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ファンマーケティングとは?代表的な手法や企業の成功事例を紹介

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インターネットの普及やSNSの発展に伴う消費行動の変化により、「ファンマーケティング」の重要性がますます高まっています。企業にとって心強いパートナーとなる熱狂的なファン。ですが、ファンの育成にはコツが必要です。

本記事では、ファンマーケティングの基礎知識から具体的な手法、メリット・デメリット、成功事例まで詳しく解説していきます。初心者でも実践できるポイントを押さえて、自社のファンを育ててみてください。

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目次

ファンマーケティングとは?

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ファンマーケティングとは、自社もしくは自社の商品・サービスに対して強い愛着を持ち、支持し続けてくれる顧客=「ファン」を育成し、その数を増やしていくことで中長期的な売上の維持・拡大を図るマーケティング手法です。

イタリアの経済学者ヴィルフレド・パレートが1896年に提唱した「パレートの法則(2:8の法則)」によれば、企業の売上の80%は、顧客全体の20%にあたる優良顧客によって生み出されているとされています。あくまで経験則ですが、この仮説に従えば、上位20%の優良顧客へのアプローチを重視するファンマーケティングは、経営基盤の安定および利益の拡大を図るうえで有効な施策といえるでしょう。

「ファン」の定義|購入頻度だけでは測れない

「ファン」と聞くと、つい「たくさん買ってくれる人」をイメージしがちですが、これは大きな誤解です。購入頻度が高いヘビーユーザーが必ずしもファンとは限りません。

真のファンとは、商品やブランドに愛着を感じ、企業が大切にしている価値観に共感してくれる存在を指します。たとえば「近所のお店に置いてあるから」「安いから」という理由でリピート購入している人は、より魅力的な商品が他社から出れば簡単に乗り換えてしまうでしょう。一方、企業やブランドそのものに価値を感じているファンは、競合他社の動向にかかわらず自社を支持し続けてくれます。

ファンを見極めるには、購入回数や購入金額といったデータだけでなく、「どのくらい商品・ブランドに愛着を持っているか」を測る必要があります。SNSでの投稿内容やコミュニティでの発言、アンケートでの回答など、定性的な情報も含めて総合的に判断することが大切です。

ファンマーケティングが注目される3つの背景

ファンマーケティングが注目される理由のイメージ

ファンの重要性は以前から認識されていましたが、近年とくに注目度が高まっているのはなぜでしょうか。ここでは、ファンマーケティングが求められるようになった3つの背景を解説します。

新規顧客獲得の難易度が上がっている

日本の総人口は2008年をピークに減少の一途をたどっており、人口が増え続けていた時代に比べて新規顧客の獲得が難しくなっています。ターゲットの母数がそもそも少ないため、新規顧客の開拓に注力するだけでは継続的な売上拡大が見込めなくなってきているのです。

とくに消費行動がアクティブな若年層の減少は顕著です。市場全体が縮小するなか、企業が成長を続けるためには既存顧客を維持し、継続的に購入してくれるファンを育成することが欠かせません。

新規獲得のコストが高騰する一方で、既存顧客の維持コストは新規獲得の5分の1程度ともいわれており、ファンマーケティングの重要性がますます高まっています。

SNSでの口コミが購買行動を左右する時代

インターネットやSNSが普及したことで、消費者は「実際に買った人、体験した人のつぶやきや投稿」に簡単に触れられるようになりました。今や多くの消費者が商品購入前にSNSや口コミサイトをチェックし、それを参考にして購入を決めています。

アジャイルメディア・ネットワークの調査によれば、SNSの口コミが購入や来店に「影響する」と答えた人は全体の約7割に達しています。しかも、企業から発信される情報よりも個人の投稿のほうが信頼されやすい傾向にあるのです。

熱心なファンはSNSで自発的に商品やサービスの魅力を発信してくれます。こうした第三者の声は説得力が高く、企業の広告よりも高い宣伝効果を生み出すことができるのです。

情報過多の中でも届く「ファンの声」

米国の調査会社IDCによると、全世界で生成・消費されるデジタルデータの総量は2025年には175ゼタバイト(1ゼタバイト=1兆ギガバイト)まで増えると予想されています。これは世界中に存在する砂浜の砂の数に匹敵する膨大な量です。

このような情報過多の環境では、自社の商品やブランドの情報を見つけ出してもらうことすら容易ではありません。さらに、探し出した情報を自分ゴトとして受け止めてもらうのは至難のワザです。

しかし、自社のファンであれば話は別です。ファンは数多の情報に囲まれていても、自社の情報を能動的に探し出し、自分ゴト化してくれます。さらには周囲の人々へ推奨さえしてくれるのです。情報の海の中で消費者に届くメッセージを発信するために、ファンの存在が不可欠になっています。

ファンマーケティングに期待できる4つの効果

ファンマーケティングに期待できる効果のイメージ

ファンマーケティングを実施することで、どのような効果が期待できるのでしょうか。主なメリットを4つ紹介します。

安定的な収益基盤を構築できる

熱狂的なファンは商品・サービスのリピート率が高く、競合製品に乗り換える「ブランドスイッチ」の可能性が低い傾向にあります。彼らの存在があるだけでも、安定した売上の確保が期待できるでしょう。

ファンマーケティングによって自社に対する愛着心を育み、信頼関係を構築することができれば、LTV(Life Time Value:顧客生涯価値)の向上にもつながります。1回の取引で得られる利益だけでなく、2回目以降の継続的な取引により得られる利益に重点を置くことで、施策次第では売上基盤をさらに安定化させることができます。

成熟市場では新規需要を喚起することは容易ではないため、LTVの底上げにはファンの存在が欠かせません。

広告費を抑えながら新規顧客を獲得

消費者自身が手軽に情報を収集・発信できるようになった現代では、企業が発信する情報よりも個人が発信する口コミのほうが信頼されやすい傾向にあります。商品・サービスを購入する前にWebやSNSなどで口コミを検索する行為が当たり前になりつつあるのです。

こうした状況下で心強い味方となるのがファンの存在です。熱心なファンはSNSや口コミサイトなどで気に入った商品・サービスの情報を積極的に発信する傾向にあり、第三者の意見として説得力があるため周囲にもたらす影響力も強く、高い宣伝効果を期待できます。

企業からすれば、広告宣伝費を削減しながらも新規顧客の獲得を見込めるようになるわけです。ファンによる自発的な情報発信は、費用対効果の高いマーケティング施策といえるでしょう。

消費者のリアルな声を収集できる

ユーザー目線の客観的な意見を収集できるのも、ファンマーケティングを行うメリットのひとつです。商品・サービスへの愛着が強いファンは、企業自身も把握しきれていないような魅力や欠点に気づいている可能性が高いからです。

ファンの声を新商品・サービス開発において活用することもできます。たとえば、商品やサービスに関わる「アイデア出し」や、ファンが企業とともに新商品・サービスを開発する「共創」、開発段階でできたプロトタイプ等をファンに評価してもらう「モニター」などです。

ファンは自らがファンである企業の世に出る前の商品・ブランドの開発に関わることに積極的なため、熱い想いを反映した開発をすることができます。そこで得た有益なフィードバックをもとに商品開発やマーケティング戦略などをブラッシュアップし、顧客ニーズとの「ズレ」を修正していくことができれば、顧客満足度の向上につなげられるでしょう。

ブランドの認知度と信頼性が向上する

ファンは商品やブランドに「好き」を感じており、自分の「好き」を具体的に語ることができます。しかもファンは自分の「好き」を語ることにも積極的なため、ファン同士が会うと共通する「好き」によって会話が弾むことになるのです。

こうして「好き」の「輪」ができあがります。クチコミによってこの「輪」が広がることで、ファン層はさらに拡大しやすくなります。SNSなどを通じて積極的に商品やサービスについて情報を発信するファンの投稿を見た未購買層が、「へぇ〜これ良さそうね」と共感し商品購入することで、新規顧客の獲得につなげることができるのです。

ファンによる情報発信が継続的に行われることで、ブランドの認知度が高まり、「多くの人に支持されている」という信頼性の向上にもつながります。

ファンマーケティングのデメリットと注意点

ファンマーケティングのデメリットのイメージ

ファンマーケティングには多くのメリットがある一方で、いくつかのデメリットや注意点も存在します。実施する前に理解しておきましょう。

ファン育成には時間と労力がかかる

ファンマーケティングを実施するにあたって、まず理解しておかなければならないのが、ファンを育成するのには時間と労力がかかるという点です。この手法は始めてすぐに成果を得られるようなものではありません。

一消費者が商品・ブランドに愛着を感じファンに変わるには、「きっかけ」と「歴史」が必要です。商品・ブランドとの出会いを体験し(=きっかけ)、愛情が深まるような交流を積み重ねる(=歴史)ことで、消費者は商品・ブランドを自分ゴト化するようになります。

企業に利益をもたらしてくれるような熱心なファンを育成するためには、それ相応の時間と手間を要します。成果に焦って対応が雑になってしまっては、顧客との関係性を深められないため、あらかじめ時間がかかることを理解したうえで、顧客との信頼関係をゆっくり育んでいきましょう。

炎上リスクへの適切な対応が必要

ファンマーケティングでは、イベントやSNSなどで顧客と直接交流することも少なくありません。顧客との距離を縮めるために、あえて個人的な意見を述べたり、カジュアルな言い回しを使ったりすることもあるでしょう。

しかし、距離感を誤ってしまうと炎上につながる恐れがあるため要注意です。本人には悪気がなくとも、些細な一言で反感を買ってしまい、炎上トラブルに発展するケースもあります。顧客とコミュニケーションをとる際は発言や態度に細心の注意を払うようにしましょう。

また、ファンが交流する場は単なる寄り合いの場ではなく、企業としての目的に沿ってつくられる場であるべきです。熱狂的なファンが他者に対して排除的な態度を示したり、新たに参加したメンバーに高圧的な接し方をしたりすることで、場が荒れたり新メンバーが参加しづらくなるケースも見受けられます。

ファン間の交流はできるだけ自由に風通し良くした方がいいものの、企業はファン間のコミュニケーションをファシリテートするなど「場づくり」にコミットすることが必要です。

「ヘビーユーザー≠ファン」の落とし穴

前述したとおり、購入頻度や購入回数が多い「ヘビーユーザー」は必ずしも「ファン」とは限りません。リピート購入しているけれども愛着のないヘビーユーザーも数多く存在します。

「よく行くお店に置いてあるから」「リーズナブルだから」「買うことが習慣になっているから」といった理由で、特に深く考えずにリピート購入している消費者はファンとはいえないでしょう。こうした顧客は、より条件の良い商品が現れればすぐに乗り換えてしまう可能性があります。

「ファン」とは、購入頻度や購入回数といったデータだけによって発見される人ではありません。「どのくらい商品・ブランドに愛着を持っているか」を測るデータによって初めて、ファンとして認められる存在となるのです。購買データだけでファンを判断し、施策を打っても期待した効果が得られない可能性があるため注意が必要です。

ファン化の段階別アプローチ戦略

ファン化の段階別アプローチ戦略のイメージ

ファンマーケティングを効果的に進めるには、顧客がどの段階にいるかを見極め、それぞれに適したアプローチを行うことが重要です。ここでは、認知から熱狂的ファンへと至る3つの段階別の戦略を解説します。

認知層→興味関心層へのアプローチ

まだ商品やブランドを知らない「認知層」に対しては、まず存在を知ってもらい、興味を持ってもらうことが第一ステップです。この段階では、Web広告やSNS広告、SEO対策などを活用して接点を増やしていきます。

ここで重要なのは、単に商品の機能やスペックを伝えるだけでなく、ブランドが大切にしている価値観やストーリーを伝えることです。たとえば、開発秘話や創業者の想い、社会課題への取り組みなど、共感を生むコンテンツを発信することで、商品への興味だけでなくブランドへの関心を高めることができます。

また、既存ファンのUGC(ユーザー生成コンテンツ)を活用するのも効果的です。実際の利用シーンや率直な感想は、企業の発信する情報よりも信頼性が高く、「自分も使ってみたい」という興味関心を引き出しやすくなります。SNSでのハッシュタグキャンペーンや投稿のシェアなどを通じて、ファンの声を広めていきましょう。

購入者→リピーターへの育成施策

一度購入してくれた顧客を、継続的に購入してくれるリピーターへと育てるには、購入後のフォローが欠かせません。この段階では、顧客との接点を維持し、商品やブランドへの理解を深めてもらうことが重要です。

具体的には、メールマガジンやLINE公式アカウントを通じた定期的な情報発信、商品の活用方法を紹介するコンテンツの提供、購入者限定のキャンペーンやクーポンの配布などが有効です。ただし、一方的な売り込みにならないよう注意しましょう。顧客にとって有益な情報や、楽しめるコンテンツを提供することで、ブランドへの好感度を高めていきます。

また、購入後のアンケートやレビュー依頼を通じて、顧客の声を収集することも大切です。フィードバックをもとに商品やサービスを改善し、それを顧客に伝えることで、「自分の意見が反映された」という満足感や愛着が生まれます。顧客との双方向コミュニケーションを意識しながら、関係性を深めていきましょう。

リピーター→熱狂的ファンへの深化

継続的に購入してくれるリピーターを、さらに熱狂的なファンへと育てるには、特別感や帰属意識を醸成することが重要です。この段階では、一般顧客とは異なる特別な体験を提供し、ブランドへの愛着をより一層深めてもらいます。

効果的な施策としては、ファンコミュニティへの招待、限定イベントやファンミーティングの開催、新商品の先行体験やモニター募集、共創プロジェクトへの参加機会の提供などが挙げられます。ファンに「自分は特別に扱われている」「このブランドの一員である」と感じてもらうことで、さらに強い絆を築くことができます。

また、ファン同士が交流できる場を設けることも効果的です。共通の「好き」を持つ人同士がつながることで、「分かち合える喜び」が生まれ、ブランドへの愛着がより強固なものになります。企業はこうした場づくりにコミットし、ファンが安心して交流できる環境を整えることが求められます。

ファンマーケティングの代表的な7つの手法

ファンマーケティングの代表的な手法のイメージ

ファンマーケティングを実践するための具体的な手法を7つ紹介します。

  • ファンコミュニティの構築と運営
  • SNSでの双方向コミュニケーション
  • ファンミーティング・イベントの開催
  • UGC(ユーザー生成コンテンツ)の活用
  • 共創プロジェクトでファンと商品開発
  • アンバサダー・インフルエンサー施策
  • 限定特典やロイヤリティプログラム

自社の状況や目的に合わせて、最適な手法を選択しましょう。

ファンコミュニティの構築と運営

ファンコミュニティとは、企業と顧客、そして顧客同士が交流できるオンライン・オフラインの場のことです。コミュニティ内では、商品やサービスに関する情報交換、使い方のアドバイス、体験談の共有などが行われます。

コミュニティを構築することで、ファンは「自分と同じようにこのブランドを愛している人がいる」と実感でき、帰属意識や愛着がより強固なものになります。また、企業にとってもファンの生の声を収集できる貴重な場となり、商品開発やマーケティング施策に活かすことができるのです。

コミュニティの運営で重要なのは、ファン同士の交流を促進しつつ、企業が適切にファシリテートすることです。放置すれば荒れてしまうこともあるため、コミュニティガイドラインを設定し、健全な交流が行われるよう見守る姿勢が求められます。

SNSでの双方向コミュニケーション

X(旧Twitter)、Instagram、Facebook、TikTokなどのSNSを活用し、ファンとの双方向コミュニケーションを図る手法です。企業からの一方的な情報発信ではなく、ファンの投稿に「いいね」やコメントで反応したり、ファンが投稿したコンテンツをリポストしたりすることで、距離感を縮めることができます。

SNSの強みは、リアルタイムでの交流が可能な点と、ファンの投稿が他のユーザーにも広がりやすい点です。ファンが自発的に投稿したUGCを企業アカウントで紹介することで、ファン本人は「認めてもらえた」と嬉しく感じ、さらに熱心なファンへと成長します。

また、その投稿を見た他のユーザーにも好印象を与え、新たなファン獲得につながる可能性があります。ただし、SNS運用では炎上リスクにも注意が必要です。発言内容や対応には細心の注意を払い、誠実なコミュニケーションを心がけましょう。

ファンミーティング・イベントの開催

ファンミーティングやイベントは、ファンと企業が直接顔を合わせて交流できる貴重な機会です。招待制や抽選制で開催されることが多く、参加できたファンに「自分は優遇されている」という特別感を与えることができます。

イベントの内容は、新商品の先行発表会、工場見学、開発秘話の共有、ファン同士の交流会など多岐にわたります。日頃から支えてくれているファンに対して直接感謝の気持ちを伝えられるだけでなく、ファン側も商品・サービスに対する意見や感想を企業側へ直接伝えることができるため、お互いに有意義な時間を過ごせるでしょう。

最近ではオンラインでのライブ配信イベントも増えており、遠方に住むファンも参加しやすくなっています。オフラインとオンラインを組み合わせることで、より多くのファンとの接点を持つことができます。

UGC(ユーザー生成コンテンツ)の活用

UGC(User Generated Content)とは、ユーザーが自発的に生成したコンテンツのことで、SNSへの投稿、レビューサイトへの口コミ、ブログ記事などが該当します。ファンが作成したUGCは、企業が作成したコンテンツよりも信頼性が高く、購買行動に大きな影響を与えます。

UGCを活用する方法としては、ハッシュタグキャンペーンでファンの投稿を募集し、優秀な投稿を公式サイトやSNSで紹介する、ファンの投稿をもとに四コマ漫画や動画などのコンテンツを制作して発信する、ECサイトの商品ページにレビューや写真を掲載するなどがあります。

ただし、UGCをそのまま市場に向けて発信しても、未購入者にはその面白さや楽しさが伝わりづらいことも多々あります。未購入者でも楽しめたり関心を示したりしてもらえるように、UGCをもとにコンテンツ化して発信することで、より多くの人に響くメッセージになります。

共創プロジェクトでファンと商品開発

ファンと一緒に新商品やサービスを開発する「共創」も、ファンマーケティングの有効な手法です。ファンは企業ですら気づかない商品の提供価値を見出していることがあり、そうした気づきを商品開発に活用できます。

共創の具体的な方法としては、新商品のアイデア募集、デザインやネーミングの投票、試作品のモニター体験とフィードバック収集、パッケージデザインのコンテスト開催などがあります。ファンにとっては、自分が携わった商品が世に出ることで大きな達成感を得られ、さらに商品・ブランドへの愛着が高まることになります。

共創プロジェクトを成功させるには、ファンの意見を真摯に受け止め、実際に反映させることが重要です。形だけの参加にならないよう、ファンの熱い想いを大切にしながら進めていきましょう。

アンバサダー・インフルエンサー施策

ブランドアンバサダーとは、商品やブランドを愛用し、積極的に応援してくれるファンのことです。企業が公式にアンバサダーとして認定し、SNSやブログなどで情報を発信してもらう代わりに、新製品の先行公開や新製品発表会への招待といった特典を提供します。

実際に製品を利用しているアンバサダーの情報は信頼性が高く、企業目線で発信する情報よりも高い訴求効果が期待できます。また、アンバサダー自身も「ブランドの代表として認められた」という誇りを持ち、より熱心に活動してくれるでしょう。

アンバサダー制度を導入する際は、応募を待つだけでなく、SNS上で自社の製品を身に着けているユーザーや製品のレビューを載せているユーザーを探し、「アンバサダーになってもらえないか」と積極的な声がけを行うことも効果的です。

限定特典やロイヤリティプログラム

継続的に購入してくれるファンに対して、限定特典やロイヤリティプログラムを提供する手法です。購入金額や頻度に応じてポイントが貯まる、会員ランクが上がると特典が増える、限定商品や先行販売の案内が届くなど、ファンに「特別扱いされている」と感じてもらえる仕組みを作ります。

こうしたプログラムは、リピート購入を促進するだけでなく、ファンの満足度を向上させ、LTVを高める効果があります。また、会員ランクやポイント数が可視化されることで、ファン自身が「もっと上を目指したい」とモチベーションを高めることにもつながります。

ただし、特典の内容がファンにとって魅力的でなければ意味がありません。ファンが本当に喜ぶ特典は何かを考え、定期的に見直しながら運用していくことが大切です。

ファンマーケティングの成功事例3選

ファンマーケティングの成功事例のイメージ

実際にファンマーケティングで成果を上げている企業の事例を3つ紹介します。それぞれの取り組みから、自社に活かせるヒントを見つけてください。

ヤッホーブルーイング|体験型イベントでファン拡大

「よなよなエール」をはじめとしたクラフトビールを製造・販売する株式会社ヤッホーブルーイングは、「よな友ピースプロジェクト」という施策を展開し、積極的にファンとの交流を図っています。

非日常空間でさまざまなビールを味わえる大規模ビールイベントや、大人向けの醸造所見学ツアー、参加型のオンラインセミナーなど、バラエティに富んだイベントの数々で顧客との関係性を深めることにより、熱狂的なファンを生み出すことに成功しました。公式サイトでは実際のイベントの様子が公開されており、写真からも現地の楽しそうな雰囲気が伝わってきます。

同社の成功のポイントは、ファンが「体験」を通じてブランドの世界観に浸れる機会を豊富に提供している点です。単に商品を売るのではなく、ビールを通じた楽しい時間や仲間との出会いを提供することで、ファンの心をつかんでいます。

▶参照:ヤッホーブルーイング コーポレートサイト

ワークマン|アンバサダー制度で情報拡散

作業服や安全靴など、高機能なプロ向けウェアやアウトドアウェアが人気の株式会社ワークマンは、自社製品の情報をファンに発信してもらうアンバサダー制度を導入しています。

ワークマンの製品を愛用し、積極的に応援してくれる顧客を「ワークマン公式アンバサダー」として認定し、SNSやブログなどで情報を発信してもらう代わりに、新製品の先行公開や新製品発表会への招待といった特典を提供しています。実際に製品を利用している彼らの情報は信頼性が高く、企業目線で発信する情報よりも高い訴求効果が期待できます。

また、同社ではアンバサダーへの応募をただ待つだけでなく、SNS上で自社の製品を身に着けているユーザーや製品のレビューを載せているユーザーを探し、「アンバサダーになってもらえないか」と積極的な声がけを行っています。公式サイトで紹介されているアンバサダーの人数の多さから、こうした地道な活動も重要であることがうかがえます。

▶参照:ワークマンプラス公式アンバサダーご紹介

スノーピーク|コミュニティで絆を深める

アウトドア総合メーカーとして広く知られる株式会社スノーピークは、Facebookで「Snow Peak コミュニティ」というファンコミュニティを開設し、顧客同士の交流を促しています。

「野遊びで楽しんでいる様子」という広いテーマが設定されており、グループに参加すれば自由に投稿できるため、キャンプで遊んでいる様子が投稿されていたり、アウトドアイベントの情報が共有されていたりと、発信されている情報は実にさまざまです。なかには商品のレビューもあり、ファン同士でその使用感について会話している場面も見受けられます。

同社ではファンとの交流を図るために、1998年から「Snow Peak Way」というキャンプイベントも開催しています。全国各地で催される大規模イベントとなっており、申し込みの多さから参加が抽選制になるほどの人気イベントになっているようです。コミュニティとイベントの両軸でファンとの絆を深めている点が、同社の成功のポイントといえるでしょう。

▶参照:Snow Peak コミュニティ|Facebook

ファンマーケティングを成功させる5つのポイント

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ファンマーケティングを実践し、成果を上げるために押さえておきたいポイントを5つ紹介します。

ファン層を的確に把握・分析する

ファンマーケティングを軌道に乗せるためには、現状のファン層を的確に把握し、彼らに対して適切なアプローチを行うことが重要です。むやみやたらに顧客との接触を図るだけでは、期待するほどの効果を見込めません。

まずは顧客分析を行い、「誰がファンなのか」を明確にしましょう。購入回数や購入金額といった定量データだけでなく、SNSでの投稿内容やコミュニティでの発言、アンケートでの回答など、定性的な情報も含めて総合的に判断することが大切です。

「どのくらい商品・ブランドに愛着を持っているか」を測るデータによって、真のファンを見極めることができます。ファン層が明確になったら、彼らの特徴やニーズを分析し、どのような施策が効果的かを検討していきましょう。

顧客との接点(タッチポイント)を増やす

顧客との信頼関係を深めるためには、まず彼らとの接点を増やす必要があります。インターネットが一般化した現代では、実際に顔を会わさずとも、SNSなどを活用してオンラインで気軽に交流することができます。

たとえば、SNSで自社に関する投稿に「いいね」や「コメント」などのリアクションをしてみたり、定期的にライブ配信を行って視聴者とコミュニケーションをとってみたりすることが有効です。

1つの手段にこだわらず、Webサイト、SNS、メールマガジン、LINE公式アカウントなど、複数のプラットフォームを用いながら顧客との接点(タッチポイント)を増やしていきましょう。接点が増えるほど、顧客は企業やブランドを身近に感じるようになり、愛着が深まっていきます。

ユーザー同士の交流の場をつくる

ファンマーケティングを成功させるには、ファン同士がお互いに交流し、対話できる場をつくることが必要です。企業と顧客の1対1の関係だけでなく、ファン同士が「好き」を共有し合うことで、「分かち合える喜び」が生まれ、商品・ブランドへの愛着がより強固なものになります。

具体的には、ファンコミュニティの開設、SNSでのハッシュタグキャンペーン、オフラインイベントの開催などが挙げられます。ファン同士が「自分と同じようにこのブランドを愛している人がいる」と実感できる場を提供することで、帰属意識が高まり、熱狂的なファンへと成長していきます。

ただし、ファン間の交流を野放しにしてはいけません。時に思わぬネガティブな方向にいってしまうこともあるため、企業が適切にファシリテートし、健全な交流が行われるよう見守る姿勢が求められます。

定期的なイベント・キャンペーンを実施

顧客とのつながりを強めるためには、彼らを飽きさせないような工夫も欠かせません。顧客を「ファン化」させることに成功したとしても、アピールを怠ってしまえばすぐに離れていってしまう可能性があるため、企業側は彼らの心をつなぎとめるような戦略を講じる必要があります。

そのための有効な手段のひとつが、イベントやキャンペーンの開催です。顧客にとってメリットのあるイベントやキャンペーンを定期的に開催することで、顧客の印象に残りやすくなります。熱心な顧客は積極的に情報を発信する傾向が強いため、魅力的な企画を考案することができれば、ファン経由での情報の拡散も狙えます。

イベントやキャンペーンを通じて、ファンに「このブランドはいつも楽しいことを提供してくれる」と感じてもらえるよう、継続的な取り組みを心がけましょう。

企業が場づくりにコミットする姿勢

ファンマーケティングにおいて、企業はただ見守るだけでなく、積極的に「場づくり」にコミットする姿勢が求められます。ファンが交流する場は単なる寄り合いの場ではなく、企業としての目的に沿ってつくられる場であるべきです。

具体的には、コミュニティガイドラインの設定、荒れた場合の適切な対応、新メンバーが参加しやすい雰囲気づくり、ファン間のコミュニケーションのファシリテート、企業からの情報発信やファンへの質問などが挙げられます。ファン間の交流はできるだけ自由に風通し良くした方がいいものの、企業が適度に介入し、健全で活発な交流が行われるよう導くことが大切です。

また、ファンの声に真摯に耳を傾け、フィードバックを商品開発やサービス改善に活かす姿勢も重要です。「自分たちの意見が反映された」と感じることで、ファンはさらに愛着を深め、企業を応援し続けてくれるようになります。

まとめ|ファンマーケティングで安定成長を実現

ファンマーケティングで安定成長を実現するイメージ

ファンマーケティングは、商品やブランドに愛着を持つファンを育成し、中長期的な売上の維持・拡大を図るマーケティング手法です。新規顧客の獲得が難しくなり、SNSでの口コミが購買行動を左右する現代において、ファンの存在は企業にとって欠かせないものとなっています。

安定的な収益基盤の構築、広告費の削減、消費者のリアルな声の収集など、多くのメリットがある一方で、ファン育成には時間と労力がかかること、炎上リスクへの対応が必要なこと、ヘビーユーザーとファンを混同してはいけないことなど、注意すべき点も存在します。ファンコミュニティの構築、SNSでの双方向コミュニケーション、UGCの活用など、さまざまな手法を組み合わせながら実践していきましょう。

ヤッホーブルーイング、ワークマン、スノーピークなど、多くの企業がファンマーケティングで成果を上げています。自社の状況や目的に合わせて最適な手法を選び、ファンとの絆を深めることで、安定成長を実現していきましょう。

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この記事を書いた人

ながた
編集プロダクションで旅行ガイドブックの取材・制作に携わった後、Webライターの道へ。お酒と激辛料理をこよなく愛するインドア派。シーズン中はもっぱら野球観戦。

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