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顧客志向とは?マーケティングにおける重要性や企業例も解説

顧客志向とは?マーケティングにおける重要性や企業例も解説

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マーケティングの成果を高めるには、まず「顧客のニーズ」を把握することが欠かせません。「顧客が何を求めているのか」を深く理解することにより、マーケティングの方針も明確になるでしょう。

顧客に対する理解を深めるにあたり、重要なのが「顧客志向」の考え方です。この記事では、顧客志向の概要や重要性をふまえ、企業例や実践時のポイントについて解説していきます。

顧客志向とは

顧客志向とは

顧客志向とは、企業がその経営活動において「顧客のニーズや満足を最優先に考えること」を意味する言葉です。英語では「customer orientation」と表現され、直訳すると「顧客の方を向いていること」を表します。

顧客志向の考え方は、しばしば「自社の利益を最優先とする姿勢(=利益志向)」の対義語として用いられます。つまり顧客志向は、目下の利益に直結する動きよりも、「自社の顧客が本当に満足できる価値」を提供していくことで、長期的な経営の安定化を図る考え方です。

総じて、顧客志向は「具体的なアクション」を指す言葉ではなく、経営活動のあり方を左右する「根本的な姿勢」として捉えられる傾向にあるでしょう。

顧客志向の対義語・関連語

顧客志向は文脈によってさまざまなニュアンスを帯びるため、対義語としても複数の言葉が考えられます。

先に挙げたように、自社利益を最優先する「利益志向」はその1つでしょう。これと対照した場合、顧客志向は「目の前の数字よりも顧客の意思や価値観を大事にする」といった点を強調した言葉となります。

あるいは、自社の独自技術などをベースに商品・サービスの着想を得ていく「技術志向」という言葉とも対比されることがあります。

この場合、顧客志向は「自社の技術環境から顧客への価値を考えるのではなく、顧客に提供する価値から技術を磨いていく」といったニュアンスを帯びるでしょう。 その他、「競合他社との差別化」を重視する「競争志向」など、顧客志向と対照されうる言葉はさまざまに考えられます。いずれの場合にも、「○○志向」は「まず何をベースに経営の指針を打ち出していくか」を表しており、企業活動の軸となる考え方を示す言葉です。

マーケティングにおける顧客志向の重要性

マーケティングにおける顧客志向の重要性

マーケティングにおいて、「顧客ニーズの把握」は最重要課題の1つであり、多くの企業がニーズを把握するために創意工夫を積み重ねています。

顧客目線の大切さが当たり前に認知されるなか、なぜあらためて「顧客志向」を意識する必要があるのか、具体的なメリットから解説していきます。

「顧客が自覚していないニーズ」の発掘

現代では、さまざまな市場において無数の商品・サービスが展開され、それについての情報も氾濫しています。そのような環境のなかで企業活動を続けていくには、「他社との差別化」が必須条件になるでしょう。

根本的な差別化を図るうえでは、顧客の表面的なニーズを捉えるだけではなく、「ニーズの背後に潜む本当の悩み」といった部分にまでアプローチしていくことが重要です。

たとえば「ドリルを買いに来た人が欲しいのは、ドリルではなく穴である」というマーケティングの格言に代表されるように、「顧客が欲しているもの」と「本当の目的」は必ずしも一致していません。

顧客志向の考え方をベースに、きめ細かく調査や分析に取り組むことで、「顧客が本当に求めているもの」を見通せる可能性が高まっていくはずです。

LTVの向上

長期的な目線から経営活動を考えた場合、きわめて重要なのが「1人の顧客がどれだけ自社の商品・サービスを気に入り、生涯にわたって購入してくれるか」という「LTV(Life Time Value:顧客生涯価値)」の観点です。

多くのLTVを生み出す固定ファンやリピーターを獲得することは、リード獲得のコストを抑えつつ、経営状況を安定させることにつながるでしょう。

こうした固定の支持層を獲得するうえで、「顧客にとっての本当の満足」は欠かせません。顧客に向き合い、「自社が商品・サービスを通じて提供できる価値」を明確にすることにより、顧客満足度の向上やLTVの向上にもつながっていくと考えられます。

顧客志向を実践する企業例

顧客志向を実践する企業例

経営理念として「顧客志向」を掲げる企業は数多く見られますが、実際にそれを商品・サービスのかたちで反映し、利益や売上の向上につなげられているケースはそう多くありません。

以下では具体的に、顧客のニーズを深く捉え、それを的確に商品・サービスの改善へとつなげている企業例を紹介していきます。

ソニー損保株式会社

ネット型損害保険を扱う「ソニー損保株式会社」は、CX(カスタマーエクスペリエンス)を向上させるための取り組みとして、まず「自社のサービスが顧客からどれくらい支持されているか」についての指標を見直しました。

それまでは「顧客接点ごとの満足度評価」を取り入れていましたが、2015年頃からは顧客ロイヤルティを測るための「NPS(R)」という指標を導入しています。

このNPS(R)とは「Net Promoter Score(ネットプロモータースコア)」の略であり、自社商品のおすすめ度合いやリピートへの意向などを11段階で回答するアンケートから集計したスコアです。

ソニー損保ではNPS(R)を主要指標に据えることで、「各要素を向上させるためには何が必要か」といった課題を明確にでき、サービス内容の改善などに役立てています。

その他、事故発生時におけるカスタマージャーニーマップの作成や、保険金請求手続きの簡易化など、「事故に遭った顧客の不安や面倒を減らす」という視点からサービス向上に取り組んでいるのです。

そうした施策の結果、著名な満足度調査で例年好成績を残すなど、実際のユーザー評価の面でも大きな効果が表われています。

(参照:ソニーグループポータル|多様化するお客様を近くに感じ、自由闊達な組織の連携で ステークホルダーの体験価値を最大化する
(参照:ソニー損保公式サイト|J.D. パワー 2023年自動車保険の満足度調査  「事故対応満足度」3年連続9度目の第1位受賞  「契約者満足度」(ダイレクト系部門)7年連続第1位受賞

コメダ珈琲店

株式会社コメダが運営する喫茶店チェーン「珈琲所コメダ珈琲店」は、顧客目線の店舗づくりを通じ、競合の多いコーヒーチェーン市場のなかで独自のポジションを確立しています。

回転率が重視される傾向にある外食産業のなかで、「くつろぐ、いちばんいいところ」をコンセプトに、座り心地のよいソファや、広く仕切りのあるカウンターなど、ゆったりと長い時間を過ごせる環境を用意している点が大きな特徴です。

また一般に、「くつろぎ」を重視したカフェは、高級志向のメニューや装飾を取り入れる傾向が見られます。これに対し、コメダ珈琲店はカジュアルな色づかいの空間や、ボリュームのあるフードをはじめ、気軽に立ち寄れる独特の雰囲気を演出しており、多くのコアなファンを獲得しています。
(参照:コメダ珈琲店|“くつろぎ”の秘密

ドーミーイン

株式会社共立メンテナンスが運営するビジネスホテルのチェーン「ドーミーイン」は、徹底した顧客目線のサービスによって差別化に成功し、「JCSI(日本版顧客満足度指数)調査」におけるビジネスホテル部門で最高位を獲得しています。

具体的な特徴としては、大浴場・サウナといった「くつろぎ」を提供するための施設や、夜食ラーメン「夜鳴そば」に代表される充実した無料サービス、ご当地の食材も取り入れた豪華な朝食バイキングといった点が挙げられるでしょう。

こうした顧客志向のサービスの背景には、管理職自身が日頃から出張などの際にドーミーインを利用し、顧客目線から改善点を探っていく試みがあります。

実際に自身が宿泊者となることで、経営目線からは気づきにくい細かい箇所のニーズを把握でき、結果として独自のサービス提供につながっているのです。
(参照:Dormy’s Topics|ビジネスホテル業種で顧客満足度No.1を獲得! 【ドーミーイン】が支持される理由とは?

顧客志向に必要なファクターとは

顧客志向に必要なファクターとは

「顧客志向」は抽象的な言葉であるがゆえに、理念として掲げることは容易である反面、実際に「何をすれば実現できるのか」については見えにくい部分があります。

以下では具体的に、顧客志向を実現するために必須と考えられる要素について解説していきます。

顧客ニーズへの深い理解

顧客志向を実現するには、まず顧客のニーズや悩みを本質的に捉えることが必要です。

市場分析やアンケート、ヒアリングなどの方法により、顧客の声に耳を傾けたうえで、それに対して「自社が提供できる価値」を探っていく姿勢が求められるでしょう。

顧客との関係強化

顧客志向を実現するうえでは、自社の顧客層を「ターゲット」として分析するだけではなく、「その人が実際の生活で抱えるリアルな悩み」といった生の声に触れていくことも大切です。

営業活動や店舗における接客など、さまざまな顧客との接点を通じて「相手が何を不安に思い、何を欲しているのか」をつぶさに追っていく姿勢が求められるでしょう。

同時に、「個々の顧客が現在どのような状況にあるか」を組織内で共有できるシステムがあると、関係構築もスムーズになると考えられます。

必要に応じてCRM(顧客関係管理)のツールなどを取り入れながら、多くの顧客に対して個別にアプローチできる体制を整えておきたいところです。

顧客満足度の測定

自社の商品やサービスに対して、「実際の顧客がどのように反応しているか」を確かめる視点も重要になるでしょう。

顧客満足度に関する指標を定期的に確認し、その変化を追いながら、適宜商品・サービスの改善などにフィードバックしていく姿勢が欠かせません。

従業員間の意識共有

企業活動において顧客志向の考え方を実践するうえでは、自社の従業員に対して「顧客を優先する意識」を広く共有しておく必要があります。

ただし、「顧客志向」という言葉でイメージする内容は、従業員によって異なると考えられます。そのため全体としての指針を示すとともに、「そのために何をするべきか」という具体的な行動のレベルで考えを共有することが望ましいでしょう。

アフターフォロー体制の整備

顧客にとって、商品やサービスとの付き合いは主として「購入後」から始まっていきます。カスタマーサポートなどの連絡窓口を整えることはもちろん、問い合わせる際の手間やストレスをなるべく減らすための工夫も重要になるでしょう。

購入前の段階で、保証やサポート体制についての情報を十分に提供し、「万が一のときにどうしたらいいか」を明確にしておくことも大切です。

顧客志向を実践するためのステップ

顧客志向を実践するためのステップ

「顧客志向」という言葉はあくまで企業の姿勢や理念を示すものであるため、これを具体的な活動内容に反映していくには、目標設定や現状把握といったステップが必要になります。

以下では顧客志向を実現していくうえで、求められる具体的なプロセスについて解説していきます。

KPIの明確化

まずは「顧客志向の経営がうまくいっているか」を適切に評価できるよう、あらかじめ客観的な基準を設けておくとよいでしょう。

LTVやリピート率、リテンションレート(継続率)といった指標のほか、先のNPS(R)をはじめとする「顧客満足度」のスコアなど、その時々の状況を把握できる指標を見定めておきたいところです。

もちろん、客観的な数値から「自社が顧客の本質的なニーズを捉えられているか」を評価することは簡単ではありません。企業への信頼感やサービスの安心感など、数値では確認しにくい要素が長期的な売上につながることもあるでしょう。

それでも、顧客志向の考え方を具体的な企業活動へと落とし込んでいくうえでは、KPI(重要業績評価指標)の設定を通じて「やるべきこと」を明確にしておくことが望ましいといえます。

たとえばNPS(R)をKPIとして設定することで、「顧客が周囲の人にも勧めたくなるような商品にするにはどうしたらいいか」など、実際の行動に向けた問題意識が生まれてくるはずです。

市場分析の実施

顧客志向を実現するうえでは、「顧客のニーズ」を把握することはもちろん、「それに対して自社が提供できる価値」を明確にしておく必要があります。こうした点を整理するには、「市場分析」を通じて自社や顧客を取り巻く状況を見通しておくことが求められます。。

市場分析にはさまざまなフレームワークがありますが、たとえば顧客ニーズを把握するための方法論として、「市場・顧客」「競合」「自社」という3つの観点から現状を整理する「3C分析」が挙げられるでしょう。

また自社のターゲットとなる顧客層を絞りこんでいくための「STP分析」も、顧客に対する理解度を高めるうえで有効と考えられます。

アンケート調査の実施

上に挙げた市場分析は、客観的な状況をベースに顧客のニーズへと迫っていく方法であり、現状を整理するうえで欠かせないステップだといえます。

一方で、顧客が抱えている本当のニーズに迫るためには、市場分析のように「外的な要因にもとづく分析」だけではなく、「現実の顧客の声」に耳を傾けるアンケート調査も重要になるでしょう。

アンケートを実施する際は、さまざまな観点から自社の商品・サービスを数段階で評価するような定量調査のほか、「購入した理由」「使い心地」など答えの決まっていない定性調査も有効です。

分析・調査のフィードバック

顧客志向を実践するうえでは、上述の分析や調査の結果を「どのように企業活動へと反映していくか」が非常に重要です。市場分析によって得られた大局的な視点を忘れずに、アンケート調査によって浮かび上がる「顧客の本質的なニーズ」を見逃さないようにしましょう。

アンケートを集計する際には、客観的な数値として表われる「傾向」を把握することももちろん大切です。一方で、数の多い意見が必ずしも改善のヒントにつながるとは限りません。

たった1つの声から重要なヒントが得られるケースもあるため、とくに「自社の内側からは気づけない観点」には注意しておきたいところです。

分析や調査から、顧客のニーズに対する理解を深めつつ、KPIに照らして「今後どのような点を改善すべきか」という具体的な行動へとつなげていきましょう。

改善後の再評価

分析や調査の内容を実際の施策に活かしたあとも、定期的に顧客の反応や満足度に関する調査を実施し、課題や改善点を見つけていくことが求められます。

とくに長期的な経営のためには、「顧客満足度の向上」が「実際の経営指標を改善させているか」といった点を確かめることも重要です。顧客満足度が向上したとしても、それが売上や利益に反映されなくては、経営を継続することが難しくなってしまいます。 そのため顧客からの反応にも留意しつつ、LTVや継続率といった客観的な指標の変化もチェックしていくとよいでしょう。

まとめ

顧客志向とは、企業が経営活動において「顧客のニーズや満足」を最優先にする姿勢を指す言葉です。顧客の悩みや課題を深く捉えることで、「顧客が本当に求めているもの」に対する理解が進み、適切なアプローチが可能になると考えられます。

顧客志向を実現するには、さまざまな分析・調査を通じたニーズの把握や、満足度の向上に向けた課題の明確化など、具体的な行動のステップが求められます。

ニーズを把握し、自社にとっての課題を浮き彫りにする際には、「客観的な数字に表われている傾向」と「個々の顧客の思い」の双方に耳を傾け、本質的なニーズを導き出していくことが大切です。

大局的に市場のニーズを分析するだけでなく、「目の前にいる顧客の声」から改善のヒントを得ることで、顧客のリアルなニーズに迫っていきましょう。

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この記事を書いた人

鹿嶋 祥馬
大学で経済学と哲学を専攻し、高校の公民科講師を経てWEB業界へ。CMSのライティングを300件ほど手掛けたのち、第一子が生まれる直前にフリーへ転身。赤子を背負いながらのライティングに挑む。

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