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哲学対話とは?ルール1つでミーティングの質が激変!やり方やビジネスにおけるテーマの例まで徹底解説

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組織の生産性を高めるうえでは、ミーティングをはじめとする「メンバー間の意思疎通の場」を建設的にしていく必要があります。しかし実際の現場では、さまざまなしがらみや忖度などが生じ、議論の風通しが悪くなっていることもあるでしょう。

近年では活発な議論を促す方法論として、「哲学対話」という形式を取り入れる企業が見られるようになりました。この記事では、哲学対話の概要やビジネスにおける有用性をふまえ、具体的なやり方について解説していきます。

哲学対話とは

哲学対話とは、グループで議論を深めるための対話方法です。参加者が円状に席を並べ、大きく8つのルールにのっとり特定のテーマについて発言を重ねていきます。

哲学対話を実施する主な目的は、「日常的な関係から切り離された安全な発言の場」を参加者に提供することにあります。多様な意見にスポットライトが当たる環境を作れるよう、哲学対話のルールは定められているのです。

通常のミーティングやディスカッションにおいては、職場内でのポジションをはじめ「普段の人間関係」が発言のしやすさや重要度に大きく影響するケースもあるでしょう。議論の場で発生しがちな「非対称な関係」を、哲学対話のルールによりフラット化することで、自由な発言を促すことが趣旨とされています。

哲学対話が重要視される背景

哲学対話はもともと、ハワイなどを中心に広まった「子どもの哲学(philosophy for children)」というプログラムや、主にフランスを起点とする「哲学カフェ」というプロジェクトの一環として、日本国内にも導入されるようになりました。

導入初期には主に教育現場において、学習指導要領に定められる「主体的・対話的で深い学び」の実践として取り入れられる傾向にありました。その後、成人向けの哲学カフェなどの取り組みを通じて徐々に有効性が周知されはじめ、現在では企業活動においても導入されるケースが見られます。

とくに近年では、GoogleやAppleなどの巨大企業が「企業内哲学者(インハウス・フィロソファー)」というポジションを設けていることなどから、企業経営における哲学的思考の重要性に着目する向きも見られます。そうした背景もあり、ビジネスに「哲学のエッセンス」を取り入れる方法として、哲学対話が注目されつつあるのです。

ビジネスに哲学対話を取り入れるメリット

オープンで活発な議論を趣旨とする哲学対話は、ミーティングやディスカッションをはじめ、ビジネスシーンにおいても有効に活用できるでしょう。通常の話し合いとの大きな違いは、「立場に囚われずに発言するためのルール」が定められている点にあります。

たとえば立場の低い者が発言を控えたり、目上の人の意見に対する疑問を飲み込んだりなど、通常の議論においては「潜在的な意見」がしばしば抑圧されていると考えられます。その結果、議論の場に新しい意見が出されることなく、話し合いの場そのものが形骸化しているケースもあるでしょう。

以下に述べるように、哲学対話のルールは「日常の関係性」を一旦脇に置くために定められたものです。所属や立場といった垣根を越え、自由に提示される多様な意見により、ビジネスにおいても今までにない視点や可能性が切り拓かれていく場面もあるでしょう。

哲学対話のルールと注意点

上述のように、哲学対話の目的は「すべての参加者に安全な発言の場を保障すること」にあります。誰もが気兼ねなく発言できる環境を作るうえで、定められているのが次の8つのルールです。

  1. 何を言ってもいい。
  2. 人の言うことに対して否定的な態度をとらない。
  3. お互いに問いかけるようにする。
  4. 発言せず、ただ聞いているだけでもいい。
  5. 知識ではなく、自分の経験にそくして話す。
  6. 意見が変わってもいい。
  7. 話がまとまらなくてもいい。
  8. 分からなくなってもいい。

(引用:梶谷真司『考えるとはどういうことか』幻冬舎新書、2018年)

以下ではそれぞれの項目について、ポイントや注意点を解説していきます。

1.何を言ってもいい。

最初の「何を言ってもいい」という決まりは、哲学対話の根幹を支えるルールです。哲学対話は一定のテーマに沿って展開されますが、テーマをどのように解釈し、どのような角度から発言するかは個人の自由なのです。

一般的な議論の場では、参加者のそれぞれが「正しい文脈」や「適切な発言」を意識しすぎてしまい、発言が膠着するケースが多く見られます。哲学対話においては参加者が「これって言ってもいいのかな?」という気兼ねをせず、忌憚のない意見を出せる空気を作っていくことが必須とされています。

2.人の言うことに対して否定的な態度をとらない。

他者の発言に否定的にならないというのは、上の「何を言ってもいい」という条件を下支えするルールです。一般に、自分の意見を否定される可能性があると、積極的に意見を出そうという意欲が低下してしまうものでしょう。

自由な発言を促すためには、誰が発言しているかに関わらず、その話に傾聴する姿勢を全員が示していくことが大切です。このルールを徹底することで、それぞれの参加者は心理的な安全性を感じやすくなると考えられます。

ただしこのルールは、「意見を必ず肯定しなければならない」ことを意味するものではありません。発言者の話を一旦聞いたうえで、疑問に思う箇所については質問をしたり、異なる立場から意見を述べたりすることで、議論を深めていくことが大切です。

なお、「自分が発言してもいい」という感覚を促すうえでは、発言権の所在を示すアイテム(小さなボールなど)を発言者に回していく方法もあります。子どもの哲学対話においてはしばしば「コミュニティボール」と呼ばれるアイテムが用いられますが、発言者を物理的に示すという方法は、成人同士の対話においても有効でしょう。

3.お互いに問いかけるようにする。

3つめのルールは、積極的な質問によって相互理解を促すためのルールです。

通常の議論においては、「相手に質問すること」そのものが否定的なニュアンスを帯びることがあります。「上司の意見に疑問を呈したら不興を買うのでは」と恐れたり、あるいは反対に「自分の意見に疑問を投げかけられた」と落ち込んだりする環境では、「本来解消されるべき疑問」をそのままにしてしまう可能性があるでしょう。

対話の前提として、「質問=相互理解のための手段」という認識をメンバー間で共有しておくことにより、話し合いはより建設的に発展していくと考えられます。

4.発言せず、ただ聞いているだけでもいい。

4つめの「聞いているだけでもいい」は、参加者がそれぞれのペースで対話にコミットするためのルールです。

無理に発言を強いられる可能性があると、「その場を取り繕うための意見」を出すことに精一杯になり、自分自身の考えを十分に整理できない可能性があります。自由な発言を保障するうえでは、「話さなくてもよい」という安心感を担保しておくことも大切です。

5.知識ではなく、自分の経験にそくして話す。

「自分の経験にそくして話す」というのは、肩書きなどの社会的なバックボーンに左右されず、誰もが同様の発言権をもてるようにするためのルールです。テーマに対して専門的な知識をもっている参加者がいたとしても、発言をその人に偏らせることなく、各々が異なる立場から意見を述べることで多様性が生まれます。

哲学対話の目的は「客観的なデータにもとづく意思決定」ではなく、「さまざまな角度から議論を掘り下げること」にあります。そのためデータや一般的な見解などは一旦差し置いて、自身の経験や主観にもとづく意見を積極的に出していくことが大切です。

6.意見が変わってもいい。

議論の場において、「自分は間違っているかもしれない」という感情は、積極的な姿勢にブレーキをかけてしまうものです。参加者のそれぞれが意見や立場を変える可能性を担保しておくことで、参加者の「間違いに対する不安」を取り除くことが求められるでしょう。

「意見を変えてもいい」という前提が共有されていれば、立場の一貫性にこだわる必要性もなくなるため、柔軟な意見の提示にもつながりやすいと考えられます。

7.まとまらなくてもいい。

哲学対話は「結論を出すこと」を目的とするものではありません。それゆえ議論の展開を整理していく必要はなく、脱線を恐れず述べたい意見を積極的に出していくことが重視されます。

話の筋や整合性にはこだわらず、「目の前の他者が何を伝えようとしているか」に耳を傾けながら、自身も自由に発言していくことが充実した対話につながります。

8.分からなくなってもいい。

グループディスカッションなどにおいてはとくに、自分が前提としていない知識が出てきたとしても、「他の人にとっては当たり前なのかも」と、理解した体で話を聞き続けてしまうことがあります。

しかし誰かが理解できないポイントには、しばしば「気づき」のきっかけが潜んでいるものです。「分かる」を前提にせず、むしろ「何が分からないのか」を共有しながら掘り下げていくことにより、新たな発見が生まれる可能性も高くなるでしょう。

さらにこのルールは、意見を出すことに慣れていない人のプレッシャーを取り除くうえでも有効です。「話しているうちに内容がごちゃごちゃになったらどうしよう」と不安にならず、分からないことを共有し、全員で考えていく意識が大切です。

哲学対話をビジネスに導入する際の場面やテーマの例

哲学対話においては「結論」が重視されないため、ビジネスにおける「具体的な意思決定」に関わる場面には適していない面があります。一方で、アイデアや疑問を共有し、それを深めていく際には非常に有効ですので、場面に応じて適切に取り入れていきたいところです。

アイデア整理

新規プロジェクトの立ち上げ期や、コンテンツ制作における方針策定など、「何かに新しく取りかかる場面」で哲学対話は有効に機能します。

たとえばコンテンツ制作においては、「いつか作りたいコンテンツ」「最近感動したコンテンツ」などをテーマにすることで、制作上のヒントが得られたり、方針のすり合せができたりするケースもあるでしょう。

プロジェクトの立ち上げにおいても、「この商品は誰の役に立つか」など、進行にあたって「そもそもクリアにしておくべき事柄」を多角的に検討する際に役立つと考えられます。

たとえ具体的な業務に関する明確なプランが見えないままに終わっても、「業務の方針」や「個々の価値観・考え方」など共同作業の前提となる部分で、相互理解が促進されると期待できます。

定期ミーティング

チーム内で改善事項を吟味する際にも、哲学対話は役に立つでしょう。定期ミーティングをはじめ個々人の「気づき」を共有する場において、検討事項をもつ者がテーマを提示することにより、多角的な視点から今後の改善に向けたヒントが得られると考えられます。

事前に話し合いたいテーマが提示されない場合には、たとえば「理想の情報共有の方法とは」など、実際の業務に関わる間口の広いテーマを設定してみることも有効です。さまざまな立場から経験にもとづく意見が提示されることで、今まで気づけなかった改善点が浮き彫りになる可能性もあるでしょう。

メンバー交流の一環として

実際の業務とは直接関係のない場面でも、哲学対話は有意義な成果をもたらしてくれるでしょう。たとえば月に1度、チーム内で哲学対話の場を設け、業務とはまったく関係のないテーマについて話し合うといった方法も考えられます。

業務と関係のない話題について話し合うことは、メンバーの純粋な相互理解の足がかりとなるはずです。その際、「現実的な自分の立場」が発言への姿勢に影響を及ぼさないよう、抽象的・観念的なテーマを選んだり、身近な生活の話題を選んだりするとよいでしょう。

たとえば「幸福とは」「生きる意味とは」といった哲学的な話題や、「生活の質を上げるには」「上手な買い物の方法」といった身近な話題など、ざっくばらんに発言できるテーマが望ましいと考えられます。

哲学対話のやり方

哲学対話にはゆるやかな型はあるものの、厳密にその通りに実施しなければならないわけではありません。以下では一般的な進行の流れを解説していきますが、職場の環境や実施する目的に応じて、微調整を加えていくとよいでしょう。

テーマを決める

哲学対話を導入する場面に応じて、テーマを決めておきましょう。業務に関わる内容を扱う場合には、実際に生じている課題を取りあげるのもよいでしょう。あるいは交流としての側面をもたせたい場合には、抽象的なテーマも有効です。

いずれの場合にも、「結論を出すことが目的ではない」ということを念頭に置きつつテーマを設定していきましょう。

参加者や場所、スケジュールの調整

参加者の人数に決まりはありませんが、10名から20名前後が標準的なスケールとされています。これを大きく上回る場合には、できるだけ多くの参加者が発言できるよう時間に余裕をもたせたるなど、一定の工夫が必要でしょう。

メンバー構成の面では、一般参加者のほか、進行役としてファシリテーターを用意しておきたいところです。同じメンバーで何度も実施している場合にはその限りではありませんが、ルールにのっとり多くの発言を引き出すうえでは、やはり場を整える存在が求められます。

実施する場所については、参加者が互いの顔を見られるようなスペースが望ましいでしょう。輪になって話し合うかたちが基本とされていますが、必ずしもそれにこだわらず、互いの表情や動きを確認しながら対話できる環境を用意しましょう。

ルールの周知および徹底

はじめて実施する場合はとくに、哲学対話を実践する理由や目的を共有したうえで、ルールについて周知しておきましょう。とりわけ「立場に囚われない議論」を目的としている点については、入念に参加者の理解を得ておく必要があります。

哲学対話の場が「普段の関係から切り離された場」であること、そこでの議論の内容が今後の職場における立場に対して何ら影響を及ぼさないことを明確にし、それが遵守される環境を構築することが大切です。

実践

哲学対話を実施する際には、「相手の話を最後まで聞く」ことを徹底しましょう。先述のように、コミュニティボールなどのアイテムを用いて発言者に回していき、それをもっている間は発言権を保障する、といった方法も有効です。

他者が発言している最中、何か疑問点があれば、挙手により発言の意思を示しましょう。その際の発言者は意見を中断する必要はなく、焦らずに伝えたいことを述べ終えてからボールを次の人に回してください。

進行とともに、必要に応じてファシリテーターがこれまでの流れをとりまとめたり、発言や質問を促したりしていきます。業務に関連するテーマを扱っている場合には、提示された意見を後から確認できるよう記録しておくとよいでしょう。

哲学対話においては結論を出す必要はありませんから、時間に応じて話を総括し、余裕があれば互いに感想を述べたり、感謝の意を伝えたりしてその場を締めましょう。

まとめ

哲学対話は8つのルールにのっとり話し合いを進めていく方法であり、「立場を越えた自由な意見の交換」を目的としていきます。ビジネスにおいても、アイデアを共有して深めたり、業務改善に活かしたりと、活用の方途はさまざまに考えられるでしょう。

哲学対話の効果としては、生産性向上といった実利的なメリットのほか、「相互理解の姿勢」を培うことにもつながると考えられます。立場を問わず相手の話に傾聴し、適切に問いを投げかける姿勢が定着することで、日常的な場面でも建設的なやり取りが行われていくと期待できるでしょう。

実施する際には、ルールをしっかりと共有し、「現実の立場」を議論の場に持ち込まず、また議論中の意見を普段の関係に持ち越さない意識を徹底する必要があります。チーム内の各人が「自分の話を聞いてもらえる」と思える場を設けることにより、風通しのよい環境を作っていきたいところです。

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この記事を書いた人

鹿嶋 祥馬
大学で経済学と哲学を専攻し、高校の公民科講師を経てWEB業界へ。CMSのライティングを300件ほど手掛けたのち、第一子が生まれる直前にフリーへ転身。赤子を背負いながらのライティングに挑む。

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