Spoon Radio Japanに聞く!音声配信アプリのトレンドとこれから
音声配信アプリ「Spoon(スプーン)」を運営する株式会社 Spoon Radio Japanのジャパンカントリーマネージャー、川村絵美香さんにインタビュー。注目を集める音声コンテンツのこれからについて聞きました。
目次
Spoon(スプーン)とは
「Spoon(スプーン)」とは、韓国発の音声配信サービスのこと。2018年より日本語版もリリースされ、その後アジアだけでなく中東、アメリカに進出し、世界各国で拡大を続けています。
ユーザー数は全世界で3,000万を超え、たとえ孤独な夜もアプリを開くだけで居場所が見つけられるかもしれません。
その一番の特徴はライブ配信の「LIVE(ライブ)」、録音されたコンテンツを楽しむ「CAST(キャスト)」、30秒間という短い時間の中でリクエストされたセリフを投稿したり、大喜利などを行ったりできる「TALK(トーク※)」という3種の機能が存在するというところ。
(※)2023年9月8日にTALK機能の終了を発表。(終了予定日は2023年10月4日(水)) |
キャンペーンや他企業とのコラボ企画も頻繁に行われており、さまざまな角度から楽しむことができます。
―Spoonの特徴についてお伺いできますか?
株式会社 Spoon Radio Japan ジャパンカントリーマネージャー 川村絵美香さん(以下、川村さん):Spoonの特徴はやはり、リアルタイムで交流できる「LIVE」、録音して何度も聞けるPodcastのような「CAST」、30秒程度の短い音声を楽しむ「TALK」という3つの形態で音声配信できるフォーマットがそろっているという点にあります。
それぞれの機能を持つプラットフォームはほかにも存在しますが、複合的に行っているのはSpoonだけではないでしょうか。
音質にも力を入れており、過去には一度離脱してほかの音声配信アプリにシフトした方が、その高クオリティーな音質をきっかけにSpoonへ戻ってくるということもあったくらい、高い評価をいただけています。
またコミュニティの密度や熱量が高いというのも特長です。
配信者さんとリスナーさんが、もう少し踏み込んだ近い距離感で交流されています。
直近30日を基準に、合計視聴回数が3回以上・合計視聴時間が最低3時間以上の場合に「常連温度」がカウントされるようにし、一定の温度を超えると常連リスナー特典が適用される仕組みがあるのですが、これにより、一層熱く盛り上がってくれています。
Spoonで人気のコンテンツ
―LIVE、CAST、TALKにおける人気コンテンツに違いなどはありますか?
川村さん:やはりリアルタイムで配信するか事前に準備できるのかというのは大きな違いなので、ユーザーやコンテンツの内容にも違いが生じていると感じます。
一番利用される方が多いのは、現状では圧倒的にLIVEです。
交流することが目的になりがちなので、おしゃべり、雑談といったコンテンツがメインですが、そのなかで配信者の方が持っている魅力が追加されるような配信が人気ですね。
たとえば雑談しながらたまに歌を歌ったり、演奏したり、もしくはほかのDJ(Spoonの配信者)とコラボして一緒にゲームをしたり。
CASTは録音して何回も聞けるので、作りこんで作品として配信される方が多いです。
声劇、ボイスドラマ、それからラジオ番組やPodcastのように更新されている方も多く、「歌ってみた」というコンテンツに関しても一発録りではなくがっつり編集されてから投稿されています。
一方TALKは一発録りで30秒以内なんですよね。
編集できないというのが前提ですが、短尺で一番気軽に挑戦できるので、いろんなコンテンツが存在します。
台詞を読んでみたり、お題を出し合って「これになんて答える?」といった大喜利のようなものを楽しんでいらっしゃる方が多いです。
聞き専でありながら配信も行う
―リスナーの中から「マネージャー(※2)」という役職が生まれるなど、配信に通うことで存在意義のようなものを感じられる仕組みが画期的だと思います。
(※2)マネージャー:リスナーでありながら強制退出機能が使えるようになる(基本的にはDJしか使えない)など、特定の権限が付与されたユーザーのこと。DJが任命する。 |
川村さん:おっしゃるとおり、リスナーさんもDJさんに近い立場、近い目線で一緒に目標を達成しながら配信を盛り上げていくなかで、Spoonを自分たちの居場所というふうに捉えて利用されている方がすごく多いですね。
―Spoonでは過去に、映画作品とコラボしてその作品の声優として参加できるオーディション企画なども行っていました。
配信を楽しむだけでなく、新しい分野に挑戦できる窓口としての役目も担っているわけですが、その狙いや実際の反応などもお聞かせいただけますか?
川村さん:もともと声に自信のある方や、声を使ってなにかに挑戦してみたい、たとえば声優になりたい、配信者として活動したいと考えている方々をサービス開始当初から集めていたんです。
なので声に魅力のある方がたくさんいらっしゃるんですが、最初はファンができて「声がいいね」と褒められるようになり、そしてその後、もっと高みを目指したときに、Spoonが外部のアニメ作品などと提携してどんどん機会を提供していければいいなと考えました。
実際にワンランク上のステージで評価されることで、Spoonというサービスに対する満足度も高まり、自分への自信にもつながり、よりそれぞれのコミュニティが盛り上がるという効果が得られたのはとてもよかったです。
―サービス開始当初、宣伝効果よりも実際にお使いいただくことを目的として、声に自信のある方を集めたということですね。
川村さん:はい。日本に進出したばかりのころ、「韓国発のサービス」ということを押し出すよりも日本にローカライズするということにこだわりを持っていたんです。
そのとき、配信者になってほしいと思う方々、それから楽しんでSpoonを一緒に盛り上げてくれるようなリスナーになってほしい方々をSNSや広告で集めました。
配信者になってほしい方というのは、声に自信があったり、声優に憧れていたり、すでに音声配信の経験をお持ちだったりする方、リスナーになってほしい方というのは、具体的には癒しが欲しい、友だちが欲しい、うまく眠れないといった悩みを抱えている方。
このペルソナの仮説は成功して、一気にユーザーになってくださる方が増えたんですが、いい誤算だったのは、配信しながらリスナーにもなるという方が多かったことですね。
私個人は完全に配信者とリスナーは分かれるものと想定していたんですが、実際は「この枠では聞き専だけど、普段は自分でも配信している」といった感じで、両方体験する方がほかのサービスと比べてとても多いんです。
この誤算の効果もあって、一気にサービスを拡大させることができました。
―まだ無名のサービスをSNSなどで広めるのは地道な作業だと思いますが、そこから今の規模にまで成長させることができたということですね。
ひとりの時間につながりを求める
―特にZ世代のような若者世代から支持されていると思いますが、なぜだと思われますか?
川村さん:Spoonは、友だち同士でみんなで聞くというよりも、ひとりでいるときに聞かれるケースが多いです。
日本で一人暮らしをしている割合が一番多いのは20代前半。
家にひとりでいるときに、だれか別の人の発する音や声が聞きたいというニーズが生まれるので、そういった世代のライフスタイルとサービスが合っているのかなと思います。
―先ほどリスナー候補の要素として「うまく眠れない」という言葉が挙がりましたが、利用される時間帯はやはり深夜帯が多いのでしょうか?
川村さん:おっしゃるとおり、21時くらいからだんだん人が増えてきて、23時くらいにピークを迎え、深夜2時くらいまで盛り上がっているという感じですかね。
寝る前に聞いたり配信したりする方が多いんですが、電車の中などの移動時間に聞かれている方もいます。
―動画だとサムネイルが視聴のきっかけになることも多いと思いますが、音声配信だと視覚に訴えることができませんよね。
リスナーの方はどういった要素から配信者を選んだり、ファンになったりするのでしょう?
川村さん:もちろん人によるとは思うんですが、動画に比べて最初に得られる情報量が少ないというのは事実だと思います。
ただSpoonの場合は、プロフィールの画像やライブ配信を行っているときの背景画像を別途設定できるので、目で見る要素も多少ポイントになるようです。
とはいえ、一切声を聞かずにどの枠に入るか決めるというのは抵抗があると思うので、1分間だけ試し聞きをできるようにしています。
入室前にそのとき話している内容を聞くことで、「この人はこんな感じの声なんだな」「こういう話題だな」というのを把握したうえで、気になるところに入室できるようになっているんです。
それにより、想像とかけ離れた雰囲気の枠に入ってしまうということも、会話に入っていけずに気まずさを感じてしまうということもなるべく起こらないようにしています。
あとは入室するとDJさんには「◯◯さんが入室しました」と表示されるようになっているので、そこでDJさんが声をかけてくださることで、初心者の方も自然と会話に入っていけて、「居心地いいな」「また来たいな」と思ってくださるようですね。
海外では自撮り・日本ではイラストが主流
―韓国と日本で利用方法などに違いはありますか?
川村さん:日本では音声配信というと匿名で顔も出さない、プロフィール写真にもイラストを使うというのが主流ですが、韓国では自撮り写真が使われることが多いですね。
「自分の顔を出すことに抵抗はないけれど、今は盛れていないからNG!」という感覚みたいで、過去に撮影した盛れている写真を公開されている方はたくさんいらっしゃいます。
―日本のほうがプライバシーを守りたいといった気持ちや警戒心が強いのでしょうか?
川村さん:ユーザーさまからのお問い合わせ内容も国ごとに異なるんですが、日本では「この情報はどの範囲まで公開されますか?」といった質問が多く、プライバシーへの意識はすごく高いと感じます。
―アメリカや中東でもサービス提供されていますが、なにか独自の特徴はありますか?
川村さん:応援の仕方が違うかなと感じます。
アメリカでは、DJ個人に対してギフティングをするというよりも、気に入った“コンテンツ”や“サービス”に対して感謝の気持ちを込めてチップを贈るように応援される方が多いです。
一方、日本や韓国などアジアでは「この人のコンテンツだから応援する」とギフティングされる方が多いので、中心に“人”がいるのが特徴かなと思います。
またサウジアラビアでは、応援するリスナーの方も主人公という感覚を持っている傾向が見られますね。
もちろん配信者さんを応援する意図で行ってはいるんですが、同時に「私はこんなに応援できます!」と自身のアピールも行っているという感じです。
―コメント内容で自己アピールするということでしょうか?
川村さん:そういったケースもありますし、ギフティングのタイミングや見せ方にこだわって、注目を集めている方もいらっしゃいます。
―先ほど、リスナーにもDJにもなるという方が多いとおっしゃっていましたが、そういった参加型の要素が強いSpoonならではという感じですね。
川村さん:たしかにそうですね。
最初はまったく配信するつもりのなかった方が配信者になったきっかけをお聞きすると、よく聞いているDJさんに「君が配信したら聞きに行くから配信してよ」って言われたから、という理由が何度アンケートを取っても1位になるんですよね。
人とのつながりで新しいことに挑戦できるプラットフォームなのかなと思います。
“中の人”を見せる戦略は参加型コンテンツならでは
―UGCを生成するサービスとなると、ユーザーの色をより濃く見せるためか、運営者自体は不透明なケースが多いように思います。
Spoonでは川村さんを筆頭に、中の人が顔出し・名前出しで活動されていますが、やはりそうすることで信頼につながっている部分もあるのでしょうか?
川村さん:最初のころは韓国から運営していたということもあり、日本のユーザーさんと触れ合う機会があまりなく、それから音声配信サービスで顔出しすることが合っているのかどうかも疑問だったので、今みたいに顔も名前も出していませんでした。
そうしたら、まさしく「どんな人が運営しているのかわからない」「サービスに不安に思う部分があると愛着を持って使いづらい」といったご意見をいただくようになり、さらには「SpoonではDJの方はご自身の考えを自分の声で発信しているのに、どうして中の人はそうしないんですか?」といったことを聞かれるようになったので、「たしかにそのとおりだな」と思い、さらけ出すようになりました。
今では月に1回、公式配信をして「こういう新しい機能ができました」といった情報共有を行っています。
あと運営側が多くの方々にご紹介したいDJの方を選出する「Choice(チョイス)」という制度があるんですが、その対象者の方々を直接お呼びする場として活用するなど、なるべく中の人が見えるよう努力をしていますね。
―やっぱり「中の人が見えない」というのは、ユーザーにとって不安要素になるんですね。
川村さん:「どういう考えでこの機能を作ったのかわからない」と思ってしまうと共感につながらないというお声をいただきました。
ただ単に「新しい機能ができました!」と発表するだけだと「なんで?」と思われてしまうことも、「こういう理由でこういうふうに改善しました。どうでしょうか?」と実際に声を通してお伝えすると、「めっちゃいいです!」「もっとこうしてくれるとうれしい」とコメントをいただくようになったんです。
一方的に与えられるのではなく、一緒にSpoonというサービスを作っているというふうに捉えてくださっているのかなと思います。
―お話を聞いていると、本当にSpoonを利用されている方々は「この枠を一緒に盛り上げよう」「このサービスを一緒によくしていこう」という思いが強いんだなと感じます。
“スプナー”という職業
―スプナー(※3)として活動されている方は、どのくらいの収益を得られているのでしょう?
(※3)スプナー:DJやリスナーとしてSpoonを利用している全ユーザーのこと。ただし、この場では特にDJのことを指している。 |
川村さん:どこまでお話ししていいか難しいですが、上位の方になると1年で車が買えちゃうくらい収益を得ている方もいらっしゃいます。
副業ではなく、スプナーに本腰を入れて活躍されている方も多いです。
中央値は月間10万円くらいでしょうか。
―LIVEであれば編集の必要もないので、導入ハードルが低く、その先に広がる可能性は大きいということですね。
音声の“TikTok”を狙う
―Spoon以外にも音声配信プラットフォームは存在しますが、ユーザーからはどのように受け入れられているのでしょうか?
川村さん:日本においては特に多くの音声配信プラットフォームが一気に登場した時期があったと思いますが、それぞれのコミュニティの色やユーザーさんの色がはっきり分かれてきたと感じます。
実際にSpoonのユーザーさんにアンケートを取ってみると、「Spoon以外の配信アプリを使っていますか?」という質問に対して、動画配信アプリを使っているとお答えする方は結構いらっしゃるんですが、意外と複数の音声配信アプリを併用しているという方はいらっしゃらないんです。
サービスごとに特性が違うので、Spoonが合うと感じてお使いになってくださっている方は、ほかの配信アプリだとちょっと違うなと感じるのかもしれません。
なので今はそれぞれが棲み分けして市場拡大していっているフェーズなのかなと思います。
―今後の音声配信市場のトレンド予測についてもお伺いできますか?
川村さん:あくまでもSpoonとしての観点になってしまいますが、LIVE・CAST・TALKという3種類の配信方法があるなかで、動画だとすでにそれぞれの勝ち方の答えはほとんど出ていると感じます。
ライブ配信であればたくさんの配信プラットフォームがありますし、録画して何度も観られるコンテンツにおいてはYouTube、なかでも短尺であればTikTokなどが挙げられると思いますが、「音声×短尺」はまだ爆発的に伸びているプラットフォームがなく、どこも答えを見出せていない状況かなと思うんです。
なので、「気軽に短い音声でなにかおもしろいアプリってあるっけ?」と考えたときに思いつくものがネクストトレンドになるんじゃないかと予測しています。
Spoonにおいても、まだ細かい施策については公表できないんですが、いろいろと新しい試みを重ねて短尺コンテンツをより盛り上げていきたいと考えています。
音声配信における“映え”を意識
―音声配信流行のきっかけはコロナ禍にあったと思いますが、その背景には人と人とのつながりを求めるニーズがあったと捉えられます。
Spoonにおいてコミュニケーションが生まれるきっかけになるものや、盛り上がっているときに見られる特徴などはありますか?
川村さん:Spoonのコンセプトのひとつに「居場所」という言葉があります。
リアルとは違う、ネット上だけの居場所がSpoonにはあり、それぞれの配信枠ごとに小さいけれど熱い、盛り上がっているコミュニティがあると思っています。
川村さん:ただ現状では、その中心は「ギフティング」です。
ほかの要素による収益が今後配信者さんにお渡しできるようになると、よりフラットにコミュニケーションを取りやすくなると思うので、そういった点を検討していきたいですね。
―具体的にはどういった施策を検討されていますか?
川村さん:たとえば広告を導入する方法を模索したり、もしくは直接的な投げ銭ではなく、ゲームのようなものも考えています。
DJの方にクイズを出題して、当たったらギフティングされるといった仕組みですね。
コミュニケーションの一環にもなると思うので、今後もいろいろトライできればと思います。
それから音声配信ではありますが、Spoonでは多くのユーザーさんが配信中にスクショをとられるんですよね。
なので、背景に使われているイラストにぴったりのギフティングアイテムをリリースすると、より盛り上がるのではないかと考えています。
―それが実現されたら、ますます参加型要素が強まりそうですね。
川村さん:Spoonの場合は、配信者さんがメインではありつつ、リスナーさんがコメント職人になって場を盛り上げたり、マネージャーさんになって上手にさばいていったり、イラストが得意な方が配信の雰囲気をつかんだ背景を作ったり、さまざまな方法で配信に関わることができるので、そのなかでコミュニティがどんどん形成されていると思います。
―コメントされる方のことを「コメント職人」っていうんですね!
川村さん:結構Spoon用語があるんですよ(笑)。
よく使う文章を「定期文」として保存しておくことができるんですが、ただ文字だけを登録するのではなく、記号を組み合わせてキラキラしているようにデザインする方もいらっしゃって、「定期職人」と呼んでいます。
―なんだかいろんな役割が生まれていて楽しそうです。
それだけ活発にコミュニケーションが行われていると、もしかしてリスナーさん同士で仲良くなることもあるのでしょうか?
川村さん:あります、あります!
たとえば「◯◯さんが入室しました」という表示を見てDJさんが声をかけると、それを聞いてほかのリスナーさんが「◯◯さん久しぶりー」とコメントを送り合う枠も見かけます。
配信者同士が友だちになることもありますし、友だちだけでなくビジネスパートナーだったり、結婚相手だったり、Spoonを通して人生が変わるきっかけを見つけている方もいらっしゃるようです。
―それはまさしく「居場所」ですね。
川村さん:「おかえり」って言ってもらえる場所なのかなと思います。
Spoonには、生活音をそのまま配信している枠があったり、料理している音だけが聞こえてくる枠があったり、それに対して「実家に帰ってお母さんが料理を作っているのを聞いているみたい」というコメントをされる方がいたり、おしゃべりしなくても、なんでもコンテンツになるのが特長かなと思うので、いろんな方にお使いいただきたいですね。
―私もやってみたくなっちゃいました。
最後に、今後の展開についてお聞かせいただけますか?
川村さん:やはり短尺のオーディオコンテンツでおもしろい未来を提供していきたいので、今までにない楽しみ方をこれからも追求していこうと思います。
そのうえで「音声サービスといったら」という質問に対して、日本のいろんな方々が「Spoonだよね」と声をそろえて言ってくれるような第一想起ブランドになるまで、ずっとがんばっていきたいですね。
自分を表現するものは目に見えるものばかりではない
国民総ユーザーともいえるSNS時代に想像するのは容易いことではないですが、かつてはこんなにも簡単にだれかとつながることなどできない、ましてや世界中の人と同時に同じものを見て感想を言い合うことなど妄想の中でしか存在しないころもありました。
今や会ったこともないネット上の友だちがいることは珍しくないこと。ちょっと暇なときに配信をして、それを聞きにきてくれる人とおしゃべりをして、そのまま仲良くなるのは難しくないことかもしれません。
気がつけば名前すら知らない相手と熱心に語り合い、むしろ自身も匿名のままネット上に出没していることもあるでしょう。ネット上だけでなく、顔や本名など素性を一切出さないまま活動するミュージシャンも登場するようになりました。
こうなると、私たちを証明する要素はどんどん削られていき、時にいつでも替えがきくような錯覚に陥りそうです。けれど、アイデンティティーというものはそんな表面的なものだけでなく、もっと深いところにもしっかり刻まれていて、顔も名前も知らない“推し”の発言を聞いて賛同したり、共感したり、応援したいと思ったりする人は後を絶ちません。
形を持たないまま交流することができるのは、Web3.0よろしくインターネット社会の醸成の表れのようにも感じられます。これからはありのままの自分をさらけ出し、けれど姿も名前も伏せたまま、自身の武器を作ることができるというわけです。
そもそも強みなど生み出さなくとも、今まで出会わなかった方々と新たにやりとりすることができるのは大きな魅力であり、今の時代ならではのコミュニケーションの取り方だといえるでしょう。
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