業務効率化について解説!事例をもとに目標例や手法についても教えます!
生産性を高めるにあたって、ムダな作業やプロセスを削減していく「業務効率化」の手法は、業種を問わずに取り組めるスタンダードな選択肢です。シンプルな業務削減により大きな効果を得られるケースもあり、「業務の非効率な部分を見直す」という視点は、多くの場面で「改善の基本」になることでしょう。
一方で、明確な目標を設定しないまま業務削減を進めても、具体的な効果につながらないケースも考えられます。適切にムダをなくしていくためには、着実なステップを踏みながら、状況に応じた手法を取り入れていくことが重要です。
この記事では、業務効率化を図る際の手法やポイントについて、事例とともに解説していきます。
目次
業務効率化とは
業務効率化とは、労働環境や業績の改善に向け、業務における「ムリ・ムダ・ムラ」をなくすことを指しています。
効率化の手法や観点はさまざまですが、まずは従来の業務フローを見直し、問題点を洗い出していくことが基本です。そこから、「成果につながらないポイント」を削減したり、「より簡単にできる方法」へ入れ替えたりと、自社の課題に応じた措置を講じていくことになります。
さらに、業務効率化は「組織レベル」での取り組みはもちろん、「個人レベル」からもアプローチが可能です。たとえばToDoリストで自身のタスクを管理したり、デスク周りを整理して作業スペースを確保したりすることも、業務効率化の一環といえるでしょう。
なお、「業務効率化」と「生産性向上」は区別せず用いられる場面もありますが、前者の業務効率化は「ムダをなくす」という手段・方法に力点がある言葉です。対して、後者の生産性向上は「取り組みの成果」に焦点が当てられる言葉だといえます。つまり、生産性向上のための1つの手段として、業務効率化が位置づけられるといえるでしょう。
業務効率化の手法
職場の状況によって効率化できるポイントは異なりますが、業種を問わず有効に取り入れられる観点も数多くあります。以下では、業務効率化に取りかかる際に基本となる手法や観点について解説していきます。
業務のマニュアル化
「同じ仕事でも人によって進め方が違う」という状況は、業務にムダが生じる大きな原因となります。作業方法のバラツキは、引き継ぎや研修などの場面でも伝達のロスにつながりかねないため、統一しうる作業は積極的にマニュアル化することが望ましいでしょう。
特定の作業やフローをマニュアル化していくうえでは、それぞれの業務を見直し、「何が本当に必要か」を再確認することが求められます。そうした見直しを通じて、ムラやムダにつながっているポイントを洗い出し、作業をスリム化・シンプル化していきましょう。
また、マニュアル化することで、それぞれのプロセスに要する時間が見通しやすくなったり、作業の質を一定に保ちやすくなったりといった副次的なメリットが期待できます。「誰もが同様の時間で、同様の作業を完了できる」ことを目標に、業務の標準化・均質化を図っていくことが大切です。
分業化と統合
「現状の業務フローは適切に構成されているか」という視点も、業務効率を見直すうえで有効です。現時点における業務フローの全体像を整理しながら、1つにまとめられているプロセスを2つ以上に分けたり、反対に複数のプロセスを1つにまとめたりすることにより、生産性を高められるケースもあるでしょう。
業務を分割するメリットは、1つのプロセスを単純化できる点にあります。それぞれの作業に集中して取りかかれることで、作業時間の短縮や品質の向上といった効果が期待できます。
ただし、業務を必要以上に分割してしまうと、引き継ぎや承認といった手間が増え、かえって生産性が落ちてしまうことも考えられるでしょう。業務フローを再編成する際には、各プロセスの意義や目的をあらためて確認し、作業内容や分量を適切に振り分けていくことが必要です。
業務フローを見直すうえでは、「1つのプロセスに多くの要素を詰め込みすぎていないか」「異なるプロセスにおいて目的が重複していないか」といった点をチェックしていくとよいでしょう。
紙の資料や捺印プロセスの削減
会議や報告に用いる資料をすべて紙媒体で印刷していると、プリンターでの印刷や配布の作業に時間がかかります。同様に、承認プロセスにおいて複数人の捺印が必要な場合など、タイミングの調整や移動に余計なリソースが割かれているケースもあるでしょう。業務効率化を図る際には、このような「小さなロスの積み重ね」を見直し、非効率なポイントをカットしていくことが求められます。
慣例化している非効率なプロセスを変えていくためには、組織の体制として、従業員による「ムダへの気づき」を掬い上げる環境を作ることも重要です。業務改善の提案を受け付けるフォームを設置するなど、現場からの積極的な提言を促しましょう。
なお、プロセスの削減や、分割・統合によって業務効率化を図る方法論として「ECRSの原則」というものがあります。詳しくは「改善を助ける「ECRS(イクルス)の原則」とは?具体例も交えながら解説」にて解説していますので、あわせてご参照ください。
各種ITツールの導入
データ管理や分析、共有といった作業に多くの人的リソースを割いている場合には、ビジネス用のソフトウェアやクラウドサービスなどのITツールの活用も選択肢に入れるとよいでしょう。現在はさまざまな分野において業務効率化ツールが展開されており、課題に応じたものを導入することが可能です。
たとえば業務の引き継ぎや情報共有、進捗管理がスムーズにいかない場合であれば、チャットツールやプロジェクト管理用のサービスが有効だと考えられます。あるいは、顧客管理や売上管理が煩雑になっている場合には営業支援ツールを導入するなど、目的・シーンにあわせて検討するとよいでしょう。
業務効率化における目標設定の例
業務効率化を進めるうえでは、「何のための改善か」をあらかじめ明確にしておく必要があります。現状の業務フローを見直し、問題点を浮き彫りにしたうえで、改善に向けた方針を具体化していくことが重要です。
業務効率化を通じて改善しうるポイントはさまざまであり、「売上」や「作業時間」など多岐にわたります。自社の現状に応じて目標を設定することで、的確に効率化を進めていきましょう。
売上・利益に関する目標設定
多くの場合、業務効率化を図る際の第一義的な目的は「生産性向上」にあります。業務を見直すうえでは、あらかじめ売上や利益に関する目標を具体的な数値として設定し、「達成するにはどこがネックになるのか」を見定めておくことが大切です。
時間やコストがかかりすぎているポイントを抽出するなど、業務フロー全体を通じて「非効率な箇所」を特定していくことが求められます。
時間に関する目標設定
作業のムダをなくすことによる「リソースの削減」も、業務効率化を図るうえでの目標となりえます。
現状の業務フローを段階ごとに整理しなおし、どこでロスが生じているかを見定めながら、改善を通じてどれだけのリソース削減が期待できるのかを検証するとよいでしょう。
たとえば「残業時間○%削減」といった目標は、従業員のモチベーション向上にもつながると考えられます。目標を具体化することで、達成への意欲を共有することも大切です。
品質に関する目標設定
業務効率化の方針として、これまで属人化していた作業を均質化したり、単純化したりする方向性が考えられます。
このような均質化・単純化を通じて期待できるのは、生産物やサービスの品質を安定させる効果です。ここから、「不良品率の低下」といった品質面に関わる目標設定も、業務効率化を図る際には有効だといえるでしょう。
現状において品質にムラが見られる場合にはとくに、達成すべき品質水準を具体的に定めておくことが求められます。
業務効率化の事例
業務効率化の成否は、「事前の現状分析」や「目標設定」に左右されます。以下では、明確な方針により業務効率化を果たした企業の事例を紹介します。
三井住友海上火災保険株式会社
三井住友海上火災保険株式会社は、「働き方改革」の関連法案が整備されている段階から、業務プロセスを見直すことで効率化を図り、労働時間の削減を達成してきました。
具体的には、ソフトウェアロボットによる業務自動化(RPA)や、Excel VBAによる省力化を通じて、月あたり1,200時間の労働時間削減を実現。その他、自社業務にあわせた独自ツールの開発を行いながら、属人化していた作業を積極的に自動化・自律化しています。
さらに、残業時間の削減や在宅勤務の推進、研修制度の充実など、働き方をめぐる取り組みも顕著であり、高いパフォーマンスを持続しうる体制を整えています。
(参照:厚生労働省「第2回 「働きやすく生産性の高い企業・職場表彰」の表彰対象企業を決定しました」
内PDF資料「別紙1-1 最優秀賞」)
サントリーホールディングス株式会社
大手飲料メーカーとして知られるサントリーホールディングス株式会社は、2010年から「S 流仕事術の創造」を働き方の目標として設定しています。この仕事術は「決めた時間で最大の成果を出す」ことを主眼としており、同社はITツールの導入やテレワーク・フレックスの推進、研修の充実化などを通じて、多角的に効率化を図っています。
具体的な策としては、目的が不明確であったり、必要以上に長くなったりする会議を削減・廃止する「会議ダイエット」や、資料の過剰な装飾・印刷を取りやめる「資料ダイエット」などを通じてムダを削減。さらに、電話やメールを遮断する「集中タイム」を設けることで業務にメリハリをつけ、パフォーマンスが発揮しやすい環境を作っています。
(参照:厚生労働省|働き方・休み方改善ポータルサイト「サントリーホールディングス株式会社:働き方・休み方改善取組事例」)
株式会社唐沢農機サービス
「株式会社唐沢農機サービス」は、インターネット上で農機を販売する「ノウキナビ」というマーケットプレイスを展開しています。しかし顧客の高齢化が進むなか、オンライン対応のみでサービスを完結させることは難しく、電話対応専門の部署を設置することになりました。
農機に精通していないスタッフも電話対応を担当するなかで、確認業務や連携に困難が生じることもあったといいます。そこで、機器や顧客をめぐる情報をマニュアル化し、すぐさま確認・共有できる体制を整え、誰もが同じ情報をもとに対応可能な環境を作りました。
これにより労働時間の短縮効果が見られ、2019年に1ヶ月あたり20時間だった平均残業時間は、2021年には8時間にまで削減されたといいます。
(参照:厚生労働省|働き方改革特設サイト「株式会社唐沢農機サービス」)
個人で業務効率化を図る際のポイント
組織全体で業務効率化に取り組むことはもちろん重要ですが、各々の従業員が個人レベルで「ムダ」を削減していく意識も、組織の生産性に大きく関わります。以下では個人が自身の業務を効率化するうえで、有効な観点を紹介していきます。
タスクの優先度を「見える化」する
効率的に業務を進めるためには、自分が抱えているタスクに優先度をつけ、1つ1つ進めていくことが求められます。
自分が抱えるタスクをリスト化する習慣をつけるとともに、どのような段取りで進めていくべきかを見通せるよう、ToDoや付箋ソフトなどを使って整理していくとよいでしょう。
業務ごとに「区切り」をつける
異なる業務を一度に進めようとすると、作業の切り替えが煩雑になり、結果として多くの時間がかかってしまいます。ひとまず「これ」と決めた作業を着実に完了させたうえで、次の作業に取りかかれるように、区切りを明確にしながら業務を進めていくことが大切です。
特段集中力が求められる作業に対しては、まとまった時間を確保できるように取り計らったり、反対にマルチタスクが可能な作業はある程度まとめて処理したりと、作業内容と時間配分のバランスを管理する視点をもつとよいでしょう。
定期報告などは「テンプレ化」してしまう
業務において報告・連絡が求められる場面は多いですが、文面の作成に時間がかかればそれだけ生産性も落ちてしまいます。報告書やメールなど、定型文で済ませられる場面では積極的にテンプレートを利用していきましょう。
さらに、定型句の辞書登録やショートカットキーなどを利用しながら、形式的な部分にかかる時間を可能な限りカットする工夫も有効です。
適宜コミュニケーションを図る
作業に何かしらの困難が生じ、行き詰まっている場合でも、関係するメンバーへの相談や折衝により作業を軽減できる場面もあるでしょう。
1人で解決しようと苦闘した成果が、組織としては重要性の低いものであるケースも考えられます。「何が必要か」を客観的に見定めるため、適宜メンバーとのコミュニケーションを図りたいところです。
3S(整理・整頓・清掃)を心がける
職場を整理・整頓・清掃する「3S活動」は、製造業を中心に用いられる言葉ですが、あらゆる職場環境において効果が期待できます。
不要なものは処分したり、よく使うものを取り出しやすい場所に置いたりと、スムーズに作業を進められる環境を整えておくことは、業務効率化の大前提といえるでしょう。
このように、基本的な発想に立ち返ることでムダを削減できるケースは少なくありません。現在「当たり前」となっている慣習も、「他の環境から見てどう映るか」という視点から見直し、業務の必要性や妥当性について再度検討してみるとよいでしょう。
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