さまで含めて、すべてがブランド体験になります。
視覚的なデザインだけでなく、企業と顧客との接点すべてがブランドを形づくっているのです。
ブランディングの重要性が高まっている理由
現代のビジネス環境において、ブランディングの重要性はますます高まっています。その背景には、以下のような市場環境の変化があります。
①商品・サービスの機能的差別化が難しい
技術の進歩により、商品の機能や品質での差別化が難しくなっています。たとえば、スマートフォンの基本機能はどのメーカーも大差がありません。
このような状況下では、ブランドイメージや体験価値での差別化が競争優位の源泉となります。
②情報過多によって選択が困難
インターネットの普及により、消費者は膨大な情報にさらされています。消費者は1つの商品を購入するまでに、たくさんの商品と比較・検討しています。
この中で選ばれるためには、明確なブランドイメージが不可欠です。
③価格競争に限界がある
価格だけで勝負すると、利益率の低下や企業体力の消耗につながります。特に中小企業にとって、大手企業との価格競争は致命的です。
ブランディングによって価格以外の価値を提供することで、適正な価格での販売が可能になります。
④顧客ロイヤルティの重要性が増大している
新規顧客の獲得コストは、既存顧客維持よりも大幅に高いと言われています。
だからこそ、ブランドへの愛着を持つ顧客は、リピート購入や口コミによる新規顧客の紹介など、企業にとって大きな資産となります。
規模の大小を問わず、すべての企業にとってブランディングは避けて通れない経営課題となっているといえるでしょう。
ブランディングとマーケティングの違い

ブランディングとマーケティングは混同されがちですが、目的も役割も異なります。両者の違いを明確に理解することで、効果的な経営判断が可能になります。
この章では、それぞれの特徴を丁寧に解説します。
「売る」マーケティングと、「選ばれる」ブランディング
マーケティングは、商品やサービスを効率的に「売る仕組み」をつくる活動です。広告・SEO・価格戦略・販売チャネル設計などが含まれます。
一方、ブランディングは「選ばれる理由」や「存在意義(Why)」を定義し、顧客との信頼関係を長期的に育てる活動です。
たとえば、まだ無名の企業が広告を出しても、「その会社を選ぶ理由」がなければ響きません。ですが、丁寧な対応や理念が伝わっている企業であれば、広告の効果は格段に高まります。
つまり、ブランディングで「ブランドの土台」を整え、マーケティングでその上に施策を積み重ねるイメージです。
中小企業ほどブランディングが効果的な理由
特に中小企業では、短期的な販促に頼りがちですが、他社との違いが伝わらなければ価格競争に陥る恐れもあります。
長く愛される企業になるには、「自社の価値を伝える力=ブランディング」が欠かせません。マーケティング施策を最大限に活かすためにも、まずはブランディングに向き合う必要があります。
ブランディングとマーケティングの違いを一覧で整理【比較表】
ブランディングとマーケティングの主な違いは以下の通りです。
観点 | ブランディング | マーケティング |
---|---|---|
目的 | 企業・商品の価値観や存在意義を確立する | 商品・サービスの販売を促進する |
時間軸 | 長期的(数年〜数十年) | 比較的短期的(数ヶ月〜数年) |
対象 | 企業全体・商品全体のイメージ | 特定の商品・サービスの販売 |
活動内容 | 価値観の明確化、一貫性の確保 | 広告、プロモーション、価格戦略など |
成果指標 | 認知度、好感度、ロイヤリティなど | 売上、コンバージョン率、ROIなど |
ブランディングの効果とメリット

技術や品質だけで他社と差別化することが難しくなった今、企業の安定性と持続可能性を高める上でも、ブランディングは有効な手段となります。
この章では、ブランディングを行うことで得られる具体的な効果とメリットをくわしく紹介します。
効果①:信頼され、ロイヤルカスタマーや取引先が増える
ブランディングの大きなメリットの一つは、企業への「信頼」が高まり、長期的なファン(ロイヤルカスタマー)や優良な取引先が増えることです。
一貫したブランドメッセージやビジュアルが信頼感を生み、ユーザーはその企業や商品に対して安心感を抱くようになります。
結果として、リピーターやファンが増え、SNS上でのクチコミや紹介が自然と広がる好循環が生まれます。
また、企業価値の上昇により、M&A、投資家、金融機関といったステークホルダーからの信頼も得やすくなります。
ブランディングは、目に見える数値だけでなく、「選ばれ続ける存在」になる土台を築く効果も持っています。
効果②:価格競争から脱却し、利益率を維持しやすくなる
ブランドの価値が確立されると、顧客は価格や機能だけではなく、「そのブランドだから」という理由で商品やサービスを選ぶようになります。
このように、ブランディングは価格以外の軸での差別化を可能にし、値下げ競争に巻き込まれるリスクを減らします。その結果、適正価格でも選ばれやすくなり、利益率の維持・向上につながります。
さらに、ブランド認知が高まると、広告費を抑えても一定の集客ができるようになります。
一貫したブランドメッセージは、少ない接触回数でも記憶に残りやすく、広告の効率も高まります。
価格競争に頼らないビジネスモデルの確立は、長期的な成長を目指す企業にとって大きな強みになります。
効果③:採用力や従業員エンゲージメントが向上する
ブランディングは社外だけでなく、社内にも良い影響をもたらします。自社の“らしさ”やストーリーが明確になることで、企業文化への共感が生まれやすくなり、従業員のエンゲージメントが向上します。
さらに、ブランドに共感した人材が集まりやすくなるため、採用活動においても有利に働きます。自社のビジョンや価値観を発信できている企業は、求職者に「この会社で働きたい」と思わせる力を持つでしょう。
魅力的なブランドは、社員の誇りや自信にもつながり、社内のモチベーションや生産性向上にも寄与します。
ブランディングの4つの種類と特徴

ブランディングと一口に言っても、その対象や目的によってアプローチは大きく異なります。ここでは、
代表的なブランディング手法である、企業ブランディング・商品ブランディング・インナーブランディング・パーソナルブランディングについて、それぞれの特徴と実践方法をわかりやすく解説します。
企業ブランディング
企業ブランディングとは、会社全体の信頼性や社会的イメージを育てていく取り組みです。
たとえば「〇〇社=安心」「〇〇社=先進的」といった印象を浸透させることで、顧客・求職者・投資家・パートナー企業からの選ばれやすさが向上します。
効果的な施策例:
- 経営理念やビジョンの明文化と社外発信(Webサイト・会社案内・IR資料など)
- コーポレートサイトの刷新やPR動画の制作
- SDGsや社会貢献活動の取り組み
- 代表者メッセージやストーリーの公開(対外的信頼を強化)
これらを一貫性のあるトーンで継続的に発信することで、企業ブランドの信頼性が積み上がっていきます。
商品ブランディング
商品ブランディングは、製品・サービスごとに「なぜ選ばれるのか?」という明確な価値を打ち出す施策です。
競合が多い市場では、スペックや価格だけでなく「体験」や「意味づけ」で差別化する必要があります。
効果的な施策例:
- ターゲットに響くネーミングやキャッチコピーの設計
- パッケージデザインやビジュアルの世界観づくり
- ブランドサイトやSNSでのストーリーテリング
- プロモーション動画での“使用シーン”可視化
「この商品を使うと、どんな未来が手に入るか?」を丁寧に描くことが、ファンの獲得につながります。
インナーブランディング
インナーブランディングは、従業員が企業のブランド価値を理解し、体現する文化を育む活動です。
社内にブランドへの共感や理解が広がることで、顧客接点における行動の質や一貫性が高まり、最終的に顧客満足度や業績向上にもつながります。
効果的な施策例:
- 企業理念・バリューの社内向け動画や冊子の配布
- 全社員向けブランド研修やワークショップの実施
- 社内報・ポータルサイトでのブランド体現事例の共有
- 従業員が誇れるような表彰制度の設計
社員がブランドを「他人事」ではなく「自分ごと」として理解し、行動に移せるような仕組みづくりが鍵です。
パーソナルブランディング
パーソナルブランディングは、経営者や個人(専門家・営業職・フリーランスなど)が自分自身の信頼や専門性を可視化する戦略です。
情報発信を通じて、自分の考え方・経験・価値観に共感するファンを増やし、仕事や人脈の広がりにつなげることができます。
効果的な施策例:
- SNSやnoteでの継続的な情報発信
- 登壇・講演・イベント出演を通じた認知拡大
- 書籍・メディア露出による専門性の打ち出し
- YouTubeやPodcastなどの自社メディア運用
特に経営者の場合、自身の言動や発信が企業イメージに直結するため、戦略的にパーソナルブランディングを行うことで企業の魅力も大きく高まります。
まずはここから!専門知識ゼロでも始められるブランディング実践術

ブランディングは長期的な視点で取り組むものですが、その第一歩は意外と身近なところから始められます。
ここでは、専門的な知識がなくても始められる、4つの実践アクションをご紹介します。
ブランドの“らしさ”を言語化し、社内外への発信に一貫性を持たせるきっかけとして、ぜひご活用ください。
「自社らしさ」を言語化するワークショップを開く
経営層や現場のメンバーが集まって、「自社の強み」や「お客様に選ばれる理由」などをテーマに、自由に意見を出し合うワークショップを開催してみましょう。
「自社を色や言葉で表すと?」といった感覚的な問いも加えると、ブランドのらしさを引き出すことができます。
出てきたキーワードや表現を整理することで、ブランドの核が見え、今後の発信や行動の軸になります。
顧客の声を集めて「外から見たブランド像」を知る
既存顧客や取引先に対して、「自社を知ったきっかけ」「選んだ理由」「印象に残っている点」などを尋ねる簡単なアンケートやヒアリングを行ってみましょう。
実際の声を集めることで、社内のイメージとのギャップや、見過ごしていた魅力に気づける可能性があります。今後のブランディング戦略のヒントにもなる重要なステップです。
競合社との違いを明確にするブランド比較表を作る
自社と競合他社のWebサイトやロゴ、広告、SNSなどを比較し、「どのようなメッセージを発信しているか」「ビジュアル的な印象や、使う言葉のトーンにどんな違いがあるか」を一覧にまとめてみましょう。
競合と並べて見ることで、自社の独自性やブレているポイントが可視化され、どこを強化すべきかが明確になります。
SNSやWebサイトのトーンをチェックし、発信を整える
公式SNSやWebサイトのプロフィール、投稿内容などをチェックし、ブランドイメージやメッセージに一貫性があるかを確認してみることをおすすめします。
トーンやビジュアルにズレがあると、顧客に混乱や不信感を与える恐れがあります。発信内容を統一することで、ブランドへの信頼度が着実に高まります。
ブランディングの始め方|5STEPで解説

「何から始めればいいのか分からない」そんな方に向けて、どんな企業でも取り組めるブランディングの基本ステップを5つに分けて解説します。
STEP①:現状分析と課題整理
ブランディングは「自社の独自性」を活かしてポジショニングする戦略です。まずは現状を客観視することで、今どこに立っていて、どんな価値を強みにできるのかが明らかになります。
まずは、自社の現状を正しく把握することが出発点です。顧客・自社・競合の3軸で情報を収集し、「何が強みで、何が選ばれていないのか」を客観的に洗い出します。
効果的な施策例
- 顧客インタビュー/アンケート調査
- SNSの口コミ分析(ポジネガ傾向)
- SWOT分析や3C分析を活用した現状の整理
ポジショニングマップの活用
競合との差別化を視覚化するために、「価格×デザイン性」や「機能性×ブランド認知」などの軸でマップを作成すると、空いているポジションや訴求の方向性が明確になります。
STEP②:ブランドの軸をつくる(ミッション・ビジョン・バリューなど)
ブランディングの中核を担うのが、ミッション・ビジョン・バリュー(MVV)の設計です。
ここでは、
- ミッション:なぜ私たちは存在するのか(存在目的)
- ビジョン:どんな未来を創りたいのか(目指す姿)
- バリュー:何を大切にして行動するのか(価値観)
を言語化し、ブランドの“軸”を明確にします。
MVVの設計の際には、現場のリアルな価値観や言葉を反映すると、社員の共感・自走を生む“生きたブランド軸”が生まれるでしょう。
ミッション:存在意義を言葉にする
ミッションは「自社は何のために存在しているのか」を示す言葉です。社会や顧客に提供する価値を一文で表現し、全ての活動の出発点となります。
例:
- 「人と人をつなぎ、よりよい未来を創る」(IT企業)
- 「中小企業の挑戦を、テクノロジーの力で支援する」(SaaSスタートアップ)
ビジョン:目指す未来を描く
ビジョンは、数年後に実現したい理想の姿を言語化します。ミッションを果たした先にある“ありたい姿”を明示することで、組織全体の方向性や成長イメージを共有できます。
例:
- 「地域で最も信頼されるパートナー企業へ」
- 「誰もが創造力を活かせる社会の実現」
バリュー:価値観・行動指針を定める
バリューは、日々の判断や行動の基準になる価値観です。現場の意思決定にブレが出ないよう、具体的で実践的な表現が理想です。
例:
- 「ユーザー起点で考える」
- 「スピードよりも本質を大切にする」
- 「失敗を恐れず挑戦する」
STEP③:ターゲット・ペルソナの設定
ブランドの価値を正しく届けるためには、「ターゲット」と「ペルソナ」の両方を設計することが重要です。
ターゲットはブランドの方向性を定め、ペルソナはその価値を具体的にどう伝えるかを決めるための土台となります。この2つを組み合わせることで、ブランドの軸がブレず、伝えたいメッセージがより的確に届くようになります。
すべての人に価値を届けようとする姿勢は、結果的に“誰にも刺さらない”ブランドを生み出すリスクをはらんでいます。
また、陥りがちな落とし穴が「売りやすい顧客」だけを追いかけることです。短期的な成果は得られるかもしれませんが、長期的にはブランドの本質的な価値が薄れ、信頼やファンが定着しにくくなります。
だからこそ、理想の顧客(=ペルソナ)に価値を届ける前提で、ターゲットを明確に定めることが、ブランド構築の基盤になるのです。
ターゲット設定・ペルソナ設計の仕方について、くわしく知りたい方は以下の記事をご覧ください。
STEP④:ビジュアルとデザインの統一
ブランドの世界観を視覚で伝える「ビジュアル設計」は、ブランド認知の起点となる重要なステップです。
ブランドコンセプトが明確になったら、次はそれを「見える形」で表現する工程に入ります。ロゴ、カラー、フォント、画像、コピーなど、すべてのデザイン要素をブランドの世界観に沿って統一することで、「そのブランドらしさ」が自然と伝わるようになります。
色彩心理学の研究によれば、ブランドカラーは企業の認知度向上に大きく貢献することが示されています。例えば、コカ・コーラの赤、ティファニーのブルー、スターバックスのグリーンなど、色彩はブランドアイデンティティの重要な要素となっています。
また、ビジュアルとストーリーの一貫性も非常に重要です。ストーリーとビジュアルが矛盾していたり、接点ごとに異なる印象を与えたりすると、ブランドイメージが分散し、ユーザーの記憶に残りづらくなってしまいます。
デザインをプロに依頼する場合も、「どんなブランドにしたいのか」「何を大切にしているのか」といった背景や意図を丁寧に伝えることが鍵となります。
ロゴやカラーのルール、トーン&マナーを社内外で共有する「ブランドガイドライン」を作成しておくと、社内運用や外部発注時にもブレが起きにくくなります。
STEP⑤:継続的な発信と改善
ブランディングは、設計して終わりではなく、“育て続ける”ことが大切です。
ブランドの世界観や価値を一貫して発信し続けることで、顧客の記憶に定着し、「選ばれる理由」が生まれていきます。
Webサイト、SNS、プレスリリース、オウンドメディア、イベントなど、複数のチャネルを活用しながら、継続的にブランドの声を届けましょう。
また、顧客ニーズや市場環境は日々変化しています。最初に設計したブランドが、常に正解であるとは限りません。
そのため、発信後の反応を定期的に観察・分析し、必要に応じて内容や方向性を見直すことが重要です。
このときに意識したいのが、PDCAサイクル(Plan → Do → Check → Act)です。ブランドが想定どおりに届いているか、共感されているか、競合との差別化ができているかなどを検証し、改善を重ねていきましょう。
なお、マーケティング担当や広報だけでなく、全社でフィードバックを拾う仕組みづくりをしておくと、さらに効果的です。
ブランディング施策を成功させる5つのコツ

ブランディング施策を成功させるために重要なのは、「顧客の頭の中に、自社の価値をどう印象づけるか」を長期的な視野で設計することです。
短期的な売上向上だけを目的にした施策とは異なり、ブランディングはすべての接点で一貫した「ブランド体験」を届ける必要があります。
ここでは、ブランディングを効果的に進めるための5つのコツをご紹介します。
コツ①:すべての発信を「ブランドの世界観」に紐づける
ブランディングで最も重要なのは、「自社はどんな存在でありたいのか(=ブランドのあるべき姿)」を明確にし、その世界観に基づいてすべての施策を設計することです。
SNS投稿や広告、販促キャンペーンであっても、ブランドの世界観とズレていれば、顧客にとって一貫した印象を残すことはできません。
特に注意すべきなのは、短期的な数字を追うあまり、「ブランドらしさ」を犠牲にしてしまうケースです。
長期的に見れば、ブランドの軸をぶらさずに、施策を継続することが、最終的なファンの獲得やLTV(顧客生涯価値)の向上につながります。
コツ②:発信内容に「一貫性」を持たせる
ブランディングでは、「どこで誰が見ても同じ印象を持ってもらえる状態」をつくることが求められます。
しかし、実際にはSNS・営業資料・接客対応など、接点ごとにトーンやメッセージがバラバラになりがちです。こうした不一致はブランドイメージの曖昧化を招きます。
これを防ぐには、ブランドガイドラインを用意し、言葉づかいやデザイン、対応の方針まで含めて社内に共有・定着させることが重要です。一貫性のあるブランド表現は、顧客の記憶に残るブランドをつくる土台となります。
コツ③:ブランドの「ストーリー」で共感を生む
自社ブランドへの共感を高めるためには、「どんな想いでこの商品をつくったのか」「なぜこの課題に取り組んでいるのか」といった背景ストーリーが重要です。
価格や機能面では競合と差別化が難しいなかで、「自分たちだけの物語」には唯一無二の価値があります。
Webサイト、note、SNSなどを通じて、こうしたストーリーを丁寧に伝えることで、顧客はブランドに感情的なつながりを持ち、記憶にも残りやすくなります。
特にBtoBの領域では、企業の姿勢や思想に共感することが、成約の決め手になるケースも少なくありません。
コツ④:顧客体験すべてを「ブランド体験」として設計する
ブランドは、商品や広告だけで形づくられるものではありません。
顧客対応、SNSでの返信、イベントの雰囲気、購入後のフォローなど、顧客とのあらゆる接点が「ブランド体験」として認識されます。
どれほど魅力的な広告を打っていても、カスタマーサポートの対応が雑であれば、その瞬間にブランドへの信頼は、損なわれてしまいます。
一方で、すべての接点でブランドらしさを貫けていれば、体験の積み重ねが信頼や愛着につながり、ファンの育成へとつながっていきます。
コツ⑤:社内にもブランドを「浸透」させる
ブランディングは、社外向けの発信だけでは不十分です。
社内の一人ひとりがブランドの価値や方向性を理解し、日々の業務で体現している状態こそが、強いブランドの基盤になります。
そのためには、ブランドの価値観や目指す姿を言語化し、社内に明確に共有・浸透させる必要があります。
ブランドの価値観や目指す姿について、考える時間や対話の場を設けることで、組織全体に一体感が生まれ、現場とのズレも防げます。
さらに、社員自身がブランドを語れるようになれば、採用や営業の現場でも、説得力を持ってブランドを広めていくことができます。
ブランディング戦略設計でよくある失敗とその回避策

ブランディングの成否は、「戦略を立てる前段階」でほぼ決まると言っても過言ではありません。方向性を誤ったまま施策を積み重ねても、ブランドは顧客に響かず、期待した効果は得られないでしょう。
ここでは、特にありがちな戦略立案時の失敗と、それを避けるための具体策を紹介します。
失敗①:ブランドの核が曖昧なまま走り出す
最も多い失敗は、「ブランドの存在意義(ビジョン・ミッション・バリュー)」が曖昧なまま、見た目や発信の表層部分だけを整えようとするケースです。
こうしたブランドは社内外での共感や浸透が得られず、途中で迷走してしまうリスクが高くなります。
回避策
まずはブランドのコアとなる「何のために存在するのか(ビジョン)」「誰に何を届けるのか(ミッション)」「どんな価値観を大切にするのか(バリュー)」を明文化し、社内で共通認識を持ちましょう。
設定したミッション・ビジョン・バリューを起点に、戦略とクリエイティブ、社内外のコミュニケーションを設計していく必要があります。
失敗②:顧客理解が浅いままブランドを設計する
想像や感覚でブランドを設計してしまうと、実際の顧客とズレたブランドになってしまいます。
特に中小企業では「経営者の好み」が優先され、顧客にとって意味のないブランドになってしまうことも珍しくありません。
回避策
定量・定性の両面から調査を行い、顧客の価値観・行動・課題を深く理解しましょう。
そのうえで、解像度の高いペルソナを設計し、「この人にとって意味のあるブランドとは何か?」を起点に戦略を組み立てることが重要です。
失敗③:競合他社との差別化ポイントが不明確
自社の独自性が不明確なままブランディング戦略を立ててしまうと、似たような競合の中に埋もれ、価格や機能面の消耗戦に陥ってしまいます。
結果、ブランドとしての価値を高めることができず、短期的な施策に頼る悪循環に陥ることもあります。
回避策
自社の強み・競合との違い・顧客ニーズを掛け合わせて、明確な差別化ポイントを言語化しましょう。
それを一言で語れるブランドメッセージとして設計すれば、顧客の記憶に残る存在になれます。
失敗④:表層的な施策=ブランディングと勘違いする
「ロゴを変えた」「サイトを刷新した」などの施策を実施しただけで「ブランディングをした」と認識してしまうケースもあります。
しかし、こうした一過性の短期施策を行うだけでは、ブランドの本質的な価値や印象は変わりません。
ブランディングでは、顧客の頭の中に自社の価値をどう印象づけるか、という長期的視点が必要です。ブランディング戦略と短期的な売上向上施策を明確に切り分け、目指すブランドイメージを起点にすべての施策を紐づけていく必要があります。
回避策
ブランディングとは、「顧客の頭の中に、自社の価値をどう印象づけるか」を長期的に設計する行為です。
短期的な売上施策とは明確に切り分け、すべての施策をブランドのあるべき姿(理想像)に紐づけて設計する必要があります。
ブランディングの成功事例
企業にとってブランディングとは、単なる「イメージづくり」ではありません。理念や価値観を軸に、商品やサービス、顧客との接点まで一貫した体験を設計することで、売上や成長といった確かな成果につなげるプロセスです。
ここでは、実際に「どのような施策を行い」「どのような成果を上げたのか」実際の企業事例を紹介します。
ユニリーバ:サステナブルブランドが成長の中核に
ユニリーバは2010年、「Unilever Sustainable Living Plan(USLP)」を発表し、企業全体でサステナブル経営を推進。その中核にあたるのが、環境や社会課題の解決をブランドの使命に据える「Sustainable Living Brands(SLBs)」の戦略です。
たとえば、Doveは「リアルビューティーキャンペーン」を通じて女性の自己肯定を支援する取り組みを実施。Lifebuoyは衛生習慣の啓発を通じてブランド価値を高めました。
無印良品(良品計画):ブランド哲学の徹底がV字回復を実現
無印良品は、1990年代後半に業績不振に陥りましたが、「無印らしさ」の再定義を通じて再生に成功しました。「素材の選定」「工程の見直し」「包装の簡略化」という3つの基本理念を徹底し、商品から店舗設計、広告表現に至るまで一貫した世界観を構築しました。
さらに、世界の生活文化を発掘する「Found MUJI」プロジェクトや、顧客との接点を強化する「MUJI Passport」アプリの活用など、ブランドと生活者の関係性を深める施策を展開。
その結果、2000年代以降は業績がV字回復。2020年代には世界700店舗以上、売上約44億ドル規模のブランドへと成長しました。
キーエンス:広告に頼らずブランドを築き超高収益を達成
BtoB企業であるキーエンスは、ほとんど広告を使わず、「課題解決型営業」によって独自のブランド価値を築いた企業です。
顧客ごとに専任営業と技術担当者が最適な提案を行い、徹底的に顧客の生産性を向上させる支援を行うスタイルを徹底しています。
このスタイルが“ブランド”として顧客からの信頼を集め、営業担当者が「ソリューションパートナー」として企業に選ばれる理由になっていると言われています。
この結果、キーエンスは2024年度に売上9,672億円、営業利益4,950億円(営業利益率51.1%)という高収益を記録しています。
ブランディングを学ぶのにおすすめの本【初心者向け】

ブランディングについて「何から学べばいいの?」と迷っている方は、まず信頼できる入門書からスタートするのがおすすめです。
この章では、初心者にもわかりやすく、ビジネスの現場で活かせるブランディングの本を厳選して紹介します。
『ブランディング22の法則』:普遍的なルールが学べる
ブランド戦略の古典として長年読み継がれている一冊です。ブランドを築く際に押さえるべき基本的なルールを「22の法則」としてわかりやすく解説しています。
事業規模を問わず活用できる普遍的な視点が得られるため、最初に読む入門書として最適です。著者は「ポジショニング理論」で知られるアル・ライズです。
書籍情報:『ブランディング22の法則』アル・ライズ/ローラ・ライズ 著(東急エージェンシー出版)
『ブランディングの科学』:研究に基づいた理論を学べる
ブランディングにおいて感覚に頼るのではなく、実証研究に基づいた知見を得たい方におすすめです。
「なぜ人はブランドを選ぶのか」「ブランドの成長に必要な要素は何か」といった問いに、マーケティング科学の視点から答えてくれます。
やや専門的な用語もありますが、戦略設計の根拠を明確にしたいマーケティング担当者なら一読の価値があります。
書籍情報:『ブランディングの科学』バイロン・シャープ 著(朝日新聞出版)
『ブランド戦略シナリオ コンテクスト・ブランディング』:実践的な戦略設計を学べる
ブランドのコンセプト設計からコミュニケーション施策まで、戦略的に一貫性をもたせる方法を“シナリオ”という形で解説しています。
「戦略をどう施策につなげればよいか」で悩んでいる方にとって、実務に近い視点で学べる一冊です。
書籍情報:『ブランド戦略シナリオ コンテクスト・ブランディング』阿久津聡・石田茂 著(ダイヤモンド社)
『ストーリー・ブランディング』:心に響くブランドづくりを学べる
ブランドとは何を伝えるかではなく、「何者であるか」であるという視点で、物語を使ってブランドを構築する方法を解説した本です。
自社の“信じること”を軸に据えたブランドづくりを提唱しており、顧客の心に深く響くブランドを作りたい方におすすめです。
書籍情報:『ストーリー・ブランディング』ジム・シグノレリ 著(ダイレクト出版)
ブランディングに関するよくある質問(FAQ)

Q1. ブランディングは中小企業でも必要ですか?
はい、むしろ規模が小さい会社ほどブランディングが重要です。
限られたリソースの中で「選ばれる理由」を明確にし、価格競争やイメージの埋没を避けるためにも、自社らしさを伝える工夫が大きな武器になります。
Q2.すぐに効果は現れますか?
ブランディングは中長期的な活動です。短期間で売上や知名度が劇的に変わるものではありませんが、続けることで信頼や顧客ロイヤルティが着実に積み上がります。
まずは1年を目安に地道に継続することが大切です。
Q3. どんな企業事例を参考にすればいいですか?
同じ業種・規模の成功事例が最も参考になりますが、異業種のブランド施策から学べることも多いです。自社の強みや目的に合う実践例を複数集め、独自の切り口を探してみてください。
Q4. 社員のブランド理解を広げたい場合はどうすればいいですか?
社内ワークショップや勉強会、社内報などでブランド方針やエピソードを共有しましょう。現場の声や顧客対応の成功事例を取り上げ、全員でブランドづくりに参加する意識を育てることが重要です。
Q5. 予算が少なくても始められますか?
低コストでできる施策も多くあります。まずは社内の意識共有や、SNS発信、顧客アンケート、Webサイトの情報整理など、小さなことから始めるのがおすすめです。段階的に成果が積み上がることで、次の投資判断もしやすくなります。
まとめ:ブランディングは「選ばれる理由」をつくる戦略

ブランディングとは、企業や商品・サービスが「なぜ選ばれるのか」を明確にし、価格競争から脱却して、価値で勝負するための重要な戦略です。
この記事では、ブランディングの意味ややり方、マーケティングとの違いを解説し、成功事例や失敗パターン、導入ステップまでを紹介しました。
ブランディングのポイントは、単なる見た目やイメージ作りではなく、「顧客の頭の中にどのように位置づけられるか」を設計し、一貫性をもって継続することです。
ブランディングを通じて、自社ならではの価値を明確にし、顧客から選ばれ続ける存在を目指しましょう。
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