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音声広告(オーディオアド)とは?知っておきたい効果・市場規模

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近年、音楽配信サービスやインターネットラジオなどが普及するとともに、スマートフォンなどでオンライン上の音声コンテンツを楽しむユーザーが増えています。

音楽との関わり方にも大きな変化が見られ、従来の「好みの音楽をデバイスに取り込むかたち」から、「気分に合わせてネット上のコンテンツを再生するかたち」への移行が見られます。

こうした変化を背景に、このところ急激に市場を拡大しているのが「音声広告」の分野です。聴覚を通じて記憶に訴えかける音声広告は、ユーザーの印象に残りやすい手法として、今後さらなる発展が見込まれています。

この記事では、音声広告の概要や、市場規模から見る今後の可能性をふまえ、具体的な広告サービスを紹介していきます。

音声広告とは

イヤフォンをつける人

音声広告とは、音声メディアを通じて配信される広告全般を指しており、これ自体は新しい言葉ではありません。

たとえば従来では、ラジオ放送において番組の合間に流されるCMが音声広告の代表例でした。しかし近年では、Spotifyをはじめとする音楽配信サービスや、radikoをはじめとするインターネットラジオ、各種ポッドキャストなど、オンライン上の音声メディアが数多く登場し、広告のあり方も多様化しています。

こうした流れのなかで、オンライン上のメディアに出稿されるようになった音声広告のことを「デジタル音声広告」と呼びます。なお、デジタル音声広告には複数の呼称があり、「オーディオアド」「オーディオ広告」などと呼ばれることもあります。

音声広告の市場規模

世界の市場動向についての統計データを扱うStatistaの調査では、音声広告の世界的な市場規模は、2017年の時点で「26.3億米ドル」でしたが、2022年には「67.8億米ドル」に達するとの見通しが示されました。さらに、2027年には100億米ドルを突破すると予想され、実に年間8%以上の成長率が見込まれています。

(参照:Statista Market Forecast  “Digital Audio Advertising – Worldwide”

一方、国内における音声広告の市場規模について、株式会社デジタルインファクトが実施した調査では、2020年の16億円規模から、2025年には420億円規模へと急拡大する予測が提示されました。

(参照:デジタルインファクト「デジタル音声広告の市場規模は2020年に16億円、2025年には420億円に」

その他、国内における定額制音楽配信サービスの利用者数も増加傾向にあります。株式会社ICT総研による調査では、2019年の2160万人から2023年には2930万人に達するとの見通しです。

(参照:ICT総研「2020年 定額制音楽配信サービス利用動向に関する調査」

以上のように、国内外における音楽配信サービスの普及にともない、音声広告の市場は急速に拡大していくことが見込まれます。市場の成長とともに広告サービスも充実していくと予想され、広告主となる企業はもちろん、広告出稿に携わる企業にとっても大きなビジネスチャンスが広がっているといえるでしょう。

デジタル音声広告の効果と可能性

listening

ユーザーの「聴覚」に訴えかける音声広告は、視覚情報を主とするほかの広告に比べ、特有の訴求効果を発揮しうると考えられます。さらに、音声広告の特性に加え、デジタル化による恩恵が重なることで、より確度の高いマーケティングが可能になっていくでしょう。

以下ではより詳しく、デジタル音声広告の特徴や可能性について解説していきます。

ターゲティングの細かな設定

現在、多くの広告配信プラットフォームでは、ユーザーの属性や行動に関するビッグデータを扱いながら、より個人に最適化したターゲティングが可能になっています。

デジタル音声広告もその例外ではなく、年齢や性別などのユーザー属性に関わる部分のほか、視聴履歴や時間帯などにもとづくセグメンテーションを行えるサービスが多く展開されています。こうした細かなターゲティングにより、ユーザーの関心や利用シーンに適した情報を配信できる可能性が高まっているといえるでしょう。

さらに近年では、より具体的なシーンに特化した音声広告も展開されています。その代表例として、「ドライブ」に焦点を当てた株式会社エフエム東京とパイオニア株式会社のサービスが挙げられます。

2社による「ドライブ行動型デジタル音声広告」は、カーナビゲーションを通じて取得されるドライブ行動のデータをパターン化し、そのデータにもとづく広告をラジオアプリ上で配信するサービスです。ユーザーの行動に合わせた広告配信により、具体的な訴求効果をもたらすと期待されています。

(参照:TOKYO FM 会社案内「TOKYO FM とパイオニア 広告配信サービス 『ドライブ行動特化型デジタル音声広告』を共同開発」(同「プレスリリース 2018年度」内))

その他、現在では、ユーザーの位置情報にもとづきエリアに関連する広告を配信する「ジオターゲティング広告」の可能性に注目が寄せられています。位置情報に即した配信により、直接的な来店効果が期待できる広告形態ですが、これも音声広告の分野に応用されているのです。

(参照:株式会社ジオロジック「位置情報広告「GeoLogic」、Spotifyで音声広告を開始」

このように、さまざまな側面からパーソナライゼーションが進んでおり、音声広告の分野でもより確度の高い広告配信が可能になっていくと考えられています。 なお、先の「ジオターゲティング広告」については以下の記事で詳しく解説しています。ぜひあわせてご参照ください。

「片手間」のユーザーに情報を届けられる

ディスプレイ広告や動画広告など、一般的なWeb広告は主として「視覚」に訴えるものです。瞬時にイメージを伝えられるメリットがある反面、コンテンツを閲覧しているユーザーの意識や行動を中断させかねない点も無視できません。

一方で、「聴覚」に働きかける音声メディアは、作業をしながら聞いたり、あるいはスマートフォンで別のコンテンツを閲覧しながら聞いたりと、「ながら聞き」の場面が多く見られます。ここから、音声広告はユーザーの「目の前の行動」を中断しにくい特性があるといえるでしょう。

意識の妨げになりにくいことから、音声広告はスキップされずに最後まで再生される傾向にあります。たとえばSpotifyの音声広告においては、広告終了まで視聴される割合が93%に上るという結果が示されました(2020年3月実績値)。同広告がスキップできない仕様であることを考慮しても、90%を超える完全再生率は広告として非常に高いといえます。

(参照:Spotify Advertising「デジタル音声広告って何?Spotifyの音声広告『きほんのき』」

「音声」そのものがもたらす効果

音声広告ならではの強みとして、「人の声がもたらす温かみ」や、「音楽を通じた記憶への訴求力」などが挙げられるでしょう。こうした強みが、ブランドの認知拡大や、好感度の向上につながることも考えられます。

Spotifyが調査会社ニールセンと共同で実施した「ニールセンニューロ調査」においては、脳波計測による実験のもと、動画広告に対する音声広告の優位性が示唆されました。これによれば、「ブランドの名称を認知してもらう」ことを目的とした場合、「音声のみ」の広告素材が、「動画のみ」「動画+音声」の素材よりも高い効果を発揮したとされています。

さらに、意思決定に関わる脳波指標への影響面では、音声広告と動画広告を組み合わせることで、動画のみの場合よりも大きな変化が確認されました。「注目」「感情関与」「記憶」という主要指標のうち、とくに音声広告によって「感情関与」への大きな影響が示されたといいます。

ここから、音声広告は動画広告に比べて「名称」や「フレーズ」を伝えることに適しており、聞く側の共感を喚起しやすい性質をもつことが読み取れるでしょう。

音声広告のサービス紹介

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デジタル音声広告サービスは、2010年代後半からアメリカ合衆国を中心に市場規模を拡大し、現在では国内でも取り扱いを開始する事業者が増えています。ここでは2022年8月現在、国内で音声広告を扱っている主なサービスを紹介します。

Spotify音声広告

音声ストリーミングサービスの大手であるSpotifyは、音声広告の面でも充実したサービスを展開しています。

広告の形式は、ユーザーが再生する曲と曲の合間に、最長30秒の広告が再生され、開始後はスキップされない仕様です。広告再生中は画面にバナーも表示され、外部サイトへのリンクも設置できます。

広告プランは大きく2種類あり、決まった広告枠を購入する「純広告」と、リアルタイムに買い付ける「運用型」に区分され、目的や運用形態に応じて選択が可能です。

Spotify音声広告はターゲティングの柔軟性を大きな特徴としており、再生中の音楽ジャンルにもとづくターゲティングや、「通勤中」「ワークアウト」などシーン別に設定可能なプレイリストターゲティングなど、嗜好や場面に応じて配信することができます。

(参照:Spotify Advertising「Spotify 広告」

文化放送ポッドキャストオーディオアド

「文化放送ポッドキャストオーディオアド」は、文化放送が各種媒体で配信しているポッドキャスト番組上の広告枠に、自社の音声広告を出稿できるサービスです。

広告の出稿先は多岐にわたり、「Apple Podcast」や「Google ポッドキャスト」のほか、文化放送のWebサイト上のプレイヤー、Spotifyなど文化放送が番組を配信している複数のプラットフォーム上に展開可能です。

広告プランとしては、あらかじめ設定した予算分の広告を自動で配信するシステムが採用されています。日時や曜日、エリアやデバイスに応じたターゲティングが可能であり、コンテンツの再生数が予算分に達すると自動的に配信が停止される仕組みです。

(参照:文化放送メディアナビ「オーディオアド」

Radiotalk×博報堂DYメディアパートナーズ「インタラクティブ音声広告」

音声広告は現状のところ、コンテンツの合間に音声情報をユーザーに提供するかたちが一般的ですが、新たな広告形態として、「対話形式」でユーザーの興味関心を掘り下げる「インタラクティブ(双方向)音声広告」も展開されはじめています。

たとえばRadiotalk株式会社と株式会社博報堂DYメディアパートナーズは、株式会社リクルート住まいカンパニーを広告主として、日本初となるインタラクティブ音声広告を配信。リクルート住まいカンパニーの「SUUMO」の音声広告において、ユーザーに「住まいへの関心」についての問いかけを行い、ユーザーが音声で答えた内容を解析し、回答に応じた案内音声を流す仕組みを導入しました。

(参照:Radiotalk株式会社(PR TIMES)「Radiotalkと博報堂DYメディアパートナーズで、日本初の導入! Radiotalkで「インタラクティブ(双方向)音声広告」を配信開始」

同サービスは、広告のなかで興味関心に合わせた案内を行える手法として、今後さらなる発展が見込まれています。このように、市場拡大とともに音声広告のあり方は多様化し、「シーンに適した情報」を「ユーザーに寄り添うかたち」で提供できるサービスも増えていくと考えられるでしょう。

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この記事を書いた人

鹿嶋 祥馬
大学で経済学と哲学を専攻し、高校の公民科講師を経てWEB業界へ。CMSのライティングを300件ほど手掛けたのち、第一子が生まれる直前にフリーへ転身。赤子を背負いながらのライティングに挑む。

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