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SNS 誹謗中傷

注視されるSNS誹謗中傷を避けるために必要な新時代の「教育」

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ここ数日、SNS上での誹謗中傷に関する議論があちこちで聞こえてきます。もちろんこれまでも取り沙汰されており、SNSいじめやSNS上での個人攻撃などは問題視されてきましたが、より注目されるきっかけとなったのは女子プロレスラー木村花さんが逝去されたことにあるでしょう。

木村さんはNetflixやTVで配信、放送されている番組『テラスハウス』にも出演しており、多くの方から人気を集めていましたが、22歳という若さで亡くなり、SNSでの誹謗中傷に悩んでいたことから自殺した可能性もあるとされています。

木村さんの死を受け、「匿名アカウントによる誹謗中傷を撲滅するために、プロバイダ責任制限法の改正と刑事罰化を求めます!」と題した署名活動が大手署名サイト「change.org」上に発足されました。SNS上で攻撃をしてきた相手の情報開示請求に過剰な時間と費用がかかり、被害者の負担と労力が大きくなる現状を改善させようとする働きです。

木村さんへの誹謗中傷は国会でも取り上げられており、与野党の国対委員長は、今後の対応をめぐって協議していくことを決めたと報じられています(2020年5月25日)。

人の命を奪う行為は殺人です。SNSにコメントを送るという行為はもちろんだれしも自由に行えるものですが、その言葉が暴力となって人を傷つけてしまったとき、それは同様に裁かれるべき行為であるはずです。

ですが、実際は匿名性という仮面を被った犯人や犯人予備軍たちは罰せられないことが多く、あまつさえ今もなお攻撃を繰り返し続けているかもしれません。

こういった理不尽な現状を改善させるために、SNSを利用するすべての人を対象に「SNS教育」をすべきだという声も上がっており、小中高生向けの授業では既に取り扱っている事例もあります。

今回はこれらを背景に、SNSを利用している企業や個人が共通認識として持っておくべき事柄に触れていきます。

SNSとの付き合い方は変わっていくべき

SNS

SNSというと、一部本名での登録を前提としたものもありますが、やはり匿名性が高いものが一般的でしょう。自分の正体を明かさずに発言できるというのは、会社の上司や知人に気兼ねせず自由に振る舞えるという利点を持ちます。普段は秘密にしている趣味を明らかにしたり、普段は出会えない立場の人とやりとりしたりすることで、新しいコミュニティもできます。

そして、匿名性を保つということは自己を防衛することにも繋がるでしょう。著名な方でなくてもちょっとした発言が炎上に発展するかもしれない時代なので、自分の名前や居場所が不特定多数の方に知られるのはハイリスクです。(著名人の方の場合は名前を明かしていることが多いので、そういう意味では一般のユーザーよりも危険性が高いといえます)

ですが、自分は安全な場所にいながら、他人を攻撃する人も存在します。意識的に行う場合だけでなく、もしかしたら本人にはそのつもりはなく、相手を傷つけてしまうということもあるかもしれません。しかし、それが故意かそうでないかは立証する術があまりありません。つまり、意識的に攻撃したにもかかわらず、そうではないと言い張って逃げきる人もいるかもしれないということです。

「逃げ勝ち」ともいえる理不尽な考えが横行する世界は間違っているでしょう。そういった加害者や被害者を増やさないために、そして自ら、もしくは周りの大事な人がそのどちらにもならないように、改めてSNSとの付き合い方を見直す必要があります。

「SNS教育」を行う学校が増えている

高校生たち

現在の小中高生はデジタルネイティブ世代ということもあり、SNSに慣れ親しんでいるため使い方に長けている子も大人より多いかもしれません。たとえば、YouTube上への発信においても、自分で企画し、撮影し、編集し、そして公開するという過程をすべてこなすことも今や珍しくなく、YouTuberという職業が確立された今、そのバイタリティーには未来を切り開くたくましさを感じられます。

そのスキルがだれかを傷つけるために利用されないよう、SNSに関する教育を行う学校も増えてきています。具体的には「Edmodo(エドモド)」や「Classting(クラスティング)」といった、教員と生徒、あるいは教員と生徒と保護者をつなぐSNSツールを実際に取り入れているところもあります。

コロナウィルス感染拡大の影響を踏まえて自宅学習する機会が増えたことで特に活発化したようですが、実際に利用することで、SNS上でどういったトラブルが起きるのかを自然に学ぶことができます。

たとえば、生徒AがSNS上で生徒Bに話しかけたものの、生徒Bの画面が更新されていなかったために気づかず結果的に無視してしまい、生徒Aが怒って文句の投稿をするなど、きちんと原因を究明すれば解決することも、SNSだけで完結させるとトラブルに発展しかねないということが体現できるのです。このケースだと、このまま生徒AとBは互いに誤解したままでいるかもしれませんし、場合によってはそれぞれの友人を巻き込んで争いごとにもなりかねません。

また、全生徒の異なる意見や価値観をそれぞれ全員が同時に一覧で閲覧することができたり(従来ではそれぞれの意見を一旦集めてプリントアウトするなど出力しない限り一覧では見られなかった)、編集中の課題もリアルタイムで共有できることから、ほかの人の意見を取り入れながら進行したりできるなど、SNSを授業に取り入れて活用することのメリットはほかの部分でも見られます。

LINE株式会社では、2020年度以降の新学習指導要領の全面実施に向け、全国の地域や学校の生徒たちが体系的に情報モラルを学習できるように、東京都教育委員会と共同開発した「SNS東京ノート」をもとに「SNSノート(情報モラル編)」という新教材を作成し、無償で提供しています。

なお、都内16校において「SNS東京ノート」を授業に取り入れたことで、ネットトラブルの経験率が低下したという実績があるそうです。

こうした新たなツールや教材を用いるだけでなく、SNSトラブルの事例をもとに模擬裁判やグループ討論を行わせることで、他人事ではなく自分の身のまわりに起こりえることだと認識し言動や行動を見つめ直す機会を与える取り組みを行っている学校もあります。

SNS教育が必要なのは子どもたちだけではない

データを見るまでもないかもしれませんが、デジタルパイオニア、デジタルネイティブ世代の弱年齢層よりも上の世代の方がSNSを日常に取り入れている比率が低い、もしくは取り入れるのが遅い傾向にあります。

○参考:総務省

つまり、子どもへのSNS教育も大事ですが、大人にもそういった学習できる場が求められているということです。

特にコロナ禍でリモートワークが増え、アフターコロナの今後も働き方の幅が広がるだろうと予測されている今、オンラインでの活動は今まで以上に増えていくことが予測されます。現に「おうち時間」が増えたことでSNSを見る機会が増えた方も多いのではないでしょうか。

企業のSNS担当者やSNSビジネスを行っている人がプロモーションやブランディング、マーケティング目的で発信することはもとより、ひとりひとりがプライベートで発信することも踏まえ、自由を前提とした、しかし炎上やだれかを傷つける、だれかに傷つけられるリスクをなくす共通の知識が必要なのです。

グループミーティング

グループ討論

SNS教育をいち早く取り入れている学校の取り組み例として挙げた「グループ討論」は、企業でも時間さえ確保できればすぐに実践できるものでしょう。個人でSNSビジネスを行っている方は、同業者同士、あるいは知人や友人と話し合ってみてはいかがでしょうか。

木村花さんの痛ましい被害状況は多く報道されているので、周りでも話題に上ることがあるかもしれません。ひとりの命を奪うことになったきっかけを「事例」のひとつとして取り上げるのは不謹慎だと考える方もいるかもしれませんが、木村さんがSNSで攻撃を受けてどう感じていたのかまっすぐに向き合い、自らもだれかをそれほどまでに傷つけることがあるかもしれない、と自覚することは、亡くなった方をそれまで以上に真摯に思う機会となりえます。

もちろんショックが大きくて討論に参加できない場合は、ほかの議題でもかまいません。SNSという見えない相手に攻撃される、見えない相手を攻撃する可能性を、今見える相手と話し合うことで、言語コミュニケーションと非言語コミュニケーションを融合させる瞬間を複数人と共体験しましょう。

SNSには、相手が見えないことで発言のハードルが下がるという心理的な作用があります。もちろんそれにはいい面もありますが、自分の思う「正義」が「正」だと思い込むことで、そうではない他人を「非」として攻撃してしまうこともありえます。時に炎上さえ楽しむ人もいるでしょう。

SNSというツールを間に挟んでいても、自分も相手もひとりの人間だと認識し直すことが重要です。

勉強会、セミナー

セミナー

YouTuberを筆頭に、今の時代にはSNS上で発信することを生業としている方がたくさんいます。また、そんな時代なのでSNSにおける交流について研究している方もいます。そういった方を講師として招き、勉強会やセミナーを開催するのもひとつの手です。

彼らは専門分野としてSNSの表面も裏面も熟知しているので、一般のユーザーが見落としがちな落とし穴も網羅して実体験や知識を共有してくれるでしょう。

web発信の影響力を学ぶことで、企業や事業のブランディングに役立てることもできるかもしれません。普段からSNSでビジネス活動をしている方は、一般の方々を招待して一緒に学ぶイベントとして催すことで、全体のSNSへの知見が深まるだけでなく、新たな才能を開花させるきっかけになるかもしれないですね。

社内で開催する場合、従業員のプライベートな投稿に企業は責任を負わないと考える方もいるかもしれませんが、普段から職場や仕事内容について投稿している従業員のアカウントが、あるときなにかをきっかけに炎上してしまった場合、当然その企業は注目されることになるでしょう。また、企業に直接的にも間接的にも影響がなかったとしても、従業員のことを守るのは企業の役割だと考えて教育を行うようにしてください。

ソーシャルメディアポリシー

事前準備が必要ですが、企業でSNS教育を行う場合、ソーシャルメディアポリシーを制定するのはとても大事です。企業全体としての指針を全体に周知させることで、従業員のプライベートを守るのです。

ソーシャルメディアポリシーとは、企業がSNSを利用するにあたって取り決めたガイドラインのこと。企業によってその構成はさまざまですが、web上で雛形を公開しているサイトもあるので、検討中の企業は参考にしてみてもいいですね。

ソーシャルメディアポリシーのあり方としては、SNSの使用目的やルールを具体的に定め、従業員に広く浸透させることで、全世界に発信しているということやそれに伴う影響力を自覚するといった心構えをさせ、不用意な投稿を避けることが目的なので、独自のルールにはこだわらず、すべての人にあてはまる言い回しをしてもいいでしょう。

すべてのSNSユーザーに有益な内容にしたら、社内だけでなく一般公開することを検討してもいいかもしれません。企業としての基本指針を明かすことで、インターネットリテラシーの高さや、それを社員教育に利用し社会に還元していることが広まり、信頼度を得ることもできます。

SNSと人は今後も切れない関係に

コミュニケーション

今やSNSは日常に欠かせないものになっています。おそらく今後形が変わっていったとしても廃れることはないでしょう。

繰り返しになりますが、SNSはその匿名性という特性から自分の姿を明かさずに発言ができます。今回はそれによって陥りやすい危険なポイントを軸に解説しましたが、発言のハードルが下がることでコンフリクトを恐れずに議論ができるという利点もあります。

たとえば普段は会うこともできない立場の方や異なる意見を持った方と対話をすることで新たに創造されるものもあるでしょう。

そして、もちろん直接だれかと対話することも大事です。ノンバーバルコミュニケーションによって相互に与え合えるものは、まさしく言葉では表現できない力を持っています。

そのどちらも日々生活に取り入れることができる私たちは、非常に優れた才能や美学、交流を持てるチャンスを手にしているということです。

ハイブリッドコミュニケーションを行う私たちに、これから行うだろう幼い子たちに重要なのは、どちらかを取捨することなく、常にそれぞれにおける注意点や課題を各々見つけ出し、示していくこと。明日の人間関係は今日の行動が生み出していくのです。


こちらの記事は2020年5月に公開されたものです。
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この記事を書いた人

浦田みなみ
元某ライフスタイルメディア編集長。2011年小説『空のつくりかた』刊行。モットーは「人に甘く、自分にも甘く」。自分を甘やかし続けた結果、コンプレックスだった声を克服し、調子に乗ってPodcastを始めました。BIG LOVE……

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