
【2025年版】医療広告ガイドラインをわかりやすく解説!違反事例も紹介
美容クリニックや歯科医院などで、Webページやチラシを制作する際に念頭に置かなければならないのが「医療広告ガイドライン」です。しかし、広範かつ細部にわたる規制内容において規制対象が把握できず、自院の特徴を周知させられずにいるケースも少なくありません。
この記事では、医療広告ガイドラインの概要と、規制対象となる表現や記載内容についてわかりやすく解説します。ガイドライン違反になるNG例もあわせて記載していますので、ぜひ参考にしてみてください。
目次
医療広告ガイドラインとは

医療広告ガイドラインとは、厚生労働省が制定した医療機関の広告に関する指導方針です。
主に、美容クリニックや歯科医院などの医療機関が、Webページや広告を制作するうえで遵守するための禁止事項が示されています。2018年6月1日からホームページも広告として扱われ、他の広告媒体と同様に規制対象となりました。
また、ガイドラインに違反すると罰則を科される場合があります。医療法に基づく中止命令や是正命令が発出され、応じない場合は6ヶ月以下の懲役または30万円以下の罰金が科される可能性があるため、医療の提供にはガイドラインを理解し遵守することが不可欠です。
医療に対する考え方と広告規制の趣旨
医療広告ガイドラインでは、医療に関する基本的な考え方を以下のように規定しています。
① 医療は人の生命・身体に関わるサービスであり、不当な広告により受け手側が誘引され、不適当なサービスを受けた場合の被害は、他の分野に比べ著しい。
引用:厚生労働省「医療広告ガイドラインに基づく標準的な対応期限も含めた
② 医療は極めて専門性の高いサービスであり、広告の受け手はその文言から提供される実際のサービスの質について事前に判断することが非常に困難である。
指導・措置等の実施手順書のひな型について」
医療サービスは、提供する側と提供される側で意思疎通の齟齬があってはなりません。
患者とコミュニケーションを大切にし、丁寧なカウンセリングを通して治療のイメージをすり合わせることも重要ですが、治療内容やリスク、料金などについて誤解を招く記載があると「手術が失敗した」「期待していた効果がなかった」「数種類のプランの組み合わせで費用が高額になった」などの風評を招く場合があるため注意が必要です。
医療広告ガイドラインの規制対象となる広告・表現とは

医療ガイドラインでは、法第6条の5第1項の規定により、内容が虚偽にわたる広告は事実に相違する情報を与え、適切な医療を受けさせることから罰則付きで禁じられています。
そのため、「安全な手術」や「副作用はありません」などの、科学的な根拠に乏しい情報のない表現は使用不可能です。「比較的安全な手術」といった表現であっても、比較対象が不明瞭のため禁じられています。
医療広告ガイドラインの規制対象となる主な内容は以下のとおりです。
- 比較優良広告
- 誇大広告
- 公序良俗に反する内容の広告
- 患者等の主観に基づく、治療等の内容又は効果に関する体験談
- 治療等の内容又は効果について、患者等を誤認させるおそれがある治療等の前又は後の写真等
その他、治療の効果について暗示的・間接的に効果を示唆するような表現も規制の対象となります。
それでは、違反に該当するNG例とあわせて一つずつわかりやすく説明します。
比較優良広告

比較優良広告とは、自院の優秀性について他院を比較の対象とし、提供する医療の内容や施設の規模、認知度などが優良である旨を広告することを意味します。
また、著名人との関連性を強調する表現は、患者に対して他院より優れているとの誤認を与える恐れがあり、比較優良広告として取り扱われるため注意が必要です。他院や著名人を名指ししていなくても、「一般的な医療機関よりも当院は優れている」と暗示しているため、間接的に比較級表現に該当してしまいます。
以下は、比較級表現の具体例です。
規制対象になるNG例
- ・「当院では他院で治療を断られた方でも真摯に対応いたします」
- ・「○○治療の第一人者です」
- ・「著名人も当院の医師を推薦しています」
- ・「最良の治療法です」
その他にも、「No.1」「最高」「最適」「最先端」などの最上級の表現も比較優良広告に該当します。また場合によっては、患者に誤認・過大な期待を与えることで、「誇大広告」に該当する可能性もあるため注意が必要です。
ただし、「最新の療法」や「最新の医療機器」などの表現は、調査内容や調査方法、実施時期など、事実と認められるエビデンスの記載があれば、必ずしも禁止されるわけではありません。
誇大広告

誇大広告とは、自院の施設環境や、治療内容の効果・効能を実際以上に強調する広告のことです。事実を誇大している表現は患者に誤解を与える可能性があるため掲載を禁じられています。
また、「プチ~」といった表現は、「手軽に行える」「身体への負担が少ない」などの印象を与える恐れがあるため、事実を不当に誇張した表現として誇大広告に該当する可能性があります。
以下は、誇大表現の具体例です。
規制対象になるNG例
- ・「必ず改善が見込めます」
- ・「プチ整形です」
- ・「注射針を使用しますが内出血は起こりません」
- ・「痛みのない治療です」
「注射針を使用しますが内出血は起こりません」「痛みのない治療です」は、一見問題なさそうに思いますが、副作用や痛みの感じ方には個人差があるため、「ゼロ」と断言することは誇大表現です。
また、「○○万円で治療が可能」と広告しているのにも関わらず、カウンセリングで見積もり以上の金額を提示した場合は誇大広告に該当するためご注意ください。
「高い満足度を得ています」といった表現も誇大広告に該当しますが、具体的な調査方法やデータ根拠が記載されていれば問題ありません。
公序良俗に反する内容の広告

公序良俗に反する内容の広告とは、わいせつもしくは残虐な図画や映像、差別的な表現を使用したことで、品質を損なっている広告のことです。
以下は、公序良俗に反する内容の具体例です。
規制対象になるNG例
- ・「○○人は当院の治療に適していません」
- ・「セクシーになれる美容医療です」
- ・「貧しい人でも手が届く高級治療法です」
- ・「美しい歯はあなたの武器になります」
公序良俗に反しない広告表現とするためには、「ご自身の印象をより魅力的に見せたい方に向けた美容医療を提供しています」「健康で美しい歯は第一印象にもつながります」など、外見に関する価値判断や社会的評価を断定する表現を避けることが重要です。
その他にも、手術のプロモーションのために過度な血しぶきや血まみれのイメージ画像を使用した場合、医療広告として不適切と扱われ、公序良俗に反する恐れがあるため注意しましょう。
患者等の主観に基づく、治療等の内容又は効果に関する体験談

わかりやすく説明すると、治療を受けた本人やその家族などが体験した、治療内容や効果についての感想を指します。
「体験談」そのものが問題となるわけではありませんが、医療機関が自ら管理・掲載する場合は、誘引目的を招く広告として扱われる可能性があるため注意が必要です。
また、体験談は患者ごとに症状や治療効果の感じ方が異なるため、医療に関する広告としての掲載は認められていません。
以下は、体験談が誘引目的に使用されていると見なされる具体例です。
規制対象になるNG例
- ・「○○クリニックで治療を受けて良かったです」
- ・「カウンセラーの女性がとても優しかったです」
- ・「患者様に自然な二重まぶたに仕上がったと感謝されました」
- ・「口元がきれいになって自信が持てるようになりました」
スタッフ自身の体験談であっても、誘引を目的として自院の広告で紹介することは認められていません。また、自院のWebページからGoogleマップに書き込まれた口コミに誘導する行為も対象となるためご注意ください。
治療等の内容又は効果について、患者等を誤認させるおそれがある治療等の前又は後の写真等

わかりやすく説明すると、治療名、治療内容、副作用(リスク)、治療回数・期間、費用が掲載されていないビフォーアフターの症例写真のことです。また、ビフォーアフターの画像がイラストであっても同様です。
上限額や標準的な費用を記載していない「○○円~」 のみの表記や、モニター価格だけを掲載している場合も、患者等を誤認させる恐れがあるため、医療広告ガイドラインに違反します。
その他、症例写真それぞれに必要事項を記載せずに、複数の写真をまとめて表示させている場合も違反にあたるため注意が必要です。
その他、規制対象となる表現

医療広告では、治療の効果について暗示的・間接的に効果を示唆するような表現も規制の対象となります。そのため、写真やイラストで「病人が復調して元気になる姿」や「医療ダイエットでスリムになった身体」などを表現して、過剰な治療効果をアピールすることもNGです。
また、「アンチエイジング」という表現は、「老化を防ぐ治療」として有効な治療だと誤認させる恐れがあり、厚生労働省が認めた診療科名ではないため、使用が禁止されています。
アンチエイジングは診療科名として認められておらず、また、公的医療保険の対象や薬事法上の承認を得た医薬品等による診療の内容ではなく、広告としては認められない。
引用:厚生労働省「医療広告ガイドライン案」
アンチエイジングを他の表現で記載したい場合、「エイジングケア」であれば問題ありません。「年齢に応じたお手入れ」を意味し、若返り効果の結果が断定できないため表記OKと考えられます。
ただし、「若々しくなります」「若返ります」などの、効果の証明ができない表現は医療広告で記載できないグレーな表現のため、使用は避けた方が安全です。
価格や安さを強調した表現
医療の公益性を損なうような表現や、キャンペーンなど商業的な側面を強調するような記載も、ガイドラインの規制対象です。
具体的には、「期間限定で○○円」といった費用を強調した表現や、「○○円→××円!」といった二重価格表示、「初回カウンセリングでクーポンプレゼント」など診療内容と関係ない情報による誘引などが該当します。
ただし、費用についてわかりやすく太字で示したり、下線を引いたりすることは問題ありません。
診療科名の表現
「専門外来」の表記は、広告が可能な診療科名と誤認を与える事項であるため、広告ができません。
ただし、医療広告ガイドラインの限定解除要件を満たせば広告が可能です。
医療広告ガイドラインの限定解除要件について

医療広告ガイドラインでは、広告で伝えられる内容に制限がありますが、特定の条件を満たすことで、制限の一部解除が可能です。医療広告ガイドラインの限定解除の要件は下記の4つです。
01.医療に関する適切な選択に資する情報であって患者等が自ら求めて入手する情報を表示するウェブサイトその他これに準じる広告であること
02.表示される情報の内容について、患者等が容易に照会ができるよう、問い合わせ先を記載することその他の方法により明示すること
03. 自由診療に係る通常必要とされる治療等の内容、費用等に関する事項について情報を提供すること
04. 自由診療に係る治療等に係る主なリスク、副作用等に関する事項について情報を提供すること
引用:厚生労働省「医療広告規制におけるウェブサイト等の事例解説書(第5版)」
一般的なWebサイトは、患者が自分で検索してアクセスするため、01.の「自ら求めて入手する情報」に該当します。しかし、「リスティング広告」や「バナー広告」など、患者の自発的な検索や行動によらず表示される広告は対象外です。
一方で、パンフレットやメールマガジンのように、患者が請求して受け取る情報は、自ら求めたものと考えられるため、01.の要件を満たす広告物として扱われる場合があります。
02.で記載されている問い合わせ先とは、主に電話番号やメールアドレスなどが対象です。ヘッダーやフッター、問い合わせページなどの、目立つ場所に記載があれば問題ありません。
03.は、自由診療について単に費用を記載するだけでなく、診療の具体的な内容、治療に必要な期間、治療回数などを含め、患者が内容を正しく理解できるよう具体的かつ詳細に記載する必要があるということを意味します。
04.は、治療の効果やメリットだけを強調するのではなく、想定される副作用やリスクなどのデメリット情報も、分かりやすく記載することが求められます。
自由診療にかかる費用や治療内容は、提供するクリニック等によって大きな差異が生じますが、上記の01.~04.の要件を満たすことで、自由診療の詳細な治療内容だけでなく、広告可能事項以外の診療科目名や学会資格、厚生労働省による承認を受けていない医薬品や医療機器を用いた治療などを掲載することが可能です。
ただし、厚生労働省未承認である旨の明示、入手経路、国内における同等の承認済み医薬品等の有無、諸外国における承認状況および安全性に関する情報、医薬品副作用被害救済制度の対象外であることなど、所定の事項を明確に記載する必要があります。
医療広告ガイドラインの重要性まとめ

医療広告ガイドラインは複雑ではありますが、規制対象を厳守した広告を行えば、自院の信頼性や評判の向上が期待できます。無意識であっても違反してしまえば、罰則の対象となるためしっかりと内容を把握しておきましょう。
大切なのは、「患者が適切な治療を選択できるような広告を作成する」ことです。メリットだけでなく、副作用やリスクなどのデメリットについての記載も忘れずに行ってください。
規制対象を厳守しつつ、患者のニーズに寄り添うことで満足度向上やリピートにも繋がっていくことでしょう。
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