次は「音声メディア」で稼ぐ?9種のアプリ比較で新たなプラットフォームを解析
インターネットを介した人々の交流の場は、掲示板や個人運営のホームページ、会員制のコミュニティサイトから、次第にSNS(ソーシャルネットワーキングサービス)へと移ってきました。現在は文字や画像、動画といったメディアがコミュニケーションの主なツールになっていますが、近年では音声メディアをメインコンテンツとするSNSやサービスが発達してきています。
音声メディアには参加者同士が自由に会話できるものや、ラジオのようにパーソナリティを置いて配信できるものなど、様々な種類があります。また、サービスによっては一定の条件に応じてコンテンツ配信者に報酬が生じ、収入を得られるものも生まれてきています。
目次
音声メディアの「収益化」で報酬を得る?
「音声メディア」とは、テキストや画像、動画といったコンテンツを使用せずに音声のみの情報発信ができるメディアのこと。近年ではかつてのラジオのように専用の機器を介すもの以外に、Webサービスやスマートフォンアプリなど媒体を問わず多くの音声メディアサービスが存在しており、日本でも普及しつつあるスマートスピーカーも新たな媒体として機能しています。
ラジオは古典的かつ代表的な音声メディアではありますが、テレビや新聞といったマスメディアと同様に、それを介して情報発信できる人間が限られていました。しかしインターネットの広がりとともに個人の自己表現できる場が広がったことで、音声メディアにも「誰でも自由に発信できるツールであること」が求められるようになったのです。
また現在の音声メディアは単なるコミュニケーションの場としてだけではなく、「仕事」として収入を得られる可能性があるものです。すべての音声メディアが収益化できるわけではありませんが、聴取回数や聴取時間に応じた「広告収入」が得られるもの、「投げ銭」によってファンから支援を得られるもの、自作の音声コンテンツを販売したりサブスクリプション化したりできるものなど、様々なサービスが独自のマネタイズプログラムを用意しています。
日本国内の音声メディア市場の概要
日本国内での音声メディア市場は年々大きくなっています。2018年には音楽配信サービスの利用者数が、有料・無料合わせて2020万人を超え、2019年2月には、国内最大のインターネットラジオサービス「radiko(ラジコ)」の月間アクティブユーザー数が約700万人に達しました。
2016年時点では音声メディアで公開される音声広告の市場規模はおよそ16億円程度に留まっていましたが、今後、広告出稿のしくみが整っていくことで2025年には420億円規模まで拡大するだろうと予想されています。
どの音声メディアが使いやすい?9サービスを比較
一口に音声メディアといっても、特徴はサービスによって様々です。現在アプリやweb上で利用できる9種を紹介します。
Spoon(スプーン)
Spoonは個人ラジオの配信サービスで、Webサイトおよびスマートフォンアプリから利用できます。誰でも手軽に「DJ(配信者)」になり、リスナーと交流することができます。機能は「LIVE」という生配信コンテンツと、「CAST」という録音コンテンツ、「トーク」という声でやり取りをする掲示板のようなコンテンツ(アプリ限定)の3種類。
DJはリスナーから「スプーン」という課金アイテムを受け取ることで収入を得たり、Spoonへの「貢献度」によって運営側からポイントが贈られたりします。ポイントの具体的な算定方法は非公開とされていますが、配信の頻度や、リスナーからプレゼントされたスプーンの数などによって変化するようです。配信されているコンテンツはDJとの雑談や弾き語りなど、個人的な内容がメインです。
Radiotalk(ラジオトーク)
RadiotalkもSpoonと同様に、誰でも自由にライブ配信をしたり録音したコンテンツを発信したりといった活動ができるスマートフォンアプリです。「さしいれ」と呼ばれる投げ銭機能を実装しており、配信者はその数や配信頻度などの貢献度に応じた「ポイント」を得られ、現金やLINE Pay、Amazonギフト券などと交換ができます。
生配信や録音配信ができるだけでなく、Podcast(ポッドキャスト)、Amazon Music(アマゾンミュージック)、Spotify(スポティファイ)といった音楽配信プラットフォームへの自動配信も可能です。また複数人で配信をしたい場合、リモートでゲストを招待するだけでOKなので、顔を合わせなくても、ちょっとした通話感覚でコラボ配信などが実現できます。
ただ、芸能人や有名人による番組も配信されているため、個人のコンテンツが聴かれるためには工夫が必要になるでしょう。
REC.(レック)
REC.は2020年3月にサービスインした音声配信ソーシャルアプリです。運営会社はYouTuberタレント事務所としても有名なUUUM(ウーム)株式会社。音声配信を通じたリスナーと配信者が相互にコミュニケーションできるプラットフォームとして開発されました。基本的には録音された番組を配信する方式で、従来のラジオ番組に近いサービスです。現在は一般配信者には収益化できる仕組みはありませんが、今後のアップデートにより実装される予定。
mocri(もくり)
mocriはクリエイター同士が通話をしながら作業をする「作業通話」に特化したユニークなスマートフォンアプリです。最大20人まで同時に接続でき、自由に入退室ができる「フリールーム」と、特定の参加者を6人まで指定できるプライベートな「ルーム」という2種類の機能が備わっています。通話を開始すれば自動で相手に通知が届くので、わざわざ事前に予定を合わせる必要がありません。都合が悪ければ入室しない、入室しても喋らずグループの会話を聞いているだけ、など様々な使い方が可能です。mocriはあくまで通話アプリであるため、利用者同士で投げ銭をしたり報酬が発生したりといった機能はありません。
Himalaya(ヒマラヤ)
Himalayaは1回10分の音声コンテンツをラジオ形式で配信する音声メディアです。「生活・暮らし」「エンタメ・お笑い」「ビジネス」「社会・文化」など、様々なカテゴリに分かれており、他の音声メディアに比べると、特定のテーマについて学べる講座形式のコンテンツが多いのが特徴。また、オーディオブックの配信プラットフォームとしても利用されており、個別に購入する他、月額750円でオーディオブックが聴き放題になるのサブスクリプションプランも用意されています。
Himalayaでコンテンツを配信するクリエイターは「キャスター」と呼ばれ、誰でも登録することが可能です。ただし、収益化ができる「プレミアムチャンネル」を開設するためには、無料チャンネル時に一定のファンを獲得する必要があり、その後、運営による審査次第で開設が可能になります。収益化の方法は、月額課金制か買い切りか選べ、ラジオのように定期的な配信をする場合は月額課金制、一定のノウハウを伝えるハウツー系なら買い切りなど、自身のコンテンツによって戦略は変わってくるでしょう。
stand.fm(スタンドエフエム)
2020年にサービスを開始したstand.fmは、スマートフォンを使ってライブ配信や録音した音声コンテンツの投稿ができる音声メディアです。個人での配信はもちろん、別の配信者をゲストとして呼ぶことで簡単にコラボ配信ができる機能もあります。
収益化の方法には「聴取時間に応じた報酬」「コンテンツ販売」「サポーター機能」という3種類が予定されていますが、2020年12月現在、「聴取時間に応じた報酬」以外は準備中です。また収益化させるにはstand.fmパートナープログラム(SPP)に申し込み、審査を受ける必要があります。基準はフォロワー1000人~とされていますが、配信の内容も重要な指標とされているようです。
Podcast(ポッドキャスト)
Podcastは年々市場を拡大している、オンデマンド音声配信プラットフォームです。ラジオのようなバラエティからニュース、英会話、ドラマなど様々なジャンルの音声コンテンツが配信されています。詳細を知りたい方は、関連記事をご覧ください。
Voicy(ボイシー)
Voicyは様々なジャンルの音声コンテンツを配信するプラットフォームサービスです。誰でも配信できるわけではなく、独自の基準でパーソナリティを選定しています。Podcastと似ているようではありますが、Podcastがコンテンツを軸として作られているメディアである一方、Voicyは「人」を軸とした作りになっているようです。
radiko(ラジコ)
radikoは日本全国のラジオ放送をインターネット上で聴取できるインターネットラジオプラットフォームです。従来のラジオは一定のエリアでしか聴くことができず、テレビに比べるとローカル色の強いメディアでした。しかしradikoを利用することで地域の制限がなくなり、どこにいても好きな番組を聴くことができるようになりました。
音声メディアは発展途上 差別化戦略でユニークな自社メディア化も可能
プラットフォームが発達し、利用者数が増えていけば、音声メディアは広告媒体としてより重きを置かれるようになります。現在はまだ主流メディアのひとつとは言えず発展途上であることは否めません。しかし環境ができあがれば、音声メディアの広告効果を多くの企業がPR戦略に組み込むようになるでしょう。
また自社で発信できるコンテンツを持っているならば、運営する1メディアとして活用することも考えられます。音声コンテンツはテキストや画像ほど準備に時間が求められず、また動画制作に必要なほど揃えるべき機材も多くありません。場合によっては、スマートフォンが1台あれば事足りてしまいます。
そのため、他のメディアと比べると、導入するためのハードルは高くないといえるでしょう。ただしハードルが低いということは、多くの競合の中に埋もれやすいということでもあります。収益化やPR用メディアとしての運用を目指すのであれば、他ユーザーと差別化する戦略をしっかり立てることが必要です。
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