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ROIとは?その意味と算出方法、間違えやすいROASとの違いをわかりやすく解説

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事業を成功に導くためには、その時々の「成果」をコンスタントに確認していく必要があります。とはいえ現状分析や効果測定に用いられる指標は実にさまざまであるため、まずは「どの指標で何がわかるのか」をしっかりと整理しておきたいところです。

ある施策や事業の収益性を測る指標として、「ROI」が挙げられます。この記事では、ROIの概要や算出方法についてわかりやすく解説し、間違えやすい「ROAS」との違いについてもお伝えしていきます。

ROIとは

ROIとは、「Return on Investment(リターン・オン・インヴェストメント)」を略した言葉であり、日本語では「投資収益率」または「投資利益率」と訳されます。読み方としては「アール・オー・アイ」または「ロイ」とされるのが一般的です。

ROIの意味をわかりやすく表現すると、「投資したお金に対してどれだけのリターンがあったか」を示す指標だといえます。さまざまな施策の費用対効果について、「利益ベース」で計算し、実質的な収益性を算出することを特徴としています。

ROIによって把握できる内容としては、たとえば「投じた広告費に対してどれだけ利益が出ているか」「新しく導入した設備によってどれだけ利益が増えたか」といった点が挙げられるでしょう。投資したポイントごとに細かくリターンを把握することで、施策や事業のコストパフォーマンスをチェックできるのです。

ROIが重要視される理由

上述のように、ROIは「施策や事業ごとの収益性」についてチェックできる点を特徴としています。そのため規模や区分の異なる複数の施策についても、一定の基準から比較し、「どの施策がもっともコストパフォーマンスに優れているか」を判断できるでしょう。

以下ではより具体的に、経営においてROIが重視される理由について解説していきます。

複雑化するマーケティング戦略を整理できる

現在ではWeb上をはじめ数多くの広告媒体が存在しており、複数のプラットフォームに広告を出稿している事業者も少なくありません。

とはいえ「広告出稿先の多さ」は、必ずしも効率的な集客を意味するものではないでしょう。多くの媒体で広告施策を展開したとしても、「実際に効果につながっている出稿先」を選別できなくては、広告費のロスが大きくなってしまいます。

この点で、ROIは「それぞれの媒体がどれだけの収益をもたらしているか」を把握することに役立ちます。広告媒体ごとのROIを算出することで、「収益性にもとづいた予算の適切な配分」についてのヒントが得られるでしょう。

たとえば「SNS広告」と検索連動型の「リスティング広告」の両方を運用している場合、実際にROIを測定することで、「どちらの方がコストパフォーマンスに優れているか」についての判断が可能です。

ここで仮に、「これまでリスティング広告をメインに費用を投じていたが、実際にはSNS広告の方がROIが高くなっている」ことが明らかになれば、SNS広告の方に大きな予算を割いていくといった方針がとれるでしょう。

異なる事業間での予算配分に役立つ

ROIによって費用対効果を確認できるのは、広告・マーケティングの施策だけではありません。商品の生産工程や、営業リソースなど、「かけたコストに対する実質的なリターン」が問題となるシーン全般に適用が可能です。

これにより、まったく異なる事業や施策間でも、同じ基準から費用対効果を比較できます。たとえば「テレアポに多くのリソースを割くよりも、SNS広告にコストを投じた方が収益性が高くなりそうだ」など、全体的な経営方針を客観的な数値にもとづいて打ち出していけるでしょう。

ROIの算出方法

ROIの算出方法は、一般に以下の式によって表されます。

ROI(%)=利益額÷投資額×100

ここで、ROIは実際の「利益」をベースとする指標であるため、「売上額」をもとに計算しないよう注意しましょう。売上額から算出する場合には、次のようにコスト分を引いて計算する必要があります。

ROI(%)={(売上額-売上原価)-投資額}÷投資額×100

なお、ROIの数値が「0%」未満になる場合には、利益が投資額を下回っており、いわゆる赤字の状態であることを示しています。反対にROIが0%を超えると、投資額に対して利益が上回っていることになり、黒字が出ている状態です。

ROIの算出例

ここで仮に、ある飲食店がSNS上で広告の運用を開始したケースを例にROIを算出してみましょう。たとえば月間の売上額として500万円、原価などのコストとして200万円、広告出稿費として100万円をかけた場合、ROIは次のようになります。

ROI={(500万円-200万円)-100万円}÷100万円×100=200%

また、たとえば同様の飲食店が広告戦略をリスティング広告に切り替えた結果、売上が1100万円、原価などのコストが300万円、広告出稿費が400万円となった場合のROIは次のとおりです。

ROI={(1100万円-300万円)-400万円}÷400万円×100=100%

この場合、広告施策を通じた売上額としてはリスティング広告が上回っていますが、ROIの数値を見るとSNS広告の方が高くなっており、コストパフォーマンスに優れていることになります。

ROASとROIの違い

ROIと混同されやすい指標の1つに、「ROAS(ロアス)」があります。ROASとは「Return on Advertising Spend」の略であり、日本語で「広告の費用対効果」と訳される言葉です。

ROIとの主な違いとしては、ROASが「広告費」のみに焦点を当てた指標であること、さらに「売上ベース」の指標であることが挙げられます。つまり、ROIが「コストに対する利益」を見るのに対し、ROASは「広告コストに対する売上」を見る指標です。

なお、ROASは次の数式によって算出されます。

ROAS(%)=広告を通じた売上額÷広告費×100

総じて、売上をベースとするROASは、広告施策による「ダイレクトな変化」を短期的に把握することに適しています。一方、ROASだけでは実際の利益が把握できないため、「業績への実質的な影響」を知るうえではROIが有効だといえるでしょう。

ROIを活用できる場面

事業や施策ごとに収益性を評価できるROIは、さまざまな場面に活用できる指標であり、自社の業態や分析の目的に応じて取り入れることができます。

以下では具体的に、経営のなかでROIを活用しやすい場面について解説します。

マーケティング施策の評価

マーケティング戦略が多様化し、複数の広告媒体を利用している事業者も多い現在、ROIは「施策ごとの収益性を細かく把握し、それぞれを比較する」際に有効に機能します。「ピンポイントな施策の効果」をきめ細やかに把握できる点が、ROIのメリットなのです。

とりわけWeb広告やSNS広告における施策は、短期間での切り替えがしやすく、成果も逐一チェックできることから、ROIとの親和性が高い媒体だといえるでしょう。

たとえば「ターゲット設定を変えた前後でROIを比較する」など、試行と評価のサイクルをスピーディーに展開でき、短いスパンで改善策へとつなげられると考えられます。

設備やシステムの導入成果の評価

生産プロセスに新しい設備を導入したり、マーケティング業務を効率化するシステムを採用したりするなど、「業務の環境を大きく変化させたことによる成果」を評価する際にもROIは有効です。

導入後のROIの推移を追うことで、その設備やシステムがどれだけ効果をもたらしているかを把握できます。十分な効果が認められた場合には、その他の生産プロセスや業務フローにも同種の設備を導入するなど、その後の環境整備にも役立つでしょう。

新規事業の評価

新しく事業やプロジェクトを立ち上げたケースなど、ROIを通じて事業の収益性を評価することで、今後の展開に見通しをつけやすくなります。

とくに複数のプロジェクトを展開しており、そこからの取捨選択が必要になるケースにおいては、ROIを用いた収益性の比較が欠かせません。

もちろん、ROIは事業のあらゆる側面を評価するものではなく、将来性や可能性まで評価することは難しい面もあります。しかし、「まったく異なる事業の収益性」を同じ基準から比較できるROIは、その時々において迅速かつロジカルな決断を求められる経営の舵取りのなか、大きな意味をもつでしょう。

さらに、単純に事業やプロジェクトを取捨選択するだけではなく、それぞれの「投資額と利益のバランス」を把握し、予算配分を適正化していくうえでもROIは有効だと考えられます。収益性の芳しくない事業を縮小したり、反対に収益性の高いプロジェクトの予算を増やしたりと、経営の道筋を定めるうえでROIを通じた検証は必要不可欠です。

ROIを活用する際の注意点

ROIはさまざまな施策の収益性を比較できる汎用性の高い指標である一方、事業や施策の性質によっては「ROIによる評価が妥当ではないケース」も生じることがあります。

以下では、ROIではうまく評価できない状況や、ROIを扱う際の注意点について解説していきます。

「成果まで時間のかかる施策」は評価しにくい

ROIはある時点での「利益」と「投資額」から算出される数値であるため、成果が出るまでに一定のスパンを要する施策や事業を評価することは難しい傾向にあります。

たとえば「SNSアカウントの運用によってどの程度収益性が向上したか」をチェックしようとしても、SNSにおける1つ投稿がすぐさま売上に影響を及ぼすケースは稀でしょう。SNS運用による変化が生じるまでには相応の期間が必要であり、直後の利益だけを見て効果を判断するのは適切ではないと考えられます。

ただし、ROIを定期的に算出し、その都度記録しておくことで、「施策前とその後の変化」を追っていくことは可能です。もちろん成果を検証する際には、その期間における別の変動要因についても考慮する必要があるでしょう。

「信頼性」や「認知度」などの成果は評価できない

ROIは施策や事業の成果を「利益」の面で評価する指標であるため、「数値化できない成果」については評価することができません。たとえば「ブランディング施策により自社への認知がどのように変わったか」といった質的な側面は、ROIによる評価の対象外となります。

とくにマーケティング施策においては、利益の面だけでは効果が把握できないポイントも多いでしょう。売上や利益に目に見える変化がなくとも、地道なマーケティングにより信頼感を獲得し、それが長期的な顧客獲得につながるケースも考えられます。

このように、ROIが短期的に改善しない場合にも、一概にその施策を「効率が悪い」と切り捨ててしまうことにはリスクがあります。ROIをあくまで評価軸の1つとしながら、「その施策が利益以外の面でどのような効果をもたらしているか」まで考慮することが大切です。

人事における費用対効果は評価が難しい

上述のように、ROIは「成果が出るまでに時間を要する施策や事業」については適用が難しい指標です。このような性質から、「人材への投資がどれだけリターンを生んでいるか」という点についても捉えきれない部分があるでしょう。

たとえば「人材募集にかけた費用」が実際にどれだけの収益につながっているのかは、短期的な計測からは判断できません。

もちろん、「採用枠を広げてから5年後にどれだけ収益性が改善したか」など、大局的な視点から変化を追うことは可能でしょう。ただし、人員数のほかにも利益の変動要因はさまざまに考えられるため、ROIはあくまで大きな視点からの「傾向的な変化」を捉えられるにすぎないのです。

その他、人材育成による企業文化や人間関係の変化など、人事には数値化できないファクターがきわめて多く、ROIによる評価が難しい分野だといえるでしょう。

ROIを改善するためのポイント

ROIを改善するには、「利益を向上させる」あるいは「投資額を削減する」という2つの方向性が考えられます。以下では実際に、ROIを向上させるためのポイントについて解説していきます。

広告コストの見直し

広告施策のROIを改善する場合には、「投資額」にあたる広告出稿費を削減することにより、収益性の向上が期待できます。

具体的な方向性としては、Web広告やSNS広告における「ターゲティング」の最適化が挙げられるでしょう。商品特性などを考慮しながら、広告が表示されるターゲットの属性を絞ったり、あるいは配信する時間帯を限定したりすることで、「期待値の高い相手に対してのみ情報を届ける」よう策を講じることが重要です。

また、ROIを比較しながら、「収益性の伸びていないプラットフォーム」を特定していくことも大切です。SNS広告の場合にはとくに、ユーザーの年齢層や性別に偏りがあるケースもあり、商品特性とプラットフォームの性質がマッチしていないことも考えられます。

広告費のムダをなくすには、広告プラットフォームに備わる分析機能なども活用しながら、「どの媒体で、誰に対してアプローチすべきか」を客観的に見定めることが求められるでしょう。

経営コストの削減

ROIのベースとなる「利益」を高めるうえでは、生産工程や営業活動などにともなう経営コストを削減する方向性も考えられます。仕入れ先や配送業者を見直すなど、事業にかかるコストを全面的にチェックしていくことが求められるでしょう。

長期的なコストを削減する意味では、業務効率化に役立つツールを導入し、人的なリソースをカットしていくことも選択肢となります。さまざまな顧客の情報を一元的に管理できる顧客管理ツールや、社内の情報共有を容易にするクラウドサービスなど、現に生じている「業務上のロス」を見つけ、課題に応じたツールを選んでいくとよいでしょう。

マーケティング施策の見直し

利益を向上させるうえでは、「売上額を伸ばす」という視点も求められます。新規顧客の獲得や既存顧客のリピート獲得に向け、商品・サービスの売り出し方を今一度見直しておきたいところです。

売上増加を見込むには、入念な現状分析を通じてボトルネックを突き止めておく必要があります。ターゲットの動きを分析しながら、「どこで購買行動が途切れているか」を浮き彫りにすることが大切です。

たとえばWebマーケティングを通じて新規顧客を獲得する場合、「自社サイトへの流入元はどうなっているか」「サイトを訪問したユーザーがどの程度購入や問い合わせをしているか」などの観点から、課題を分析していく視点が考えられます。

現状の課題を明確にしたうえで、流入経路を整備し、購入や問い合わせにつながる導線を整えるなど、必要な措置を講じていきましょう。

まとめ

ROIは「投資利益率」または「投資収益率」を意味し、「その施策にかけた費用に対し、どれだけの利益が生まれているか」を表す指標です。施策や事業ごとに収益性を確認し、同じ基準から比較検討できる点を特徴としています。

とりわけ現在では、Web広告やSNS広告をはじめ「ターゲットとの接点」が多様化しており、ターゲットに関心を抱いてもらうためのコストを多くの媒体に支払っている事業者も少なくありません。そうしたなか、媒体ごとの収益性を比較し、投資のバランスを最適化するうえで、ROIを通じた検証は役に立つでしょう。

そのほかにも、新規事業の収益性や設備投資の効果を把握するケースなど、ROIの用途は幅広く考えられます。ただその一方で、ROIは「成果が出るまでに時間のかかる施策」や「成果が数値として表われない施策」の効果を評価することには向かない面があります。

さまざまな事業や施策を評価する際は、利益以外の数値化できない要素についても考慮しつつ、ROIを1つの重要な尺度として活用していくとよいでしょう。

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この記事を書いた人

鹿嶋 祥馬
大学で経済学と哲学を専攻し、高校の公民科講師を経てWEB業界へ。CMSのライティングを300件ほど手掛けたのち、第一子が生まれる直前にフリーへ転身。赤子を背負いながらのライティングに挑む。

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