CO2排出量の可視化だけじゃないe-dash株式会社の脱炭素ソリューション
脱炭素化を目指して企業・製品・生活者の3つの視点で取り組む三井物産グループ。今回は企業に向けてソリューションを提供しているe-dash株式会社の代表取締役社長 山崎冬馬氏とセールス&マーケティング部 部長 甲斐綾乃氏にインタビューしました。
目次
企業・製品・生活者、3つの視点で脱炭素を推進する三井物産
三井物産といえば、グループ全体でサステナブルな観点からさまざまなサービスやソリューションを提供している商社。
今まで当メディア「SUNGROVE」でも、ETG(ETC Group Limited)と開発したトレーサビリティシステム「farmers 360° link」や三井物産アイ・ファッション株式会社と日鉄物産株式会社の繊維事業が統合して設立し、環境問題へ取り組むMNインターファッション株式会社について取材をしてまいりました。
くわえて、2050年カーボンニュートラルの実現に向けて、企業・製品・生活者という3つの視点で、CO2排出量・削減量を可視化し、同時に幅広いニーズに対応することが可能なプラットフォームを展開しています。
たとえば企業視点においては、「e-dash(イーダッシュ)」というサービスによって企業単位のCO2排出量を自動算出し、削減させるためのソリューションをご提案。
製品視点においては、「LCA Plus(エルシーエー プラス)」という製品単位でCO2排出量を算出できる日本初のプラットフォームを開発し、原料採取から廃棄にいたるまで、全工程の環境負荷を緻密に可視化することを可能にしました。
また生活者視点においては、楽しみながら脱炭素に貢献できる「Earth hacks(アースハックス)」というプラットフォームを展開。CO2排出削減率をわかりやすくスコア化し、メディア運営やイベント企画を通じて、生活者が率先して脱炭素に取り組めるような機会を創出しています。
今回は特に企業で働く人々が知っておくべきe-dashについて、運営している同名企業、e-dash株式会社の代表取締役社長 山崎冬馬さんとセールス&マーケティング部 部長 甲斐綾乃さんにインタビューしてまいりました。
e-dash株式会社立ち上げの経緯
―三井物産グループでは脱炭素に向けた取り組みに注力されていると思いますが、そのなかでe-dashという会社を立ち上げた経緯についてお話しいただけますか?
e-dash株式会社 代表取締役社長 山崎冬馬さん(以下、山崎さん):三井物産では、中期経営計画において「脱炭素」を注力分野に位置づけており、気候変動問題について産業的解決をもたらすことを目標に掲げています。
2020年4月には、エネルギーソリューション本部という新しい事業本部が立ち上がりました。
そこでは脱炭素に関わるすべてのことに事業分野を広げて取り組んでいます。
具体的には、水素・アンモニアといった新たな燃料、カーボンクレジット(※)、EVなどモビリティのソリューション……。
それにくわえてゼロから立ち上げたのが、このe-dashという会社なんです。
※ カーボンクレジット(Carbon Credit):企業がCO2など温室効果ガスの排出削減に取り組み、実際に削減できた量をクレジット(排出権)として発行し、ほかの企業などが取引することで、その会社の温室効果ガス排出をオフセット(相殺)させる仕組み。 |
いろんな企業の方々とお話ししていて課題として見えてきたのは、「脱炭素化を目指すことが重要なのはもちろんわかっているけれど、どうやって進めていけばいいのかがわからない」という企業が多いこと。
2050年カーボンニュートラルに向けて、2030年には「温室効果ガスの2013年度比46%削減」を目指すことが表明されていますが、なかなか動きだせていない会社が多いようなんですね。
それがなぜなのか考えてみると、そもそも自社でどのくらいCO2を排出しているのか把握している企業が少ないことに気づきました。
それがわからなくては、どのくらい削減するべきなのか見えてきません。
とにかくCO2排出量を簡単に、継続的に把握できる仕組みを作ることが必要だと思い、e-dashを開発し、実際にお客さまに提供しはじめたというのが自社設立の経緯です。
e-dashのプロダクトの特徴
―プロダクトの特徴についてご紹介いただけますか?
山崎さん:やはり一番に考えているのは、CO2排出量を把握することがハードルになってはいけないというところなので、とにかく企業のみなさまが簡単に、手間なく利用できることにこだわっています。
利用してくださっている企業の方にお話を聞いてみると、これまで排出量を算出するためには、まずどれだけのエネルギーを使ったかデータをいろいろなところから集めて、それをエクセルに打ち込んでいくといったことが必要だったとおっしゃる方が少なくありませんでした。
それだとやっぱり手間がかかるし、ミスも起こりえるので、e-dashでは電気やガス、もしくはその他の燃料を使ったエネルギーの請求書をweb上にアップロードするだけでデータ化できるようにし、それに適切な係数をかけて排出量を算出できるようにしました。
ほとんど手間のかからない方法で排出量を知ることができるというのは、ひとつの特徴だと思います。
それから、日本で初めて、かつ唯一、大手監査法人にシステムを第三者検証していただき、導入したデータが正しく算出されているということをご確認いただきました。
「正しく」というのは、経産省、環境省の提示しているガイドラインに沿って算出する結果と合致するということです。
そのため、正確性も担保できているというのがもうひとつの特徴です。
ただ、排出量の可視化は、あくまでも脱炭素に向かう入り口でしかないと捉えています。
目的は日本の脱炭素化を実現させることであり、お客さまである企業の脱炭素化をご支援させていただくこと。
なので、可視化したあとに削減についても具体的にご支援させていただくということもe-dashの特徴だと考えています。
たとえば、電力の切り替え、非化石証書(※2)やカーボンクレジットの販売、太陽光、再生可能エネルギーの導入支援など、幅広くサポートさせていただいています。
※2 非化石証書:石炭や石油、天然ガスといった化石燃料を使って発電された電気ではない(たとえば、太陽光・風力・水力など)こと、そしてそれに環境価値があると証明するもの。 |
―脱炭素は世界的に推し進められているので、今後競合他社も増えてくると思いますが、独自の特徴があることで差別化が図れますね。
山崎さん:そういう意味では、三井物産グループとして私も甲斐も、これまでにもエネルギー関連の事業を行ってきたというバックグラウンドがあり、グローバルにいろいろなものに触れ、事業展開してきた知見を活かして、脱炭素化を目指すために必要なことをしっかりご提供できるというのも大きな強みではありますね。
提携企業に金融機関が多い理由
―多くの金融機関と提携されていますが、どうしてでしょうか?
山崎さん:現時点(2023年4月5日)で130~140行庫とパートナーシップを結んでおり、国内の都市銀行、地方銀行、信用金庫の30%以上をカバーしています。
やはり東京の企業だけ、あるいは大企業だけが脱炭素に取り組めばいいというわけではなく、むしろ地方をふくめた中堅、中小企業にもしっかり取り組んでいただかないと、2030年までに温室効果ガスの46%削減、さらにその先のカーボンニュートラルは到底なしえません。
各地域の自治体、金融機関、中小企業が主体となって推進していくことだというのは、金融庁や環境省もよく発言されていますし、そうなるとこれから金融機関が大変重要な役割を担っていくと考えられます。
一方で、金融機関が脱炭素という領域について専門性を持たれているわけではないので、そこでe-dashが一緒に取り組ませていただき、最初の第一歩としてCO2排出量の可視化をどんどん進めさせていただいています。
先日、岐阜信用金庫が提供するサステナビリティ・リンク・ローン(※3)のフレームワークにおいて、CO2排出量等のモニタリングにe-dashが採用されたことを発表しましたが、このように環境へのパフォーマンスに応じて金利さえも変わっていくという融資の仕組みは今後広がっていくと思います。
※3 サステナビリティ・リンク・ローン(Sustainable Linked Loan):借り手(企業)が設定したサステナビリティ・パフォーマンスに関する目標の達成に応じて、金利などが変動する融資のこと。持続可能な経済活動の促進を目的として普及しはじめている。「SLL」と略されることも多い。 |
山崎さん:なのでe-dashとしては、さらに金融機関との連携を高度にしてタッグを組んで進めていきたいと思っております。
パートナーシップ企業がe-dashを選ぶ理由
―ということは、今後も金融機関を中心にパートナーシップを組まれる企業が増えていくと想定されているのでしょうか?
e-dash株式会社 セールス&マーケティング部 部長 甲斐綾乃さん(以下、甲斐さん):今後は増やしていくことよりも、この関係性をいかに深めていくかというのが次のステップですかね。
そういった点でも、先に挙げた岐阜信用金庫の融資の枠組みにe-dashを組み込んでいただけたというのは、ほかの金融機関にも参考にしていただける成功事例になりました。
せっかく100行庫以上もの金融機関のネットワークを築かせていただいている身としては、脱炭素に向けたそれぞれの活動を加速化できるよう役立つ情報をご提供し、その視点がお客さまのもとにも届けられるようにしていきたいと思っています。
また、逆にこちらにもいろいろなお話が届くように、さまざまな企業からお引き合いいただいているので、提携して終わりではなく、実のある連携というのを追求していきたいです。
―CO2排出量が可視化できるツールとしては、競合サービスもどんどん増えていると思います。
その中からパートナーシップ企業がe-dashを選ばれる決め手はなんだと思われますか?
山崎さん:それはやはり先ほど申し上げたように、手間なく、簡単で、正確性を担保しているところと、カスタマーサクセスのチームが丁寧に可視化のキックオフから定常化するまでサポートさせていただいているというところですね。
それから、そもそもわかりやすく使いやすいプロダクトだということもご評価いただいているので、そういったところを総合的にご判断いただいているんじゃないかと思います。
パートナー企業がお客さまにご紹介くださる場面でも、やはりプロダクトとしての良しあしは重要なので、まず自社で利用してみて信頼にいたるものなのか、ご紹介していいものなのかをご確認いただくこともあります。
まだまだ充分だとは思っていないですけど、お客さまの声を拾って機能を追加したり、ユーザビリティを改善したり、引き続き開発してさらにいいものにしていきたいと思っています。
―カスタマーサクセスというのは、御社では具体的にどういったものを指しているのでしょうか?
山崎さん:導入されたばかりのお客さまにとっては、やはりきちんと可視化できるようにするというのが一義的にはサクセスになるので、まずはそこまで支援させていただき、その後具体的にどういった手を打つか考えるためにも、一定期間はどういったタイミングで、なにを由来としてCO2が発生しているのかを確認していきます。
そして、実際に削減までご支援することで生まれるサクセスもあります。
中小企業版SBT(※4)もあるので、その認証取得のために、企業として現状のCO2排出量がどのくらいあって、それをいつまでにどのくらい下げるのか、という目標をしっかり開示して、毎年進捗を公表することを宣言していただく、そういったご支援もさせていただいています。
※4 SBT:「Science Based Targets」の略で、日本語に訳すと「科学と整合した目標設定」となるが、企業によって設定される、パリ協定の水準と整合性のある温室効果ガス排出削減目標のことを指す。 SBT認証は、その企業が脱炭素に向けて具体的なアクションを起こしていることを示す国際認証に定められているため、企業の規模を問わず注目されている。 |
甲斐さん:e-dashでは可視化から削減のソリューションの調達まで網羅的に行っていこうと考えており、その根底には、三井物産がこれまで取り組んできた脱炭素領域の知見があるという独自の強みがあります。
ソリューションをお持ちの企業とのパートナーシップを拡充していることに加えて、さまざまなバックグラウンドを持って新たにe-dashに社員として加わるメンバーも増えているので、そういった新しい知見も活かして、どんどんできることを広げて、今後もますますパワーアップしていきたいと考えています。
ボランタリークレジットの民主化
―日本では珍しい、カーボンクレジットのマーケットプレイスの運営もされていますよね。
山崎さん:私どもはエネルギー会社ではなく、あくまでもお客さまにとって最適なソリューションを調達するご支援をさせていただく立場なので、まずはCO2排出量の可視化、そしてその先の具体的な脱炭素ソリューションをしっかり提供していきたいと考え、いろいろな取り組みを並行して行っています。
ボランタリークレジット(※5)もそのひとつなのですが、なかなか知っている方も少ないんじゃないかと思います。
※5 ボランタリークレジット:「ボランタリーカーボンクレジット(Voluntary Carbon Credit)ともいわれる。政府主導ではなく、NGOや企業、団体、個人などの民間が主導のプロジェクトから発行されるカーボンクレジットのこと。法的拘束力がないのが特徴。 |
山崎さん:お客さまにとっては、世界中の脱炭素を目指すプロジェクトがどれだけ排出量の削減に貢献したかわからない、そしてそれがクレジット化されたものについても、アクセスできない、どこでいくらで売られているのかわからない、といった課題があったのではないかと考えました。
本当に名だたる大企業だけが個別に購入されているんじゃないか、そう思われている方もいるかもしれません。
やはり多くの取引が行われれば、それだけ世界中の脱炭素化プロジェクトを前進させることができるので、いろんな企業がアクセスできるように民主化させることに価値があると考え、米国のクライメートテック(※6)企業「Patch Technologies」と提携し、同社のプラットフォームとAPI連携することで、日本国内からも世界中のあらゆるボランタリークレジットが購入できる仕組みを作りました。
※6 クライメートテック(Climate Tech): Climateとは気候のこと。そのため「気候テック」とも呼ばれる。世界的な気候変動の問題を解決するため、CO2排出量の削減、または地球温暖化の解決にフォーカスを当てた革新的なテクノロジーのこと。 |
―先日J-クレジットプロバイダー大手の株式会社イトーキと提携され、2023年5月からはJ-クレジットも販売されますね。
山崎さん:J-クレジットについても、簡単にアクセスできる当社のオンラインのマーケットプレイス上で取り扱うことで、価格をはじめ、どういった地域のどういったプロジェクト由来なのかといった点もオープンにご確認いただけ、その場でご購入いただけるので、これまでどこで買えるかわからなかったという方も取り入れやすくなると思います。
こういったかたちで、お客さまが「脱炭素に取り組んでいきたい!」と考えたときに、さまざまなオプションを極力たくさんご用意させていただいて、またその導入ハードルも低くなるように「民主化」を心がけています。
甲斐さん:よく「三井物産が携わっているサービスしか扱わないのでしょうか?」といった質問をいただくことがあるのですが、J-クレジットについてもそうですが、三井物産が携わっているかどうかにかかわらず、幅広いソリューションをお客さまに届けていくというのがe-dashというサービスの神髄だと考えています。
―個人でも購入できるような価格のクレジットもありますが、ユーザー層についてお伺いできますか?
山崎さん:法人向けのサービスとして提供させていただいています。
公表している事例としては、プロバスケットボールリーグ「Bリーグ」のアルバルク東京の今シーズンのホームゲームで排出されるCO2をボランタリークレジットでオフセットしていただいています。
ほかは本当に多種多様なのでご紹介しきれないですが、「ボランタリークレジット」というもの自体を知らなかった層にもアプローチできていると考えています。
「ボランタリー」という名のとおり自主的な活用なので、企業が事業を行ううえで排出されるものだけでなく、アルバルク東京の例のように、イベント開催などに伴って排出されたものをオフセットするといった、さまざまな用途が期待できると考えています。
お試し的にご購入いただくケースもありますし、これから活用例についてはどんどん発表していきたいですね。
脱炭素について考えたことのない企業にきっかけをつくる
―e-dashは月額1万円(税抜)から始められるということで、今まで脱炭素について意識したことのなかった中小企業も取り入れやすいと思いますが、そういった企業からどういったことを期待されていると感じますか?
甲斐さん:中小規模の会社が、必要にも迫られていない状況で、急に自発的にこういったサービスを調べるということは基本的にないと思うんです。
最初の入り口となるのは、やはり金融機関で、そこでのコミュニケーションがタッチポイントになると考えます。
つまり、金融機関が環境意識を持つことが大事だとお伝えすることで、初めて具体的になにをすべきか考える方が増えてくるんじゃないかと。
実際に金融機関の方々とお話ししていて、お客さまと深い信頼関係を築いているというのはよく感じる部分なので、説得力があると思います。
ただ、そこで「脱炭素化」というところにスムーズにつなげるには、こちらでサポートすべきことが2つあると感じています。
ひとつは、金融機関の環境に関する理解の底上げ。
本当にどの金融機関も脱炭素を大きな課題と捉えていらっしゃることはお話ししていても感じるのですが、いわゆる企画部門の方々の知識は豊富であっても、それが全職員に通じるかというと、そうでもないことがあるようなんです。
なので、実際にお客さまに会いに行ってお話しすることの多い行員さん、信用金庫の職員さんにも理解を浸透させたいと考え、e-dashではただ提携を結ぶのではなく、勉強会を開いて、脱炭素化に取り組むにあたってどんなことを考える必要があるのか、といったところまで丁寧にお伝えしています。
もうひとつはお客さまが環境について考えるきっかけを作るために、中小企業向けに金融機関と一緒にセミナーも開催しています。
やはりいきなり個別商談というのはハードルが高いので、まずは脱炭素セミナーを開き、気軽に参加してみませんか?とご招待しているというところですね。
もちろん参加しても、すぐに取り組もう!と思う方は限られるかもしれないですが、情報をインプットしておくだけで大きな一歩になると思うんです。
いざ「なにかやらないといけない!」と考えはじめたときに思い出していただければ、次のステップにつながるのかなと。
そういったことを今はひたすら丁寧に行っているところですね。
―セミナーはどのくらいの規模で行われているのでしょうか?
甲斐さん:さまざまな規模でたくさん行ってきたのでお答えするのが難しいですね……。
共催セミナーというかたちでは、お取引先を90社~100社くらい集めていただいて、新型コロナウィルスがセンシティブだったときはオンライン、今は大きいホールで行い、環境省や経産省の方にご登壇いただくこともあります。
―参加される企業はどういった業界が多いのでしょうか?
甲斐さん:やはりいま一番関心が高い、あるいは関心を高めていかないといけないと考えられているのは製造業ですね。
プライム市場の上場企業も、温室効果ガス排出量の開示について精緻化、加速化、そして削減を進めるというのが大きな課題になっており、そうなると自社内だけでおさまる話ではないので、今後どんどん取引先にもそういった要求をしていくことが予想されます。
それが特に活発なのが、製造業なのです。
そのほかに、自発的に関心を持っていらっしゃる方もいらっしゃいます。
「まだ周りがあまり取り組んでいないうちに始めるからこそ意味があるんだ」とおっしゃる方もいますし、そのような経営者さまがいる会社の動きだしは早いですね。
「こういう取り組みをしていかなきゃいけない」というマーケットは確実に加速化していくと思うので、e-dashとしてもまずは草の根活動から始め、地道に啓発活動を続けていきたいと思います。
すべての企業が脱炭素を考える時代はもう来ている
山崎さん:こういう業界にいるからかもしれないんですが、すべての企業が脱炭素化を求める時代はもう来ているんじゃないかと思います。
経営者が排出量などを気にしなくてよかった時代はもう終わっちゃったかなと。
たとえばサプライチェーンの取引先との関係性にしても、これまではクオリティー・コスト・デリバリー(※7)で調達を判断していたけれど、さらに温室効果ガスの排出量というクライテリアが加わって判断されるようになっていきます。
※7 クオリティー・コスト・デリバリー:主に製造業などの生産管理で重視される3つの視点だが、そのほかの業種においても用いられる。それぞれの頭文字(Quality / Cost / Delivery)を取って「QCD」と略されることもある。 ▶たとえば生産者目線だと Quality:「製品の品質」が維持できているか Cost:「原価」が適切か Delivery:「約束した数量・納期」がきちんと守られているか といった考え方で判断される。 山崎さんのおっしゃったように、これが派生して「環境=Environment」を追加した「QCDE」という言葉もすでに存在している。 |
山崎さん:先ほどサステナビリティ・リンク・ローンについてお話ししたとおり、競争力のある融資を受けたいと思ったら自社のサステナビリティ・パフォーマンスに関する目標を検討する必要があります。
それから甲斐の申したとおり、プライム市場の上場企業が自社の温室効果ガスの排出量を公表するにあたって、取引のある製造企業などに情報をリクエストすることもあるでしょう。
そうなると、どんどんその関連する企業に開示を求める波は続いていくと思うので、脱炭素化に関係のない企業はなくなるのではないでしょうか。
これまで無縁だと思っていた企業も、商売をやっていくうえで当然意識せざるをえないときは必ず来ると思います。
日本にも本当にたくさんの企業が存在するので、e-dashとしては、より多くの企業にアプローチしてご支援させていただけるように、プロダクトをよりよいものにして、ソリューションも拡充して、取り入れやすい体制をどんどん構築していく……、やらなきゃいけないことはたくさんありますね。
甲斐さん:お客さまの満足度をあらゆる観点で高めることが継続的なご利用につながりますし、これから検討されるお客さまに当社のサービスがいかに魅力的か、伝えられるかどうかが重要です。
そのためにも、一緒に取り組ませていただいている企業の声をサービスにつなげ、事例をもっと対外的にも発表していくことで、興味を持っていただける方を増やしていくというのも強化していきたいところですね。
三井物産グループが3つの観点で脱炭素化を目指す理由
ちょうどこのインタビューの文字起こしを終えたころ、電車に乗っているときに「脱炭素」という言葉が聞こえてきました。声の主は大学生らしき2人組。ちょうど話題にあがったのか、ひとりが「脱炭素ってなに?」と尋ね、それにもうひとりが答えているところでした。
今は授業で習う機会もあると聞くので、やはり環境意識を持つ人も増えているのかな、などと思っていると、ひととおり説明を終えたのか、最初に尋ねたほうが「丁寧な暮らしってやつかー」と半ば揶揄するようなニュアンスで笑いました。
そういえばサステナブルなモノづくりを実現しているMNインターファッション株式会社に取材に伺った際に、Z世代には“意識高い系”に見られることに抵抗のある人もいると聞いたなぁ。
そんなことを思い出しながら、少し驚いたのも事実。というのも、「脱炭素」は私たちが未来に向かうなかで、切っても切り離せないものだと思っていたからです。
となれば、自然とそれをからかうような発言をする人は減っていく可能性もありますが、少なくとも今の段階では実際にそういった感覚の人がいるということに少し戸惑ってしまったのでした。
今回のインタビューでお聞きしたのはtoBのサービスではありますが、いまや個人が脱炭素に向けて日々の暮らしを改める動きも見られます。けれど、それを“意識高い系”として排除してしまう人がもしいるのであれば、その動きを拡大化させるなにか別の力が必要になるかもしれません。
健康になる、過ごしやすくなる、といった生活の質が向上すること、楽しい、満たされる、といった明らかに実感できる付加価値が創出されることが求められているのかもしれないということです。
冒頭で触れたとおり三井物産グループでは、企業視点だけでなく、製品や生活者視点で脱炭素アクションを促進するプラットフォームも展開していますが、その3つの視点でプロジェクトを推し進めているのは、同時に全方位からフォローする必要があることに最初から気づいていたからなのでしょう。
脱炭素化の重要性への理解は、金融機関から中小企業へ、そして消費者へ、適切に流れていくことを願います。
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