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ZMOT

ZMOT(ジーモット)とは?FMOT・SMOTとの違いも解説

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マーケティングにおいては、「顧客の商品購入における思考プロセス」を把握する視点が欠かせません。さまざまな購買行動をモデル化して理解することで、マーケティング戦略にたしかな軸ができるでしょう。

現在では、Webを中心とした消費者の意思決定モデルを表現する言葉として、「ZMOT」という言葉が定着しつつあります。

この記事では、ZMOTの概要について、意思決定の別モデルであるFMOTやSMOTと比較しながら解説し、実践段階において留意すべきポイントについても紹介していきます。

ZMOT(ジーモット)とは

ECサイト

ZMOT(ジーモット)とは、「Zero Moment of Truth」の略語。2011年にGoogleが提唱した言葉であり、「消費者が来店する前の情報収集段階で購入商品を決めている」という理論です。

まず、「Moment of Truth」は「真実の瞬間」を意味し、マーケティング用語としては「消費者が商品購入を決心するタイミング」を指します。このタイミングが「ゼロ」であるというのは、消費者が店舗を訪れる「前の段階」で、すでに消費者の心が決まっていることを示しているのです。

近年では、インターネットやスマートフォンの普及により、「事前の情報収集」が消費者にとって大きな意味をもつようになりました。これはオンラインショッピングだけではなく、実店舗に足を運ぶ際にも当てはまる傾向です。

たとえば家電を買う際にあらかじめスペックを比べたり、飲食店に行く前に口コミを確認したりと、購買行動とWeb上での情報収集は切っても切り離せない関係にあります。ZMOTはこうした動向のなかで、消費者の意思決定の「力点」が変化していることを表現する言葉なのです。

FMOT(エフモット)とは

ZMOTの下敷きになったマーケティングの観点には、「FMOT」があります。これは「First Moment of Truth」を略した言葉であり、顧客と商品との「ファーストコンタクト」の瞬間に購入意思が確定されることを表しています。

FMOTはP&G社によって2000年代前半から用いられ、消費者の意思決定が「商品を目にしてからほんの数秒のうちに行われる」ことを強調する言葉として流通するようになりました。

ファーストコンタクトのポイントとしては、実際の店舗で商品パッケージなどを目にした瞬間が典型的でしょう。さらに、テレビCMや街中の広告、Webサイトの訪問などが含まれる場合もあります。

FMOTにおいて重視されているのは、瞬時に商品の全体的なイメージを提示し、同時に購入についての不安を除去するための工夫です。これらは現在においても、依然として重要な観点であり続けています。

一方で、事前の情報収集にもとづく意思決定モデルが定着し、「実際の商品を見る前に決める」というケースが珍しくなくなるなかで、「FMOTからZMOTへの移行」がマーケティングにおける重要な変化として捉えられています。

SMOT(エスモット)とは

SMOTは上述のFMOTから派生した言葉であり、「Second Moment of Truth」を表します。具体的な内容としては、実際に消費者が商品を購入したあと、使い心地やアフターサービスを実際に確かめる段階を指す言葉です。

つまりSMOTは主にリピーターやファン獲得に向けた観点であり、使用段階において顧客満足度を高めることを主眼としています。商品の品質はもちろん、通販における適切な配送や、問い合わせ窓口のわかりやすさなど、形式面でのスムーズさも重要なポイントになるでしょう。

ZMOT以後の購買モデル

ZMOTという語が登場する以前には、購買行動における消費者の意思決定モデルは3段階に区分されていました。第1段階は「Stimulus(刺激)」と呼ばれ、消費行動を喚起するトリガーとしての役割を果たします。つまり、生活において何らかの不満やニーズを感じることで、購買行動の「きっかけ」が生まれる瞬間です。

これに続いて、実際に商品を認知するFMOT、さらに商品を使用するSMOTと段階が移行し、全体としての購買モデルを構成します。

しかしその後、Web上での情報収集が広く利用されるようになると、ZMOTが第1段階のStimulusと第2段階のFMOTの間のステージとして位置づけられました。

これによる具体的な変化としては、商品とのファーストコンタクト以前に、生活の不満や改善のニーズに対する「答え」をWeb上で導き出してから、商品購入に臨む傾向が指摘できるでしょう。こうしたモデルでは、おのずと意思決定の軸足はFMOTからZMOTへと移っていくと考えられます。

ZMOTにおける情報収集のあり方

電車の中でスマホを見る

前述のように、ZMOTは購入につながる刺激を受け取る「Stimulus」の段階と、商品を実際に目にするFMOTの間の段階として位置づけられます。つまりは消費者が自身のニーズを明確化し、特定の商品についての購入意思を固めていく段階だといえますが、そこで行われる情報収集や思考プロセスのありようは実にさまざまです。

以下ではGoogleのZMOTについての研究レポートなどを参考に、消費者がどのようなかたちで、どのような情報を集めているのかを検証していきます。

(以下参照:Think with Google “Winning the Zero Moment of Truth eBook (2011)”

購入前にWebで情報収集を行う消費者は約8割

上のGoogleの資料では、購入意思を決定する際、消費者の84%がZMOTの段階の重要性を認めています。さらにアメリカ合衆国においては、70%の消費者が商品購入前にWeb上でレビューを確認しているという点にも注目すべきでしょう。

ZMOTを重視する消費者の傾向は、現在の日本国内においても妥当すると考えられます。実店舗での非日用品の購入に際して、Web上での情報収集がどのように行われているかを2021年に調査した株式会社Pathee(パシー)のアンケートでは、約78%の回答者が「事前にインターネットで調べてから来店する」と答えました。

(参照:株式会社Pathee「株式会社Pathee、実店舗来店前のネット利用に関する調査を実施」

また、マイボイスコム株式会社が2020年に行ったアンケートでは、商品・サービスを購入する前にネット上の口コミを参考にする消費者の割合は「55.7%」と半数を超えています。

(参照:アンケートデータベース(MyEL)「ネット上の口コミ情報に関する調査(第5回)」

こうした数字から、Web上の情報に触れることなく購買行動に至る消費者が、今や少数派になっていることがわかるでしょう。

「客観情報」と「主観的意見」の両方が重視される

上のGoogleの調査によれば、ZMOTにおいて購入を決める情報源として、「検索エンジン」が50%、「友人や家族との会話」が49%と、多くの割合を占めています。これらに続くのは、「オンライン上での製品比較」(38%)、「ブランドやメーカーのWebサイトからの情報確認」(36%)、「オンライン上でのレビュー確認」(31%)です。

こうした項目からは、ZMOTがいわば「比較・検証のプロセス」であることが窺えます。このプロセスにおいては、オンライン上の公式情報にもとづく客観的な比較はもちろん、さまざまな主観的意見を通じた実体験の吟味がなされていることも見て取れるでしょう。

ZMOTにおいて重要なポイント

ホワイトボード

インターネットやスマートフォンの普及は、消費者の意思決定モデルを大きく変化させました。さらに近年は、GoogleがZMOTを提唱した2011年に比べ、購買行動も少なからず変わっている面があります。

以下では近年の動向をふまえつつ、ZMOTを意識したマーケティングを展開するうえで重要になる観点を紹介していきます。

検索エンジンへの対策

Web上での購買行動において、検索サービスは大きな意味をもっています。購買行動の「ゼロ」の段階でいかに顧客の目に留まるか、という視点は、現在のマーケティングにおいて必須のものになりました。

ここから、Web検索に対して上位表示を目指すためのSEOは、ZMOTを重視するうえで基本となる対策だといえるでしょう。なお、SEOの基礎的な知識やポイントについては、以下の記事で解説しています。

さらに、実店舗への来店を促すうえでは、地図アプリ上での検索に対して上位表示を目指すMEOの観点も重要性を増しています。Googleは2016年におけるユーザー行動の顕著な変化として、「リアルタイムのインスピレーション」というポイントを挙げ、一例として米国で「near me(私の近くで)」という検索フレーズが増加したことを提示しました。

(参照:Think with Google「過去 10 年でデジタルマーケティングはどう変わった? マーケティング環境を振り返る」

総じて、スマートフォン上での情報収集が広く定着し、その場でWeb上の商品情報を確認するユーザーが増えた現在、購入前の「ゼロ」の段階は、出先や移動中、さらには店舗内と、よりインスタントなかたちになっていると考えられるでしょう。

その場で確認できる口コミ情報や、サービスの全容などが購買行動を大きく左右するようになり、店舗でのビジネスにおいてはGoogleマップ上に表示される「ビジネスプロフィール」がきわめて重要な位置づけを占めるようになりました。

ビジネスプロフィールにおける口コミの管理方法については、以下の記事で詳述しています。あわせてご参照ください。

パーソナライズされたターゲティング

Web上で展開される数多くのサービスにおいて、現在では「パーソナライズされたおすすめ機能」が珍しくなくなっています。たとえば音楽配信サービスで好みの音楽を見つけたり、SNS上でフォロワーと傾向の近いユーザーを見つけたりと、「行動履歴やユーザー属性をもとに、自動的に提案される情報」が一定の確度をもつようになりました。

ZMOTの段階にいる消費者は、具体的な商品を選定するために、特定のキーワードを用いた情報収集を行い、同カテゴリ内で商品の比較を行うと考えられます。企業が広告施策を展開するうえでは、こうした段階にいる潜在顧客に的確にアプローチすることが重要だといえるでしょう。

実際に戦略を実行するにあたっては、自社商品の利用者像を鮮明にしながら、出稿先のプラットフォームや、出稿時のターゲット設定などを入念に行っていくことが求められます。

SNS上でユーザーを巻き込む

スマートフォンの普及とともに、購買時の情報収集ツールとしてSNSを活用するユーザーも増えています。

2022年にアドビが行った調査では、消費者が商品購入前に参考にした媒体として、2017年と比較して「YouTube」が8.86%増加し、「InstagramやTwitterなどのSNS」は5.38%増加。個々のユーザーが発信する情報をもとに購買行動をとる傾向が強まっていることが読み取れます。

(参照:アドビ株式会社「アドビ、消費者の購買動向に関する調査結果を発表」

SNS上で拡散される情報は、単純に「商品の使い心地を知りたい」といったニーズのほかにも、「SNS上で流行している商品を買いたい」「SNS上で映える商品を買いたい」など、多面的に購買行動を引き起こしています。このように、ユーザー発の情報は、ZMOTの観点からも重要な位置を占めるようになりました。

現在ではSNS上でユーザーを巻き込むことにより、プロジェクトを成功に導く事例が見られるなど、「消費者の主体性を引き出すための施策」がカギになるケースも少なくありません。

ブランドのストーリーや取り組みへの共感を引き出す

SNSの普及した現代では、環境やジェンダーをはじめ、世界的に課題とされる社会問題が共有されるようになりました。これにともない、商品選択の場面でも、「直接的な購入のメリット」だけではない観点が重んじられるケースが見られます。

たとえば典型例として、消費者が社会的課題に取り組む企業を支援したり、消費行動を通じてみずから解決に取り組んだりする「エシカル消費」が挙げられるでしょう。株式会社電通が2022年に行った調査によれば、エシカル消費について紹介されたあとでは、43.9%の回答者が「ぜひやってみたい、もしくはすでにやっている」「興味があり、やってみたい」と答えています。2020年に行われた同調査に比べ、11.1%の増加があり、世間の関心の高まりが窺えます。

(参照:電通ウェブサイト「電通、「エシカル消費 意識調査2022」を実施」

ZMOTにおいて、商品の具体的なメリットを提示することも重要である一方、その商品が有する社会的な意義や、開発の背景などが購入意思を左右する傾向が強まっていると考えられるでしょう。

なお、ブランドの背景や目的を明示した経営のあり方として、「パーパス・ドリブン」があります。以下の記事でその概要や事例を紹介していますので、あわせてご参照ください。

総じて現在では、SEOや広告施策において「ターゲットに的確に情報を届ける」ための観点はもちろん、消費者の主体的な行動意欲や、公共心に訴えかける観点が重要性を増しています。

自社の強みとターゲットのニーズを的確に捉えつつ、情報収集段階にいる消費者に対して多面的なアプローチを図ることが、ZMOTにおいて勝機を掴むためのポイントになるでしょう。

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この記事を書いた人

鹿嶋 祥馬
大学で経済学と哲学を専攻し、高校の公民科講師を経てWEB業界へ。CMSのライティングを300件ほど手掛けたのち、第一子が生まれる直前にフリーへ転身。赤子を背負いながらのライティングに挑む。

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