ソーシャルゲームとは?モバイルゲームとの違いや課金システムなどに言及
かつてゲーミングプラットフォームはアーケードゲームや家庭用ゲーム機が主流でしたが、現在ではPCやスマートフォンに比重が移っています。そう、ソーシャルゲームの台頭です。
本記事ではずばりソーシャルゲームの世界を紐解きます。
そもそもソーシャルゲームとは何なのか。特徴や楽しみ方を含めた基礎知識に加え、混同しやすいほかのゲームとの違いやビジネス的観点で知っておきたいマネタイズの方法、課金システムなど幅広く言及。理解を深めたい方はぜひ参考にしてください。
目次
ソーシャルゲームとは?
ソーシャルゲームは、端的に述べるとSNS上で(SNSをプラットフォームに)遊べるゲームです。「ソシャゲ」と略されることも多く、今や巷では当たり前のように浸透しています。
ゲームをプレイするにはまず、対象作品を提供しているSNSに登録することが必要です。そして登録済みのユーザーネームやアバターなどは、ゲーム内で使用することもできます。SNSのなかでつながっている友人を招待して一緒にゲームをすることはもちろん、ゲーム内で新しい友人を見つけて交友関係を広げるといった楽しみ方もおすすめです。
また、競争原理が働きやすい点も特徴に数えられます。
参加者が挙ってランキング上位を目指したり、レアなアイテムを獲得したり、それらを交換できたりと、大勢で楽しむにはもってこいの仕組みが実装されているゲームがほとんどです。
ただし、こうした仕組みに関しては、射幸心を過度にあおるものとして過去には法による規制も入っています。いわゆる「コンプリートガチャ」問題です。有料対象も含めて特定された2つ以上の異なるアイテムを全部揃えることを条件に、ソーシャルゲームで使用可能な景品類たる別のアイテムなどを利用者に提供する方式が、このコンプリートガチャに当てはまり、景品表示法に抵触する行為とされています。
いずれにしてもソーシャルゲームは、手っ取り早く遊べて人気を博す一方で、総じて多額の課金が発生する恐れがあるため、利用にはくれぐれも注意が必要です。
ソーシャルゲームとモバイルゲームの違い
ソーシャルゲームと混同されやすいものにモバイルゲームがあります。これは、SNSではなくあくまで端末にフォーカスしたゲームのカテゴリ名称です。フィーチャーフォン(ガラケー)でプレイできるようにJavaでプログラミングされたアプリや、スマートフォンやタブレットPCであればネイティブアプリ、モバイル端末ではブラウザ上で動作するウェブアプリなどが該当します。
そのほか混同しやすいゲーム
モバイルゲーム以外では、オンラインゲームやブラウザゲームもまたソーシャルゲームと同じものとして扱われがちです。当然、これらも定義は異なります。
オンラインゲームとは?
オンラインゲームとは、インターネットに接続してプレイするゲーム全般です。文字どおりオンラインで複数のユーザーとつながり一緒に楽しめるゲームであればすべて含まれるため、いわばソーシャルゲームもオンラインゲームの一種だといえます。明確に線引きするならば、プラットフォームがSNSに限定されているかどうかがポイントです。
ブラウザゲームとは?
ブラウザゲームとは、Webブラウザ上で動作するゲームです。ソーシャルゲームと同じくオンラインゲームの一種ですが、アプリケーションのインストールは必要ありません。両者はこの点が異なります。
ビジネスにおけるソーシャルゲームの仕組み
ソーシャルゲームの仕組みについて、基本的に無料であることも含めて不思議に思われる方は少なくないでしょう。以下、収益モデルとあわせて説明します。
ソーシャルゲームが無料で遊べる理由
ソーシャルゲームは基本無料でプレイ可能です。ビジネス視点で述べると、初期投資がない分、参入障壁が低く、ユーザーを集めやすい傾向にあります。
他方、マネタイズはどうなっているのでしょうか。答えはいたってシンプルです。
ソーシャルゲームは、2種類のユーザーカテゴリーが設定されています。無料ユーザー、そして課金ユーザーです。お察しのとおり、収益は後者を多く作ることで生み出せます。
ソーシャルゲームで得られる利益
ソーシャルゲームのビジネスモデルは、通常、3つの要素の掛け算で成り立ちます。それらは「ログインしたユーザー数」「課金率」「課金ユーザーの平均課金率」です。たとえば、1日に1万人がプレイするソーシャルゲームがあり、課金率が5%、平均課金額が500円の場合、1日の売上は25万円、月額で750万円と計算できます。
家庭用ゲーム機のように、ハードにせよソフトにせよユーザーは同じパッケージを何度も買わないのに対して、ソーシャルゲームであれば長期に渡って継続的な課金が発生してもおかしくありません。そのため、課金ユーザーへの育成が非常に大事なミッションだとわかります。
ソーシャルゲームの具体的なマネタイズ手段
前項を踏まえ、ソーシャルゲームにおける具体的なマネタイズの手段について、4つのタイプを紹介します。
有料型
ゲームタイトル自体を有料パッケージとして売り出すタイプです。すでに有名なアニメキャラクターを使用する場合などに当てはまります。初期投資が大きくなりがちな点に注意が必要です。
広告付き無料型
ゲームの最後まで課金なしで楽しめる反面、プレイ中のさまざまな場面で広告が挿入されるタイプです。無料のまま遊べる分、ユーザー数は増えやすい一方で、広告がゲームを邪魔するようならすぐに離脱される可能性もあります。
アプリ内課金付き無料型
日本のソーシャルゲーム市場ではもっともよくみられるタイプです。入口は無料で提供しつつ、ゲームを進めるなかで課金アイテムが必要になるよう設計されています。
広告およびアプリ内課金付き無料型
広告を表示しつつ、課金アイテムも用意してあるタイプです。4つのモデルのなかで収益がもっとも安定して得られやすいといえます。運営に際しては、広告の閲覧によって魅力的なアイテムを支給するなどの工夫が必要です。ユーザーがいかに自然と、もしくは積極的に広告の存在を受け入れられるかが、高収益のカギを握ります。
ソーシャルゲームの課金システム
ソーシャルゲームビジネスで肝となる“課金”ですが、いざマネタイズを図る場合、そのシステムの詳細について詳しく知っておくことが大事です。
以下、具体的に説明します。
課金が発生しやすいタイミング、コツ
ソーシャルゲームで課金を必要とする場面は、大抵、敵と戦うためのスタミナ回復時や、武器・キャラクター設定の強化、期間限定のイベントアイテム購入などが挙げられます。その際重要なのは、無料で楽しんでもらった非課金ユーザーをスムーズに案内することです。もちろん、有料の壁を越えてもらうのはそう容易ではありませんが、一方でコツも存在します。というのも、ソーシャルゲームは極めて自然かつ巧妙に課金システムをデザインできるのです。
ソーシャルゲームは、SNSのコミュニティのなかでプレイングを発信できる性質を持っています。たとえば、レアアイテムの所持や、アバターにおしゃれな服装を着せることは、それぞれ一つのユニークなネタになり得るため、コミュニケーションの一環として実に有効です。おそらく共有したい心情も湧き出てくるでしょう。
結果的に課金につながりやすくなる(課金システムがデザインされる)のも頷けます。
国別に異なる課金と相性の良い要素
文化的背景もあってか、国や地域によって課金につなげやすい要素は異なります。
たとえば、日本で人気が高いのは、キャラクターを収集するためのガチャ系です。またアメリカでは、勝敗を決するための攻撃や防御アイテムが課金につながりやすい傾向にあります。さらに中国では、課金額に比例して戦闘力が変わるシステムなどを実装しユーザーへ訴求するやり方が定番です。
おさえておきたいソーシャルゲーム作品
仕組みがわかれば、実際に遊びたくなるのが人の心理でしょう。
以下、ソーシャルゲームをより深く理解するうえでおさえておきたい作品をピックアップします。
釣り★スタ
もともとはパソコン向けのSNSからスタートした企業「GREE」が2007年にリリースした『釣り★スタ』は、その名のとおり釣りを楽しめるソーシャルゲームです。釣り竿などのアイテムは課金でゲットできます。課金システムを確立させたソーシャルゲーム界の記念碑的な作品です。
ファームヴィレッジ
Facebookの機能と連携するゲームとして名を馳せたのが「Zynga」が開発した『ファームヴィレッジ』です。自身の畑で農作物を植えて収穫し、お金を稼いでいくゲームですが、他のユーザーに対してお裾分けもできます。魅力的な協力プレイに加え、プレイヤーの体力を課金で補うシステムも画期的な特徴です。
神撃のバハムート
「Cygames」が開発・運営する人気のソーシャルゲーム『神撃のバハムート』は、チーム戦を行い勝者側にポイントが貯まっていくシステムです。ポイント数で上位になれば、レアなカードやアイテムも手に入ります。
特筆すべきはその過程です。課金を促すイベントが頻繁に発生します。
たとえば、攻撃のたびに消費するBP(バトルポイント)を回復させるための「BP回復薬」は、重要なアイテムゆえに課金でしか手に入りません。そのため、課金額が勝敗を決めてしまうこともしばしば。結果、高額にのぼるユーザーも少なくないのが実状です。
それだけ夢中になれるゲームだといえそうですが、(このゲームに限らず)人によっては歯止めが利かなくなる恐れもあるため注意が必要です。
今後、ソーシャルゲームはどうなる?
ソーシャルゲームの今後について展望を語ると、テクノロジーの発展によりさらなる魅力的なプレイ環境へと変わっていくことが考えられます。一方で課題も無視できません。
それらについて、以下、簡単に取り上げます。
VRやメタバース環境の可能性
仮想空間をデジタルに実現するテクノロジーが社会に実装されてきています。VRゴーグルを付けてメタバースで没入感を味わうゲームも既に登場している昨今、この潮流がソーシャルゲームにも広がり、リアリティを持ったプレイが楽しめるようになるでしょう。
少子化による国内市場の縮小
日本は2040年頃まで高齢化が進むと予測されています。それは同時に、ソーシャルゲームの主なユーザーに当たる若年層が減り続けることを意味します。国内の市場規模が縮小するため、売上を拡大しようとすれば海外市場に出ていくしかありません。その際気をつけたいのが海外との文化的背景の違いです。課金システムだけではなく、ゲームの世界観を彩るデザインまで含めて、グローバルに通用できる戦略が必要でしょう。
ソーシャルゲームをめぐる社会の目
ソーシャルゲームは多くの人を虜にするほど魅力的である一方で中毒性が高いため、ユーザーは自身を律することができるほどのバランス感覚を持つ必要があります。ゲーム依存症は、もはや社会問題です。とくに、未成年ユーザーにその傾向がみられ、高額に上る課金分を支払う親にとっては大きな心配の種でしょう。
そうした世相も相まって、提供する企業側にとっても、社会からの規制によってビジネスの継続が難しくなってくるはずです。引き続き、対策を講じていくタームだといえます。
ソーシャルゲームは収益性と社会性のバランスへ
ソーシャルゲームはビジネスという観点からみると、課金システムを工夫すれば比較的マネタイズが容易に思えます。加えて今後は、テクノロジーの発展がさらなる喜びや驚きを私たち(ユーザー、そして企業に)に与えてくれるかもしれません。一方で、国内市場の縮小や依存症の問題など解決すべき問題があるのも事実です。
つまるところ、収益性と社会性のバランスの取れたビジネスモデルが求められています。その確立は近い将来なのか。はたまたまだまだ遠い未来なのか。
いずれにせよ、折に触れて目配りすることが大事だと考えます。
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