 
                          〇aaSとは?SaaS・PaaS・IaaS・MaaS・RaaSの違いや具体例を紹介
「SaaS」「PaaS」「IaaS」といったクラウドサービスの用語を見かけることが増えましたが、それぞれの違いを明確に説明できますか?さらに「MaaS」や「RaaS」まで登場し、似たような言葉が並んで混乱してしまう方も多いはずです。
本記事では、SaaS・PaaS・IaaS・MaaS・RaaSの5つについて、初心者の方にもわかりやすく違いを解説します。それぞれのメリット・デメリット、具体的なサービス例、さらにビジネスシーンでの使い分け方まで網羅的にご紹介しますので、ぜひ最後までご覧ください。
目次
そもそも「〇aaS(as a Service)」とは?

「aaS」は「as a Service(アズ・ア・サービス)」の略で、直訳すると「サービスとして」という意味です。つまり、従来は購入して所有していたソフトウェアやハードウェアを、インターネット経由でサービスとして利用する形態を指しています。
この「〇aaS」の総称として「XaaS(ザース)」という言葉もよく使われます。Xは数学で未知の値を表す記号ですが、ここでは「あらゆる」を意味しており、「Everything as a Service」や「Anything as a Service」とも呼ばれています。
クラウドサービスの普及により、ソフトウェアからインフラ、さらには移動手段やロボットまで、さまざまなものが「サービス化」される時代になっています。
SaaS・PaaS・IaaS・MaaS・RaaSの違い一覧

5つの〇aaSの違いを一目で理解できるよう、比較表にまとめました。それぞれ提供されるサービスの範囲や対象ユーザー、用途が異なります。
| 種類 | 正式名称 | 提供内容 | 主な利用者 | 代表例 | 
|---|---|---|---|---|
| SaaS | Software as a Service | 完成したソフトウェア | エンドユーザー全般 | Salesforce、Gmail | 
| PaaS | Platform as a Service | 開発・実行環境 | 開発者 | Google App Engine、Heroku | 
| IaaS | Infrastructure as a Service | ITインフラ(サーバー・ストレージ) | システム管理者 | AWS、Microsoft Azure | 
| MaaS | Mobility as a Service | 複数の移動手段の統合 | 一般利用者 | Whim、my route | 
| RaaS | Robotics as a Service | ロボットのレンタル・運用 | 企業・事業者 | プラスオートメーション | 
SaaS・PaaS・IaaSの3つはIT分野のクラウドサービスで、提供される「レイヤー(階層)」が異なります。一方、MaaSとRaaSはIT以外の分野でサービス化が進んでいる事例です。次の章から、それぞれの特徴を詳しく見ていきましょう。
SaaSとは|ソフトウェアをネット経由で利用

SaaS(Software as a Service:サース)とは、ソフトウェアをインターネット経由で利用できるサービスのことです。従来はパソコンにソフトをインストールして使っていましたが、SaaSではブラウザやアプリからアクセスするだけで、すぐに機能を使い始められます。
Gmail、Salesforce、ChatworkといったビジネスツールはすべてSaaSです。月額料金を支払えば最新の機能を使い続けられ、複数のデバイスからアクセスできるのが特徴になります。個人から大企業まで、最も身近な〇aaSです。
SaaSのメリット
SaaSの最大のメリットは、導入コストの低さと運用の手軽さです。パッケージソフトのように数十万円の初期費用を支払う必要がなく、月額数百円から数千円で始められます。
もうひとつ見逃せないのが、アップデートの自動化です。提供元が常に最新の状態を保ってくれるため、セキュリティパッチの適用やバージョンアップ作業から解放されます。また、インターネットに接続できる環境であれば、オフィスでも自宅でも外出先でも同じように作業できるのは、リモートワークが増えた現代において大きな利点でしょう。
SaaSのデメリット
SaaSには、カスタマイズの自由度が限られるという制約があります。提供される機能の範囲内でしか利用できないため、自社独自の業務プロセスに完全に合わせることが難しい場合もあります。
データがクラウド上に保存されることへの不安も挙げられます。とくに機密性の高い情報を扱う企業では、データの保管場所やセキュリティ対策について慎重に検討する必要があるでしょう。また、サービスが終了したり、提供元の方針変更があったりした場合、業務への影響を受ける可能性がある点にも注意が必要です。
SaaSの具体例とサービス一覧
SaaSは業務のあらゆる場面で活用されています。代表的なサービスを分野別に整理しました。
- 顧客管理(CRM):Salesforce、HubSpot
- コミュニケーション:Slack、Chatwork、Microsoft Teams
- メール・グループウェア:Gmail、Google Workspace、サイボウズOffice
- 会計・経理:freee、マネーフォワード クラウド
- 人事・労務:SmartHR、ジョブカン
- プロジェクト管理:Asana、Trello、Backlog
- マーケティング:Marketo、Pardot
これらのサービスは単体で使うだけでなく、API連携によって複数のツールを組み合わせることで、より効率的な業務環境を構築できます。自社の課題に合わせて最適なSaaSを選ぶことが、業務改善の第一歩です。
PaaSとは|開発環境をクラウドで提供

PaaS(Platform as a Service:パース)とは、アプリケーションの開発や実行に必要な環境一式をクラウドで提供するサービスです。プログラミング言語の実行環境、データベース、Webサーバーなど、開発に必要な基盤がすべて用意されています。
従来はアプリを作る前に、サーバーの準備やミドルウェアのインストールといった環境構築に時間がかかっていました。PaaSを使えば、こうした準備作業をスキップして、すぐにコーディングを始められます。主に開発者やエンジニアが利用するサービスです。
PaaSのメリット
PaaSを使う最大の利点は、開発スピードの向上です。環境構築やサーバー管理といったインフラ周りの作業から解放されるため、開発者は本来の目的であるアプリケーション開発に集中できます。
スケーラビリティの高さも魅力のひとつです。アクセスが急増した際には自動でリソースを増やし、落ち着いたら減らすといった柔軟な対応が可能になります。自社でサーバーを運用する場合、将来の成長を見越して過剰なスペックの機器を購入する必要がありますが、PaaSなら必要な分だけ使えるため、コスト効率も優れているのです。
PaaSのデメリット
PaaSには、プラットフォームへの依存が生じるという課題があります。特定のPaaSサービスに最適化してアプリを開発すると、他のプラットフォームへの移行が困難になることがあります。
対応しているプログラミング言語やフレームワークが限定されている点も制約になるでしょう。使いたい技術がサポートされていない場合、開発手法自体を見直す必要が出てくるかもしれません。また、SaaSと同様に、カスタマイズの自由度はIaaSと比べて低くなります。
PaaSの具体例とサービス一覧
PaaSは大手クラウドベンダーから専門特化型まで、さまざまなサービスが展開されています。主要なPaaSをご紹介しましょう。
- Google App Engine(GAE):Googleが提供する開発プラットフォーム
- Heroku:Salesforceが運営、スタートアップに人気
- Microsoft Azure App Service:Windows環境に強み
- AWS Elastic Beanstalk:Amazon Web Servicesの簡単デプロイサービス
- kintone:ノーコードでビジネスアプリを作成可能
kintoneは厳密に言えばSaaSとPaaSの中間的な性質を持つサービスです。完成したソフトとして使える点はSaaS的ですが、カスタマイズして独自のアプリを構築できる点はPaaSの特徴を備えています。このように、サービスによっては明確な区分が難しいものもあるのです。
IaaSとは|ITインフラをクラウドで提供

IaaS(Infrastructure as a Service:イアース/アイアース)とは、サーバーやストレージ、ネットワークといったITインフラをクラウドで提供するサービスです。物理的な機器を購入・設置することなく、必要な計算資源を必要な分だけ使えます。
IaaSは3つの中で最も自由度が高く、OS(オペレーティングシステム)の選択からミドルウェアのインストール、セキュリティ設定まで、すべて利用者側でコントロール可能です。その分、専門的な知識が求められるため、主にシステム管理者やインフラエンジニアが扱うサービスになります。
IaaSのメリット
IaaSの強みは、圧倒的な柔軟性とコントロール性です。仮想サーバーのスペック変更、ストレージの容量追加、ネットワーク構成の調整など、ほぼすべての要素を自由に設定できます。
初期投資を大幅に削減できる点も見逃せません。従来は数百万円規模の設備投資が必要だったサーバールームやハードウェアが不要になり、月額料金だけで本格的なインフラを構築できます。災害対策としてのデータバックアップやシステムの冗長化も、物理的な制約なく実現可能です。
IaaSのデメリット
IaaSは自由度が高い反面、運用には専門知識が必要です。OS管理、セキュリティパッチの適用、バックアップ設定など、すべて利用者の責任で行わなければなりません。
管理すべき項目が多いため、かえって運用コストが増大するケースもあります。小規模な利用であれば、SaaSやPaaSを選んだ方が結果的に効率的です。また、従量課金制のため、使い方によっては予想以上に費用がかさむ可能性がある点にも注意が必要でしょう。
IaaSの具体例とサービス一覧
IaaS市場は大手クラウドベンダーが主導しており、世界的に普及しているサービスが多く存在します。
- Google App Engine(GAE):Googleが提供する開発プラットフォーム
- Heroku:Salesforceが運営、スタートアップに人気
- Microsoft Azure App Service:Windows環境に強み
- AWS Elastic Beanstalk:Amazon Web Servicesの簡単デプロイサービス
- kintone:ノーコードでビジネスアプリを作成可能
これらのIaaSは、単なるインフラ提供にとどまらず、AI、機械学習、IoTなど最先端技術を活用するための多様なサービスも併せて提供しています。企業のDX推進において、IaaSは重要な基盤となります。
MaaSとは|移動をサービスとして提供

MaaS(Mobility as a Service:マース)とは、電車、バス、タクシー、シェアサイクルなど複数の交通手段を一つのサービスとして統合し、検索・予約・決済を一括で行えるようにする仕組みです。IT分野の〇aaSとは異なり、「移動そのもの」をサービス化した新しい概念になります。
従来は目的地まで行くのに、それぞれの交通機関のアプリやWebサイトで別々に予約・支払いをする必要がありました。MaaSでは、スマートフォンのアプリひとつで最適なルートを提案し、すべての手続きを完結できます。マイカーに頼らない快適な移動の実現を目指すサービスです。
MaaSのメリット
MaaSの大きなメリットは、移動の利便性が飛躍的に向上することです。一つのアプリで複数の交通手段をシームレスに組み合わせられるため、乗り換えのストレスが減り、時間も節約できます。
環境負荷の軽減にも貢献するでしょう。効率的な移動手段の提案によってマイカーの利用が減れば、CO2排出量の削減につながります。高齢者や運転免許を持たない人にとっては、移動の選択肢が広がり、生活の質が向上する効果も期待されています。
MaaSのデメリット
MaaSには、実現に向けたハードルがいくつか存在します。最も大きな課題は、異なる事業者間でのデータ連携とシステム統合です。鉄道会社、バス会社、タクシー会社など、それぞれ独自のシステムを持っているため、これらをスムーズに連携させるには調整が必要になります。
地方では交通手段そのものが限られているため、MaaSのメリットを十分に発揮できない場合もあるでしょう。また、現状ではサービスごとの品質にばらつきがあり、利用者にとって本当に使いやすいかどうかは発展途上の段階です。
MaaSの具体例とサービス一覧
MaaSは世界中で実証実験や本格展開が進んでおり、日本でもさまざまなサービスが登場しています。
- Whim(フィンランド):世界初の本格MaaSアプリ、月額定額制
- my route(トヨタ・西日本鉄道):福岡市でのマルチモーダル移動サービス
- MaaSアプリ「どこバス」(北海道網走市):AIデマンド交通と観光を連携
- izuko(静岡県伊豆エリア):観光型MaaSの先進事例
- EMot(小田急電鉄):首都圏での複合移動サービス
日本では2024年頃から「MaaS2.0」として、データのオープンソース化や地方観光DXとの連携が進められています。
RaaSとは|ロボットを月額制で利用

RaaS(Robotics as a Service:ラース)とは、産業用ロボットや自動搬送ロボットを購入するのではなく、月額料金を支払って利用するサービスモデルです。ロボットの導入には通常、数百万円から数千万円の初期投資が必要ですが、RaaSならレンタル感覚で導入できます。
物流倉庫、製造現場、農業、清掃など幅広い分野でRaaSの活用が始まっています。ロボット本体だけでなく、メンテナンス、ソフトウェアアップデート、運用サポートまで含まれているのが一般的です。人手不足が深刻化する中、RaaSは労働力を補完する手段として注目を集めています。
RaaSのメリット
RaaSの最大の利点は、初期投資を抑えながらロボット技術を導入できることです。数千万円の設備投資は中小企業にとってハードルが高いですが、月額制なら予算に応じて始められます。
技術の陳腐化リスクを回避できる点も重要です。ロボット技術は日々進化しており、数年後には性能の高い新型が登場します。購入した場合、古い機種を使い続けるか買い替えるかの判断が必要ですが、RaaSなら常に最新の機種を利用できるのです。メンテナンスや故障対応も提供元が担当するため、運用の手間も軽減されます。
RaaSのデメリット
RaaSは長期的に見ると、購入するよりも総コストが高くなる可能性があります。数年以上継続して利用する場合、トータルの支払額が購入価格を上回るケースもあるでしょう。
提供元への依存度が高い点もデメリットです。サービスが終了したり、料金体系が変更されたりした場合、業務に影響が出る可能性があります。また、自社の業務に完全に最適化されたカスタマイズは難しく、標準的な機能の範囲内での利用が前提となることが多いです。
RaaSの具体例とサービス一覧
RaaS市場は急成長しており、さまざまな分野で専門的なサービスが展開されています。
- プラスオートメーション:物流倉庫向け自動搬送ロボット
- Rapyuta Robotics:クラウド型ロボティクスプラットフォーム
- GROUND:配膳ロボットのサブスクリプション
- inaho:自動野菜収穫ロボットの時間貸し
- WhizZ:清掃ロボットのレンタルサービス
世界のRaaS市場は2024年に22億ドルを超え、今後も年平均18%程度の成長が予測されています。人手不足が続く限り、ロボットのサービス化は加速していきます。
目的別|〇aaSの使い分け方

5つの〇aaSはそれぞれ異なる目的で使われます。適切なサービスを選ぶには、「何を実現したいのか」を明確にすることが重要です。
実際のビジネスシーンで、どの〇aaSを選ぶべきか迷った際の判断基準をまとめました。
| 目的 | 最適な〇aaS | 理由 | 
|---|---|---|
| すぐに業務ツールを使いたい | SaaS | アカウント登録だけで即利用可能、専門知識不要 | 
| アプリを素早く開発したい | PaaS | 開発環境の構築不要、コーディングに集中できる | 
| システムを細かく制御したい | IaaS | OS選択から設定まで自由にカスタマイズ可能 | 
| 移動手段を効率化したい | MaaS | 複数交通機関を一括管理、最適ルートを自動提案 | 
| ロボットを低コストで導入したい | RaaS | 初期投資不要、メンテナンス込みで月額利用可能 | 
予算、社内の技術力、解決したい課題の性質によって、最適な選択肢は変わります。まずは小規模に試験導入してから本格展開するのが、失敗リスクを減らす賢い方法です。
〇aaSに関するよくある質問

SaaS・PaaS・IaaS・MaaS・RaaSについて、実際によく寄せられる質問にお答えします。
- Q1.KintoneはSaaS?PaaS?
- Q2.Google検索はSaaSですか?
- Q3.DaaSとは?違いは何?
サービスの分類や具体的な判断基準について、理解を深めていきましょう。
Q1.KintoneはSaaS?PaaS?
Kintone(サイボウズ社)は、SaaSとPaaSの両方の性質を持つハイブリッドなサービスです。そのまま使える業務アプリが用意されている点ではSaaSですが、ノーコード・ローコードで独自のアプリを開発できる点ではPaaSの特徴も備えています。
厳密に分類するなら「SaaS寄りのPaaS」、あるいは「ローコード開発プラットフォーム」と呼ぶのが適切でしょう。利用者が開発者でなくてもカスタマイズできる点が、従来のPaaSとは異なる特徴です。このように、最近のクラウドサービスは明確な境界線が曖昧になってきており、複数の〇aaSの要素を併せ持つサービスが増えています。
Q2.Google検索はSaaSですか?
Google検索は広い意味ではSaaSと言えますが、一般的にはSaaSとして分類されません。SaaSは通常、業務効率化や顧客管理といったビジネス用途のソフトウェアサービスを指すためです。
Google検索は無料で提供される情報検索サービスであり、ビジネスツールというよりインターネットインフラの一部と捉えられています。ただし、Googleが提供するGmail、Googleドライブ、Google Workspaceなどは明確にSaaSです。同じGoogle製品でも、性質や用途によって分類が変わることを覚えておいてください。
Q3.DaaSとは?違いは何?
DaaS(Desktop as a Service:ダース)とは、仮想デスクトップ環境をクラウドで提供するサービスです。ユーザーの端末にかかわらず、クラウド上にある自分専用のデスクトップにアクセスして作業できます。
IaaSはインフラそのもの、SaaSは完成したソフトウェアを提供するのに対し、DaaSはその中間で「デスクトップ環境」を提供するのです。テレワークやBYOD(私物端末の業務利用)が増える中、セキュリティを保ちながら柔軟な働き方を実現する手段として注目されています。
Amazon WorkSpaces、Microsoft Azure Virtual Desktopなどが代表的なDaaSになります。
まとめ|〇aaSを理解して適切なサービス選びを!

SaaS・PaaS・IaaS・MaaS・RaaSは、それぞれ異なる領域で「所有からサービス利用へ」という変化を象徴するビジネスモデルです。IT分野のSaaS・PaaS・IaaSは提供するレイヤーが異なり、用途に応じて使い分けることで業務効率を大きく向上させられます。
MaaSとRaaSはIT以外の分野にサービス化の波が広がっている事例であり、今後もさまざまな産業で「〇aaS」が登場していくでしょう。自社のニーズと各サービスの特性を正しく理解し、最適な組み合わせを選ぶことが、デジタル時代のビジネス成功の鍵となります。
まずは小さく始めて、効果を確認しながら拡大していくアプローチをおすすめします。
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