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トライブマーケティングとは?注目されている背景や事例を紹介!

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IT技術の発展とともに、マーケティングを効率化するための手法が数多く登場し、戦略立案の考え方にも変化が生じています。

ターゲティングやセグメントに関する方法論も移り変わるなか、現在注目されているのが消費者の趣味嗜好に焦点を当てた「トライブマーケティング」と呼ばれる手法です。

この記事では、トライブマーケティングの概要や、注目される背景をふまえ、実際の事例を紹介していきます。

トライブマーケティングとは

トライブマーケティングとは、「趣味や関心にもとづく消費者集団」をターゲットとするマーケティング手法です。

従来のマーケティングにおいては、ターゲットを設定する際、性別や年齢層、居住エリアといった「属性」から対象を絞っていくアプローチが一般的でした。対してトライブマーケティングは、あくまで消費行動を左右する趣味・関心を軸にしながら、自社と親和性の高い集団と関係を築いていくための方法論です。

トライブ(tribe)は英語で「部族」を意味する言葉であり、ここでは「特定の趣味や関心を共有する集団」を表します。このトライブに対して企業がアプローチをかけ、さまざまなかたちでコミュニケーションの活性化を図りながら、消費者のアクションを促すことがトライブマーケティングの主眼となるでしょう。

「トライブ」と「コミュニティ」の違い

何らかの共通点をもった人々の集まりという点で、トライブは「コミュニティ」と近い言葉であると考えられます。ただし、トライブが「個々人の趣味嗜好」を軸とする集団であるのに対し、コミュニティは居住エリアなどの属性面を共有する集団を指すケースもあるでしょう。

ここから、コミュニティはより包括的な分類として位置づけられ、一方のトライブは「コミュニティのうち、とくに趣味嗜好にもとづく集団」を指すといえます。

さらにトライブの場合、必ずしもその集団が直接的に行動を共にしているとは限りません。たとえばアーティストのステッカーを車に貼っていたり、好きな作品の聖地巡礼を行ったりと、当人同士の接触がなくとも、同種の行動・活動を行う傾向をもった人々を区分する際に「トライブ」は用いられます。

このように、トライブはあくまでマーケティングの観点から特定の消費性向をもつ人々を区分けするために用いられ、「セグメント」とも近いニュアンスをもっています。一方、セグメントは性別や年齢層といった静的な観点も含む区分であるのに対し、トライブは「特定の趣味をもつ人たちがどのような行動を取るか」「その人たちの間でどのような関係が築かれているか」といった動的観点にもとづく区分といえるでしょう。

トライブの具体例

趣味嗜好にもとづく行動様式から人々を分類する観点は古くから見られるものであり、たとえば80年代に歩行者天国で踊っていた若者を指す「竹の子族」や、アーティストの安室奈美恵氏の影響を受けた90年代の「アムラー」などは、トライブに該当する集団といえるでしょう。

ここから、SNSの隆盛などを背景に、特定の性向をもつ集団をカテゴライズする言葉は一般消費にも広く用いられるようになりました。とりわけ顕著なのが、あるトライブに属する人々が、その集団への帰属を表明することでアイデンティティを表現しようとする傾向です。

広島東洋カープを愛好する女性を指す「カープ女子」や、パーティ好きで社交的な人々を指す「パリピ」をはじめ、SNSのハッシュタグなどを通じた自己表現はいまや珍しいものではなくなりました。

こうしたトライブにまつわる「帰属意識」や「アイデンティティ」は、しばしば消費行動へと結びつくことから、現代のマーケティングにおいてトライブの観点は欠かせないものとなりつつあるのです。

トライブマーケティングが注目される背景

性別や年齢などの静的な属性ではなく、消費者の趣味や関心に焦点を当てるトライブマーケティングは、トライブ内のコミュニケーションやアクションという動的な面を重視したセグメントの手法だといえます。

以下では具体的に、このトライブマーケティングが注目されている背景を考察していきます。

SNSの発展

SNSの普及にともない、個人が見知らぬ他人と趣味嗜好や興味関心をめぐって交流するケースは珍しくなくなりました。スポーツチームのファンやオンラインゲームのプレイヤー、ペット好きの集まりなど、興味を軸とした集団においてはコミュニケーションが活性化する傾向が見られ、そのトライブ内での活動を大きな楽しみとしている消費者も多く見られます。

このように、活発なコミュニケーションやアクションを行うトライブを自社の施策に巻き込むことができれば、企業は直接的なマーケティング効果を見込めるほか、トライブの積極的な活動や情報発信にともなう波及効果を期待できるでしょう。

さらに、自社の商品・サービスがトライブの活動のなかに位置づけられることで、確度の高い顧客と長期的な関係を築いていけると考えられます。自社の提供する価値がトライブのメンバーにとって「生活の一部」となれば、そのターゲットと関係の近い消費者や、後続する世代などへの認知にもつながっていくでしょう。

チャンスの発見と創出の可能性

Web上でターゲットとなるトライブを発見しやすい環境が整っている点も、トライブマーケティングが注目されている理由の1つです。現在では、企業と消費者が直接コミュニケーションを取れるプラットフォームが普及しており、SNSなどを通じて特定の話題や関心を共有するグループを見つけることも難しくなくなっています。

さらに、それまで表面化していなかった興味関心のグループが、企業によるハッシュタグキャンペーンなどの施策を通じて新たに見出されるケースも見られます。このように、既存のトライブを発見するだけではなく、「新たなトライブを創出しやすい環境」が整備されていることも、トライブマーケティングの有効性が高まっている理由だといえるでしょう。

トライブマーケティングの事例

トライブマーケティングと一口にいっても、ターゲットへのアプローチ方法や関係構築の方法はさまざまであり、企業によって多種多様な施策が展開されています。以下では国内企業によるトライブマーケティングの事例を紹介していきます。

キリンビバレッジ株式会社×博報堂

大手飲料メーカーのキリンビバレッジ株式会社は、看板商品「キリンレモン」のリニューアルを機に、株式会社博報堂を広告代理店とし、若い世代に向けた広告施策を展開。CM制作にあたり、SNS上で拡散されやすい「アイドル・邦ロック・声優・お笑い」という4つのジャンルにおいて、成長途中のアーティストや新規ユニットを採用し、キリンレモンのテーマソングを歌いつないでいく形式を取り入れました。

これらのキャンペーン動画は、採用したアーティストなどのファンはもちろん、幼い頃からキリンレモンのテーマソングに馴染みのある多くの人々から支持を集め、総再生回数は5000万回以上に。売上の面でも、前年同月比390%を達成するなど大きな成果を残しています。

自社商品とは直接関係しないトライブであっても、ターゲットとの親和性や施策の目的に適した集団を巻き込むことで、大きな波及効果を得られた事例といえるでしょう。

(参照:ACC TOKYO CREATIVITY AWARDS「マーケティング・エフェクティブネス部門|2018年入賞作品」)

株式会社カゴメ

食品会社の大手である株式会社カゴメは、コミュニティサイト「&KAGOME(アンドカゴメ)」を通じて、自社商品のファンや一般消費者に向けてレシピや健康、新商品情報などを発信しています。

さらに、企業側が一方的に情報を提供するばかりではなく、ユーザー側がレシピを投稿できる「レシピのーと」をはじめ、掲示板やレビューサイト、アンケートサイトなど、さまざまなかたちでユーザーが参加しやすい環境を整えています。

全体として「食を通じたSNS」と「食にまつわるお役立ち情報サイト」を融合させたようなプラットフォームが形成されており、家庭内で完結しやすい「料理」をめぐって話題を共有したいユーザーへと的確に訴求しているのです。

株式会社KINTO

トヨタグループのモビリティサービス企業として自動車のサブスクリプションを展開する株式会社KINTOは、旧車好きに向けたサービスとして「Vintage Club by KINTO」というコミュニティを運営しています。

サービスの主軸は旧車のレンタルですが、SNS上などでフォロワーと積極的にコメントのやりとりを行い、旧車を愛好する人たちが交流する場を設けていることが特徴です。

旧車を借りたユーザーの体験談を共有したり、旧車に乗ろうとしている人たちからの悩み相談を受け付けたりと、トライブ内の関係性を築いていくとともに、新たな利用者とのつながりも広げていける環境を整えています。

トライブマーケティングを実践する際のポイント

トライブマーケティングにおいては、ターゲットとなるトライブに対して適切なアプローチを行い、長期的な関係を築いていく観点が重要です。以下ではマーケティングを実践する際に求められるポイントを解説していきます。

ターゲットとなるトライブについての分析

まずは自社にとって、「どのようなトライブがアプローチすべきターゲットとなるのか」を明確にしておく必要があります。分析の際には、ターゲット像を練り上げながら、「その人がどのような購買プロセスを踏み、購入後にどのような体験を求めるか」を入念に検証しておきましょう。

さらに、当の領域に関心のある潜在顧客が、SNSなどにおいてどのような行動を取っているのかを分析することも重要です。トライブに属する人々がどのように相互のコミュニケーションを取っているのか、どのように自分を表現しているのかなど、「トライブにおける関係性のあり方」に焦点を当てながら分析を進めていきましょう。

アプローチ手法についての検証

ターゲットとなるトライブについて分析したあとは、具体的なアプローチ手法についての検証が必要です。トライブの人々にとって「自社の何が価値となるのか」を見定めながら、それに適した訴求方法を勘案していきましょう。

たとえば上のKINTOの例であれば、「憧れの旧車をレンタカーを通じて体験すること」が軸となる価値であり、それを共有するために「ユーザー密着型のコミュニティ」が運営されています。大々的に価値を発信するのではなく、生身の相手と旧車の体験を共有できる場を通じて徐々にネットワークを広げていくことで、確度の高いターゲットに対して着実に魅力を届けていくモデルといえるでしょう。

このように、トライブへとアプローチする際には「体験」や「共有」といった価値を訴求することが1つのポイントになります。その価値を的確に伝えるための方法を、状況に応じて見定めていくことが重要です。

トライブを維持していくための価値提供

トライブマーケティングの何よりの強みは、自社に関連する領域に強い関心をもつ消費者集団と結びつき、関係を継続していく点にあります。そのメリットを存分に引き出すには、ターゲットとなるトライブに対し、長期的な観点から価値を提供していく必要があるでしょう。

トライブの成員にとって価値となるのは、商品やサービスの新規性である以上に、同じ趣味嗜好をもつ人々と交流できる「居場所」であるケースも多いです。SNS上の施策や、オンライン・オフラインの交流会など、トライブ内のコミュニケーションを活性化する工夫が求められるでしょう。

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この記事を書いた人

鹿嶋 祥馬
大学で経済学と哲学を専攻し、高校の公民科講師を経てWEB業界へ。CMSのライティングを300件ほど手掛けたのち、第一子が生まれる直前にフリーへ転身。赤子を背負いながらのライティングに挑む。

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