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immaやAPOKI、バーチャルインフルエンサーが台頭。広告塔の現在地

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バーチャルリアリティー(VR)の台頭により、imma(イマ)を筆頭にバーチャルモデル、バーチャルヒューマンは一般化し、広告などに起用する企業も増えてきました。集客に活用できるバーチャルモデルとは?そしてメリットとは?バーチャルキャラクターの現在地に焦点を当てます。

コロナ禍以降加速するバーチャルリアリティー

バーチャル渋谷
(「バーチャル渋谷」スクリーンショット/筆者撮影)

日本におけるメタバースの先駆的な取り組みといえば、やはり2020年5月に開設された「バーチャル渋谷」でしょう。渋谷区公認でバーチャルSNSプラットフォーム「cluster(クラスター)」上に構築されたそれは、だれでも無料で楽しむことができ、特にコロナ禍におけるハロウィンやクリスマスなどのイベントシーズンには多くのユーザーが入場しました。

2023年3月にはKDDI株式会社が、アバターを介してほかのユーザーと交流したりショッピングしたりライブ配信したりできるサービス「αU(アルファユー)」をローンチし、そのなかのメタバース「αU metaverse」がバーチャル渋谷を引き継いでいます。

もともとバーチャル渋谷は、コロナ禍で現実世界での集客が難しくなった際に、それまでと同様に、あるいはそれまで以上に街を楽しめるイベントを実施させるために仮想空間に渋谷を再現して作られたもの。

実際に駅前のスクランブル交差点に立つと、四方八方を埋めつくすように立ち並ぶ大型ビジョンからさまざまな情報が飛び込んできますが、それはバーチャル渋谷においても同様で、つまり現実と仮想現実の双方で同じ広告を同じ場所に露出させたら、それらがクロスする瞬間に立ち合うことができるということになります。

このように現実の世界から収集したあらゆるデータをデジタル上に再現させる技術を「デジタルツイン」といいますが、すでに実在するファッションビル、飲食店、雑貨店などの再現も進んでおり、アパレル実店舗の店員がバーチャル空間で接客をしたり、飲食店においてはバーチャル店舗にアクセスするとリアルタイムで現地にいるほかの客と会話を楽しむことも可能になりました。

特にコロナ禍には、多くの企業や団体がバーチャルリアリティーを活用して、閉塞した世界に新たな風を吹き込もうとさまざまな施策を実施。たとえば人気ゲーム「あつまれ どうぶつの森」においては、マーク ジェイコブスやヴァレンティノなどの有名ブランドがアバター用衣装を提供したり、メトロポリタン美術館が40万点もの作品をデジタル化し、自由に所有できるようにしたり、世界的にムーブメントが起こりました。

日常はコロナ以前の生活様式をほとんど取り戻したかのように感じられますが、一度進化を始めた技術は止まることなく、今後も現実と同じ世界線で接近しつづけていくのかもしれません。

immaなどバーチャルモデル・バーチャルヒューマンの目覚ましい活躍

imma(イマ)というモデルをご存じでしょうか?ピンクのボブヘアがトレードマークの彼女ですが、実は現実世界には存在しません。CGで構成された、いわゆるバーチャルモデル、バーチャルヒューマンです。

実在しないものの、いまやその影響力は飛ぶ鳥も落とす勢いで、FENDI、PRADAといった数々のグローバルファッションブランドだけでなく、野村ホールディングス、IKEA JAPAN、BMW Japanなど、さまざまな企業のプロモーションに起用されています。

TikTokとInstagramだけでも総フォロワー数は約88万人にものぼり(2023年11月7日時点)、2020年にはアメリカの経済誌『Forbes Woman』の「Women of the Year 2020」に選出されました。これは2020年のパンデミックと世界的な危機の混乱の中で、希望を与え、道を示した女性として、リーダー、活動家、芸術家、優秀な研究者などを表彰するもの。

世界初のバーチャルモデルMiquela Sousa(ミケーラ・スーサ)が誕生したのが2016年なので、2018年生まれのimmaの存在は後発といえそうですが、国内外問わず注目を集めていることがうかがえます。


アパレルブランド「doublet(ダブレット)」は2022年、彼女の顔をかたどった3Dマスクを制作し、体形も性別も背景も異なる25人のモデルをimmaとして登場させるショーを開催。渋谷スクランブル交差点を再現したスタジオで「アナログのバーチャル渋谷」を生み出し、大きな話題となりました。

@wwd_jp #imma#渋谷スクランブル交差点 に大量出没!?doubletがまた驚きのショーを見せてくれました! #冬コーデ #fashion ♬ оригинальный звук – BROTHERS

いうまでもなく、この施策はimmaの知名度がなければ成立しません。バーチャルヒューマンであることから活動範囲に制限のある彼女の特性を逆手に取り、クロスリアリティをDIYしたのです。また多種多様なモデルを起用したことで、一様に同じimmaの顔を持ちながらも多様性が浮かび上がるショーを実現させました。

さらには2023年8月、immaプロデュースによるアパレルブランド「ASTRAL BODY(アストラルボディ)」を発表。1stコレクションとしてTシャツやキャップなどをローンチし、今後はデジタルファッションの展開を予定しているそう。現実とデジタル世界をますます近づける立役者となることでしょう。

immaだけじゃない!話題のバーチャルモデル・バーチャルヒューマンたち

Miquela Sousa誕生(2016年)以降、immaだけでなく数多くのバーチャルモデルが登場しました。当メディアのSNS広告に関して言及した記事の中に登場する「MEME(メメ)」もそのひとりです。

2020年には人気モデルの鈴木えみさんが自身の弟としてバーチャルヒューマンの依十さんをInstagram上で紹介し、大きな話題を呼びました。実際に2人でインタビューを受けたという記事は雑誌『Numero TOKYO』に掲載され、困惑したファンの方も多数いたようです。


依十さんを除いて多くは女性的なキャラクターでしたが、一人ひとりがギャル風やドール風と異なる雰囲気を持っていたこともあり、競合というよりは相乗効果でそれぞれ人気は高まる一方でした。しかしそのなかでアフターコロナのいまも活動しつづけているキャラクターは限られています。

そして2020年代に入り、現在ではAIの技術が急発展したことで、また新たなバーチャルインフルエンサーが数々誕生しているようです。

神宮寺藍

こちらの動画で広く認知されるようになった神宮寺藍さんは、突如として現れたバーチャルアイドルなのですが、その運営元や活動内容、目的などはまだ見えません。2023年10月時点ではInstagramのプロフィール内に「2023年××月××日…“coming soon”」と書かれており、これからプロジェクトが始動するのかもしれません。

TikTokはアカウント開設直後から100万回以上再生され、フォロワー数も伸びつづけています。本業はグラビアアイドル、19歳の「港区女子」だそう。

ANNA(アンナ)

株式会社ソニー・ミュージックエンタテインメントが生み出したバーチャルヒューマン「ANNA」はアーティスト。AI、音声合成技術を活用して歌うことができるのです。

同社が運営している小説投稿サイト「monogatary.com」にて作品を募り、応募作から楽曲を制作するとのこと。なお、monogatary.comでは過去に行われたコンテストよりYOASOBIが誕生したという実績もあり、ANNAも今後大きな話題になる可能性を秘めています。

バーチャルアーティストが誕生すれば、今後世界各地で同時にライブパフォーマンスを行うことも可能になり、エンタメ業界に革命をもたらすかもしれません。

美姫仁奈にきび

先述のimmaと同じ株式会社Awwから2023年6月に誕生したVTuber「美姫仁奈(びきにな)にきび」。VTuberという存在自体は新しいものではありませんが、最先端の3DCG技術を活用し、立体感のあるキャラクター設計をしていることが特徴です。

ライブ配信も活発に行っており、リアルタイムで人間のような動きをする3Dはかなり珍しいため高い評価を得ています。

2023年11月現時点では、まだそれほど大きな再生回数やフォロワー数獲得にはいたっていないですが、中の人のキャラクターも個性的で、コアなファンをじわじわと集めているようです。

韓国ではAPOKI(アポキ)・ROZY(ロジ)

バーチャルヒューマンは韓国でも普及。特に世界的にも注目されているのはバーチャルアーティストのAPOKI(アポキ)とバーチャルインフルエンサーのROZY(ロジ)。

APOKI

APOKIは2021年2月にデビューしたアーティスト。「宇宙のどこかに住むウサギに似ている存在」というプロフィールどおり、うさぎ耳が特徴のキャラクターです。ほかのバーチャルヒューマンの多くが限りなく人間に近づけた造形である一方で、APOKIは海外アニメから飛び出してきたようなビジュアルを持ち、YouTubeなどで歌って踊る姿を公開しています。

そもそも多くの方に認知されるようになったきっかけもBLACKPINKやMAMAMOO、BTSといった人気の高いK-POP楽曲をカバーした動画を投稿したことから。登場して間もなく注目を集め、そのキュートな3DCGの容姿とハスキーな歌声に惹かれるファンが続出したのです。

現時点(2023年11月)でTikTokのフォロワー数は約450万人、YouTubeのチャンネル登録者数は約33.1万人、Instagramのフォロワー数は約14.8万人。2023年8月リリースの『Hold On』のMVにロッテの「スイカバー」が登場したり、BurberryのPVをTikTokに投稿していたり、企業とのコラボ、プロモーション展開も進んでいます。

(スイカバーが登場するMV。歌詞には日本語も使われている)
@apoki.vv APOKI in @Burberry 💛 #AD #Burberry #APOKI #아뽀키 #アポキ ♬ 오리지널 사운드 – Apoki 아뽀키

(BurberryをPRするムービーでは歌声は披露されておらず、インフルエンサーとしての発信力が期待されて起用されたとうかがえる)

ROZY

ROZY
(出典:LOCUS-X)

ROZYは2020年生まれでありながら、翌年2021年の時点で100社を超える企業とスポンサー契約を結んだことで話題になりました。そのビジュアルはMZ世代(ミレニアル世代とZ世代を組み合わせた世代)が好む顔を集めて決定されたそう。

韓国発のインフルエンサーとして誕生した彼女ですが、2022年には歌手活動も始動させ、活躍の場を広げています。

(2022年2月にリリースされた1stシングル『WHO AM I』)

数々のファッション誌にも取り上げられ、モデルとしての道も確立。誕生したのがちょうどコロナ禍だったこともあり、移動の制限がなく、なおかつ才能を持った彼女がスターへの階段を駆け上がるのは容易だったと想像できるでしょう。

バーチャルキャラクターが集客するメリット

バーチャル

バーチャルが現実に深く関わってきているのは前述のとおりですが、上で触れた例はあくまでも主立って効果が見られたものだけです。今はほかにも多数の企業や個人がバーチャルキャラクターやVRを使ってプロモーションやマーケティングを行っています。

具体的にバーチャルキャラクターを用いて集客、マーケティングする例を挙げると、ライブ配信、動画や写真撮影のモデル・パフォーマー(単一の作品だけでなくSNS運営も含む)、セミナー講師、販売接客(モニターさえ置けば実店舗の店頭でも可能)など。ほかにもさまざまな可能性が今後拓けていくでしょう。

では、それらを実用したときに得られるメリットはなんでしょうか。

自社のイメージを具現化できる

広告や接客に携わる人は、商品やサービスを購入、利用するユーザーにとってその企業、ブランドの「顔」です。そのため、どんなに有名で人気のある方であっても、自社や自社ブランドのイメージに合わない場合は起用しないでしょう。

バーチャルキャラクターの場合、一からイメージ構築できるため、ブランディングをしっかりと保つことができます。また、著名人をプロモーションに起用した場合、時にスキャンダルなどで自社イメージまで疑われてしまうこともありえますが、バーチャルキャラクターであれば当然ながらスキャンダルが起きる心配もありません。

管理しやすい

著名人を起用する場合と異なり、スケジュールを押さえる必要がありません。もちろん「中の人」の調整は必要ですが、場合によっては複数人で運営することもできるため、著名人やインフルエンサーに依頼するよりもスムーズに進行できます。急遽ライブ配信を行うことになっても実現しやすいでしょう。

また、中の人に広報や販売担当者を采配すれば、紹介する商品やサービスについての認識の齟齬もなく、効果的にその魅力を伝えることができます。企業やそのプロジェクトのチームが意図していない発言をされる心配もありません。ライブ配信の場合も、視聴者から質問が来ても難なく答えられるのではないでしょうか。

最初はキャラクター設計などで他社を介したとしても、無事に運用できるようになれば自社だけで完結できるので、まだ解禁されていない新商品、新サービスの情報が漏れる心配もありません。

低リスクで運用できる

オンライン上で接客するには、プロモーションしたい商品やサービスを一番よく知っている、社内、もしくはそのプロジェクトチーム内の方が行うのが一番ですが、顔出ししたくない場合や表に立ちたくない場合もあるでしょう。特に、その商品やサービスが有名になったらその方も目立ってしまい、その影響力は計り知れません。心ない誹謗中傷を受けることもあるかもしれませんし、プライバシーが侵害されることもあるかもしれません。

バーチャルキャラクターであれば匿名性が守られ、中の人がいても、顧客はその発信者(キャラクター)と切り離して捉えてくれるので、リスク回避が可能です。特に、前述のとおり中の人を複数人で兼任した場合、より一層その発信者の本質は見えにくくなるため、もし不快なコメントをされても直接個人が受けるよりも小さなダメージで済むでしょう。

バーチャルヒューマン起用にはリスクも伴う

VR

VR(仮想現実)やAR(拡張現実)は、いまやさまざまなシーンで見かけるようになりましたが、今後はSRも注目を集めていくといわれています。

SRとはSubstitutional Realityの略で、日本語では「代替現実」といい、現実の世界に過去の映像を織り交ぜ、それがさも今起きている出来事であるかのように錯覚させるという技術のことを指します。かつて映画で見た、現実と非現実がクロスする時代がもうやってきているのです。

オンラインショップ、ライブ配信、AIとの共同作業、webミーティングにリモート飲み、キャッシュレス決済、かつてはおそらく夢だと思われていただろう技術がどんどん日常になっています。まだいまは自社のプロモーション方法としてバーチャル要素を求めていなくても、すでに私たちが立っている「現実」という世界の地平線はべつの世界に延長しているといえるかもしれません。

特にCGだけでなくAI技術も急発展を続けるいま、実在しないバーチャルヒューマンは増えつづける可能性があります。とはいえ彼らを起用するには、AIによって生成したコンテンツの肖像権や著作権等の扱いが定まっていないこともふくめ、リスクも伴うでしょう。

CGやAIを活用すれば作り手がその造形をコントロールできます。実在するヒューマンに近づけるために、あえて“人間くささ”をくわえるケースもあるかもしれませんが、現代において多くの方が「美しい」と見なすような“完璧”なビジュアルを作りだすことも可能だということです。

そんなバーチャルヒューマンが広告塔としてさまざまなシーンに登場してしまったら、美の基準が作られてしまう危険性をはらみます。たとえば彼らのような細身の体形や端正な顔つきを目指して身体に負荷のあるダイエットや美容整形をするようになったり、本来は不必要なコンプレックスを与えることになってしまったり、ルッキズムを助長させる可能性があるのです。

いきすぎれば差別やいじめといった社会問題に発展することもあるかもしれないので、自社でキャラクター設計を行う場合だけでなく、既存のバーチャルヒューマンを起用する際にも、生活者の心理面への影響を慎重に検討したほうがよいでしょう。


(top visual:Aww公式サイト
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この記事を書いた人

浦田みなみ
元某ライフスタイルメディア編集長。2011年小説『空のつくりかた』刊行。モットーは「人に甘く、自分にも甘く」。自分を甘やかし続けた結果、コンプレックスだった声を克服し、調子に乗ってPodcastを始めました。BIG LOVE……

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