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三井物産 池田竜一さん

ロンハーマン導入!三井物産×ETGのトレーサビリティシステム「farmers 360° link」とは

最終更新日:
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三井物産とETGがトレーサビリティシステム「farmers 360° link」を開発。ロンハーマンが導入し、話題になっています。アパレル業界における環境・人権問題に向き合う新たな仕組みについて、ご担当者にくわしくお伺いしました。

三井物産とETGがトレーサビリティシステムを開発

トレーサビリティシステム
(三井物産とETC Group Limited(通称ETG)によるプロジェクト「farmers 360° link」の前身となった「Farmer’s Link Africa」公式サイトに掲載されていたトレーサビリティシステムの仕組み図)

アパレル業界にとって、地球環境汚染は切っても切り離せない問題。製造過程で排出される環境負荷の年間総量は、二酸化炭素が500mlペットボトル約255本製造分、端材等が衣服約1.8億着分、水消費量が浴槽約11杯分と莫大であることは以前ほかの記事でも紹介しました。

もちろん、着なくなり廃棄処分することになれば、さらに多くの二酸化炭素が排出されることになります。

また、生産現場においては「スウェットショップ」と呼ばれる、低賃金、強制労働といった劣悪な労働条件で働かせる搾取工場もたびたび問題視されています。ここでいう労働者の中には10歳前後の幼い子どもがふくまれることもあり、その人権問題はいうまでもなく改善されるべきでしょう。

こういった世界的な問題に取り組むべく、いま注目を集めているのが「トレーサビリティ」という仕組み。

「トレーサビリティ(Traceability)」とは、トレース(Trace:追跡)とアビリティ(Ability:能力)を組み合わせた造語で、日本語では「追跡可能性」と呼ばれることもあります。その意味するところは、商品の生産から販売、あるいは消費されるまでの過程を追跡可能にすること。

商品の品質管理、安全管理を行ううえで欠かせないものとなりつつあり、アパレルをふくむ、さまざまな業界で取り入れられはじめています。農作物など食品などにおける分野のほうが広く知られているかもしれません。

トレーサビリティは大きく分けて、原材料から生産、加工、販売にいたる段階において商品の状況を把握できる「チェーントレーサビリティ」と、ひとつの企業や工場内において部品や商品を追跡できるようにする「内部トレーサビリティ」の2つに分けられますが、今回お話しするものはそのうちの前者に該当します。

このたび三井物産株式会社は、「農家と共に成長する。」を社訓のひとつに掲げるグループ会社、ETC Group Limited(通称ETG)とタッグを組み、新たなトレーサビリティシステム「farmers 360° link」を開発しました。

このシステムのユニークなところは、生産から販売までのサプライチェーンを可視化するだけでなく、原材料となるコットンを生産する農家と購入者を専用アプリを介してつなげ、“応援”できるようにしていること。

商品価格の一部に生産者へ還元される金額がふくまれ、それによって現地のインフラや通信設備を充実させられるという持続可能なシステムなのですが、購入者が購買時にその応援手段を自主的に選択でき、また、その後どのように実際に還元されたのか確認できるというのがポイントです。

なお、このシステムによってつくられるコットンブランドの名前は「Cotton Chiko Africa」。Chiko(チコ)は、現地ザンビア共和国の言葉、ニャンジャ語で「愛」を意味する「Chikondi」に由来して名づけられたそう。

トレーサビリティシステム開発の背景

三井物産株式会社 プロジェクト本部 プロジェクト開発第二部 第二営業室 兼 デジタル総合戦略部 DX第二室 室長補佐 池田竜一さん
(三井物産株式会社 プロジェクト本部 プロジェクト開発第二部 第二営業室 兼 デジタル総合戦略部 DX第二室 室長補佐 池田竜一さん)

―トレーサビリティシステム「farmers 360° link」を生み出すにいたった、プロジェクト立ち上げの経緯についてお伺いできますか?

三井物産株式会社 プロジェクト本部 プロジェクト開発第二部 第二営業室 兼 デジタル総合戦略部 DX第二室 室長補佐 池田竜一さん(以下、池田さん):もともとはインフラ開発などを行っている三井物産の本部が、今パートナーとして一緒に活動をしているETGという会社に出資するにあたって、「アフリカ開発」をテーマに、アフリカ発で社会的意義のあるビジネスができないか、と動きだしたプロジェクトでした。

まず現場に行ってみたところ、アパレル商品自体は高価なものもあるのに、原材料となるコットンなどをつくっている人たちにその利益を還元できていないんじゃないか、と思いました。

私たちのグループ内で生産されたものに関しては、化学肥料を極力使わないようにしたり、灌漑(※)していなかったり、手摘みだったり、環境にやさしくて手間もかけていて、なおかつ最近は市場全体的にも「サステナブル」や「エシカル」というキーワードで売り出されている服も目立ちますよね。

※ 灌漑(かんがい):農地に人為的に水を供給すること。生産性の向上、安定化が目的だが、天水農業(雨水だけに頼った農業)に比べてはるかに多くの水資源が必要となる。その量は、人間の水利用における最大の消費量が灌漑用水だといわれるほど。

でも購入する立場に立つと、それが本当にエシカルなのか、あるいは具体的になにが環境にいいのかが実際には見えないんじゃないか、きちんとそういった情報が広まっていないんじゃないかと思い、改善できる方法を考えました。

生産者がどういう人で、どういう農法を用いて、だから環境にやさしいんです、っていう情報にくわえて、売り上げの一部が肥料だったり、生活を便利にするような直接的なものだったり、その生産者のもとになにかしらのかたちで返っていって、購入した人もそれを見ることができるというシステムを実現できれば、より積極的にサステナブルなものを選ぶことができるようになるんじゃないか、というのが当プロジェクト立ち上げのコンセプトです。

実際に自分たちが農家にたくさん訪問し、先進国の消費者に高い解像度でその現状を伝えていくべきだと考えた結果、そのソリューションのひとつがトレーサビリティに定まったというところですね。

「farmers 360° link」の仕組み

スマホの使い方レクチャー
(現地でスマホの扱い方を教えている様子/三井物産株式会社提供)

―改めて「farmers 360° link」の仕組みについて、くわしくご紹介いただけますか?
ちなみに「360°」というのはどういった意味なのでしょう?

池田さん:農家を中心に360°新しくテクノロジーを進めていくぞ!という意味合いです。
仕組みとしては、大きく生産者側と消費者側に分けて説明しますね。

まず生産者側としては、もともとETGが農家と直接契約をして作物を買う、といったことを行っていました。
ただ、すべて紙面でのやりとりだったので、データ自体は集められていなかったんです。

そこで、モバイルアプリを開発して、現地ザンビアの農家の方々をとりまとめて、紙でオペレーションしていた内容をアプリ上の入力に切り替えてもらうようにお願いしました。

―現地でも普段からスマホは一般的に使われているのでしょうか?

ザンビアという国単位で見ると、首都などではみんなスマホを持っているんですが、農村地域では初めて触るという人も少なくなかったので、「これはこうやって使うんだよ」と教えるところからのスタートでした。

電気も水道もない場所なので、当然ながらインターネットもつながっていなくて、オフラインでもアプリを使えるようにBluetoothをつなげて最終的にサーバーにアップされるような仕組みもつくりました。

そのうえで収穫されたコットンの袋にQRコードをつけて、どの農家で収穫された何キロのものか、どういう資材、農薬を使ったか、といったところまで情報を集約できるようにしたんです。

それがサプライチェーンをどんどん流れていって、コットン袋からコットンベール(俵)という直方体のものになって……というところまで弊社のネットワークを活用したシステムで管理し、そのあと紡績、糸にしてくれる会社に渡して、縫製されて、どんどん服になっていきます。

その際も、もちろんどのロットがどのコットンベールだったかというのは基本的に紐づけできているので、その服がどのコットンベールに属していて、生産したのはどういう農家なのか、といったところまで見ることができます。

消費者側としては、購入時にQRコードを読み取ることで、生産者を知ることができ、その人たちにどういった応援をするのかを選ぶことができます。

たとえば、現地で一番大きな課題は、肥料が買えないことなんですね。
肥料を使うと収穫量が増えると知っているものの、キャッシュがなく、金融手段もないので手が届かないというのが現状なので、そういったところを補助したり、あるいは電気がないので太陽光パネルを設置したり、悩まれる方は「おまかせ」といった手段から選べます。

開発中のアプリ画面
(アプリ上の応援手段を選択する画面(デモ)/三井物産株式会社提供)

そうすることで、消費者が服に対して支払った金額の一部が、ちゃんと本当にその原料をつくった農家にちゃんと返っていくわけです。

さらに、LINEかメールアドレスを登録していただくと、実際に自分が選んだ応援手段―肥料なら肥料が、太陽光パネルなら太陽光パネルが―現地に届く過程、それから「肥料を使った結果、以前と比べてこのくらい収穫量が伸びました」といった情報が届きます。

開発中のアプリ画面
(LINE上に届くメッセージ例(デモ)/三井物産株式会社提供)

「この服を買ったら売り上げの○%を寄付します」といった、購入時に体験が完結するような取り組みは見かけますが、このシステムは、買ったあとも自身のアクションによって、農家の方々の暮らしがどう豊かになっていくのか結果を追えるので、新しい体験なんじゃないかなと思っています。

―たしかにかなり楽しい体験ですね。
顔の見えるだれかを自主的に応援するというのは、ちょっと推し活に似てるなーなんて思っちゃいました。

ちなみに、もしそのサプライチェーンのなかでなにか品質に異常が出てしまったとき、どの過程でそれが発生したのかというのはすぐにわかるのでしょうか?

池田さん:今の仕組みではまだできないんですが、これから取り組んでいきたいと考えています。
今は入力されたデータが改ざんされていないことを証明できるといった面でブロックチェーンを活用しているので、これから洗練させていく必要がありますね。

当初は別のビジネスモデルを検討していた

―プロジェクトを実現させるにあたって、やはりスマホの使われていなかった土地で、その使い方からレクチャーし、システムを理解してもらうというのはかなり苦労されたのではないでしょうか?

池田さん:そうですね、糸になってからトレーサビリティシステムを導入するという取り組みは結構聞きますが、糸より前の段階って整備されていない世界なんですよね。
やはり、今まで手をくわえられていなかった部分にチャレンジするのは、ハードルが高いです。

去年2021年の6月くらいから取り組んでいるんですが、私自身も足しげく現地に通っていますし、ヨハネスブルグに駐在している者もいるので、その人がさらに頻繁に農家に通い、自分の口でこういうことをやりたい、こういうことをやってほしい、と説明して、なんとかみなさんスマホ入力にも慣れてきたかなというところですね。

―構想から実施まで、相当な時間を要したのではないでしょうか?

池田さん:ETGへの出資が始まったのが2017年で、構想自体は今から3,4年くらい前からあり、現状のかたちに近づいてきたのは1年半くらい前ですかね。

もともとはアフリカ開発という観点で、アフリカの農家のネットワークを活用して情報を集めて、彼らに適切な肥料などをレコメンドするようなビジネスモデルを考えていたんですが、そもそもまだ生活が豊かではない場所で新しいものを売るっていうのはサステナブルじゃないと思い、変わっていきました。

もう少し視野を広げて、アフリカの農家の方々がつくったものを最終的に購入する人々はもっとグローバルなので、そこを巻き込んでなにか持続可能なビジネスができないか、と考えた結果、トレーサビリティだったり、情報を届けて還元を可視化したり、といったところに行きついたんです。

強みは生産現場の解像度

―「トレーサビリティ」というキーワードは今ファッション業界で世界的に注目を集めており、ガイドライン(※2)も制作されました。
日本でも今後、後発プロジェクトが立ち上がる可能性がありますが、そのとき貴プロジェクトの強みになるのはどういった部分だと思いますか?

※2 スウェーデンのトレーサビリティ企業TrusTrace(トラストレース)が、イギリスのNPOのFashion Revolution(ファッションレボリューション)、オランダの企業Fashion for Good(ファッションフォーグッド)とタッグを組み、『Traceability Playbook(トレーサビリティ・プレーブック)』を制作。デジタル・トレーサビリティによって持続可能なモノづくりの実現を目指している。

池田さん:それはやはり、生産現場の解像度かなと思っています。
協力し合えば、生産されたエリアまでは可視化することが難しくないと思うんですが、そこが実際にどういう村で、どういう人がいて、売り上げの一部を使って井戸をつくることができました、っていう情報を届けるには、やはり現地にオペレーションがないとできないことなんですよね。

もちろん後発でそこまでパッションや行動力のある人が出てきたら競合になると思いますけど、それはそれでアフリカ全体にいい効果をもたらすことになるのでウェルカムですし、現状ここまで現地に行ってプロジェクトを進められているチームはほかにないと思うので、そこは差別化できているんじゃないでしょうか。

ロンハーマンの導入が決定!

ロンハーマンとのコラボ商品
(Ron Herman(ロンハーマン)から、farmers 360° linkの 「Cotton Chiko Africa」を使用したアイテムが発売予定/三井物産株式会社提供)

―ロンハーマンの導入が決定されていると思いますが(当インタビューは2022年11月21日に行われました)、くわしくご紹介いただけますか?

池田さん:今回は、2023SSのセットアップやボーダーのカットソーなど全部で8型を予定しています。

ロンハーマンの中でもカリフォルニアのデイリーウェアを展開するブランド「8100(エイティワンハンドレッド)」で取り入れていただく予定で、その次もまた違うブランドで継続できたら、と考えています。

―農家を応援するというオプションが備わっているため、どうしても価格帯が上がってしまうかと思いますが、どういったブランドや企業の導入を想定されていますか?

池田さん:たしかに現状はシステム料や事業運営費にくわえて、還元する費用が必要なので、すぐにリーズナブルな価格帯のブランドの方々に利用していただくっていうのは難しいだろうなと思っています。

まずはやや高価格帯のブランドの方々に共感していただいて、そこからどんどん広げていきたいですね。(なお、今回ロンハーマンにて展開する商品はTシャツ1万円台を想定しているとのこと)

規模が広がれば、事業運営費は単価を下げていけるはずなので、そうなれば、より多くのブランド、アパレルメーカーの方に届けることができ、まだサステナビリティ、エシカルといった部分に足を踏み出せていない層にも受け入れてもらえるようになるんじゃないかと考えています。

「エシカル消費」のプロジェクトだとは思っていない

―「エシカル消費」という言葉はいろいろなところで聞こえてくるようになりましたが、一方で一時的なトレンドとしていずれ廃れてしまう可能性もはらんでいると思います。
継続していけるように、なにか工夫されていることなどはありますか?

池田さん:たしかにおっしゃるように「エシカル消費」や「サステナビリティ」といった言葉が広まっているので、そういった言葉を使ってこのプロジェクトを紹介する場面も多いんですが、実は、自分たちはこれをエシカル消費だとは思っていないんです。

服を買うときに、その素材がどこでどうやってつくられているのか、あまり意識していない人が多いんじゃないかと思うんですけど、それがわかるようになり、自分が買ったときに支払ったお金がこういったことに活かされるんだって知ることができると、買い物に付加価値がつくというか、新しい体験になるんじゃないかという思いで始まったんですよね。

「エシカル消費」ってつまり、地球が危ないから環境にやさしいものを買おう、という義務感に近い部分があるような気がしていて、そうだとしたら飽きられてしまうこともあると思うんですけど、自分がやっていて楽しいものであれば、定着していくんじゃないかなと思っています。

―たしかに義務感や、あるいは「お洒落な人がこういうものを選んでいるから自分も真似してみよう」といった一種のステータスの一環だと、結局「共感」にとどまってしまうので続かないと思いますが、自主的に選んで応援するとなると、自分の体験として「実感」することができるので、続けるのも困難にならないかもしれません。

池田さん:そうですよね。
なので、より楽しいと思えるようにコンテンツをつくる必要があると思うので、そこはこれからのがんばりどころかなと思っています。

将来的にはコットン以外の農産物も視野に入れている

池田竜一さん

―farmers 360° linkでは現在コットンを展開されていますが、今後ほかの素材、あるいはアパレル以外の業界向けの生産物などを展開する予定はありますか?

池田さん:いま一緒に活動しているETGでは、アフリカ全体でコットン以外にカカオやコーヒー、ゴマ、大豆、とうもろこしなどいろいろつくっているので、この仕組みはぜひ横展開していきたいと考えています。

まだ順番は決まっていないんですけど、今後どういった企業の方に共感していただけるかによって、次どの作物にするのか、いま使っているアプリに追加開発が必要なのか、など方向性が定まってくると思います。

まぁ今後につなげるためにも、今はまずコットンで展開している当プロジェクトを広めていくことが先決ですね。

ひとりで行う筋トレは続かない

アプリを扱う手
(現地の方がアプリに入力する様子/三井物産株式会社提供)

先日『The Story of Plastic』(アメリカ/2019年)という映画を観賞しました。プラスチックが増えることによる地球汚染や人々の健康被害をグローバルに映し出したドキュメンタリーです。

現在「サステナブル」や「SDGs」という言葉が広く知れわたったこともあり、海洋ゴミを拾ってアート作品に昇華させたり、エコバッグを持ちあるくことが一般化したり、不要になった衣服を回収するショップが増えたり、ゴミを増やさない・減らす活動を始めた人が増えたように思います。

身近なところでは、ポイ捨てなどによる散乱したゴミが問題視される渋谷ハロウィンにおいても、翌日にゴミ拾いをする「渋谷ごみゼロ大作戦」という清掃活動を行う有志が毎年(2022年時点で8回め)集うようになりました。

けれど、筆者がその映画を観て一番印象的だったのは、そもそもプラスチック量は需要に対して供給が多すぎるという事実。ポイ捨てされたプラスチックに関しては、海辺にせよ街中にせよ拾えば減りますが、製造量が多いのであれば、廃棄量もその分確実に蓄積していくのです。

ということはつまり、まず消費者よりも企業が動かなくては抜本的な解決には至らないということ。いま挙げたのはあくまでもプラスチックに限ったことですが、ほかの素材を用いた製品に関しても、それが土に還らないものであれば、当然ながら廃棄することで地球環境に影響を及ぼします。

たとえば、まだ着られる衣服を廃棄する「ファッションロス(衣服ロス)」は、こうして名称化されるほど関心を集めており、実際に日本で焼却・埋め立てされる衣服の総量は年間484,000t、1日に換算すると平均1,300tに上ることがわかっています。

▶参考:環境省「サステナブルファッション」

以前、別の記事にも書きましたが、ファッションにおいてもやはり、プラスチック同様に供給量が需要を上回っているという事実もあります。

1990年代はじめといえば、ユニクロのフリースブームが起こり始めたころ。また、海外ファストファッションブランドも多くは2000年代進出ではありますが、GAPやZARAなど徐々に90年代から日本上陸を始めていました。その人気にあやかって多くのブランドが低価格帯競争を始め、結果として海外での大量生産の末、需要よりも供給量が上回ってしまったというのが大きなダメージとなったといわれています。

サスティナブルファッションとは。エシカル消費時代のアパレル低迷期脱却法

企業は適切な労働環境で適切な素材を使って衣服をつくり、適切な価格で適切な量を供給すること、そして消費者はその服と長いお付き合いをすること、それがいま出せる最適解なのだと思います。

そのなかで現在、生産者や製造者に無理な労働を強いていないか、環境に負荷のかかる製造方法ではないか、といった面を把握する目的もあり、製造工程から販売までの複雑なサプライチェーンに透明性を求める動きが世界的に広まっています。

とはいえ、実際に管理体制を変更する企業が増えても、世間体を鑑みて明確な目的もなく行うようであれば、どこかで歪みが生じるかもしれません。大事なのは、持続可能であること。

farmers 360° linkは、製造から販売までの過程を可視化するだけでなく、消費者が参加できる仕組みを実現させました。顔の見える相手のつくったものは、なんとなく愛着が沸き、大事にしようという気持ちが高まったり、購入時特有のわくわく感も続いたりするものではないでしょうか。ましてや、その商品を購入したことでその人の役に立てるのであれば、なおさら購入体験は色濃く残るでしょう。

話は変わりますが、筆者は慢性的な運動不足で、それを打破すべく一時30分間の筋トレを日課にしていたこともあったのですが、一度なにかの理由で途絶えてから、すっかりマットはしまわれたままになってしまいました。

それをヨガスタジオのオーナーを務める友人に話したら「ひとりでやる筋トレは続けるのが難しいよね」と言われました。たしかに私自身はInstagramの更新頻度もそこそこ高めのユーザーなのですが、もしストーリーズなどに筋トレする様子をアップしていたら、もう少し続けられたような気がします(むしろなぜ投稿していなかったのか今となっては謎です)。

「エシカル消費」など、昨今サステナブルファッションがもてはやされる理由には、もちろん地球環境を考えたアクションであることは前提として、しかし正直、「トレンドだから」「なんとなく今の時代に合っているから」といった見せかけの「ファッションサステナビリティ」も少なくないのではないかと思います。

でも、購入したことをだれかに話したくなるような、共有したくなるような、ストーリー性のある参加型プロダクトであれば、飽きてしまったり、疲れてしまったりすることなく、無理なく続けられるのではないでしょうか。

「この服を買って、ザンビアの農家に太陽光パネルを送ったんだ」、言いたくなりませんか?大げさかもしれませんが、自身の行動が世界のだれかの役に立っていることをこの目で見られるというのは、購入者の自信にもつながるのではないかと思うのです。

継続は力なり、であれば、継続させるための工夫は必要不可欠でしょう。

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この記事を書いた人

浦田みなみ
元某ライフスタイルメディア編集長。2011年小説『空のつくりかた』刊行。モットーは「人に甘く、自分にも甘く」。自分を甘やかし続けた結果、コンプレックスだった声を克服し、調子に乗ってPodcastを始めました。BIG LOVE……

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