塗装業で独立・開業するには?独立するメリットや必要な手続きとありがちな失敗
塗装業で独立・開業したいと思っても、必要な手続きや資金など、知っておかないと事業を軌道に乗せられないことがたくさんあります。
そこでこの記事では、塗装業の独立・開業に向けて準備すべきことや手続き・方法について、一つずつまとめました。最後まで読み進めることで、塗装業の独立・開業までの道筋がわかるはずです。
やってしまいがちな失敗やその対策についても紹介しているので、塗装業で独立・開業を目指す方はぜひ参考にしてください。
目次
塗装業の独立・開業はメリットある?将来性は?
塗装業で独立・開業するメリットは、「収入の上限がないこと」と「好きなスタイルで働けること」があげられます。
サラリーでは制限されることが多い収入上限ですが、独立・開業すれば収入の幅はまさに青天井。大きな可能性を持つことができます。
また、仕事の規模や案件数を自分で調整できるため、仕事を中心にしたい場合や家族との時間を大切にしたい場合など、ご自身のライフスタイルに合わせて調整が可能です。
さらに、日本ではリフォーム市場の拡大が見込まれているため、塗装業の需要は安定しています。特に耐震性や省エネなどの観点から、既存の建物のメンテナンスが重視されています。
こうした理由から、塗装業は独立・開業に適した職種であり、安定した将来も期待できます。
参考:矢野経済研究所
塗装業で独立・開業するには?必要な手続きや申込み
塗装業で独立・開業するために、特別な資格は必要ありません。ですが、いくつかの手続きが必要です。
まず、個人事業主として開業する場合、最初に行うべきは税務署に開業届を提出することです。開業届を提出することで、事業主としての税務処理が始まります。
また、青色申告を選択する場合は、青色申告承認申請書も同時に提出する必要があります。青色申告することで税務上の優遇措置を受けられますので、多くの場合は白色ではなく青色を選択することになるでしょう。
一方、法人として塗装業を開業する場合は、もう少し複雑な手続きが必要です。
まず、会社の商号や本店の所在地、事業目的などの基本的な事項を決定し、これらを定款(ていかん)に記載します。定款が作成されたら、公証人役場で認証を受け、資本金の払い込みを行います。
次に、会社設立登記を法務局に申請します。無事に登記が完了すると、法人としての独立・開業を開始できます。
なお、500万円以上の工事を請け負うためには「建設業許可」の取得が必要です。開業当初は不要かもしれませんが、事業の拡大を検討する場合は取得を検討しましょう。
塗装業で独立・開業に向けて準備したい道具や備品
塗装業としての独立・開業に向けて、最低でもローラーや刷毛(はけ)、マスカー、養生テープなどの道具はもちろん必要です。ですが、それ以外にも準備したい道具や備品があります。
まず、高額になりやすい準備として足場や高圧洗浄機、コンプレッサーなどがあげられます。また、移動用の車両も必要となるでしょう。
これらはレンタルやリースという選択肢もありますが、本格的に事業を開始するなら高圧洗浄機やコンプレッサーは準備するようにしましょう。
また、工事のための道具以外にも、契約書や請求書の雛形、営業資料なども準備しておく必要があります。
独立・開業すると、作業するだけではなく事務作業や営業活動も自分で行う必要があります。これらを事前に準備しておくことで、事業を軌道に乗せやすくなるでしょう。
塗装業の独立・開業に必要な資金
独立・開業するためには、初期費用や運転資金といった費用が必要です。そこで、塗装業の独立・開業にはどの程度の費用が必要なのかを紹介します。
まずは開業時に必要な費用として、塗装道具や設備の購入が必要です。ローラー、刷毛、スプレーガンなどの基本的な塗装工具のほか、高圧洗浄機や安全装備など、これらの道具には、最低でも30万円から50万円程度が必要となるでしょう。
また、事務所や倉庫のレンタル費用も考えておく必要があります。自宅をオフィスとして使うことができればこのコストは抑えられますが、取引先や銀行などからの信用を高めるためには、事務所の用意をおすすめします。
このほか、法人として設立する場合は、会社登記にかかる費用や建設業の許可申請に必要な手数料も準備しておく必要があります。これらの費用にも、15万円から30万円程度が必要です。ここまでが、独立・開業時に必要な初期費用です。
さらに、営業を始めてからの運転資金も忘れてはなりません。家賃や材料費、広告費、場合によっては人件費も含め、数ヶ月分の資金を確保しておくことが安心です。
これらの費用を総合すると、塗装業の独立・開業には最低でも500万円程度の資金は用意しておく必要があります。より具体的な金額は、開業する業務の範囲や地域によって変わりますが、最低でも必要な費用を把握して計画を立てましょう。
資金調達の支援制度
独立・開業に向けて、資金調達は大きな課題。その課題を解決する方法として、助成金や融資があります。特に、創業時の資金調達を支援する制度は、多くの起業家にとって重要な手段となっています。ここでは、主な支援制度について紹介しましょう。
まず、国が運営する日本政策金融公庫からの融資があります。この融資は中小企業や個人事業主への支援を目的としており、低い金利で受けることができます。しかも、無保証人での融資も可能です。
また、都道府県や市区町村が用意する補助金もあります。補助金は融資と異なり、返済が不要です。条件として自治体に店舗があったり、移住が必要だったりするケースもありますが、うまく活用することで資金問題を解決する助けとなるでしょう。
資金調達は、多くの起業家がぶつかる壁です。それだけに、国や自治体が解決の選択肢を用意しています。各制度の特徴を理解し、自身のビジネスプランに最適な支援を選択することが、成功への第一歩と言えます。
塗装業に必要な資格・有利な資格
塗装業の独立・開業に必須の資格はありませんが、持っていることで受注しやすくなったり信用度が高まったりする資格はあります。ここでは、塗装業に関連する主要な資格を紹介します。
まずは、「塗装技能士」の資格が塗装業において最も基本的で重要です。この国家資格は、塗装の専門知識と技術力があることを証明し、レベルに応じて一級と二級があります。特に一級塗装技能士は国家資格に該当し、業界内で高い評価を受けます。
同じく国家資格としてあげられるのが、「有機溶剤作業主任者」です。有機溶剤作業主任者は、塗料に含まれる有機溶剤を安全に扱うための知識が求められる資格です。
二日間の有機溶剤作業主任者技能講習を受けて試験に合格すれば取得でき、合格率も90%と言われているので、比較的、取得しやすい資格と言えるでしょう。
また民間資格としては、一般社団法人全国住宅外壁診断士協会が主催する「外壁診断士」や一般財団法人塗装品質機構が主催する「外装劣化診断士」などがあげられます。これらの資格は実務年数が必要で、合格率も50%程度と、誰でも取得できるような資格ではありません。
これらの資格を取得することによって、専門性を高め、信頼性を向上させることが可能です。また、資格があることで、より幅広いプロジェクトに参加できるチャンスが増え、収入向上にもつながりやすくなるでしょう。
塗装業の独立・開業で失敗しやすいポイント
独立開業は、順風満帆に進むことばかりではありません。時には思うように進まず、壁にぶつかってしまうこともあるでしょう。
ここでは、塗装業の独立・開業で失敗しやすいポイントとして特に多い3つの内容について紹介します。失敗しやすいポイントを把握して事前に対策することで、事業を成功させやすくなるでしょう。
開業資金の計画不足や資金管理のミス
まずあげられる失敗が、開業資金の計画不足や資金管理のミスです。
塗装業での開業には、多額の初期投資が必要となる場合があります。このため、資金計画が不十分だと、事業が軌道に乗る前に資金が底をつきかねません。
特に、道具や材料の購入、事務所や倉庫の賃貸料、広告費用などが初期投資に含まれます。これらを総合的に考慮し、適切に計画を立てることが重要です。
また、資金管理のミスも多くの起業家が陥りがちな失敗です。特に注意したいのが、入金と支払いのタイミングです。計画的に管理していたとしても、顧客の支払い遅延や災害のような想定外の事態により、入金されなかったり支出が増えてしまったりします。
そのため、常に資金には余裕を持ちつつ、最悪のケースを想定しながら資金管理することが大切です。
顧客管理やアフターサービス体制の不備
顧客管理やアフターサービスの失敗による失注なども、ありがちな失敗です。塗装業は、顧客との長期的な関係が成功の鍵を握ります。顧客管理が不十分であると、リピートや紹介などの機会を逃してしまうことがあります。
特に、継続的な関係を築くためにはアフターサービスも非常に重要です。たとえば、仕上がりに対する保証期間の設定や、定期的なメンテナンスサービスの提供が考えられます。
逆に、アフターサービスの不備は顧客からの信頼失墜につながってしまいます。仕事が完了した後も顧客の声に耳を傾け、迅速に対応する体制を整えることが求められます。
このようにして初めて顧客満足度が高まり、リピートや口コミでの新規顧客獲得につながります。
効果的な集客戦略やマーケティング計画の不足
効果的な集客戦略は、事業の成長を大きく左右します。ですが、それまでの業務が塗装作業中心だった場合、集客は全く異なる業務内容です。そのために集客がうまくいかず、事業が伸びない、というケースはよくあります。
特に塗装業の場合、多くが地域に向けたサービス提供となるため、ローカルエリアでの認知度向上が必須です。たとえば、地元のイベントへの参加や、地域コミュニティとの連携などが有効です。
また、デジタルマーケティングの活用も重要です。特に、ホームページの充実やSNSを利用した情報発信は、低コストで高い効果が期待できる場合もあります。
しかし、これらの手法を用いるには専門的な知識や経験が必要です。そのため、専門のスタッフを採用したり、マーケティングを支援する企業への依頼も検討しましょう。
塗装業を独立・開業して軌道に乗せる秘訣
塗装業で独立・開業した後、事業を成功に導くためにはいくつかの重要なポイントがあります。
ここでは、事業を軌道に乗せるための三つの秘訣について、具体的な方法とその理由を解説します。
まずは施工実績を積み上げる
塗装業を開業したばかりの段階では、信頼を築くために施工実績の積み上げが必要です。多くの成功事例を作ることで、新規顧客の獲得がしやすくなり、さらに口コミによる紹介も期待できます。
また、実績は技術の高さだけでなく、顧客とのコミュニケーション能力や納期の厳守など、ビジネスとしての総合力を示す指標にもなります。
ただし、いきなり大規模な案件を受注するのは難しいことです。そのため、まずは、小さな仕事から積極的に請け負い、それぞれのプロジェクトにおいて顧客の期待を超える結果を出すことが重要です。
たとえば、予算内で最高の仕上がりを提供する、細かな顧客の要望に応じるなど、顧客満足度を最優先に考える姿勢を持ち続けることが大切です。また、完成したプロジェクトの写真を撮影し、ポートフォリオとしてウェブサイトやSNSで公開することも、見込み顧客へのアピールにもつながるでしょう。
元請け仕事を増やす
元請けとしての仕事を増やすことは、収益の向上と安定に直結します。元請け業者として直接顧客と契約することで中間マージンが発生しないため、利益率が向上します。
また、プロジェクトのコントロールも直接行うことができるため、品質管理やスケジュール管理がしやすく、顧客からの信頼も得やすいというメリットもあります。
元請け仕事を増やすためには、自社のブランディングとマーケティング戦略が重要です。たとえば、専門的な塗装技術や独自のサービスを前面に出し、地域の住宅展示会や建築関連のイベントに参加して、業界内での知名度を上げる努力が必要です。
さらに、既存の顧客には定期的にフォローアップを行い、リピートや新規プロジェクトへの推薦を促す取り組みも行ってみましょう。
財務管理を徹底する
財務管理の徹底は、事業を継続させるために最も重要な要素の一つです。収入と支出のバランスを常に把握し、不要な支出を削減することが欠かせません。
具体的には、会計ソフトなどを利用しながら財務状況をリアルタイムで把握し、月次、四半期ごとの予算計画を立て、それに基づいて経費を管理しましょう。また、未回収の請求金が発生しないように、顧客からの支払いを確実に行うシステムを整えることも大切です。
さらに、税務申告は専門の会計士と連携して正確に行い、税金の適正化を図ることで、財務の健全性を高めることができます。
塗装業で顧客を増やすには?効果的な集客方法
塗装業で顧客を増やすためには、サービスを提供しているだけでは不十分です。戦略的に計画し、必要に応じて周囲の協力を得ながら取り組むことで、増やしていくことができます。
ここでは、集客力を高めるために取り組んでいきたいことを三つご紹介します。どのように集客すればいいか悩んでいる方は、ぜひ参考にしてください。
顧客満足度を高めて紹介を増やす
塗装業の顧客獲得において、紹介は極めて重要な役割を担います。そして、紹介を受けるためには顧客満足度を高めることが、何よりも重要です。
顧客満足度を向上させるためには、仕事の質の高さを保持することが基本です。特に、プロジェクトの期待値を超えるサービスを提供することを、日頃から心がけましょう。
また、顧客とのコミュニケーションは常に透明性を持ち、プロジェクトの進行状況を適切に報告することが重要です。特に、作業が遅れそうな場合や不都合な時ほど、優先的に報告することが大切です。
このような細心の注意を払った対応が顧客からの信頼を勝ち取り、最終的にはリピートや新規顧客の紹介につながっていくのです。
また、完了したプロジェクトに対してフォローを行い、満足度を確認したり懸念していること確認を行いましょう。地道な作業を積み重ねることで顧客との長期的な関係を築くことができ、さらなる紹介を受けることが可能です。
小さくても店舗を持つ
店舗を持つことは、塗装業において顧客の信頼を得るための有効な方法です。店舗があることで、企業の存在が物理的に顧客に認識され、信頼性が増します。直接店舗を訪れることで、顧客はサービスや過去の実績を具体的に確認する機会も得られるでしょう。
小規模でも良いので店舗を用意し、塗装サンプルや実績の写真を展示してみましょう。これにより、どのような仕事を期待できるのかを明確に示すことができます。このアプローチは、特に新規顧客の信頼を得るために重要です。
さらに、店舗は地域のコミュニティとコミュニケーションをとる場として役立ちます。そして、地域イベントへの参加やスポンサー活動を通じて、地域内での認知度を高めることができるのです。
個人事業主ではなく法人化する
個人事業主から法人化することは、塗装業で事業を拡大する上で多くの利点をもたらします。特に、顧客数を増やすだけでなく、顧客単価を高めるために重要です。
法人化することでビジネスとしての信頼性が増し、大規模な契約や公共のプロジェクトへの参加が容易になります。また、法人化により資金調達の選択肢が広がり、ビジネスの拡大がしやすくなるでしょう。
また、法人としての運営は税制面での利点もあります。たとえば、法人税は個人所得税よりも税率が低くなる場合が多く、効率的な税金対策が可能です。さらに、法人化は従業員の雇用においてもメリットがあり、より質の高い専門スタッフを確保することが可能です。
まとめ
塗装業の独立・開業には、入念に準備することが大切です。適切な資格の取得や手続きが独立・開業の第一歩です。
また、資金計画も重要です。具体的な開業資金の見積もりと資金調達方法を明確にする必要があります。さらに効果的な集客戦略を立てることで、事業は順調にスタートさせることができます。
こうしたステップを一つずつ乗り越えて独立・開業を成功させ、そして事業を拡大していきましょう。
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