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マーケティング企画
ポカリやユニクロの新名作CMに見る、現代に響くコピーライティング術
2021/06/02

ライティング
「手をのばそうよ。届くから。」

これは2021年4月9日より放映が始まったポカリスエットの新CM内で使われているキャッチコピーです。放送開始直後Twitter上で関連ワードがトレンドに上がるなど、多くの方々に衝撃を与えた今作は、なぜそこまでの影響力を放ったのでしょう?

「TVCMを見れば時代がわかる」とは、TVよりもYouTubeをはじめとしたweb動画を閲覧するというユーザーが一定数存在し、おそらく今後も増え続けていくと考えられる今の時代においてもいえることなのかもしれません。

ダイバーシティ、インクルージョン、働き方改革、ジェンダーギャップ問題、サスティナビリティ、withコロナ、さまざまな要素を含んだ現代に、多様性を孕んだ人々の心に確実に響かせることのできる言葉とはいったいどんなものでしょう。

目次

プロモーション方法の移り変わり

TV

インターネットが今ほど普及していなかったころはTVや雑誌から得られる情報が主だったため、特に受動的に情報を得られるようなTV番組やCMの影響力が強かったことは想像に難しくありません。

ですが今はwebサイトにSNS、web広告とネット上に随時多くの情報が発信され続けています。私たちは常に飽和状態にあるそれらから必要に応じて取捨選択することが求められるようになりました。

たとえば「汗をかいたときに適切な水分補給をしたい」と考えたとき、ポカリスエットには汗などで失われる水分やナトリウムが含まれているということは少し検索すれば調べられることでしょう。また、もともとポカリスエットが好きな方であれば「水分補給にはポカリスエットこそ最適だ」という無意識のフィルターをかけた状態で検索し、その考えを後押しするような情報ばかりを得ることになるかもしれません。

そのため公式サイトや企業アカウントのSNSなどでは、商品の細かな特徴や他社競合商品と差別化できる魅力を紹介すべきかもしれませんが、プロモーションにおいてはそういった事柄に触れなくてもいいこともあるでしょう。

無名企業が新商品を発表する際は思いきった宣伝手段に打って出るのはなかなか難しいと思いますが、そういった場合でも、もしかしたらそういった場合こそ、プロモーションの目的は企業名や商品名の認知度を上げることに振り切り、誘致させた公式サイトで商品の詳細を解説するという手法も考えられるかもしれません。

前述のとおり、もはや情報は受け取るものではなく、自ら掴みに行くものになりつつあります。また、今の時代にはweb上をはじめ、あらゆるところに情報が溢れています。それならば、宣伝物、及びそれらに使われるコピーライティングの目的は、商品やサービスの購入、登録への導線ではなく、興味を持ってもらうこと、それらの公式サイトへの誘致にシフトしていくべきかもしれません。

近年に見られるキャッチコピーの特徴

冒頭でも少し触れましたが、今の時代を象徴するものにはさまざまな要素が考えられます。2020年以降は人々の生活とともにコロナという新型ウィルスの存在感が猛威を振るっているのはご存じのとおりであり、それ以外にも多くの課題を抱えています。

たとえば今まで不当な扱いや差別を受けることもあったLGBTQ+などセクシュアルマイノリティー、女性、外国籍、障害者の方々も平等に生きやすい社会を目指していくこと、すべてのジェンダーギャップをなくし、あらゆるハラスメントを排除していくこと、多種多様な考え方を持った人たちがいることを理解し、互いを認め合える環境を築いていくこと、それぞれの生活に合った働き方を取り入れていけるように整備していくこと、そして地球保護や動物愛護に向き合っていくこと…。

なにかに賛成したり、支持したりする人がいるということは、一方でそれに反対したり、反論したりする人がいるということです。つまり、すべての人たちに受け入れられるようなクリエイティブを作ることは限りなく不可能に近いといっていいでしょう。

ですが、たしかに差別、あるいは迫害を受けている人たちがいるということをようやく認められるようになり始めた今、CMなりプロモーションコンテンツなり、あらゆる作品を創作する上で取り組むべきなのは、「すべての人」が傷つかずにすむ言葉を紡ぐことです。

矛盾しているように感じられるかもしれませんが、コピーライティングを行う際に、その言葉はだれに向けたものであるのか、そしてほかにどういった方がその制作物に触れる可能性があるのかをきちんと考えて向き合うことができれば、リスクを最低限に抑えることもできるのではないでしょうか。

以下は、だれかを傷つける可能性が極めて低く、その上で話題になっただけでなく、多くの方々から支持されたキャッチコピー例です。

名作コピーライティングの実例

◆手をのばそうよ。届くから。


冒頭で挙げたポカリスエットのCM(でも君が見えた。篇)に使われているキャッチコピーです。
公式サイトにはこのCMについて、下記のように説明しています。


みんなと違う方に走り出す、新ヒロインの中島セナさん。
自分らしく進むのは大変だけど、きっと楽しい。
いっしょに走る仲間がいれば、もっと勇気が湧いてくる。
2021年、はじまりの春。手をのばそうよ。届くから。
逆風はやがて追い風に変わる。


引用元:大塚製薬 ポカリスエット公式サイト


これまでもポカリスエットでは、汗をかくなどして失われるナトリウムなどのイオン(電解質)も水分とともにスムーズに補給できるという特徴から、制服姿の学生たちがダンスをしたり、同じく制服姿の女子高生(と思しき女優)が海辺を走ったり、「汗」のイメージを爽やかに昇華する「若い青春」を想起させる内容のCMが多かったですが、それまでの「渇きを力に変えてゆく。(2020年)」、「汗は君のために流れる。(2019年)」といったキャッチコピーと比べても、より商品に遠い表現を用いていることが特徴的です。

「渇きを力に変えてゆく。」という表現では、渇いた喉、もしくは体を潤すことができるということを端的に伝えており、「汗は君のために流れる。」という表現では、やや遠回しではありますが「君のために流れた汗の分の水分を補給することができる」と受け取ることができるでしょう。また、穿った考え方をすれば、「汗をかくことはいいこと」だという思考が前提にあるとも捉えることができます。

ところがこのたびの「手をのばそうよ。届くから。」では、ポカリスエットという商品に繋がる要素が一切描かれていません。潔いまでに商品説明を排除した上でCM内では、多くの同級生たちと逆行して体育館へ走り、一人の少女と出会って手を取り合う、ガールミーツガールのストーリーが映し出されます。

ここで表されるのは、「みんなと逆行して進んでもいい=みんなと同じでなくていい」、「手をのばしたら(だれかに・なにかに)届く=自分を信じて行動していい」という、だれかを、自己を、肯定するものです。

蛇足ではありますが、もしかしたらこの2人の少女の結びつきは友情ではなく恋愛関係のもとで繋がっているかもしれない、という見方もでき、そうすると多感な思春期世代の子たちに、自らを抑えることなく手をのばしてほしいと背中を押す、より強いエールとも捉えることができます。


◆結婚しなくても幸せになれるこの時代に、私は、あなたと結婚したいのです

2017年に放映された結婚情報誌『ゼクシィ』のCM(風船篇)内で語られるキャッチコピーです。放送当時から共感の声も多く大きな話題を生んだので、ご存じの方も多いのではないでしょうか。

同年、広告・クリエイティブ専門誌『ブレーン』による「読者が選ぶブレーン広告グランプリ」にも選ばれました。

ゼクシィといえば、嘘かまことか、カップルのどちらかが結婚したいと思ったときに買っておいて、もう1人にそれを意識させる、なんていうテクニックも存在すると噂されるほど「結婚したい人のための情報誌」として認識されている雑誌。

そのCMにおいて「結婚しなくても幸せになれる」と断言したことはあまりにも大胆で新しく、まさしく今の時代に寄り添ったキャッチコピーだといえるでしょう。

結婚したくない人、結婚したいけれどなんらかの理由により叶わない人、結婚に興味がない人、パートナーと一緒に生活はしたいけれど結婚という選択をしたくない人、さまざまな恋愛観、家族観、結婚観が存在する今、「結婚」というものを肯定せず、その上で「(それでも)私はあなたと結婚したい」と結ぶことで、結婚する人のことも、しない人のことも理解し応援していく、という誌面制作チームの、ひいては運営するリクルートという企業の理念を感じさせます。

加えていうならば、「結婚しなくても幸せになれる」と言いきることで、結婚という法的制度を用いなくても幸福な生活を送れる制度や環境を整えていくべき、という喚起さえ読み取れるかもしれません。


◆風通しのいい世界へ。

ユニクロ(UNIQLO)の「エアリズムインナー」という、体から発する水蒸気を吸収、放出し、衣服内のムレを軽減させる機能性素材を使った商品のCMで使われているキャッチコピーです。

注目すべきはキャッチコピーとCM内容の親和性の高さです。映し出されるのは女性同士(少なくとも身体の性は)のカップル。おそらく一緒に暮らしている彼女たちはいたって「普通」に寄り添って笑い合い、食事をし、ハグをし、キスをします。

「LGBTQ+」という言葉が広まり、ダイバーシティ化は徐々に進みつつありますが、それでもまだ「普通のこと」としては受け止められていないと見受けられるシーンを目にする機会もあるのが今の現状です。

しかし、CMの中で楽しそうに生活を送る2人の姿はまったく特別なものなどではなく、いたってどこにでもあるような日常を感じさせます。日本のCMでこのように同性愛を描き出すのは珍しいかもしれません。

同性愛者も異性愛者もなんら変わった点はなく、ひいてはアセクシュアル(無性愛者)やパンセクシュアル(全性愛者)などほかのセクシュアルマイノリティーと呼ばれる方々もやはり同じ人間であり、同様に幸せが訪れる(べき)というメッセージを感じさせます。

もちろんそれぞれの性自認や性的志向を隠す必要はなく、彼らを見て受け入れられないと感じたり、驚いたりするようであれば、それは恥ずべき感情であり、また、世の中はこれからもっともっと風通しがよくなっていくはずです。

「風通しのいい」という言葉を商品の機能性を謳うためだけに存在させるのでなく、「世界へ。」と繋げることで、あらゆる多様性を互いに認め合えるふくよかな時代を想起させるのは、言葉の力というほかありません。


◆わたしが、とまらん。


ファッション通販ZOZOTOWN(ゾゾタウン)で2021年5月に開催されていた「ZOZOWEEK」というSALEキャンペーンをPRしたCMのキャッチコピーです。

先の『ゼクシィ』のキャッチコピーもそうですが、主語が「わたし(ゼクシィは「私」)」であることがポイントです。

日本語は主語がなくても文章を完成させることのできる言語なので、特にキャッチコピーなど大多数に向けた文章を作る際にはあえて主語を省くことも多いですが、わざとそれを明確にしており、しかもそれが自分であるというところに今らしさが宿っているといえるでしょう。

SNSが普及し、「承認欲求」という言葉が今まで以上に認知されるようになりましたが、一方で、その欲求は満たされていない人の方が多いようにも感じられます。そもそも満たされないからこそSNS上で「いいね」を求めてさまざまな投稿に挑戦するのかもしれません。

日本人は諸外国に比べて自己肯定感の低い人が多いというのはよく知られているところですが、特にZOZOTOWNのコアユーザーである若者に焦点を当てると、自分自身に満足している者の割合は5割に及ばないそうです。

○参考:内閣府 平成26年版子ども・若者白書

上記の調査対象者と同世代である本田翼さんをCMキャラクターに据え、欲求のまま次々にZOZOTOWNで購入していく様子を「わたしが、とまらん。」と表現したのは、「自分の思いのままに行動していいんだ」という肯定のようにも感じられます。

自己肯定感が低いと、自分の意見にも自信が持てなくなることもあるため、自ら欲しい服を選び、購入するという決断を「わたし」が行っている、と見せることに意義があるのではないでしょうか。

服が好きな方もそうでない方も、思い思いのファッションで個性を発揮できる社会が好ましいですね。

不安定な時代に寄り添うキャッチコピーを

今の時代はいわゆるVUCA(ブーカ)と呼ばれる、変動が止まらない不安定な環境下にあります。

(※VUCA:Volatility(変動性)、Uncertainty(不確実性)、Complexity(複雑性)、Ambiguity(曖昧性)の頭文字を取って作られた言葉。今の時代を取り巻く不安定な社会環境を表す)

それまでキャッチコピーには商品やサービスの詳細を簡潔かつ明瞭に示すことが求められていましたが、今は不景気、コロナ禍、災害など、さまざまな理由から一寸先の未来さえ予測できません。オーバーにいってしまえば、今日欲しいと思ったものが明日役立つかどうかわからないということです。

加えて、そういった商品の特徴などはwebで調べればすぐに見つけることができます。「○○素材が使われているから便利」というコピーライティングを用いるよりも、SNSに投稿されるレビューや口コミの方が具体的で魅力的に映ることもあるでしょう。

つまり、キャッチコピーには最早、商品やサービスの特徴は載せなくてもいいという時代がやってきたのかもしれないということです。情報が飽和している今、むしろそういったものは、他社と差別化を図って生まれたものだとしても、埋もれてしまってそれほどの力を発揮できないこともあるかもしれません。

大事なのはターゲットを絞り込んだ上で、その層の多様性を信じて言葉を創出すること。「利用者の90%以上がリピートしています」といったcertaintyな表現に頼るのではなく、あえてuncertaintyな揺らぎのある言葉を用いて共感を得ることの方が重要になってきたのではないでしょうか。

従来の描き方を根底から覆すのは難しいかもしれません。変化には常に勇気を要します。けれど、手をのばせばきっとだれかに届く、そう信じることで次の一歩はより軽やかになると信じたいものです。


(本文・浦田みなみ)

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