
O2O・オムニチャネル・OMOとは?アフターデジタル時代のマーケティング
業種を問わず、ビジネスの形は常に変化し続けています。マーケティングにおいては、かねてより広く浸透している「O2O」という概念に加え、「オムニチャネル」、そして「OMO」が広まり、それぞれの企業や店舗に合った集客方法をより幅広く模索できるようになりました。
日本に限らず世界中で販売方法やマーケティング方法が見直されており、すべてが常時オンライン化するアフターデジタル時代において、より販路の垣根はなくなっていくと想像できます。
目次
O2O・オムニチャネル・OMOの意味

これだけインターネットが普及し、今や個人もECサイトを運営できる時代に、webを活用しない手はないでしょう。集客にも、販売にも、あるいはユーザー管理にも欠かせないそれと実店舗をどう結びつけるか、それがこの3つの概念の肝になります。
O2Oとは
2013年ごろからあらゆる企業において取り入れられてきた「O2O」は「Online to Offline」を略した言葉で、ネット上から実店舗などオフラインに誘致させる動きを指します。
たとえば、実店舗で利用できるクーポンをネット上で発行して配ったり、スマホのGPS機能を利用して付近の店舗のセール情報をアプリのプッシュ通知で告知したり、あるいはオンラインショップ内に店舗リストを掲載して、より実店舗に訪問しやすくしたりすることもO2Oの概念に則った集客・販売促進方法です。
O2Oにおいて、ネットはオフラインに誘導するためのツールとして存在しており、その考え方はオフライン傘下にオンラインが存在することで成り立ちます。企業目線では、そうすることで管理しやすくなり便利になる面もあるのですが、顧客目線ではwebサイトと実店舗を併用する際に不便が目立つこともあります。
実店舗でのみ利用できるクーポンをネット上で配布した場合、同じ商品がオンラインショップにも販売されているのにクーポンが利用できないため、お住まいの近くに実店舗がないユーザーにとっては損をしたと思われかねません。
あるいは、セールなどのキャンペーンをオンラインとオフライン、同一の期間・同一の内容で行っていない場合や、商品在庫の管理を一元で行っていない場合なども同様です。
そのため、オンラインショップと実店舗の両方を運営している企業というよりも、実店舗に力を入れている企業のほうに適したマーケティング手法といえるかもしれません。
たとえばSNS上で告知をして実店舗に呼び込むといったキャンペーンを実施することで、スムーズに来店の導線を築けるのではないでしょうか。
O2Oによる成功事例は別記事にて紹介しています。
オムニチャネルとは
オムニチャネル(Omnichannel)とは、あらゆる販売網から顧客体験を増やそうとする戦略のこと。「Omni」は「あらゆる」「すべての」、「Channel」は「販路」といった意味を持ち、そのため顧客との接点は実店舗やwebサイトだけでなく、アプリやSNS、コールセンターなどあらゆる場面に及びます。
なお顧客体験は、ある商品やサービスと接点を持った際に、ユーザーがそれをきっかけに起こした次の行動や感情など、あらゆる体験のこと。
たとえば、QRコードを掲載したPOPを店舗内に設置し、それを自社アプリで読み取ってもらうことで、アパレル商品であればそれを用いたコーディネート例が一覧表示されたり、食材などであればレシピや調理法が動画で見られたりするなど。
これによって、コーディネートに使われた別のアイテムや、調理に必要なキッチン器具など、ほかの商品への興味につなげることができます。
オンライン、オフライン問わず、あらゆる顧客との接点において、顧客体験を高めるために注力することがオムニチャネルなのですが、本屋の中に併設されたカフェのような、業種における融合もその一環といえるでしょう。
基本的にデータはすべて一元管理することになるため、実店舗もオンラインショップも併用しやすくなると考えられます。そのため、従来よりも販売機会を逸することも減るのではないでしょうか。
OMOとは
OMOは「Online Merges with Offline」の頭文字を取った言葉で、「オンラインとオフラインを併合する」といった意味をもちます。Google Chinaの元CEOであり、また、ベンチャーキャピタルであるシノベーション・ベンチャーズの創業者、李開復(リ カイフ)が提唱したことで広まったそうです。
オンラインとオフラインを併合し、ユーザーによりよい顧客体験を得てもらえるように努める……、簡単にまとめてしまえば、「オンラインショップ及びネット上のサービスとそれ以外(オフライン)の垣根を超えたマーケティング概念」といったところでしょうか。
具体例としては、オンラインショップ上で注文し、決済まで済ませ、実店舗でその商品を受け取る、など。コロナ禍において非接触サービスが注目されるようになったこともあり、加速度的にこういった仕組みを取り入れる企業が増えたように感じます。
とはいえ、オムニチャネルにおいてもオンライン、オフラインの垣根を超えているように考えられます。その2つの違いはどこにあるんでしょうか。
OMOとO2O・オムニチャネルの違い
OMOは上記のようなO2Oやオムニチャネルという概念を発展させ、よりよい顧客体験を与えられるように、今の時代に沿ったビジネスモデルを実現させるための考え方。
O2Oのようにオンラインからオフラインへ一方通行させるのではなく、その垣根にはこだわらず、顧客目線でなにかしらの商品やサービスに触れて得られる体験を重視して考えるのがOMOです。
あらゆる流通チャネルから顧客体験を増やすという部分ではオムニチャネルと同じように感じられますが、オムニチャネルではオンラインとオフラインを区別した上で、どこで購入しても同じ利益が得られることを念頭に置いており、一方でOMOではそもそもオンラインとオフラインが融合しているアフターデジタル時代を前提に、よりよい顧客体験を提供することを目指しています。
また、その2つの概念は視点も異なります。O2Oやオムニチャネルは、企業視点でオンラインとオフラインの連携方法を模索し、特にオムニチャネルにおいては、それによって顧客満足度を向上させることを目的とする一方で、OMOは顧客視点でオンラインとオフラインを融合することで、いかに上質な体験をしてもらうかを模索する戦略といえるでしょう。
日本におけるDX(デジタルトランスフォーメーション)とは、デジタル技術の進化によって人々の生活をよりよいものに変革させることを指しますが、OMOはその具体的な戦略のひとつといえるかもしれません。
OMOが広まるとどうなるか

オムニチャネルの考えを遂行すると、あらゆるチャネルはあくまでも独立を保ったまま連携するというイメージでしたが、OMOが浸透すると、それぞれが融合する可能性が出てくるため、新たな顧客体験を生み出すことも可能かもしれません。
まず、O2Oが広まったことで、webサイトから実店舗への送客が積極的に行われたのはもちろん、SNSマーケティングも盛んになりました。店舗側がSNSに発信した商品を顧客が実店舗に見に行くという流れです。また、顧客がSNSで発信した情報をもとに、別の顧客が実店舗に行くということもあるでしょう。
さらに、実店舗にフォトブースなどを構え、任意のハッシュタグをつけて撮影・投稿するとオンラインショップでもなにかしら特典が得られるという施策を行えば、よりオンライン×オフラインの連携は強固になります。
オムニチャネルが広まると、オンラインとオフラインの在庫管理が一元化されるようになり、どちらで購入しても同等のポイントが貯まるという、今では当たり前のシステムが構築されるようになりました。
そしてOMOが注目されている現在、サイネージを使った販売方法がより広まる可能性があります。たとえばその前に立つと顔がスキャンされて気になっていた商品をバーチャル試着できたり、サイネージ上に表示される簡単なアンケートに答えると好みに合った商品をレコメンドされたりするなど。
店舗が混雑しているときも興味のある商品に触れる機会が得られるという、まさしく顧客体験を重視した施策です。アンケートに答えるとQRコードでクーポンが受け取れるようにするなど、サイネージを利用するメリットをわかりやすく明示すると、より購入意欲につなげやすくなるでしょう。
今後のマーケティング活動の展開

顧客体験と購買体験を区別せずに考える「x Commerce(クロスコマース)」という考え方があります。具体的には、Instagramのショッピング機能(Shop Now)によって「何気なく見ていた投稿に写っていた商品が気になってそのまま購入する」こと、「東京ガールズコレクションなどでファッションショーを体験しながら『かわいい』と思った商品をその場で購入できる」システムなど、特に2016年ごろにファッション業界で広く導入された「See Now Buy Now」というものはすべてクロスコマースの一環と捉えてよいでしょう。
2021年にメインストリームに躍り出たNFTアートも、二次流通を前提としているという点において販売者と保有者のメリットが合致し、それによってコミュニティが活性化しやすいという側面が見られるので、体験と購買がともにある状態といえ、一種のクロスコマースと捉えることもできるかもしれません(※厳密にはNFTはコマースの概念に当てはまらないとされています)。
キャッシュレス決済も広まり、スマホ一台で完結できることが圧倒的に増えてまいりました。5Gが完全に一般化すればなおさら、OMOやクロスコマースを浸透させるにはこれ以上ない適切な環境になるといえ、これらの普及はより拡大していくことが見込まれます。
ただ、その分、企業が扱う個人情報の幅も広がるため、セキュリティーの信頼性と安全性が今以上に重要視されるようになることも間違いありません。販路拡大と顧客確保のために安易に新しいシステムやツールを取り入れるのではなく、きちんとそういった面を確かめてから導入するようにしましょう。
とはいえ、もちろんスピード性も重視する必要があります。既に冒頭で述べたような「常時オンラインとつながっている」アフターデジタル時代はやってきています。加えて、もはやオンラインとオフラインの境界線はあやふやになり、双方が融合しつつあります。
今まではオフラインを基盤としていた企業も、オンラインの活用によって新たなビジネスチャンスを得る可能性があるということです。今や情報収集・管理にインターネットは欠かせない時代。オンライン、オフライン分け隔てなく、今顧客に求められているモノやコトはなんなのか、模索し続けることこそが成功への道となるのではないでしょうか。
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