
取材記事はこう書け!〜文字起こしから取材記事の書き方まで〜【取材ライターへの道 Vol.3】
ライターでありながら取材記事を書いたことのない滿留(みつどめ)が、先輩の浦田さんにインタビューの心得を教わる全4回の特集「取材ライターへの道」。
第1回は取材依頼の方法、第2回の前回は取材の準備と本番の注意点を教わり、その内容をふまえて浦田さんへのインタビューに臨みました。
第1回の記事はこちら↓
第2回の記事はこちら↓
第3回の今回は、取材後の文字起こしと記事執筆において注意すべき点をうかがいます。
目次
取材の文字起こしは「基本を守りつつ、やりやすく」

1つ目は「素起こし」。これは録音したものをそのまま文字に起こす作業だね。「えー」や「あのー」まですべて起こします。2つ目は「ケバ取り」です。ここでさっきの「えー」や「あのー」も含め、「絶対に記事に起こさないような部分」を削る。最後は、整える文と書いて「整文」です。話し言葉を書き言葉に直したり、段落に分けたり、いわば文字起こしにおける「清書」だね。
音源を正確に書き起こすのは大変かもしれないけど、たとえば、部分的に切り取ると強い表現に感じられる言葉も、前後の内容を含めると、発言のニュアンス自体はやわらかいものかもしれません。最初から一部を省いて文字に起こしてしまうと、元の雰囲気を表す材料が減って、記事化の際に忠実なニュアンスを表現できない可能性があります。
今回のテーマとは逸れてしまうけど、インタビューにおいて録音が重要なのも同じ理由です。メモだけじゃ、発言の正確なニュアンスを汲み取りきれないかもしれません。
急遽第三者に少しだけ話を聞かないといけなくなったときなど、予定外に追加インタビューが発生した場合も、メモをとるだけで対応するのではなく、録音して文字起こししたほうがいいと私は思っています。
文章を整えるのは、あとから読み返しやすくするためだね。インタビューから記事化まで時間が空いてしまっても記憶を辿りやすいし、記事の構成も練りやすくなると思います。
記憶が残っているうちにやりたい方はすぐに全部起こしたほうがいいと思うし、疲れてしまったら途中でいったん止めて次の日に回してもいいと思います。日によって作業のクオリティに波があると思う場合は、1日で済ませてしまったほうがいいかもしれないね。
聞き取れない場合は先に進む
わからなかった箇所も、なるべくそのままにしないようにしましょう。周辺の情報をリサーチすれば、聞き逃した言葉が判明するかもしれません。
文字起こしのときもインタビュイーには丁寧に向きあう
また、固有名詞はできる限りしっかりと調べておいて、文字起こしの段階でなるべく正式名称を載せるようにしています。たとえば、当社のメディア「SUNGROVE」では「Instagram」を「インスタ」と書くのは問題ないけど、正式名称で統一しているメディアもあるよね。そういった媒体では、実際はインタビュー中に「インスタ」といっていても書き換えが必要です。
一度「インスタ」と書いてしまうと、聞き慣れても見慣れてもいるので気づかずそのまま記事化してしまいがちなんです。あとになって慌てることも少なくないから、特に最初のうちは文字起こしの段階で直しておきたいですね。
自分の言葉は失礼にさえならなければ、記事化するときに大きく変えることがあってもいいと思う。ただしインタビュイーの言葉は、字面を変えることはあってもニュアンスは絶対に変えちゃダメです。
文字起こしの外注は「かなり信頼できる相手じゃないと難しい」
少しでも端折られたり、いい回しを変えられたりしただけでも文章のニュアンスって変わってしまうので、かなり信頼できる相手じゃないと頼むのは難しいと思っています……。
実力の分からない方に依頼する外注はかなりのギャンブルだね。ただ、いまはAIの技術がかなり発展しているので、それを活用した文字起こしツールは気になっています。友達のライターにも使っている方がいますし、これを使ってやり直すことになっても誰にも迷惑をかけないので。
「読みたくなる取材記事」を書くために

なかでも写真は、読者を読みたい気持ちにさせるうえで重要だし、しっかりとそのインタビューに合っているものを挿入したいね。これもおそらく前回いうべきだったんだけど、写真はできる限り撮り下ろしがいいと思います。うちの場合は専属のカメラマンがいるので、前回の記事では撮り下ろし前提で話を進めてしまっていて。そうじゃないメディアもあると思うんですよね。
撮り下ろし写真は情報の信頼性を高めてくれるのはもちろん、オリジナリティも出るし、手間をかけてつくっていることで読者にも熱意が伝わると思います。髪型や体形がよく変わるインタビュイーの場合、過去の写真を使ったらすぐにわかっちゃうしね。
ちなみにこのとき、話の順序や発言者を入れ替えることがよくあります。インタビュイーの話の本質が変わらなければ、読みやすさやニュアンスの伝わりやすさを重視して実際の言葉を改変しちゃってもいいと思う。
インタビュイーの記憶が新しいうちに、熱が冷めないうちに確認してもらいたいから、記事の完成は早ければ早いほどいいと思う。ただ、写真が出来上がるのにも時間がかかるし、取材の尺が長ければ文字起こしも1日じゃ終わらないかもしれないので、バッファも取って1週間程度が妥当ですかね。
「どうしてもこの表現にこだわりたい!」っていうときは意図を説明して相談することもあるけど、なるべく別の表現を探したほうがいいと思ってる。修正を希望するということは元の文章に違和感があるということだと思うので。
メディアや企画のコンセプトによって記事の方向性を決める
私がSUNGROVEで書いているのは対談形式だね。インタビュアーが喋って、インタビュイーがそれに答えていく形式です。三人称形式は「誰々さんに話を聞きました」とか「誰々がこうおっしゃっていました」みたいなスタイルですね。一人称形式は、いわばモノローグ。取材記事だけど登場人物はひとりで、インタビュイーが語っているような形式です。
インタビュイーにのみフォーカスしたい記事なら、インタビュアーの淡々としたコンパクトな質問に対して、豊富な情報量で答えていくかたちのほうが読みやすいかもしれません。結局は「そのインタビューにおいてインタビュアーの存在がどれほど大きいか」によるかな。
ただ、選んだ質問や聞き方にもある程度の個性は表れるので、無理してオリジナリティを出そうとする必要はないと思います。あくまでメインはインタビュイーですから。
俯瞰的な視点で書く
たとえば、インタビューに同行してくれるカメラマンには、インタビュイーの概要はもちろん、撮ってほしい写真の内容も伝えておきましょう。カメラマンがあらかじめ写真の撮り方を検討できるようになるので。
あと、話すときの抑揚や表情にも言葉を強める効果があるので、対面のインタビューで「うわ、めっちゃいい話!絶対ここ読者さんにも伝わるぞ~」って思っても、いざ文字に起こすとそこまでインパクトが強くない場合もあるんです。そういうときは写真を挿入することで、読者の方もインタビュー時の感覚を疑似体験できるかもしれませんよね。
それでも伝わらないようなら、言葉も変えちゃいます。インタビュイーの言葉をそのまま伝えることも大事だけど、変えたほうが意図をまっすぐ伝えられることもあるので。
たとえば、言い換えはもちろん、発言内容をあえて大幅に削って強調したい言葉だけを端的に配置するとか、逆に補足情報を追記して言葉の厚みを出すことで意図を明確に伝えられるようにするとか。
結果として、実際の発言と大きく変わってしまうこともあるけど、優先すべきは言葉をそのまま残すことより、言葉の背景をきちんと伝えることなのかなと私は感じています。
そういう目的で大幅に変更した箇所はいまのところ、先方確認のときにもあまり指摘されていません。もちろん、その方がふだん使うことのない言葉を使っていたら違和感が生じてしまうと思うけど。
SEO対策は気にしすぎない
タイトル決めでもっとも意識しているのは、「その人らしさがみえるタイトルにすること」かな。せっかくインタビューさせてもらっているので、会話のなかで引き出せたその人らしい言葉を大切にしたいです。重ねて、アイキャッチにそぐわないタイトルにしないようにも注意しています。
ただ、もっとクリックを促すようなタイトルのほうがいいのかなって考えることもあるし、私も正解を探している最中だね……。
「インタビュイーを象徴するような言葉」が記事の輪郭を際立たせる
インタビューしていると大体、ひとりひとつはタグラインみたいなワードが出てくるんだよね。意識して発している方もいると思いますが、無意識に出てきている方のほうが多い気がします。それをしっかりと拾い上げて、タイトルにしたり、見出しにしたり。文中に含める場合は内容を整理して、最高のタイミングで登場させるように整えます。
タイムキーパーもしなきゃいけないし、話の流れもあるし、入るタイミングはかなり慎重に見極めますね。話を遮った経験はまだないけど、あまりにも時間が押している場合は「お時間もありますので……」みたいな感じでカットインしてもいいと思います。
取材記事の正解は自分でみつける

文字起こしにも、取材記事の書き方にも、基本やセオリーはあります。ただ、それはあくまで一般論。インタビュイーによっても、インタビュアーによっても、文字に起こす人によっても、記事を書く人によっても違った姿をみせるインタビュー音源は、盲目的に基本をあてはめるだけで扱いきれるものではありません。
自分について考え、インタビュイーについて考え、記事の位置付けについて考え、記事のターゲットについて考える。経験や模索によってたどり着いたものこそが、自分だけの正解につながっていくのでしょう。
自分のポリシーを大事にしつつ、いまだ答えを追い求める浦田さんの姿にふれて、その終わりなき探究心に刺激を受けました。
最終回となる次回はいよいよ、浦田さんへのインタビュー記事を公開します!
次回記事はこちら↓
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