One to Oneマーケティングとは?代表的な5つの手法と企業の成功事例
消費者自身が情報を取捨選択できる現代において、従来のように不特定対数をターゲットとしたマーケティング手法だけでは、思うような成果を上げられません。多様化する消費者ニーズに応えるためには、顧客1人ひとりに対して個別に適切なアプローチを仕掛ける必要があります。
そこで今回は、個人を対象としたマーケティング手法「One to Oneマーケティング(ワントゥワンマーケティング)」について徹底解説。具体的にどのような手法があり、導入することでどのようなメリットがあるのか、企業の成功事例も交えながら詳しく見ていきましょう。
目次
One to Oneマーケティング(ワントゥワンマーケティング)とは
One to Oneマーケティングとは、顧客の属性や購買履歴・行動履歴などに応じて、個別に最適なアプローチを行うマーケティング手法です。
これまでは、不特定多数の消費者に向けて同一の情報を発信する「マスマーケティング」が主流でしたが、インターネットの普及により人々を取り巻く情報環境が一変。だれでも手軽に情報を入手・発信できるようになったことにより、消費者のニーズが多様化・細分化し、画一的なアプローチでは成果を出すことが難しくなってきました。
このような状況下において、重要性を増しているのが、個々人の趣味嗜好に合わせて情報を提供できる「One to Oneマーケティング(ワントゥワンマーケティング)」です。消費者に関するさまざまなデータを収集・分析したうえで、ニーズの異なるユーザーそれぞれに対して適切な施策を実行することにより、高いマーケティング効果が期待できます。
One to Oneマーケティングを導入する2大メリット
それでは、One to Oneマーケティングを導入することにより、どのようなメリットが得られるのでしょうか。
主なメリットとして、次の2つが挙げられます。
・コストパフォーマンスが高い ・顧客との信頼関係を構築できる |
それぞれ見ていきましょう。
コストパフォーマンスが高い
One to Oneマーケティングは個々に対して最適なタイミングで適切なアプローチができるため、少ない広告費用で効率的にコンバージョンを獲得できる可能性が高いです。マス広告の場合は、製品・サービスの認知度を一気に高められる一方で、広告費用も高額になりやすい傾向にあるため、コストパフォーマンスの面だけで比較するとOne to Oneマーケティングの方が優れていると言えるかもしれません。
また、これに加え、One to OneマーケティングはITツールを活用することにより業務の一部を自動化・効率化できるため、マーケティングにかける人件費や工数の削減も期待できます。
顧客との信頼関係を構築できる
企業側から一方的に発信する広告は、受け取る側のニーズによって「有益な情報」にも「不要な情報」にもなり得ます。
ただ、不要な広告や情報はユーザーにストレスや不快感を与えてしまう恐れがあるため、なるべく減らしたいところ。
そこで、取り入れたいのが、One to Oneマーケティングです。One to Oneマーケティングであれば、ユーザーの必要としている情報のみを提供できるため、相手に不快感を与えることがありません。有益な情報を提供することにより、企業に対する信頼感や愛着心も育めるため、顧客と良好な関係を構築できるでしょう。
One to Oneマーケティングの代表的な5つの手法
One to Oneマーケティングでよく用いられる手法としては、主に次の5つが挙げられます。
①レコメンデーション ②リターゲティング広告 ③DM(ダイレクトメール) ④マーケティングオートメーション(MAツール) ⑤LPO(ランディングページ最適化) |
詳しく見ていきましょう。
①レコメンデーション
レコメンデーションとは、過去の購買履歴や閲覧履歴などの顧客データをもとに、対象者にとって有益だと思われるコンテンツ(商品や情報)を提示する手法です。
分かりやすい例を挙げると、ECサイトなどでよく見かける「あなたにおすすめの商品」や「この商品を買った人はこんな商品も購入しています」といった表示がこれに該当します。
顧客の興味関心に沿ったコンテンツをピンポイントで表示することができるため、購買率や顧客単価の向上が見込めるでしょう。
なお、レコメンデーションには、主に以下3種類の方法があります。
・ルールベースレコメンド ・コンテンツベースフィルタリング ・協調フィルタリング |
それぞれの特徴を簡単に確認しておきましょう。
ルールベースレコメンド
ルールベースレコメンドとは、特定のルールに従って商品を推奨する方法です。
たとえば、商品Aを購入したユーザーに対して商品Bを推奨する、キャンペーン広告から流入したユーザーに対して対象商品を提示するなど、事前に企業側で設定したルールに沿ってレコメンドを行います。
コンテンツベースフィルタリング
コンテンツベースフィルタリングとは、あらかじめ複数の商品をグルーピングしたうえで、ユーザーが選択した商品と類似性の高いものを推奨する方法です。
たとえば、ブランドAの靴を購入したユーザーに対して同じブランドが手がける別の商品を提案したり、白いスニーカーを閲覧しているユーザーに対して類似の白いスニーカーを提示したり。顧客が興味を示している商品と似たアイテムを推奨することができます。
協調フィルタリング
協調フィルタリングとは、ユーザーの閲覧履歴や購買履歴をもとに商品を推奨する方法です。
「アイテムベース」と「ユーザーベース」と呼ばれる2種類の手法があり、まず「アイテムベース」とは、ユーザーの行動履歴から商品同士の類似度を算出し、同時に購入される確率の高い商品をレコメンドする方法を指します。たとえば、スマホケースを選択したユーザーに対して、スマホケースと一緒に購入されることの多い保護フィルムの購入を提案するなど。同じ商品を購入・評価したユーザーが好んでいるアイテムを推奨します。
一方、「ユーザーベース」とは、ユーザーの行動履歴からユーザー同士の類似度を算出し、対象者と行動パターンの似ているほかのユーザーが購入している商品をレコメンドする方法を指します。たとえば、行動履歴のよく似ているユーザーAとユーザーBがいた場合、一方が過去に購入した商品をもう一方のユーザーに紹介するなど。
いずれも趣味嗜好の似ているユーザーは購買傾向も似るという前提のもとに組み立てられた仕組みとなります。
②リターゲティング広告
「特定のサイトを閲覧した後に、そのサイトの広告をよく見かけるようになった」という経験を持つ方も多いのではないでしょうか。まさにそれが「リターゲティング広告」です。
詳しく説明すると、Cookie(クッキー)を利用して自社サイトに訪れたユーザーを追跡し、そのユーザーが他社サイトやSNSを閲覧しているときに自社の広告を配信することを指します。「リマーケティング」とも呼ばれており、主に自社サイトへの再訪問を促す目的で活用されています。
Cookie (クッキー)とは Webサイトを訪れたユーザー1人ひとりに割り当てられるIDのこと。ユーザーの識別を目的としており、これを有効にすることでユーザー属性や閲覧・検索履歴、訪問回数などの情報が一時的に保存されます。たとえば、ECサイトで商品を購入する際、2度目の購入時に入力フォームを省略できるケースがありますよね。これは、cookieによってユーザー情報が残っているためです。 |
③DM(ダイレクトメール)
DM(ダイレクトメール)を配信または送付するのも、One to Oneマーケティングの代表的な手法の1つ。お得なキャンペーン情報やクーポン情報などを顧客に直接届けることができるので、購買意欲を掻き立てることができます。
なお、DM(ダイレクトメール)を配信(送付)する際は、全顧客に対して同じ情報を一斉配信するのではなく、顧客1人ひとりに向けて配信(送付)の時期や内容をカスタマイズして送るパーソナライズDMを活用するのがおすすめです。
④マーケティングオートメーション(MAツール)
マーケティングオートメーション(MAツール)とは、その名のとおり、マーケティング業務を自動化するためのツールです。顧客管理から施策の成果分析まで幅広い領域をカバーしており、サイト訪問者の属性や行動履歴に応じて、異なるアプローチを自動で仕掛けることができます。
⑤LPO(ランディングページ最適化)
LPO(ランディングページ最適化)とは、サイト訪問者のコンバージョン率を高めるために、ページの内容や導線を最適化すること。流入経路やアクセス環境、ユーザー属性などに合わせて最適なコンテンツを配信することにより、コンバージョン率の向上や離脱率の軽減につなげらます。
One to Oneマーケティングを導入した企業の成功事例
最後に、One to Oneマーケティングの成功事例を3つ紹介します。
・株式会社ゲオ ・株式会社 世田谷自然食品 ・株式会社横浜銀行 |
導入を検討している方は、ぜひ参考にしてみてください。
株式会社ゲオ
CD・DVD・ゲームソフト・書籍など、幅広いジャンルの商品を取り扱う複合メディアショップ「GEO」を運営する「株式会社ゲオ」は、会員メールの配信やアプリのプッシュ通知にマーケティングオートメーション(MAツール)を導入したことにより、レンタル利用金額250%増を実現しています。
膨大なデータから相関関係や傾向などを発掘するツール「データマイニングツール」による予測・分析結果を基に、各顧客の趣味嗜好に沿った「おすすめ商品」を来店確率の高い曜日・時間帯に個別配信することで、メール開封率およびクリック率の増加へとつなげられたそうです。
株式会社 世田谷自然食品
自然派食品や自然派化粧品などで知られる「株式会社 世田谷自然食品」は、マーケティングオートメーション(MAツール)を活用し、メールによるアプローチを強化しています。
かつては手動による作業が多く、メール配信業務に膨大な時間を割かれていたそうですが、ツールを導入することにより、その工数を50%削減。また、配信したメールに対する顧客アクションを取得・分析することにより、顧客それぞれに対して最適なタイミングで自然な提案をできるようになったとのことです。
(参照:スプリームシステム株式会社「Aimstar|導入事例|世田谷自然食品様」)
株式会社横浜銀行
「株式会社横浜銀行」は、インターネットバンキングをはじめとしたダイレクトチャネルシステムを比較的早い段階から導入していました。しかし、非対面のサービスでは各顧客に合わせてOne to Oneの対応ができないことに課題を持っていたそうです。
そこで、顧客データを収集・統合・管理できる「DMP」を導入し、Webサイトの改善に着手。顧客1人ひとりの閲覧履歴や流入経路に応じてWebサイトのメインビジュアルを変更する取り組みや、アイテムレコメンド機能などを新たに搭載したマイページのリニューアル施策を実行しました。その結果、マイページのPV数が13.7%増加し、さらに約5万件に及ぶ顧客の興味・関心情報を把握することに成功したそうです。
(参照:Rtoaster「導入事例インタビュー|株式会社横浜銀行様 事例紹介」)
One to Oneマーケティングで顧客とのコミュニケーションを最適化しよう!
今回は、One to Oneマーケティングについて解説してきました。
モノや情報に溢れ、ニーズが多様化する現代において、顧客に寄り添ったコミュニケーションを取れることは、企業にとって大きな強みと言えるのではないでしょうか。コストパフォーマンスにも優れたマーケティング手法となっているので、興味のある方は、ぜひ実践してみてください。
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