
これだけは押さえておきたい!代表的な購買行動モデル10選
消費者が商品・サービスを認知してから購買に至るまでの意思決定プロセスをモデル化した「購買行動モデル(消費者行動モデル)」。「AIDMA(アイドマ)」や「AISAS(アイサス)」など、世の中にはさまざまな購買行動モデルが存在しますが、具体的にどのような種類があり、それぞれにどのような特徴があるのか、詳しくご存じでしょうか。
本記事では、これまでに構築されてきた数多くの購買行動モデルの中から、マーケターなら知っておきたい代表的なフレームワークを計10種類紹介していきます。最新の購買行動モデルとして注目を集める「RsEsPs(レップス)」についても触れているので、ぜひ最後までご覧ください。
目次
購買行動モデルは大きく3つの時代に分けられる

消費者の購買行動は時代とともに変化しており、現代までに生み出されてきたフレームワークは、大きく以下3つの時代に分けられます。
・マスメディア時代(1900年頃~) ・インターネット時代(2000年頃~) ・コンテンツマーケティング時代(2010年頃~) |
まず、インターネットが普及する前の時代、消費者の主な情報源といえば、テレビやラジオ、新聞、雑誌といったマスメディアでした。今のように自ら情報を仕入れる術はほとんどなく、企業が発信した情報を参考に購買の意思決定を行っていたため、この時代はマスメディアを通じた消費行動が主流となっています。
その後、インターネットが一般化すると、情報収集の手段がマスメディアからWebへと移行し、消費者自らが能動的に情報を入手できるようになりました。また、ただ情報を集められるだけでなく、誰もが気軽に情報を発信できるようになったのも大きな変化の1つ。これまでは企業から消費者への一方通行的なコミュニケーションが基本でしたが、インターネットの登場により企業と消費者の間に双方向性が生まれています。
さらに時代は進み、スマートフォンが誕生すると、消費者の得られる情報量が飛躍的に拡大しました。Twitterをはじめとした拡散性の強いSNSも普及し始め、個々の情報発信力が強くなったことにより、情報の伝達速度もアップ。インターネット上にはコンテンツがあふれ、WebやSNSで検索するという行為が当たり前になりました。
では、こうした時代の変化により、購買行動モデルはどのように変わっていったのでしょうか。
ここからは、時代ごとに代表的な購買行動モデルとその特徴を確認していきましょう。
マスメディア時代の購買行動モデル

まずは、マスメディア時代の購買行動モデルを4つ紹介します。
・AIDA(アイダ) ・AIDMA(アイドマ) ・AIDCA(アイドカ) ・AIDCAS(アイドカス) |
1つずつ見ていきましょう。
AIDA(アイダ)
Attention(注意) | 商品を認知する |
Interest(興味) | 商品に興味・関心を抱く |
Desire(欲望) | 商品を欲する |
Action(行動) | 商品を購入する |
購買行動モデルの構築は1900年前後から始まっており、最も古いモデルは1989年にアメリカの広告研究家であるセント・エルモ・ルイス氏が提唱した「Attention(注意)」「Interest(興味)」「Desire(欲望)」の3段階からなる「AID」モデルだといわれています。その後、1900年に入ると、ルイス氏はこれを自ら修正。最後に「Action(行動)」を付け加えた「AIDA(アイダ)」モデルを完成させました。
この概念が有名になったのは、それから25年後の1925年。アメリカのE・K・ストロング氏が自身の論文の中で「AIDA」モデルを用いて消費者の購買意思決定プロセスを説明したことをきっかけに広く知られるようになりました。
「AIDA」モデルによれば、消費者はマス広告によって商品の存在を知り、次第にその商品への興味が湧き、徐々に購買意欲が高まって、最終的に購入に至ると定義されています。今から100年以上も前に提唱された理論ですが、基本的な概念は現代にも通用する消費者行動のベースとして考えられており、現在ある購買行動モデルの多くは、この「AIDA」モデルが基盤となっています。
AIDMA(アイドマ)
Attention(注意) | 商品を認知する |
Interest(興味) | 商品に興味・関心を抱く |
Desire(欲望) | 商品を欲する |
Memory(記憶) | 商品を記憶にとどめる |
Action(行動) | 商品を購入する |
「AIDMA(アイドマ)」は、1920年代にアメリカのサミュエル・ローランド・ホール氏が著書のなかで発表した概念です。「AIDA」モデルに「Memory(記憶)」の要素を追加したもので、マスメディア時代を代表する購買行動モデルの1つとして広く認知されています。
今はインターネットでなんでも調べられるうえに、気になる情報があればブックマークやスクリーンショットなどで手元に保管しておけるため、気になる商品の情報を頭に留めておく必要はそれほどありません。しかし、前述したように、インターネットが一般化する前の時代は消費者が能動的に情報を入手する術がほとんどなかったため、広告で知った商品を購入したいと思った場合は、その情報を記憶しておく必要がありました。つまり、企業側は自社商材を忘れられないよう、その存在を強く印象付けられるような施策を講じる必要があったのです。
AIDCA(アイドカ)
Attention(注意) | 商品を認知する |
Interest(興味) | 商品に興味・関心を抱く |
Desire(欲望) | 商品を欲する |
Conviction(確信) | 商品の価値を確信する |
Action(行動) | 商品を購入する |
「AIDCA(アイドカ)」は、「AIDA」モデルに「Conviction(確信)」の要素を付け加えたモデルです。購買意欲をそそられてから実際に購入するまでの過程で、「これは信用できる」「これなら間違いない」と思わせるような確信が得られて、初めて購買に至ると定義されています。
たしかに、広告を見て魅力を感じたとしても、その広告が事実なのかどうか判断できなければ、多くの人は購入するのをためらってしまうでしょう。ただ、その広告に「お客様の声」が記載されていたり、権威のある識者のコメントが載っていたりしたら、商品への信頼度が高まるのではないでしょうか。このように、多くの消費者は「購入」というアクションを起こす前に、本当にその商品を買うべきかどうか、不安や迷いが生じる傾向にあります。そのため、 企業側は見込み顧客を逃さないよう、消費者の購買決定を後押しできるような施策を施す必要があるのです。
AIDCAS(アイドカス)
Attention(注意) | 商品を認知する |
Interest(興味) | 商品に興味・関心を抱く |
Desire(欲望) | 商品を欲する |
Conviction(確信) | 商品の価値を確信する |
Action(行動) | 商品を購入する |
Satisfaction(満足) | 購入した商品に対して満足感を得る |
「AIDCAS(アイドカス)」は、「AIDCA」モデルの概念に「Satisfaction(満足)」を付け加えたものです。単に商品を販売して終わるのではなく、その後の顧客満足度を持続させ、リピーターやファンの育成を狙うモデルとなります。例えば、保証やカスタマーサポートなどのアフターサービスを充実させたり、次回来店時に使用できるクーポンを付与したり。マスメディア時代の購買モデルとして位置づけられていますが、個人の発信力が強い現代においては、商品購入後の顧客の評価も非常に重要であり、商品やサービスの質が悪いとSNSなどで悪評が広まってしまう恐れがあるため、今にも通用するフレームワークといえるでしょう。
インターネット時代の購買行動モデル

次に、インターネット時代の購買行動モデルを2つ紹介します。
・AISAS(アイサス) ・AISCEAS(アイセアス) |
それぞれ解説していきます。
AISAS(アイサス)
Attention(注意) | 商品を認知する |
Interest(興味) | 商品に興味・関心を抱く |
Search(検索) | 商品に関する情報を検索する |
Action(行動) | 商品を購入する |
Share(共有) | 商品に対する評価を共有する |
「AISAS(アイサス)」は、2004年に株式会社電通グループが提唱した購買行動モデルで、2005年6月に商標登録されています。
最大の特徴は、インターネット特有の「検索」と「共有」という行動が含まれている点です。前述したように、インターネットが普及したことにより、誰でも簡単に情報を収集・発信できるようになり、消費者は購入する前にまず気になる商品に関する情報を調べ、購入後はその商品に対する評価をインターネット上で発信し、他者に共有するようになりました。今や多くの人が無意識にとっている行動ですが、その当時としては画期的な視点であり、これ以降「AIDMA」よりも「AISAS」を用いられる場面が増えていきました。
AISCEAS(アイシーズ)
Attention(注意) | 商品を認知する |
Interest(興味) | 商品に興味・関心を抱く |
Search(検索) | 商品に関する情報を検索する |
Comparison(比較) | 複数の商品を比較する |
Examination(検討) | 商品を購入するか検討する |
Action(行動) | 商品を購入する |
Share(共有) | 商品に対する評価を共有する |
「AISCEAS(アイシーズ)」は、「AISAS」に「Comparison(比較)」と「Examination(検討)」の2つの概念を足したものです。2005年に提唱された購買行動モデルであり、消費者は商品を購入する前にインターネットを通じて情報収集するといった点が加えられています。具体的には、メーカーの公式サイトや商品のレビュー、比較サイト、SNSでの口コミなどをもとに比較・検討してから、商品を購入するという流れを1つのプロセスとして捉えているのです。
コンテンツマーケティング時代の購買行動モデル

続いて、コンテンツマーケティング時代の購買行動モデルを3つ紹介します。
・VISAS(ヴィサス) ・SIPSS(シップス) ・DECAX(デキャックス) |
こちらも上から順に詳しく見ていきましょう。
VISAS(ヴィサス)
Viral(口コミ) | 口コミを見て商品を認知する |
Influence(影響) | 口コミまたは口コミの発信者の影響を受ける |
Sympathy(共感) | 口コミまたは口コミの発信者の意見に共感する |
Action(行動) | 商品を購入する |
Share(共有) | 商品に対する評価を共有する |
「VISAS(ヴィサス)」は、口コミを起点とした購買行動モデルです。
インターネット時代の代表的な購買行動モデルの1つとして紹介した「AISAS」と比較してみると、「AISAS」が自らの欲求によって起こす消費行動であるのに対して、「VISAS」は他者からの口コミが消費行動に大きな影響力を及ぼしています。つまり、「AISAS」は顕在的なニーズが発端となっており、「VISAS」は潜在的なニーズが発端となっているのです。
SNSが普及した現代においては、タイムラインなどに流れてきた情報を起点にその商品の存在を認知するケースも多いため、消費者の潜在的なニーズを掘り起こすといった意味で、「VISAS」の概念は重要性が高いといえるでしょう。
SIPS(シップス)
Sympathize(共感) | 他者の発信した情報に共感する |
Identify(確認) | 共感した情報が自分にとって有益かどうか確認する |
Participate(参加) | 企業の販促活動に参加する |
Share&Spread(共有&拡散) | 消費者の共有した情報が別の消費者によって拡散されていく |
「SIPS(シップス)」は、SNS特有の購買行動を表しています。
まず特筆すべき特徴は、消費行動の起点が「認知」ではなく「共感」になっている点です。大量の情報が流れるSNSにおいて、共感の得られないコンテンツはスルーされやすい傾向にあるため、いかに消費者の共感を得られるかが重要になります。
ただし、消費者は共感したからといって、すぐに購入などのアクションを起こすとは限りません。多くの人は、インターネットで口コミやレビューを検索したり、家族や友人の意見を聞いたり…と、さまざまな方法で、その情報が自分にとって有益かどうかを「確認」します。
その後、消費者は「参加」のフェーズへ入ります。これも 「SIPS」の大きな特徴の1つです。ソーシャルメディアでは、「いいね」や「リツイート」ボタンを押してフォロワーに情報を共有したり、アカウントをフォローしてコミュニティに加わったり…と、たとえ購入に至らなくても、何らかの形で企業の販促活動に参加できるため、「SIPS」では購買を伴わない活動も含めて「参加する」と捉えています。
そして、消費者が共有した情報は、ほかのフォロワーの手によって拡散されていきます。こうして拡散された情報が、新たな「共感」を生み、さらに「拡散」されていく。「SIPS」では、このようなサイクルが繰り返されていくことで、徐々に参加者の母数が大きくなっていき、結果として購買数の増大につながると定義されています。
DECAX(デキャックス)
Discovery(発見) | インターネット検索やSNSなどで有益なコンテンツを発見する |
Engage(関係) | コンテンツを通じて発信元企業と関係を深める |
Check(確認) | 発信元企業の商品を確認する |
Action(行動) | 商品を購入する |
eXperience(体験・共有) | 商品を通じて得た体験を共有する |
「DECAX(デキャックス)」は、コンテンツマーケティングによって、自社の見込み客がどのような行動をとるのかを示したものです。
売り手ではなく買い手が主体となる購買行動モデルであり、まず自社で発信しているコンテンツを消費者に「発見」してもらうところからスタートします。そこから徐々に関係を深めていき、最終的に購買へと導くというのが、このモデルの考え方です。
そのためコンテンツマーケティングでは、消費者に対して商品のセールスを行うのではなく、消費者にとって有益なコンテンツを提供し続けることが重要になります。一方的に商品を売りつけるだけでは消費者の信頼を得られず、購買につなげることができないため、彼らにとって役立つ情報を継続的に発信し、長期的な目線で関係性を構築する必要があるのです。
押さえておきたい!最新の購買行動モデル「RsEsPs(レップス)」

最後に、ここ数年で注目度を上げている「RsEsPs(レップス)」と呼ばれる購買行動モデルを紹介します。
Recognition(認識) | 商品を認知する |
Search(検索)・Spread(共有)・Share(拡散) | SNSなどを用いて検索・共有・拡散する |
Experience(体験) | サンプリングやポップアップイベント、無料トライアルなどで商品を体験する |
Search(検索)・Spread(共有)・Share(拡散) | SNSなどを用いて検索・共有・拡散する |
Purchase(購買) | 商品を購入する |
Search(検索)・Spread(共有)・Share(拡散) | SNSなどを用いて検索・共有・拡散する |
「RsEsPs(レップス)」は、2019年6月に一般社団法人 日本プロモーショナル・マーケティング協会が提唱した購買行動モデルです。インターネット、特にSNSが浸透した現代の消費行動の流れを表しており、大文字の「R・E・P」は「Recognition(認識)」「Experience(体験)」「Purchase(購買)」という大枠の購買行動プロセスを、小文字の「s」は「Search(検索)・Spread(共有)・Share(拡散)」という消費者のインターネット上での動きを表しています。
つまり、「RsEsPs(レップス)」モデルにおいて、消費者は「認識・体験・購買」それぞれのフェーズで「検索・共有・拡散」といった行動をとるとされているわけです。これを踏まえると、今後、企業側は各フェーズにおいて彼らが能動的に「検索・共有・拡散」したくなるような施策を戦略的に盛り込む必要があるといえるのではないでしょうか。
商材や顧客層に合わせて適切な購買行動モデルを活用しよう!

消費者の購買行動は常に変化し続けており、効果的なマーケティング戦略を打ち出すためには、企業側もその変化に対応していく必要があります。
しかし、だからといって、必ずしも新しい購買行動モデルを採用すべきというわけではありません。過去に構築されたモデルの中には現代に通用するものも多く、企業によって重視すべきフレームワークは異なるため、自社で取り扱っている商品・サービスやターゲット像などを踏まえたうえで、どの購買行動モデルを活用していくべきかをじっくり検討してみてはいかがでしょうか。
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