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グロースハック(Growth Hack)とは?事例と学習に使える本も紹介します!

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ビジネスの継続的な成長を目指すうえで、マーケティングの観点は欠かせません。とりわけ近年では、Webマーケティングの重要性が広く認知されるようになりました。

Webマーケティングの方法論にはさまざまなものがありますが、とりわけ重視される観点としては「市場分析」や「広告施策」といった側面が挙げられます。現状を的確に把握しながら課題を洗い出し、状況に即した施策を打ち出していくことがスタンダードなモデルとされています。

一方で、こうした方法論において見過ごされやすいのが「技術的な視点」です。分析を通じて得られた施策や戦略の実現可能性について、システム面からアプローチしていく観点も、成長モデルを構築するうえでは必要になるでしょう。

つまり、市場分析にもとづき、消費行動をおのずと促す「仕組み」や「導線」を技術的に可能な範囲で具体化していく視点が、ビジネスの拡大には求められることになります。

このように、分析的な視点と技術的な視点を統合しながら、「継続的な成長の仕組み」を創出するための方法論として、「グロースハック」というものがあります。Twitter社やFacebookのMeta社など、著名な企業が採用している手法として、近年広く知られるようになりました。

この記事では、グロースハックの概要について解説したうえで、具体的な成功事例や、深く学ぶための書籍を紹介していきます。

グロースハックとは

「グロースハック」という言葉は、「成長」を意味する“growth”と、「コツ」「アイデア」といった意味をもつ“hack”を組み合わせたものです。主にWebマーケティングの分野で、「サービスの成長プロセスを方法論として確立する」ことを指して用いられます。

たとえば市場分析やブランディング戦略を行うだけでなく、特典やレコメンド機能などの工夫によって、制度やシステムの面からユーザー行動を喚起するような「仕組みづくり」がグロースハックに該当するといえるでしょう。

グロースハックは英語で“growth hacking”と呼ばれ、アメリカ合衆国のQuaraloo社を起業したショーン・エリス(Sean Ellis)氏が発案した考え方とされています。

グロースハックはマーケティング的な観点もふまえた「仕組みづくり」ですので、データ解析やSEO対策、コピーライティングからプログラミングまで、広範な領域に関わる方法論です。一方で、その目的はシンプルであり、「コストを抑えながら急速な成長を遂げること」に集約されます。

これを実現するために、通常のマーケティング的な視点はもちろん、分析を通じて抽出されたニーズに「技術的にどう応えられるか」といった視点も求められることになるのです。

まとめると、データ解析のスキルや、システムの設計・構築に関する知見などを統合しながら、ユーザーの消費行動を惹起する仕組みをつくることがグロースハックの本質だといえるでしょう。

グロースハッカーに求められる要素

グロースハックを担当する「グロースハッカー」は、職種としては「マーケター」に近い領域を扱うことになりますが、求められる観点がより広くなる傾向にあります。

グロースハッカーは「マーケターとコーダーのハイブリッド」とも呼ばれ、Webマーケティングの基本となる市場分析やターゲティング、SEO対策や集客施策といった領域から、サービスの技術的な実現可能性まで横断的に検討し、PDCAを循環させる視野が必要となるのです。

このように、グロースハッカーにはマーケター的な市場分析の視点と、エンジニア的な技術的可能性の視点を複合しつつ、戦略を立案できる総合的なスキルが求められることになります。領域横断的なスキルが必須となるため、実際の企業においてはグロースハックを担当するチームを設置しているケースも見られます。

グロースハックのフレームワーク

グロースハックを通じた成長戦略においては、一般に「AARRR」というフレームワークが用いられます。ユーザーの行動を5つのステージに分け、それぞれの段階に適した分析や戦略立案を行い、技術的な対策を検討していく考え方です。

以下では「AARRR」のそれぞれの段階について、基本的な観点を解説します。

Acquisition(ユーザー獲得)

最初の“Acquisition”は「獲得」を意味し、ユーザーの獲得段階を指しています。ここで求められるのは、「ユーザーに自社の商品やサービスを見つけてもらえているか」という観点です。

Webサイトやランディングページへの流入状況をトラッキングし、離脱状況について把握するなど、適切な現状分析を行ったうえで、「実現可能な仕組みのなかで課題をどう改善できるか」を検討していくことになるでしょう。

Activation(利用開始)

2つ目の“Activation”は、ユーザーによるサービスの利用開始を意味します。ユーザーが自社の商品・サービスに対して主体的な関心をもち、具体的な行動につなげる段階です。

具体的なユーザー行動の例としては、メルマガへの登録や、Webサービスへのサインアップ、SNSアカウントのフォロー、無料体験への参加などが挙げられます。こうした成果を実現するうえでの導線整理や、システム設計の観点が求められることになります。

Retention(継続)

3つ目の“Retention”は、ユーザーの関心が継続しており、引き続き行動につながっているかを確認する段階です。

メルマガの開封率やSNSの投稿に対するエンゲージメント、特定のページへの再訪率などが指標として用いられます。利用を開始したユーザーに対するフォロー体制の整備などが、検討事項になるでしょう。

Referral(紹介)

4つ目の“Referral”は、既存のユーザーがそのサービス・商品について新規ユーザーに広める段階を指しています。

SNSの各種シェア機能などにより、自社の情報がどれだけ拡散され、それがどの程度エンゲージメントにつながっているか、といったポイントをトラッキングすることで、まず現状を整理することが求められます。そのうえで、ユーザーが積極的に拡散したくなるような施策を打ち出していく観点が必要になるでしょう。

Revenue(収益化)

最後の“Revenue”は、これまでのプロセスを通じ、どれほどの収益が達成されたのかを分析する段階です。

コンバージョンレートだけではなく、顧客1人あたりの最小収益や、顧客獲得に生じたコストと収益のバランス、リピーターとなった顧客の割合など、多角的な観点から改善ポイントを抽出していくことになります。

課題を具体的に可視化したうえで、ポイントに合わせて対策を練り、技術的な実現可能性と照らし合わせながら最適化していくことが求められます。

グロースハックの成功事例

グロースハックの観点は多岐にわたるため、成功事例に見られる手法もさまざまです。共通しているポイントとしては、ユーザーのニーズを的確に把握するマーケター的な観点と、そのニーズに「どう応えるか」というエンジニア的な観点が統合されていることでしょう。

Twitter

Twitter社がアクティブユーザー数増加に向けて導入した施策は、グロースハックの代表的な事例として知られています。

ユーザー行動を解析するなかで、同社が着目したポイントは、「ユーザーのフォロー数と、継続利用率との間に正の相関性がある」という事実でした。この分析をふまえ、同社は「ユーザーにフォロー数を増やしてもらう」ための施策を取り入れます。

具体的には、新規登録の際におすすめのアカウントを表示したり、フォローの履歴などにもとづいた関連アカウントを表示したりすることで、フォロー数の増加を促し、結果としてアクティブユーザー数の増加にもつなげています。

自然にユーザーの行動を引き出すような導線を設計するうえで、ユーザビリティへの目線と、技術的な可能性に対する目線を両立させたモデルケースといえるでしょう。

Netflix

ビデオストリーミングによるビジネスモデルを確立するにあたり、Netflix社が重視したのは「パーソナライズ」の観点です。とりわけ同社が注力し、成功のポイントとなったのは、ユーザーの嗜好に合わせたレコメンド機能でした。

ビッグデータ解析にもとづくレコメンド機能は、コンテンツ配信サービスをはじめとする業界で広く取り入れられていますが、そのなかでも同社のユーザビリティやインターフェイスを追求する姿勢は際立っています。

たとえば同じ作品であっても、ユーザーの視聴履歴などに応じて関心があるポイントを類推し、自動的に表示するサムネイルを変更するシステムを採用するなど、訴求効果の高い方法を実現し、サービスの継続的な利用にも結びつけています。

Dropbox

オンラインストレージサービスで知られるDropbox社は、より多くのユーザーを取り込むにあたり、広告費をかける方向ではなく、「ユーザーの紹介」に特典を付与する形態を採用しました。

1人にDropboxを紹介し、紹介された側が利用を開始することで500MBのストレージ容量が紹介した側に追加されます。この方法を使えば最大で16GBまで容量追加が可能なため、多くのユーザーが紹介制度を通じて同サービスを利用するようになりました。

ユーザーによる紹介に特典を付与する手法は古くから存在していますが、ユーザーのニーズを的確に把握し、自社のベネフィットにつながる形を考案することで、現在でも費用対効果の高い方法として運用しうることを示す事例です。

グロースハックを学ぶのにおすすめの本

グロースハックについて主題的に扱っている日本語書籍はそう多くありませんが、初心者向けのものから実践的なものまで知見が凝縮された本も見られます。

以下ではグロースハック関連書籍のうち、網羅的に知識を身につけられる本を紹介します。

いちばんやさしいグロースハックの教本 人気講師が教える急成長マーケティング戦略

「株式会社VASILY」の代表取締役である金山裕樹氏と、同社でグロースハッカーを務めた梶谷健人氏による共著です。マーケティング初心者の状態からでも、グロースハックについてわかりやすく学べる入門書となっています。

グロースハックの概論として必要な情報が盛り込まれていることはもちろんですが、著者自らの経験にもとづく知見も散りばめられており、グロースハックに必要な観点を肌感覚として共有できる点が魅力です。

グロースハックに活用できるサービスやツールについても紹介されているため、読んでからの行動にもつなげやすい書籍だといえるでしょう。

(Amazon商品ページ:https://www.amazon.co.jp/dp/4844339923

Hacking Growth グロースハック完全読本

“growth hacking”の提唱者とされるショーン・エリス氏による指南書の邦訳版です。前半部で基本的なグロースハックの方法論を解説し、後半部では具体的な実践方法を提示する構成になっています。

企業による実際の施策が多く取り上げられており、グロースハックに必要な観点について事例を通して学べることが特徴です。

グロースハッカーとしてのマインドセットを学ぶうえでも、グロースハックの方法論を体系的に学ぶうえでも、満遍なく基礎を押さえられる内容が掲載されています。

(Amazon商品ページ:https://www.amazon.co.jp/dp/4822255824

グロースハック 予算ゼロでビジネスを急成長させるエンジン

「株式会社The Startup」で代表取締役を務める梅木雄平氏の著作です。グロースハック関連書籍のなかでも、「AARRR」のフレームワークを軸にした解説が特徴であり、多くの国内事例をもとに具体的な方法論や観点を提示しています。

AARRRのそれぞれの段階に1つの章を割き、複数の事例を通じて「その段階で求められる観点」が抽出されるため、フレームワークに沿った形でグロースハックの具体像を学んでいくことができるでしょう。

(Amazon商品ページ:https://www.amazon.co.jp/dp/4800720052

まとめ

グロースハックは「マーケティング」の一環として位置づけられることも多いものの、マーケター目線だけではなく、エンジニア目線もふまえた「総合的な戦略立ての方法論」として捉えるのが適切でしょう。

データ解析などを通じて「どこに問題があるか」を明確にしつつ、「どのように解決できるか」について、技術的な実現可能性をふまえて解を導くことにより、効率的にPDCAを循環させることが、グロースハックの本質だといえます。

グロースハックに必要となる観点やスキルは多方面にわたるため、実際の事例から学んでいくことも重要です。書籍を通じた学習に加え、普段接しているサービスが「どのように消費行動を促進しているか」といった面に日頃から目を向けておくことで、ビジネスの成長につながるアイデアが蓄積されていくと考えられるでしょう。

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この記事を書いた人

鹿嶋 祥馬
大学で経済学と哲学を専攻し、高校の公民科講師を経てWEB業界へ。CMSのライティングを300件ほど手掛けたのち、第一子が生まれる直前にフリーへ転身。赤子を背負いながらのライティングに挑む。

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