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ユニバーサルデザインとは?身の回りの例やバリアフリーとの違いを解説

ユニバーサルデザインとは?身の回りの例やバリアフリーとの違いを解説

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人は、あらゆる属性、個性を持ち、あるいは環境下に置かれ、生活を営んでいます。年齢、性別、国籍、体格はもちろん、車いすを利用されている方、目や耳が不自由な方、妊産婦……等々、挙げればキリがありません。皆が暮らしやすくなるにはどうすればいいのか。本記事で取り上げる「ユニバーサルデザイン」は、まさしくその課題に対する一つの回答だといえます。

ユニバーサルデザインについて詳しく知りたい方は、以下拙稿をご一読いただけますと幸いです。基本概要から混同されやすいバリアフリーとの違い、身の回りの例まで幅広く言及しています。特に身近にあるユニバーサルデザインに関しては細かいところまで取り上げています。なかには意外なものもあるかもしれません。ぜひ、チェックしてみてください。

ユニバーサルデザインとは?

ユニバーサルデザインとは?

ユニバーサルデザイン(Universal Design)とは、“普遍的なデザイン”と直訳できるように、端的に述べると、すべての人々が利用しやすい製品、サービス、空間のデザインのことです。UDと略されることもあります。前述の通り、人はさまざまです。そうした前提を際限なく考慮し、(暮らしに関わるモノが)可能な限り不便なく利用できる社会のため、ユニバーサルデザインは作られます。

ユニバーサルデザインが生まれた背景

ユニバーサルデザインが生まれた背景

ユニバーサルデザインは、1980年代にアメリカ人のロナルド・メイス(Ronald Mace)によって提唱された考え方です。漠然と知識の一つとして捉えられがちですが、史実はそう単純なものではありません。

遡ると1950年代。ニルス・エリク・バンク–ミケルセン(Niels Erik Bank-Mikkelsen)が唱えた「ノーマライゼーション(normalization)」がその発端のように思えます。これは、障がい者であっても一般の市民と同等の生活や権利が保障されるべきだという考え方です。当然のこととはいえ、当時はまだそうした文化が根付いていなかったことがうかがえます。(実際、知的障がい者施設での非人道的な扱いが、当時社会問題になっていました)。

その後、ノーマライゼーションの理念が発展した形で「バリアフリー(Barrierfree)」が浸透します。

経緯は次の通り。

障がいの有無にかかわらず、皆一様に、学校や職場、その他多くの余暇活動に参加できるようになったのは、明らかにノーマライゼーションの功績だったわけですが、他方、問題が生じます。それは物理的な障壁(バリア)です。これを取り除こうとしたのが、まさに1960年代に始まった「バリアフリー」の取り組みに当たります。

1974年には、国連で“障害を持つ者の社会参加を阻害する障壁を除去するための行動が必要”と公に提言がまとめられ、文化・情報・制度・意識などの物理的な要素以外においても、バリアフリーが推進。その領域然り、世界的にもその運動が広まります。

そうしたなか、ある一人の建築家、そう“ユニバーサルデザイン”の生みの親であるロナルド・メイスは、障がい者や高齢者が優先されるバリアフリー設備に疑問を抱きます。

彼自身も、幼い頃の病気が原因で電動車いすを使って生活していました。無論、バリアフリーの恩恵も受けていたことでしょう。が、彼の場合、別の角度から問題意識を持ちはじめます。ずばり、はじめからできるだけ多くの人が使いやすいデザインにしておくことが必要だと考えたのです。いうまでもなく、ユニバーサルデザインの概念そのものです。

上述の通り、ユニバーサルデザインには歴史、そして連綿と続く問題提起が存在しています。同じくロナルド・メイスが提唱した後もまた、各所にて言及され、度重なる研究があったことは(その結果、現況につながっていることは)、容易に想像できるはずです。

バリアフリーとの違い

バリアフリーとの違い

ユニバーサルデザインに対して、前項で触れたバリアフリーと混同される方が時折見受けられます。

違いは明確です。バリアフリーはすべての人を対象にしていません。あくまで高齢者や障がい者がより良い社会生活を送れるよう障壁となるものを取り除く方針です。

一方で、ユニバーサルデザインは、端から皆が使いやすいことを目的としています。

つまり、誰もが参加・活躍できる社会づくりのためにユニバーサルデザインは存在し、バリアフリーがその実現を後押ししてくれるものというわけです。したがって、バリアフリーの視点が必要であることは間違いありません。あるいは上述したバリアフリーの対象以外で優先すべき利用者の想定が明らかであれば、そのターゲットの悩みを解決してあげることもまたユニバーサルデザインの役割です。

ユニバーサルデザインで重視される7原則

ユニバーサルデザインで重視される7原則

ユニバーサルデザインを語るのに確実に知っておきたいセオリーがあります。それが、いわゆる「ユニバーサルデザインの7原則」です。まずは知識としておさえておきましょう。

公平性

一つ目は公平性です。身体的、心理的に利用者を選ぶことなく、誰でも公平に操作できることを指します。

自由度

二つ目は自由度です。利用者の能力や好み、状況に応じて、柔軟に使えることを指します。

単純性

三つ目は単純性です。利用者の経験、知見問わず、直観的に使えることを指します。

明確さ

四つ目は明確さです。利用者にとって必要な情報が簡単に伝わることを指します。

安全性

五つ目は安全性です。利用にあたって、事故の心配がなく、安全であることを指します。

省体力

六つ目は省体力です。あまり馴染みのない言葉かもしれません。無理な姿勢を取ることなく、かつ少ない力で楽に使えることを指します。

空間性

七つ目は空間性です。利用にあたって、十分な大きさや広さが確保されていることを指します。

身の回りにあるユニバーサルデザインの例

身の回りにあるユニバーサルデザイン例

前述した7原則は、多くの人が利用しやすい環境を作っていくためには、少なからず意識が必要です。そのうえで、実際のところユニバーサルデザインはどのようなシーンで用いられているのでしょうか。

以下、具体例として身の回りにあるユニバーサルデザインをいくつか取り上げます。

自動ドア

自動ドア

私たちが行き来するあらゆる建物で当たり前のように見かける自動ドアですが、それらは代表的なユニバーサルデザインであり、いわば7原則すべてが組み込まれているといえます。その設計は、歩行に不自由のない方々だけでなく、高齢者や車いす利用者など移動のために時間や空間を要する人にとっても、特段、意識することなく安全な出入りを可能にしてくれます。

多機能トイレ

多機能トイレ

車いす利用者、ストーマのある内部障害の方、高齢者・子供連れなど多くの人たちに使われている多機能トイレ。その利便性は近年、ますます進化しています。出入りしやすい引き戸、ゆとりのあるスペース、手すりの位置や高さ、洗浄器具の設置、乳幼児用のベッド、洗浄ボタンや緊急時の通報装置……等々、機能面の充実が光るユニバーサルデザインです。

駅の改札口

駅の改札口

駅の改札口はどこも一見、何の変哲もないように感じられるかもしれません。しかし、実際は「ベビーカーを押される方」「荷物をたくさん抱えている方」「車いすや松葉杖を使われている方」「その他足腰に負担をかけたくない方」などに対して、しっかり配慮されているのです。そう、ほとんどの駅では皆が余裕を持って通過できるよう幅が広げてあります。あまりに自然なため、気付きにくいポイントですが、この仕様もまたれっきとしたユニバーサルデザインです。

スロープ

スロープ

スロープがあることで、段差を渡るのに車いすやベビーカーを持ち上げる労力を削れます。自転車で通行する際など、わざわざ遠回りせずに済むのは心理的にも楽でしょう。公共の場所では当たり前のように存在しているスロープですが、その恩恵は、思いのほか大きいものなのです。

ノンステップバス

ノンステップバス

床を低くし出入口の段差を極力無くしたノンステップバスの設計も、当然ユニバーサルデザインです。これによって、車いすの方や高齢者、児童の乗り降りを容易にしてくれます。

電車内のはっきりとした優先スペース

電車内のはっきりとした優先スペース

車両の端の一部には座席を設けず、車いすの方やベビーカー利用者のための明確なスペースを確保されている電車があります。これはまさにユニバーサルデザインを意識した設計です。優先席だけではまだまだ課題が残っていたなかで、よりわかりやすく改善を図った例だといえます。

音響装置付き信号機

音響装置付き信号機

音響装置付き信号機は、色の変化を音声で知らせてくれます。視覚障害のある人やお年寄りの方にとって安心の機能です。なかには押しボタンからアナウンスが聞こえる設計仕様も存在します。

誰もが安全に横断歩道を渡るためには、必須のユニバーサルデザインです。

自動販売機

自動販売機

ユニバーサルデザインの考えを取り入れた自動販売機も少なくありません。

たとえば、硬貨の投入口を広めにとっているもの、商品を選択するボタンが高低二つの位置に設置されているもの、取り出し口の高さも考慮されているものなどです。

なかには、ちょっとした荷物を置くためのテーブルまで用意されているものもあります。

ユニバーサルデザインがまさしく(不特定多数の)ユーザー目線に立っていることがわかる例です。

点字ブロック

点字ブロック

かつてのイメージでいうと、点字ブロックは、視覚障害者のためのものだったかもしれません。が、現在はそうでない方も対象です。たとえば、迷いやすい地下道では駅の改札やトイレの方向を示す役割として活用されることも少なくありません。バリアフリーからユニバーサルデザインへと用途が広がっている最たる例の一つといえるでしょう。

点字アルコール飲料缶

点字の付いたビール缶

アルコール飲料缶に点字の突起が付いているのをご存知でしょうか。これによって、目の見えない方やジュースやお茶と間違える恐れのある子どもたちでも判別が可能です。なお、点字の判読以外でも、たとえば缶ビールなら文字ではっきり「ビールです」と表示されるなど誤飲防止が図られています。

ドラム式洗濯機

ドラム式洗濯機

従来の縦型洗濯機では、洗濯物を取り出す際、身体を屈める動作がどうしても必要となり、腰の負担につながることが多々見受けられました。

そこで出てきたドラム式洗濯機はこの問題を改善します。ポイントは取り出し口を正面に設けたこと。まさにユニバーサルデザインが機能した結果だといえます。

ハンドソープ

ハンドソープ

ハンドソープは泡を用いることで、手洗いの動作が簡略化されています。ワンプッシュ式の容器は片手でも操作可能。シンプルかつ面倒な要素が排除されているのは、ユニバーサルデザインの賜物です。

シャンプーの容器にある突起

シャンプーの容器にある突起

視力の低さも含めて目の不自由な方がシャンプーとリンスを区別する方法として、容器の突起確認が挙げられます。突起が付いている方がシャンプーのボトルです。現在、メーカー問わずそれがシャンプーだとわかるように、どのシャンプーの容器も同じ位置に突起が付けられています。

調味料

調味料一つを取っても、ユニバーサルデザインが潜んでいます。たとえば、握りやすさ、そしてフタの開閉のしやすさなどです。使用後の詰め替えや処分にまで配慮が及んでいる製品が増えています。

ユニバーサルデザインフード

ユニバーサルデザインフード

日常の食事から介護食まで幅広く活用できる食べやすさに配慮した食品が、ユニバーサルデザインフードです。日本介護食品協議会が行っている取り組みから生まれたものですが、意外と知られていないかもしれません。

この試みには、たとえば、誤嚥(ごえん)・誤飲を防ぐ目的があります。

また、噛みやすさだけでも4段階評価「容易に噛める」「歯茎でつぶせる」「舌でつぶせる」「噛まなくてよい」が与えられるなど、徹底されています。

まさにユニバーサルデザインの意義が反映された“すべての人のための食品”です。

文房具

小さな子供でも使いやすいはさみ

小さな子供でも力を入れず使えるはさみや左利きの方向けのカッター、針無しのホッチキス、刺しやすく抜くのも簡単な画鋲……等々、ユニバーサルデザインを取り入れた文房具も世の中には多数存在しています。

スマートフォン

お年寄りでも使えるスマートフォン

いうまでもなくスマートフォンは、ユニバーサルデザインが求められる代表的な情報機器です。インターネットはじめコンピューターシステムの分野では、特に操作面でアクセシビリティ(利用できる状態)を高めることが重要視されています。メーカーに依存しないよう操作手順を統一することや、身体に障がいのある人が難なく使える機能が付与されるなど、普遍性を伴う技術進化はこの先もどんどん突き詰められていくはずです。

住宅全般

ユニバーサルデザインを取り入れた住宅設計

日本では、ユニバーサルデザインが広く取り上げられる以前から、国が示した「長寿社会対応住宅設計マニュアル」や「住宅性能表示制度」を受けてバリアフリーを重視した家づくりが取り組まれていました。ユーザーニーズが多様化する近年は、子どもから大人までさまざまな人に配慮した家作りが求められるようになっています。バリアフリー住宅を基盤に、誰にとっても「使いやすい」「わかりやすい」「安全」なユニバーサルデザインを踏襲した住宅は、今後ますます増えることでしょう。

ユニバーサルデザインに対する展望

ユニバーサルデザインに対する展望

あまりに馴染みすぎているがゆえに、意識しなければ気付きにくいかもしれませんが、日常生活で使うあれこれ、“モノ”そして“サービス”をあらためて見渡してみると、その多くにユニバーサルデザインが取り入れられていることがわかります。

まるで無尽蔵に便利に化す暮らしのなかで、さまざまな人たちが共存できる社会もまた変革の一つです。と考えれば、ユニバーサルデザインの役割は至極偉大であることがわかります。アイデア一つで発展する未来に、引き続き期待する次第です。

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この記事を書いた人

ヒゴ
無知、無能、無粋、無才、無点法……。SEOやアクセス解析に腐心しつつも、それらはまるで逃げ水のように追いかけては遠く離れ、ようやく掴んだと思った矢先にはシビアな現実を突きつけられる有様です。あるいはライターとして名を連ねることに気後れしながら、日曜大工のスタンスで恣意的かつ箸にも棒にもかからない駄文をまき散らしています。隠し切れない底意地の悪さ。鼻持ちならない言い回し多数。どうかご容赦ください。

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