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グリーンウォッシュとは

グリーンウォッシュ・SDGsウォッシュとは?日本での事例・回避の取り組み

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現在、SDGs(持続可能な開発目標)が世界的に共有されるスローガンとなり、消費者の環境に対する意識も高まりつつあります。こうした動向のなか、企業においても「環境への取り組み」は喫緊の課題だといえるでしょう。

一方で、実体の伴わない「環境マーケティング」は、「グリーンウォッシュ」として社会的な批判を受ける場面も少なくありません。SDGsについても同様に、内実のない取り組みのアピールが「SDGsウォッシュ」との指摘を受けるケースが増えています。

この記事では、グリーンウォッシュおよびSDGsウォッシュの概要や事例をふまえ、企業がこうした状況に陥らないための注意点についても解説していきます。

グリーンウォッシュとは

グリーンウォッシュとは

グリーンウォッシュ(greenwashまたはgreenwashing)とは、企業が自社の方針や商品の品質などについて、「環境に配慮しているかのように見せかける」ことを指しています。

たとえば、具体的な取り組みを明示せずに「エコ」や「地球にやさしい」といった言葉を表面的にアピールすることがその典型です。あるいは、環境に好ましくない影響を与える商品のパッケージに豊かな自然のイメージを採用する、といった例も挙げられるでしょう。

言葉の成り立ちとしては、自然をイメージさせる「グリーン」と、白い塗料によって表面だけを美しく見せかける「ホワイトウォッシュ(whitewash)」を組み合わせたものであり、「うわべだけをエコらしく取り繕う」といったニュアンスを含みます。

もともとこの言葉は、1986年にアメリカ合衆国において環境活動家のジェイ・ヴェステルフェルト(Jay Westerveld)氏が使いはじめたとされています。当時から「環境への取り組み」というクリーンなイメージを表面的に利用して、自社の利益を引き出そうとする行為を指しており、社会的な環境意識の高まりとともに問題視されていくようになりました。

とくに近年では、「エシカル消費」や「ESG投資」など、環境配慮型の消費活動・投資活動が注目されています。こうした社会動向のなかで、企業が「実情と乖離した環境マーケティング」に走ることは、社会全体への詐称として重く受け止められるようになっているのです。

グリーンウォッシュを取り巻く国内外の動向

世界的に共有されるグリーンウォッシュの問題ですが、日本国内においては、グリーンウォッシュを公的に規制する動きは今のところ見られません(2022年9月現在)。

一方海外においては、欧州諸国を中心にグリーンウォッシュに反対する運動や、政府による規制も進んでいます。たとえばイギリスでは、2021年9月に競争・市場庁(CMA)が「グリーン・クレーム・コード」と呼ばれるガイドラインを策定し、企業が環境への取り組みを示す際のチェックポイントを明示しました。

(参照:CMA Competition and Markets Authority “Green Claims Code – Check your environmental claims are genuine ”)

さらにフランスでは、グリーンウォッシュに該当する広告を出稿した企業に対して罰金を科すほか、自身が受けた制裁措置について、コーポレートサイト上で告知する義務を課すなど、厳しい処分を定めています。

欧州諸国のほかにも、カナダや中国、シンガポールなど、グリーンウォッシュに対する政府の規制は世界各地で進められています。後述するように、日本の企業が国際的な環境団体から異議を申し立てられるケースも見られ、今後は国内でもグリーンウォッシュ回避の対策が必須になると考えられるでしょう。

(参照:Gowling WLG “The regulation of greenwashing”

「SDGsウォッシュ」も近年批判対象に

環境への配慮を取り繕うグリーンウォッシュに加え、近年では「SDGsへの取り組み」を実情に即さず喧伝する「SDGsウォッシュ」も問題視されはじめています。

SDGsの問題圏には環境問題も含まれるため、グリーンウォッシュと意味が重なる部分もありますが、SDGsの場合にはそれ以外にも「人権問題」や「労働問題」といった幅広い領域が含まれています。たとえば「ジェンダー平等」を掲げながら、実際の職場では昇進や給与面で性別間格差が生じているケースなどが挙げられるでしょう。

SDGsへの取り組みはもはや社会的責務と見なされており、企業は商品・サービスの供給において、エネルギーや資源の問題に対処しながら、適正な労働環境の整備や地域社会への貢献を進めるなど、多角的な活動が求められます。同時に、多くの企業活動が社会の目に触れるようになるとともに、さまざまな観点から「企業による見せかけ」が問題視されていくと考えられます。

グリーンウォッシュに該当する要素と回避対策のポイント

グリーンウォッシュ

具体的に「どのような行為がグリーンウォッシュにあたるのか」については、さまざまな見解が提示されています。そのうち、現在一般的に通用している観点としては、カナダの環境コンサルタント機関であるTerraChoiceが示した「Sins of Greenwashing(グリーンウォッシュの大罪)」が網羅的に要素を提示しており、各国のメディアでも多く参照されています。

以下では「Sins of Greenwashing」の観点にのっとり、グリーンウォッシュに該当する要素を解説しつつ、広告などにおいて注意すべきポイントについて提示していきます。

(以下参照:UL Solutions “Sins of Greenwashing”

トレードオフの隠蔽

トレードオフの隠蔽(Sin of the hidden trade-off)は、端的にいえば「マイナスの要素を隠すこと」です。主に「自然と親和性が高い」と見なされているジャンルの商品において、実際に製造・流通といったプロセスのなかで生じる環境破壊的な要素を表に出すことなく、それ自体で環境配慮的な商品であると誤認させることを指します。

TerraChoiceの例では「紙」が挙げられており、森林伐採や塩素漂白といった環境問題に触れず、それが自然由来のものであることのみを訴求する手法が提示されています。

社会的に環境意識が高まるなかで、商品が「どのようにして消費者のもとに届くか」という側面は以前にも増して重要視されるようになりました。生産、製造、流通といったプロセスを透明化する姿勢が、今後のマーケティングには必須になると考えられるでしょう。

証拠なしの宣伝

証拠なしの宣伝(Sin of no proof)は、客観的な調査やレポートによって示されているわけではない情報について、事実として消費者に伝えてしまうことを指します。

たとえば「90%リサイクル素材を使用」など、たとえ具体的な数字であったとしても、それが客観的に妥当な方法や機関によって確証されたものでない限り、事実として謳うことは望ましくありません。

環境問題に関わらず、広告表現においては「満足度98%」など、数値によるアピールはしばしば用いられます。こうしたデータを扱う際には、それがいつ、どのように算出されたものかを明示することが求められるのです。

曖昧な宣伝

曖昧な宣伝(Sin of vagueness)は、具体的な取り組みや品質について明示しないまま、「地球にやさしい」「ナチュラル」といった耳馴染みのよい言葉を用いて環境への配慮を示唆する行為です。

あるいは、環境への配慮とは関係のない商品であるにもかかわらず、清流や森林の画像をパッケージや広告に用いるなど、消費者の認知において「エコ」のイメージを刷り込ませる手法もこれにあたるでしょう。

具体性を欠く表現は、グリーンウォッシュの問題圏以外にも、消費者に誇大なイメージを抱かせる可能性があるため、言葉遣いやイメージの使用には注意を払う必要があります。印象的なフレーズで消費者に訴求する際には、その言葉が具体的に「何のどんな点を示しているか」をはっきり示せるように留意したいところです。

誤ったラベリングによる権威づけ

誤ったラベリングによる権威づけ(Sin of worshiping false labels)は、商品のラベリングにおいて、第三者機関などによる認証があるかのように表示する行為です。

たとえば、デザインに凝った「carbon-neutral」などのオリジナルロゴを作成し、それを商品パッケージに表示することで、あたかも権威ある機関の認証を受けたかのように取り繕う手法がこれにあたります。

上質なクリエイティブによる商品の「権威づけ」は、マーケティングにおいて重要ではあるものの、それが「第三者からの客観的評価」を示すものと誤認されないよう注意する必要があるでしょう。

見当違いのアピール

見当違いのアピール(Sin of irrelevance)は、環境に配慮した商品を求める消費者にとって、「真実ではあるが役に立たない情報」を提示することを指します。

たとえば、そもそも法律で禁じられている成分について、あえて「不使用」と表示するなど、当然の事実によって環境問題に取り組んでいるかのように見せかける行為が挙げられるでしょう。

商品を訴求するうえでは、提示する情報を取捨選択し、「環境に配慮する消費者がどのようなポイントを知りたいか」を吟味することが求められます。

より大きな悪との対比

より大きな悪との対比(Sin of lesser of two evils)は、自社の商品などの優位性を示すために、比較対象として「環境によくないもの」を持ち出す手法です。

たとえば自社の新製品をアピールする際に、それ以前に生産していた「環境的に望ましくない製品」と比較するといった行為もこれにあたると考えられます。

「他との比較」は消費者にとってわかりやすく、好印象を与えるうえでの常道とされています。しかし訴求効果が大きいだけに、比較表現を用いる際には誤解を避けるため十分な配慮が必要です。比較対象や条件面を適切に整えるなど、客観的に妥当な方法で差別化ポイントを打ち出していかなければいけません。

誤った情報

誤った情報(Sin of fibbing)は、表示する情報が単純に誤っており、「嘘」になってしまっているケースを指します。

自社の媒体に表示する情報にはしっかりと責任をもち、データの改ざんなど意図的な誤謬はもちろん、事実誤認や表記ミスといった過ちがないようチェック体制を整えておくことが大切です。

日本企業によるグリーンウォッシュの事例

荒野

現状のところ、日本国内ではグリーンウォッシュを規制する政府の動きは見られません。一方で、国際的に事業を展開する日本企業に対して、さまざまな機関から「グリーンウォッシュ」の批判が寄せられるケースも起きています。

グリーンウォッシュは世界的な問題となりつつあり、今後は国内においても批判の目が厳しくなっていくと考えられるでしょう。事業規模や業態・業種を問わず、掲げる方針と実情とが乖離しないよう、具体的な内実を伴ったかたちでマーケティングを展開していくことが重要です。

メガバンクに対するNGOの批判

金融関連の企業は、投融資を通じてその他の企業の経営地盤を提供します。それゆえに、投資先が環境に好ましくない事業を行っている場合、「環境責任を果たしていない」との批判を受けるケースも珍しくありません。

2019年には、環境関連のNGO21団体が日本の大手4銀行に対して抗議する声明を発表しました。ここでは、当該銀行がSDGsを推進する姿勢を示しながら、化石燃料企業などに対して多額の資金提供を行っていることが指摘され、この状況が国連環境計画・金融イニシアティブの推進する責任銀行原則(PBR)に反するとの批判がなされています。

(参照:ZDNet Japan「NGO共同声明:グリーンウォッシュはもういらない、好結果がともなう原則を〜国連「責任銀行原則」発足をうけて〜 (2019/9/23)」

こうした動向を受け、みずほフィナンシャルグループは2020年に「環境・社会に配慮した投融資の取り組み方針」を発表。環境に対して重大な影響を与える事業に対して、「セクター横断的」に投融資を禁止する方針を示しています。

(参照:みずほFG「責任ある投融資」

さらに、三菱東京UFJフィナンシャル・グループは、石炭火力発電所向けコーポレートファイナンスの残高を2040年度にゼロにする目標を設定しました。

(参照:Bloomberg「MUFG、石炭火力向け企業貸出金残高を40年度にゼロへ」

政府による罰則がなくとも、論拠の明確な批判に対しては、しかるべき行動によって応答することが、現代の企業に求められる責任だと考えられます。

自動車メーカーに対する環境団体の批判

自動車メーカーは商品そのものがCO2を排出することから、環境に対する責任を強く問われる立場にあります。

たとえば2008年には、ベルギーにおいてハイブリッド車「プリウス」のCM中に使用されていた「Zero emissions low(排出量ゼロの低さ)」という文言が、グリーンウォッシュにあたるとして批判を受け、トヨタ自動車は同CMを取り下げました。

この事例では、CO2排出量や燃料消費量についての具体的なデータを記載せず、上記のような文言を使用したことが問題視され、EUのラベリング規定に対する違反として、環境団体が広告倫理審査機関に異議申し立てを行っています。

(参照:Friends of the Earth Europe  “Toyota zero emissions ad ruled misleading”

なお、プリウスは2008年モデルの車種として、米国環境保護庁(EPA)の基準で最高の燃料効率を誇っていました。しかしそのような製品であっても、具体的なデータを示さず環境性能を訴求することは問題視される可能性があるのです。

(参照:U.S. Environmental Protection Agency  “10/12/2007: EPA-DOE Release Fuel Economy Lists for 2008 Models”

これ以外にも、トヨタ自動車はその世界的なシェアの大きさもあり、しばしば環境問題に対する責任を追及されてきました。現在でも同社は「EVへの移行を遅らせるためのロビー活動を行っている」といった批判を環境活動家などから浴びている状況です。

(参照:Reuters “Toyota heads into AGM under pressure from pension funds over climate”

一方で、同社は国によって異なる電力供給問題や雇用問題などをふまえつつ、EV以外にも水素自動車やプラグインハイブリッド車といった選択肢を用意することが重要との見解を示しています。環境対策を疎かにするのではなく、普及段階にあるEVを全面的に推進するリスクをふまえ、全方位的に技術開発を進める方針を、環境への取り組みとして明示しています。

加えて、「EV化が遅れている」という批判に対しては、2021年12月の会見で発売予定のEV車16台を一挙に公開し、EVシフトにも積極的な姿勢を示しました。

(参照:トヨタイムズ「【詳報】トヨタBEV戦略 記者の質問に答えた1時間」

次世代の動力として何が望ましいのか、現段階での判断は困難ですが、自社の取り組みが社会的風潮と一致しないときにも、丁寧に説明責任を果たしていく姿勢が見受けられる事例です。

アパレル企業に対する「SDGsウォッシュ」の批判

アパレル関連の企業は、使用する素材やリサイクル活動などの面で、社会的に大きな環境責任をもつと見なされます。企業としての方針や、商品の宣伝内容と実情が乖離していれば、厳しい批判を受けることになるでしょう。

さらに近年では、「SDGsウォッシュ」に該当する事例として、中国・新疆(しんきょう)ウイグル自治区における強制労働問題が世界的に耳目を集め、関係したブランドへの不買運動やデモが起きている地域もあります。ナイキやアディダス、H&Mといった企業のほか、日本のアパレル企業では「ユニクロ」で知られるファーストリテイリングが、その強制労働に関与する企業との取引があったとの疑いを向けられました。

これを受け、同社を含む日本の小売り・製造業12社は、強制労働への関与が確認された企業との取引を停止する方針を発表しました。

(参照:Bloomberg「日本の12社、ウイグル弾圧企業との取引停止へ」

一方で、ファーストリテイリングは自社商品について人権侵害につながる取引は確認していないとの見解を提示しています。

(参照:NHKニュース「ファーストリテイリング“人権侵害につながる取引なし”」

生産や流通プロセスがグローバル化する現在、サプライチェーンの透明化は今後ますます重要になっていくでしょう。上に挙げた事例からは、自社から目の届く範囲はもちろん、ステークホルダーとの関係性も多角的に視野に入れながら、自社の方針と齟齬が生じないように舵を取ることの重要性が伺えます。

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この記事を書いた人

鹿嶋 祥馬
大学で経済学と哲学を専攻し、高校の公民科講師を経てWEB業界へ。CMSのライティングを300件ほど手掛けたのち、第一子が生まれる直前にフリーへ転身。赤子を背負いながらのライティングに挑む。

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