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シスターフッド

シスターフッドカルチャーの覚醒とジェンダーマーケティングの進化

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「シスターフッド」とは、女性同士の連帯を意味する言葉。友情とは似て非なるもので、共通のイシューに向かって共闘する関係性というニュアンスが近いでしょう。もとは1960年~70年代に起きた、女性たちによる女性解放のための運動、ウーマンリブの際に使われたそうですが、近年またよく見かけるようになりました。

きっかけは#MeToo。それまで沈黙されていたセクハラや性的暴行などの性被害を「私も」と公表、告白することで、その被害そのものの深刻性だけでなく、隠蔽されていたことを問題視し、そういった事態がはびこる世の中を変えていこうという運動ですが、2017年にアメリカで歌手として活躍しているアリッサ・ミラノさんがツイートしてから今なお世界中で広がり続けています。

#MeTooは女性だけにとどまらず、多くの性を持った方々に広まり、勇気を与えることはできたと思いますが、正直、実際に具体的に社会を変えることができたかというと、その答えはまだ現段階では「No」でしょう。ただ、被害を受けた方同士、あるいは周りの大事な人が今後被害に遭わないようにと祈る方をつなげることはできているのではないでしょうか。

このたび再度、人々に発語されるようになった「シスターフッド」とは、そういった、かつての偏った常識や力関係の上で成り立つ社会を壊し再構築していくべきだという不安定な情勢を背景に立ち上がったキーワードなのです。

映画やファッションといったカルチャーの中で現代を示す象徴として覚醒したシスターフッド、そして男性性、女性性を打ち破ることで到達する真のジェンダーレスマインドにおけるこれからのマーケティング方法について言及していきます。

カルチャーの中のシスターフッド

カルチャーの中のシスターフッド

画像出典元:ワーナー・ブラザース, 『ハーレイ・クインの華麗なる覚醒 BIRDS OF PREY』

シスターフッドという言葉の意味は先述のとおりですが、女性同士の連帯関係はなにも、今に始まったことではありません。特に日本は、世界経済フォーラムによるジェンダーギャップ指数データにおいて、男女不平等の総合ランキングが156か国中120位(2021年3月発表)と著しく低いことはよく知られており、実際に女性が出世しにくかったり、得られる収入額が低かったり、といった男性優位社会の中で、女性ならではの生きづらさのようなものは同じく女性として生きる者であれば、同調できることが多いのではないでしょうか。

▶参考:Global Gender Gap Report 2021

#MeToo運動以降、さまざまなコンテンツ上にシスターフッドという言葉を見聞きするようになりましたが、それはこの結びつきを認識することそのものを一過性のムーブメントとして終わらせるのではなく、今後も引き継いでいこうという意思から成るものなのかもしれません。

会社などの組織内における女性の昇進を阻む障壁を意味する「ガラスの天井」をもじって、「セルロイド(フィルムの材質)の天井」という独自の言葉も使われる映画界では、女優のエリザベス・バンクスが監督、脚本を手掛けたウーマンエンパワメントムービー『チャーリーズ・エンジェル(2019年版)』や、制作に関わる全てにおいて女性が核を担った『ハーレイ・クインの華麗なる覚醒 BIRDS OF PREY』など、女性が主体となって作られる映画も増えてきました。

なお、『チャーリーズ・エンジェル』はTVシリーズから派生し、何度も映像化されている人気作品ですが、先のリブート作品を制作するにあたってエリザベス・バンクスは#MeToo運動を踏まえた上で、女性の力や多様性を尊重する作品を作ることの熱意を明かしています。

またファッション界においては、昨年2020年にNIKE(ナイキ)から女性同士のつながりから着想を得たという、その名も「SISTERHOOD(シスターフッド)」というスニーカー、アパレルの限定エディションが発表され、刷新された「エア フォース1」などが話題になりました。
SISTERHOOD
▶参考、画像出典元:atmos pink公式通販, NIKE SISTERHOOD PINK

月経カップや吸収型サニタリーショーツなど、フェムテックアイテムの拡大も目覚ましいものがあります。

※フェムテック(FemTech):Female(女性)とTechnology(テクノロジー)を掛け合わせた語。生理現象を含む女性特有の課題にテクノロジーを以て解決に挑むサービスや商品のことを指す。

2021年6月には益若つばささんが避妊リング(IUS)に関する動画をYouTube上に公開し、話題を呼びました。ご自身は生理不順改善を目的として装着したそうですが、動画内では避妊リングとはなんなのかという概要から、効果やピルなどとの違いについて丁寧に解説しており、コメント欄は経験者の体験談、検討している方からの質問、デリケートなトピックを発信したことへの称賛であふれています。

性教育が不十分といわれる日本において女性タレントが性に関する話をすることはどこかタブー視される風潮が少なからずありますが、自ら発信することで「女性同士の情報交換の場になっていったのは嬉しい」と後のインタビューで述べる益若さんの行動はシスターフッドそのものといえるでしょう。



▶参考(インタビュー部分):ORICON NEWS, “避妊リング”公表した益若つばさの真意、ギャルからママへ…影響力変わらずとも「代弁者にはなりたくない」

このように、女性同士の連帯は今まで以上に可視化される場面が増えてきており、伴って、潜在的に感じていた方がそれを意識する機会も増えているといえるでしょう。

マーケティングはジェンダーバイアスを加速化させる?

マーケティングはジェンダーバイアスを加速化させる?

画像出典元:株式会社ミキモト(PR TIMES)

ところで、マーケティングにおいて対象を明確にすることは重要です。20代、大学生、都内在住、流行に敏感、よく行く場所は渋谷・表参道…、要素を絞り込んでペルソナを確立させればさせるほど、そのターゲットに沿った広告を打ち出すことができると考えられています。

そのとき、上記のような年齢層、ライフスタイルだけでなく、当然ながら性別も選定されるでしょう。20代、女性、大学生、都内在住で、流行に敏感、渋谷・表参道周辺によく行く方をターゲットにするのであれば、広告に採用するモデルやそれを打ち出す場所もある程度決められるようになります。

ですが、その広告によって宣伝する商品やサービスは本当に20代女性だけが使うものでしょうか?

シスターフッドが注目されるようになった背景には、多様性の広がりによる「社会に自身を沿わせるのではなく、自身に沿った社会を生み出していこう」とする現代を生きるひとりひとりの意思があります。

女性向けに作られた商品やサービスを男性やほかの性別の方が手に取ること、あるいは、身体は女性でも性自認は異なる方が「女性向け」であるゆえに手に取りにくくなってしまうことはおおいにあるでしょう。

たとえば、それまで女性が身につけるイメージの強かった真珠のネックレスが男性の間で流行し、「メンズパール」と呼ばれ始めたのは記憶に新しいです。

はじまりは欧米のセレブたち。特に影響力があったのはイギリスのボーイバンドOne Directionのメンバーとしても知られるハリー・スタイルズと考えられ、近年のファッショントレンドの基盤でもある「ラグジュアリーストリート」の立役者アレッサンドロ・ミケーレ率いるGUCCIのビジュアルに起用されている彼が着用したことで広まりを見せました。

日本でもじわじわ人気を得てはいましたが、MIKIMOTOが打ち出した「My Pearls, My Style」というプロジェクトの一環で俳優の千葉雄大さんがパールジュエリーを身につけたビジュアルはさまざまな媒体で取り上げられ、それをきっかけに一挙に火がついたように思います。(なお、このプロジェクトに際し「男らしさという定義が変わったほうがいいと思うこともありますが、変わらなくてもいいのかなとも思います。それよりも、ゆくゆくは男らしいという言葉がなくなればいい」と語る千葉さんの言葉も印象的です)

▶参考:株式会社ミキモト(PR TIMES), 夏木マリ、千葉雄大 パールジュエリーを纏った姿で登場。パールの魅力や思いを語るスペシャルインタビューも。1月には冨永愛の出演決定!

このとき、イギリスの歌手や日本の俳優が役割を果たしたのは、ジェンダーレスマーケティングです。多様な思考、思想を認め合うことが多様性であり、それがようやく常に求められるようになり始めた現代においては、宣伝活動やマーケティングをジェンダーレス化、エイジレス化させることがヒット商品を生む鍵になると考えられます。

かつて女性向け商品として扱われていたスキンケアやメイクアイテムには「メンズコスメ」というジャンルが設けられ、その広告はTVや雑誌の中など特に選別せずとも見かけるようになりました。

「美容男子」や「美白男子」という言葉がひとつのジャンルとして拡大することになったのはジェンダーバイアスをなくすという面で大きな貢献である一方で、女性だけを対象にしていた商品を男性向けにリブートしたに過ぎないという見方もあるかもしれませんが、モデルのkemioさんがプロデュースした「HUMIO(ヒューミオ)」など、ジェンダーニュートラルなコスメの開発、発売も進んでいます。

▶参考:株式会社I-ne(PR TIMES), お肌の治安をパトロール*!? kemioプロデュースのSOSコスメブランド「HUMIO」!大人ニキビなどの肌悩みを瞬時にカバーする、BB クリーム・コンシーラーを8月31日より発売

ブランディングが購入時の選択に大きく影響する時代

ブランディングが購入時の選択に大きく影響する時代

先般2021年8月、化粧品メーカーのDHCと人気キャラクター「ムーミン」のコラボアイテム発売が中止されたことが話題になりました。

DHCにおいては、過去に会長である吉田嘉明氏名義で在日コリアンへの差別的な文章を公式オンラインショップに掲載していたという経緯があります。

▶参考:HUFFPOST, ムーミン、DHCとのコラボ中止へ 本国の著作権管理会社がコメント「いかなる差別も容認しません」

そもそもムーミンシリーズはキャラクターそれぞれの個性や多様性が描かれ、作者による平和への願いが込められた作品。Twitter上でDHCとのコラボが発表されるとファンからは瞬く間に疑問視する声が続出しました。

過去に公開された差別的な思想は会長個人の考えであったにせよ、長きにわたって公式ECサイトに掲載されていたため、もはや会社のイメージとして印象が残ったのでしょう。

このように、今はコラボ相手のファンであったり、デザインが好み、または使用するのが便利であったりしても、賛同できない思想や主義、理念を掲げている会社の商品は購入しないという意識を持った消費者が今まで以上に増えてきています。選択肢が広がり、別企業による類似品や代替品を見つけやすいということもあり、自身が手に取らないだけでなく、ほかの人たちにも購入しないようにSNS上などで訴えかける不買運動も盛んです。

つまり、企業は商品やサービスの開発だけでなく、それらを販売するにあたってのストーリー設計、そして会社として発信するメッセージを今まで以上に重要視する必要があるということです。

シスターフッドに関わる観点でいうと、ビフォーコロナでシーズンイベントへの注目度も高かった2019年1月には、生活雑貨を扱うロフトのバレンタイン広告において、楽しそうに集まる女性たちが実は後ろでは互いに髪を引っ張ったり肌をつねったりしているというイラストが炎上し、取り下げる事態に発展したことも話題になりました。

▶参考:HUFFPOST, ロフトのバレンタイン広告が物議で取り下げに。 「女は陰湿という考えが透けて見える」「なんの意図?」【UPDATE】

以前、外見コンプレックスを煽る広告が時代錯誤であることについて触れましたが、性別に偏るイメージを落とし込んだ表現も時代遅れです。

先のロフトの例を挙げると、昔から女性同士の友情は表面上の付き合いである、陰湿である、といった印象を持たれることも少なくないですが、そういった内容を描いたコンテンツに不快感を示す人はとても多く、ギャグとしても受け入れられない時代に突入しているといっていいでしょう。

ステレオタイプでいうと、たとえば男性は外で仕事をし、休日は家でなにもせずにのんびりする一方で、女性は専業主婦として外に出ない代わりに掃除や洗濯、育児を担当するといった内容を踏まえた広告も、徐々に減ってきてはいますが、近い将来すべて改変されるのではないでしょうか。むしろ撤退しないと広告としての目的を発揮できないどころか、逆にネガティブキャンペーンになりかねません。

イギリスでは2019年に広告基準協議会(ASA)によってジェンダー偏見を生む可能性のある表現を使った広告を禁止しました。広告制作会社には半年の猶予を与えた上で告知され、TVCMだけでなくweb広告にも適用されているそうです。

BBCニュース, 「有害な」男女のステレオタイプ描く広告、イギリスで禁止

広告は作り手が選ぶのではなく受け手が選ぶ

広告は作り手が選ぶのではなく受け手が選ぶ

アパレルに化粧品、食品、家具、日用品…、買い物をする際の選択肢はどのカテゴリにおいても膨大に増えており、気に入っていた商品が近くのコンビニやスーパーマーケットで販売されなくなっても、ブランドがクローズしてしまっても、すぐに似た代替品を見つけることができるようになりました。

映像や音楽といった娯楽分野においてもサブスクリプションサービスの台頭により、自身の観たい、聴きたいといったその時々の気分に応じて満たされることがほぼ可能になったといえます。

飽和する情報社会で、SNSを開けば、今使用しているものよりも安価であったり、より高機能であったりする商品やサービスの存在を知ることができ、そのままネット上で購入、体験まで完結できます。

これだけ消費者がなんでも選べる世界で、唯一広告だけはリターゲティングされている、いないに関わらず、いわば強制的に閲覧せざるをえない状況にありました。

ですが、商品もサービスも情報も豊富であるということは、賛同できない広告に触れたときに、その対象物を買わないという意思表示をすることができるということでもあります。あるいは、直接その企業に問い合わせたり、SNS上などで声を上げたりすることもできます。

見たくないものを見続ける必要はありません。見続けていたいものだけを守ればいいのです。企業はそういった消費者の意思ある支援のもとに成り立っていることを理解し、より発信する情報の重要性を意識していくべきでしょう。

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この記事を書いた人

浦田みなみ
元某ライフスタイルメディア編集長。2011年小説『空のつくりかた』刊行。モットーは「人に甘く、自分にも甘く」。甘いものといえば、ねことクリームソーダが好きで趣味でサイト運営もしています。

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