最先端のWebマーケティングを発信するメディア

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Advertising Week Asia 2022

世界最大級イベントAdvertising Week Asia 2022に行ってきた!

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世界最大級のマーケティング&コミュニケーションのプレミアイベント「Advertising Week」をご存じですか?2016年からアジア版も展開されるようになり、2022年は5月31日(火)から6月2日(木)まで六本木にて開催されました。

筆者も実際に参加してきたので、そのレポートをお届けします!

Advertising Week Asia 2022について

Advertising Week Asia

Advertising Weekは、マーケティング、広告、テクノロジー、エンターテインメントなど、幅広いジャンルの業界がともに未来のソリューションを探求する国際イベントで、「Advertising Week Asia」はいわばそのアジア版。

2004年にニューヨークで発足し、2013年からはロンドンを拠点に活動の場をヨーロッパへ広げ、その3年後である2016年から東京にてアジア版を展開しています。

その後2018年にはシドニーにてAPAC(アジア太平洋地域)版、メキシコシティにてラテンアメリカ版と広げ、現在では6大陸にまたがるグローバルイベントとなりました。

いずれも世界各国からさまざまな業界の第一人者が結集する一大カンファレンスであり、セミナーやセッション、キーノートスピーチなどから最新の知見に触れたり、ネットワーキングにもつながったりする機会が得られます。

2020年、2021年はコロナ禍のためオンラインのみでの開催でしたが、今年2022年は東京ミッドタウンで実施するリアルとオンラインとのハイブリッド形式で開催。

広告クリエイターやマーケターだけでなく、未来を担う学生が学びを得る場ともなりえるのですが、今回はそのなかから筆者が独断と偏見で参加したセッションを実際の時系列に沿ってご紹介します。

トレンドを生みだしつづけるZ世代のマーケティング

トレンドを生みだしつづけるZ世代のマーケティング
(左から株式会社TWIN PLANET HANAHANAプロジェクトマネージャー 入川 大樹さん、美容クリエイター やみちゃん(一色あやみ)さん、マルチイケメンインフルエンサー おおしま しゅんさん)

まずはこちら。利用者の半数がZ世代である累計DL5,000万超えのキーボードアプリSimejiと、さまざまなメディアでトレンドコンテンツを生みだしてきたツインプラネットによるディスカッション。

実際にSNSなどで活動されているZ世代のクリエイターである、おおしましゅん氏、やみちゃん(一色あやみ)氏をゲストに迎えて、Z世代マーケティングにおけるトレンドやコンテンツをバズらせるポイントなどを鼎談しました。

Z世代約500人によるアンケートからユーザー行動も見ることができ、若者向けの事業を行っている企業や、もしくはTikToker、インフルエンサーを目指す個人の方にも参考になりそうです。

登壇者紹介

柏崎 瑞さん
バイドゥ株式会社 プロダクト事業部 マネタイズチームリーダー

入川 大樹さん
株式会社TWIN PLANET HANAHANAプロジェクトマネージャー

おおしま しゅんさん
TikTokフォロワー数690万人超のマルチイケメンインフルエンサー

やみちゃん(一色あやみ)さん
TikTok CREATOR AWARD 2021 ファッション・ビューティー部門最優秀賞を受賞した美容クリエイター

Z世代のSNSとの付き合い方

Z世代について明確な定義はないものの、ここでは1990年代半ば以降に生まれた、2022年現時点で10代前半から25歳までの、SNSが普及している環境で育った世代と前提してセッションは進められました。

特徴は、情報の取捨選択に長けていて、それを外部にシェア・共有することに抵抗感が少なく、なんでもweb上で完結する体験に慣れていること。

日本では10人に1人の割合だといわれていますが、世界中では1/3の人口を占めており、いま社会への影響が特に大きい世代といえます。

Simejiでは、Z世代のユーザーが多いという特性を活かし、定期的にマーケティングに関するアンケートを実施。今回のセッションでは500人のZ世代の調査結果を発表してくれました。

たとえば1日にどのくらいの時間webに触れているかという質問に対し、74%が2時間以上利用していると答えています。なかでも、よく使うアプリは、やはりLINEやTikTokなどのSNSが多く、61%の人がwebで知り合った友だちがいると回答。

柏崎さん「私の友だちにも、SNS上で共通のアーティストを推しているファンとつながって、一緒にコンサートに行くという人がいます」

入川さん「もうリアルでは会ったことのない友だちがいるのも珍しくなく、実際に会わなくても『友だち』という感覚の子も増えていますよね」

また、オンラインショッピングをしたことがある人は56%で、購入の参考にしているサービスはInstagram、Twitter、TikTok、YouTubeの順にランクイン(TikTokとYouTubeは同率)。

入川さん「56%とは意外と低いですけど、クレジットカードを持っていない子も多いと思うので、それが反映されていそうですね。あとTikTokの投稿に映りこんでいる商品に興味を持って、コメント欄で質問したりして情報を得て、そこからInstagramで調べて購入するということもあるみたいです」

柏崎さん「たしかにランクインしているInstagram、Twitter、TikTok、YouTubeはそれぞれ商品購入時の用途やシチュエーションが違いそうですね」

Z世代に刺さるコンテンツとバズらせるノウハウ

ゲストのおおしましゅんさんとやみちゃん(一色あやみ)さんを招いてからは、お2人とSimejiがコンテンツを発信するうえで重きを置いているポイントをそれぞれ3点ずつご紹介。

おおしましゅんさんの場合

@oshima_ #おはようでやんす ♬ Mad at Disney Remix – tim

(再生数:2,580万回、いいね:320万、コメント:5.2万件(2022年6月時点)。中国版TikTokといわれているDouyinにもアップしたところ、国内外で話題になりました)

①視覚的な理解

おおしまさんは「変身動画」と呼ばれる、加工編集を行ってBefore/Afterの姿を一瞬で変えるシリーズ投稿が人気で、日本のみならず海外からも支持されています。

Beforeではコミカルなスタンプを用いたり、顔のパーツの位置や形をいじったりして、Afterでは髪をセットしたり、メイクをしたりすることでギャップを生み出しており、その手法について、言語を介さない視覚的なインパクトが重要だと語りました。

②美しく盛る

照明が好きだということで、紫や青などのライトを使って非現実的な空間を作るというところにこだわりを持っているそう。

おおしまさん「部屋の隅に12本くらい三脚を立たせているんですけど、その下を掃除するのがすごく大変です(笑)」

さらにはアーティストがライブなどで使用するようなスモークも使っているようで、「火災報知器寸前でやらせてもらっています」と冗談めかしながら、いかに2次元のような、幻想的な世界観を生みだせるかを追求しているとおっしゃっていました。

@oshima_ Dazai Ah~🥵 #fyp ♬ オリジナル楽曲 – しゅん(おおしま兄妹)

(再生数:4,130万回、いいね:780万、コメント数:8.8万件(2022年6月時点)。こちらが実際にスモークを使用して撮影された動画)

③出合いの3秒

「TikTokは出合いと別れを繰り返す世界」といい、最初の3秒=変身動画においてはBeforeの部分で注目を集められるか、何度も撮り直すこともあると告白。

おおしまさん「最初の3秒を本当に意識していて、あとはたぶん画面の上半分を見ながらスクロールする人が多いと思うので、注目させたいものをなるべく上のほうに置くということを心がけていますね」

やみちゃん(一色あやみ)さんの場合

@ayami_yamichan ほんとに無印?って褒められるアイカラー👀❣️今どきなヘルシーカラーで、絶対買い!なアイテムだよ🏖🐚 #美容 #メイク #無印良品 #プチプラコスメ #夏のおすすめ #tiktok夏祭り #アイメイク ♬ そよ風 – SHISE

(再生数:660万回(2022年6月時点)。この動画をきっかけに無印良品の各店舗でこの色のアイシャドウのみ売り切れが続出し、投稿から半年以上経っても在庫が戻らない店舗があったそう)

①ワクワク感

“やみちゃん”さんは、美容系トップクリエイターとして美容に関連する商品を紹介する動画を多数制作。「TikTok売れ」の第一人者ともいわれています。

動画を制作する際には、美容に興味のない人も興味を持てるようにエンタメ性を重視しているそう。たとえば、視覚的におもしろさを感じられるような仕掛けを考えたり、豆知識を提供して知識を得てもらったりするなど。

②正直に話す

正直に話すというのは、嘘をつかないということ。

“やみちゃん”さん「SNSで再生回数やいいね数を追い求めると、過剰表現したり、人のコンプレックスを煽ったりするような過激なことに手を出しかねないですが、絶対にそういったことはしないように、私の場合は、使ってみてよかったものを友だちに薦めるようなニュアンスで作っています」

くわえて、観た人がストレスを感じる可能性のある「押し売り」のような訴求もしないと決めているそうで、その結果、企業のイメージアップにもつながり、購買数も伸びているようです。

“やみちゃん”さん「無印良品のアイシャドウを紹介する動画も、押し売りするわけではなく、実際に私がお店で見つけてきた『掘り出し物』を紹介しているから、大きな反響につながったのだと思っています。

あとアイシャドウって種類が豊富で、どれを選んだらいいのかわからないという方も多いと思うので、1色だけをピックアップしたことで、その魅力がきちんと伝わったんだと思います」

@ayami_yamichan 転がすあぶらとり紙⁉️VALL使ってみた。#美容 #韓国コスメ #tiktok動画コンテスト #購入品紹介 ♬ CLAIR DE LUNE – JORG DEMUS

(再生数:510万回(2022年6月時点)。普段トイレットペーパーを使って顔の皮脂を取っていることなどを「正直に」話すことで、コメント欄も賛否両論さまざま活性化され、「#TikTok動画コンテスト」の美容部門で1位を獲得)

③思いやり

そしてもうひとつ大事にしているのは、動画を観ている人を意識すること。たとえば、観終わったあとに疑問が残らないように、事前にリサーチを重ねてから動画を制作されているそうです。

入川さん「やみちゃんは企業からお仕事をいただいたとき、本当に隅々までその企業や商品のことを調べているんです。美容商品は肌に合う、合わないも人それぞれなので、どういった口コミがあるのか確認して、動画を観て買った人が後悔しないようにする、ということをいつも考えていますね。

多くの人に観てもらいたいという気持ちはもちろんあるんですが、1人に100刺さるのと、100人に1刺さるのは同じことだと思っているので、『いま作っているのはだれのためのコンテンツなのか』というのをよく話し合っています」

Simejiの場合

柏崎 瑞さん
(バイドゥ株式会社 プロダクト事業部 マネタイズチームリーダー 柏崎 瑞さん)

Simejiは多くのIP(※)とコラボしていますが、そのときに重視しているのは「熱量」「タイミング」「企画」の3点とのこと。

※ IP:Intellectual Propertyの略で、本の著作権、ブランドの商標、商品の特許といった知的財産のこと。特にゲームをはじめとするキャラクター、マスコットを取り扱う業界においては、コンテンツタイトルやキャラクターそのものを指すことも多い。

柏崎さんは、Z世代は情報をシェアするという行動を多く行うという前提のもと、「そのIPのファン同士の熱量やつながりが強いかどうか、盛り上がるタイミングがあるかどうかを見極めたうえで、ユーザーがシェアしたくなるような企画、エフェクトを添えることで認知度を最大化することができます」と仰っていました。

直近の事例として、イラストレーターのナガノさんがTwitterに投稿した漫画がきっかけで人気を博し、「日本キャラクター大賞2022」のグランプリにも輝いた『ちいかわ(なんか小さくてかわいいやつ)』と、『週刊少年ジャンプ』に連載中で、アニメ化、映画化も好調な『呪術廻戦』のきせかえキーボードをご紹介。

柏崎さん「Z世代間では『推し活』って言葉がよく使われるほど、ひとつのキャラクターへの愛が強いんです。そのため、グループカットではなく単体カットに重点を置くことで、『ちいかわ』のきせかえは21万人、『呪術廻戦』は31万人に利用され、ユーザーのニーズを満たせたと考えています」

また、多くのユーザーにシェアしてもらうために、仕掛けも用意したとのこと。それは、SNSで頻繁に関連語句がトレンドワードに上がる「診断」。たとえば名前を入力するだけで、どのキャラクターに似ているかランダムに表示されるといった機能で、多くのユーザーがSNSなどにその結果を投稿することで、トレンドワードにあがることも少なくありません。。

柏崎さん「ユーザー参加型で、実際に診断してもらって、その結果をSNS上にシェアすることで、きせかえデータがもらえるという仕組みにすることで、ユーザーの熱量も上がり、『ちいかわ』はトレンド2位と3位、『呪術廻戦』は1位と2位を獲得することができました」

おおしまさん「これ、リア友が実際にSNSにアップしていました(笑)」
柏崎さん「告知の瞬間だけでなく、診断結果のツイートが拡散されることで、長くSNS上でシェアされ続けることになったので、かなり認知向上に成功したんじゃないかと思っています」

モバイルアプリへの広告投資の重要性

AWA2022

次は、デベロッパーのビジネスを成長させるための強力なソリューションセットを提供するマーケティングソフトウェアのリーディングカンパニーAppLovinによるセミナー。

2021年、アプリストアの利用額は全世界で1,700億ドルに到達。それに伴ってモバイルユーザーの端末利用時間も過去最長に伸びることになりました。

2022年はさらなる成長が期待されており、この市場を開拓していくために、モバイル広告を取り巻く環境の変化や今、モバイル広告を活用する方法などについて講演が行われました。

AppLovinとは

2012年に設立し、アメリカのパロアルトに本社を構えるAppLovinは、モバイルアプリプラットフォームの企業。2021年にはNASDAQに上場し、ユーザー獲得、マネタイズ、アドエクスチェンジ、効果測定といったモバイルマーケターのための360度ソリューションを通じて、エコシステムの発展を標榜しています。

18のゲームスタジオを運営し、『FINAL FANTASY XV』や『Project Makeover』など、多くのゲームのプロデュースも手掛けており、また昨年にはTwitterからMoPubというSSP(※2)のサービス、そしてコネクテッドTV向けのWurlというソリューション企業を買収し、ソフトウェアビジネスを積極的に強化。

※2 SSP:「Supply Side Platform(サプライサイドプラットフォーム)」の略で、web広告枠を提供している媒体の広告枠販売や収益最大化などを支援するツールのこと。
なお、広告主を支援するツールのことは「DSP(デマンドサイドプラットフォーム)」という。

モバイル広告プラットフォームとしては、すでに世界トップレベルのシェアを占めています。

以前、AppLovinの日本事業責任者である片木智也さんに、現在のアプリ市場の特徴についてインタビューさせていただいた記事もご覧ください。

アプリ広告市場の大きな可能性

現在、消費者はモバイルアプリに多くの時間を費やしていることがわかっており、つまりマーケターにとってアプリは、今後も大きな可能性が開けるものと考えられます。

特にアプリ内動画広告は、その効果の高さからアプリ業界の方々から支持されているものの、ブランドマーケットの方々からの認知はまだ低く、「隠れた宝石のようなもの」だそうです。

日本においてもGoogleやYahoo!、Twitterなど、大手メディアへの広告出稿に力を入れる事業者が多いですが、ユーザーのモバイル利用が成熟するにつれて、その利用方法も多様化してきています。

モバイルの利用状況

現在世界では60億のモバイルデバイスが利用されており、そのなかでアプリは500万もの数に上ります。モバイルへの接触時間は1日4.8時間、そして開くアプリの数は18個。モバイル利用時間の9割がアプリで消費されているそうです。

カテゴリー別に利用時間を確認すると、やはり一番多いのはSNS。次いで写真・動画、ゲームなど。実はSNS以外だけでも全体の60%を占めるというのが注目すべきポイントです。

なおAppLovinのグループ会社であるAdjustによる最新のアプリトレンドレポートによると、コロナ禍に追い風を受けて急成長しているのは、Eコマース・フィンテック・ゲームの3大カテゴリーだそう。

日本においてもDXが進むなか、新たなジャンルのアプリが登場することが予想されます。アプリを広告メディアとして捉えるにあたって、マーケターは特定のソーシャルアプリにだけ注力すれば充分というわけではなく、より幅広いジャンルの活用が必要な時代になってきたといえるかもしれません。

モバイル広告市場の成長

モバイル広告市場は2021年時点で2,950億ドル(約37兆円)、そして2022年には3,500億ドル(約44兆円)に拡大しています。同2022年は、モバイル広告がテレビ、コネクテッドTV、PC、ラジオ、OOH、新聞、雑誌の合算値と同額という規模に達し、AppLovinの分析によると、さらに大きな成長余力があると宣言。

というのも、モバイル広告におけるプログラマティック広告(※3)の急速な成長も見られるからだそう。

※3 プログラマティック広告:広告枠の入札を自動で行い、入札額や素材の変更といった最適化をリアルタイムで支援する広告手法のこと。「運用型広告」ともいう。

なお、アプリ内広告のうち、ゲームに関するものは8~9割。もともとアプリ内広告の成長にはゲームのインストール広告やゲーム内のマネタイズが密接に関わっており、そういった背景からジャンルに偏りが見られると推測されています。

ゲームをプレイするのは、いわゆる若いゲームオタクだけという印象を持っている方もいるかもしれませんが、そんなことはありません。

例に挙げられた「Project Makeover」というパズルゲームは、1.3億人にインストールされており、20~40代に幅広く分布しているそうです。また、その70%は女性。

アプリ内広告の中心となるのはそういったカジュアルゲームですが、そのユーザー層はとても広く、消費の主役になるような年齢層にリーチできるメディアだといえるのです。

モバイル広告の課題・注意点

スマホを使う人々

現在、モバイル広告が抱える課題、注意点は大きく3種類あるそうです。

まずアドフラウド。デジタル広告における詐欺、不正のことを指しますが、悪意をもって広告収入を不正取得されてしまうリスクがあります。

次に、ブランドセーフティ。ブランドを毀損しかねないサイトに広告が配信されてしまうリスクが挙げられるでしょう。

そしてビューアビリティ。消費者に広告が視認されないというリスクです。

AppLovinふくめ、多くの会社がこれらの問題に取り組んでおり、アプリ広告事業者も第三者機関のサービスと連携してモバイル広告の健全化に力を入れています。

同時に、アプリ内広告を利用するマーケターも、そういった問題に積極的に取り組んでいる企業と連携することが今や絶対条件になりつつあるといえるかもしれません。

データプライバシーの重要性

欧州ではGDPR(2018年5月施行、個人データ保護についてEU域内の各国に適用される法令)、アメリカではCCPA(2020年1月施行、米国で初めての包括的なプライバシー保護法)が施行され、日本においても個人情報保護法が強化されており、個人を特定できる情報を使った広告はいずれ消えゆく流れにあるんじゃないか、と推測します。

iOS14から始まった、AppleによるIDFA使用制限もモバイル業界を揺るがす大きな変化でしたが、この流れは不可逆で、各社ともに、いかにユーザーを保護しながら精度の高い広告サービスを実現していくか模索をしているところなのではないでしょうか。

AppLovinにおいては、The Trade Deskと連携することで、Cookieに代わる新しい広告識別子「ユニファイドID2.0」への対応も開始し、ポストCookie時代のエコシステムの構築をサポートしていくと発表。

またデータ活用の領域として、自社の保有するゲームスタジオで配信している350以上ものアプリを通じて得た膨大なファーストパーティーデータを活用して、独自のマシンラーニングを進めていくと話しました。

アプリ内広告の魅力とは

講演の最後に、アプリ内広告の魅力について3点挙げられました。

まずアプリ内広告市場には、ゲーム偏重から徐々に、より幅広い活用シーンが生まれてきています。

その背景には、すでに大規模でありながら、さらに成長し続けている市場であることが挙げられます。モバイル広告市場はモバイル市場の半分を占めており、ゲームだけでなくあらゆる業種に活用されているNo.1のメディアといえるようになりました。

そしてさまざまなユーザーにリーチし、高いエンゲージメントを実現できること。アプリ内広告の主役である全画面動画広告は、ビューアビリティや再生完了率の高さ、そしてブランド認知への貢献度、多くの点で優れたフォーマットだといえます。

さらには、ブランドセーフティの視点から、安心して活用できる土壌が整ってきていることも挙げられるでしょう。

サードパーティーのベンダーを巻きこみ、業界全体で健全な市場づくりを目指している今こそ、ブランドを守ったうえで活発なマーケティング活動が行えるのではないでしょうか。

多様性の現在地(ジェンダーからジェネレーションへ)

多様性の現在地(ジェンダーからジェネレーションへ)
(左から、著述家、メディアプロデューサー 羽生 祥子さん、博報堂DYメディアパートナーズ メディア環境研究所 上席研究員 森永 真弓さん)

次は、SDGsを推進していくにあたって、「ジェンダー」と「ジェネレーション」の観点において、私たちはなにをどのように認識していけばいいのか、具体的な課題に踏みこみながら、現状を打破するヒントとなるセッション。

2030年の目標達成に向けて日本政府が発表した「SDGsアクションプラン 2022」によれば、国内のSDGsに関する認知度は大きく高まり、企業経営にもそれが浸透した、と記されています。

たしかに持続可能な社会を目指すための取り組みをパーパスとして示す企業も増え、「ESG経営」という言葉も広まったように感じます。

ですが、実際どこまでダイバーシティは実現できているのでしょうか?日本社会における、その現在地を鼎談のなかから探っていきましょう。

登壇者紹介

羽生 祥子さん
著述家、メディアプロデューサー。
株式会社日経BPにて『日経DUAL』『日経xwoman』の創刊編集長を務めたのち、独立し、株式会社羽生プロを設立。

森永 真弓さん
博報堂DYメディアパートナーズ メディア環境研究所 上席研究員。
WOMマーケティング協議会理事であり、コンテンツやコミュニケーションの名脇役としてのデジタル活用を構想構築する裏方請負人。

前田 亮さん
講談社C-station、講談社SDGs by C-stationチーフエディター。
女性誌『with』の編集長を務め、現在はライツ・メディアビジネス局メディア開発部に所属。

冒頭の挨拶から「さっき私たち同級生だと判明しました!」と羽生さん、森永さんが笑顔で告げ、和気あいあいと始まった当セッション。実は羽生さんはこの登壇前日に日経BPを退社されたらしく、独立直後の講演を「ちょっと痺れた経験」と表現していました。

「多様性」のなかのジェンダー

現状の日本企業の女性役員割合

前田 亮さん
(講談社C-station、講談社SDGs by C-stationチーフエディター 前田 亮さん)

当セッションで司会を務められた前田さんはまず、「今テレビ業界で女性が社長を務められている会社がいくつあるかご存じでしょうか?」と口火を切りました。

2021年の5月に発表された民放労連(日本民間放送労働組合連合会)のデータによれば、全国の民放テレビは127社あり、そのうちテレビ朝日系列の地上波局、新潟テレビ21 UXの1社、1名(桒原 美樹さん)だけだそう。

ラジオ業界では、同じく7月に発表された民放労連の調べによると、全国で98社あるうち、ニッポン放送の1社、1名(檜原 麻希さん)のみ。

前田さん「ちなみに私が勤めている講談社には役員が17名おり、そのうち女性は1名という状況です」

羽生さん「日経BPは役員10名のうち、女性は2名ですね。多いほうだと思います」

森永さん「博報堂DYメディアパートナーズは女性の役員はゼロですね。グループ全体になるともう少し増えると思いますが、社内はまだまだというのが実情ですね……」

企業によってその割合は異なると思いますが、現状ではメディア業界、広告業界はまだジェンダーバランスは整っていないという状況だというのを先に明示されました。

働くうえでのジェンダーの壁

羽生さんは、『日経DUAL』を立ち上げるための準備をしていたころ、働くママ・パパ向けの媒体ということもあり、在籍する記者にも出産直後の方が多く、仕事の回し方に工夫が必要だったことを紹介。

羽生さん「23:59までに校了しなきゃいけない記事があるのに、17時半に子どもをお迎えに行かなきゃいけない。そうなったら、その人は公開ボタンを押せなくなってしまう。会社に対して、それはおかしいと伝えました」

記者の方たちに話を聞くと、17時半から21時くらいまでが、子どもをお迎えに行って、お風呂に入れて、ごはんを食べさせて、寝かしつけるといったファミリータイムで、そこからなら活動することができる、ということで、60分間限定で働けるように会社に掛け合い、環境を整備。

今でこそ当たり前になったリモートワークを10年も前に開始し、その後もトラブルなく稼働できていたため、コロナ禍もスムーズに業務を続けることができたのだそう。

一方、森永さんは、黎明期からデジタルマーケティングに関わる環境に身を置き、業界内では人材募集をする際に自然と理系出身の男性が指名されがちな現状を注視。

森永さん「女性は『本気でやりたい』と手を挙げた人しか選ばれず、かといって男性も選ばれた全員にやる気があるわけではなく、なかには『局長から指名されたので仕方なく来ました』という方もいました。

女性にはそういった「仕方なく来る」というマイナスの事態は起こらないかもしれないけれど、そもそもチャンスが平等ではないと思うんですよね。

それは逆の立場でもいえることで、選ばれたほうの男性も本当はやりたいことがほかにあるのに、指名されたからその道を断たれて、来ざるをえなかったのかもしれない。それはとてもバランスが悪いと思うんです」

「女性だから」「男性だから」は当てはまらない

議論は、メディア・広告業界では女性に対して、マネジメントを行う管理職に育てようという意識を持っている企業が多くない、ということに発展。また、そういった企業は現状2パターンに分けられるとのこと。

ひとつは、偽女性活躍組織、そしてもうひとつは女性の戦力外組織。前者は、差別的な意図がない場合もあり、女性活躍組織だと錯覚しているケースもあるそう。

それを受け、「女性の社会進出の話をするときに、女性対男性といった構図になってしまいがちなところが問題をややこしくしていると思う」と、森永さん。

「たとえば男性にも下ネタが苦手な人、体育会系組織が苦手な人、ゴルフやタバコが苦手な人はいて、女性が悩んでいることや困っていることに共感できる男性もいっぱいいるはずです。

また、いま権力を握っている状態にある男性にも、出世コースに進まないと変な目で見られてしまう、といった男性なりの生きづらさみたいなものがあって、『ガラスの天井』だけでなく『ガラスの床』という言葉も生まれています。

それを女性が汲みとることもできるはずで、ジェンダー問題の解消というのは、男女の対立構造じゃないんだというのはすごく感じるところですね。

多様性を受け入れるということは、いろんな職業や働き方の選択肢を増やすことになるので、今までのように限られたなかから選んで我慢をするのではなく、生き方自体が多彩になるんだと捉えられると、もっと自由に考えられると思います」

多様性のなかのジェネレーション

推し活は世代を超える

鼎談のテーマはジェンダーからジェネレーションに移行。森永さんはAdvertising Week Asia 2022が5月末~6月頭に開催されたこともあり、同5月に公開された映画『シン・ウルトラマン』の話題性に触れ、ウルトラマンファンが新しい世代にも広がったことに言及しました。

森永さん「10代、20代の若い女性を調査していたら、ビジュアル系ファンの方は80年代文化にくわしいことがわかりました。なぜなのか聞いてみると、X JAPANやBUCK-TICKといったビジュアル系黎明期にデビューしたバンドを尊敬していて、知識を得ようと年上のファンと交流しているうちに、その年代にくわしくなったそうなんです」

また、逆にいま流行しているK-POPアイドルのファンのあいだでは、年配の方々が若い世代の文化に引っ張られているということもあるのではないかと分析したうえで、「ジェネレーションで区切ること」は無意味なのではないかと提唱されました。

森永さん「ジェネレーションではなく興味で区切ったら、違う世代で同じ意識を持った集団がいる、というのを感じます。思いこみを持ったまま過ごしてしまうと、ジェネレーションの多様性を見えなくしてしまうのではないでしょうか」

世代の異なる相手には「線」をつなげて話す

最近では「Z世代」というキーワードがよく聞こえ、世代による共通点などからマーケティングを行うことも少なくないですが、そこにも危険性が潜んでいると話します。

森永さん「同世代でひと括りにするのはとても楽なんですけど、そうしないことが、多様性や変化、イノベーションにつながっていくと思うので、自分たちのマインドセットの変更も問われているのかな、と感じます」

森永さんは2022年4月に『欲望で捉えるデジタルマーケティング史』という書籍を上梓。その本を読んだ若い世代から寄せられた感想がおもしろかったといいます。

「最初は自分の知らない昔の話で、歴史の教科書のように感じていたけれど、途中からスマホの話が出てきて『あれ?この本のなかに僕がいる!』と思ったそうです。

そうしたら急に点だったものが線につながって、昔から今までの流れが見え、そのうえに自分の人生や自分のデジタルマーケティングがのっかっているんだと思ったら、いろいろ話が見えてきました、と。

年齢が上の人たちが若い人たちに昔話をして嫌がられるのは、たぶん点として聞こえているからで、ちゃんと自身に線でつながっているような話し方をすれば、経験値の提供をするといったこともできるんじゃないかと感じました」

組織に必要なのは「ほのおタイプのポケモン」だけではない

羽生 祥子さん

羽生さんは2022年1月に『SDGs、ESG経営に必須!多様性って何ですか?D&I、ジェンダー平等入門』という書籍を上梓されました。セッションのなかでもその内容に触れ、そのうえで森永さんの発言を継いで、こう言及されました。

「たとえば性別、年齢、民族、国籍、宗教、LGBTQといった属性を水色のカード、知性が高い・低い、営業や交渉に向き・不向き、理系・文系、挑戦的・保守的といった特性を緑色のカードで示したとして、今はその水色のカードと緑色のカードを1:1で結びつけてしまいがちなところが根深い問題だと思います」

たとえば、「男性は理系に強く、女性は苦手」とは限らないし、「女性は話をするのが得意で、男性は苦手」というわけでもない、こういった一人ひとりの特性を認識することが、今の企業に求められている部分だと続けます。

羽生さん「たとえばポケモンのカードゲームを思い浮かべてください。組織としては今、いかに強くて魅力的な、最強のデッキを作れるか、ということが求められています。

そこで、ほのおタイプが一番強かったとしても、やっぱり炎ばかりを扱うデッキになってしまってはだめなんですよね。みずやくさ、ほかのタイプもいろいろ増やすことで、初めて組織が中長期的に伸びるわけです」

ただし、個々の矢印がさまざまな方向に向くことで、組織としてのまとまりは破綻してしまう可能性も示唆します。それぞれがやりたいように突き進むことで、不快感を抱える人が現れたり、衝突が起こることもあるでしょう。

羽生さん「そこで企業に求められるのは、パーパスやビジョンなど、広く求心力をもって組織が革新的に成長していくと発信していくことだと思います」

森永さん「たとえばチームで意見をまとめるときに、すぐに合意して『俺たち、いいチームだね!』と考えてしまうチームは、むしろ不安を感じたほうがいいかもしれないです。

『なんで別の意見、別の視点が出てこなかったんだろう?』と考える癖みたいなものを身につけることが重要で、そうすることで、それぞれみんな別の意見を持っているけれど、薄い膜のように、最終的に納得できる意見に全員が包まれている、という状態が保てる組織に変わっていけるのかな、と思います」

そして最後に、多様性を取り入れると一時的に効率が悪くなってしまうという注意点も挙げられていました。多様性をもって、イノベーティブでクリエイティブな組織に変わるためには、我慢しなくてはいけない時期があるということは覚えておいたほうがよさそうです。

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この記事を書いた人

浦田みなみ
元某ライフスタイルメディア編集長。2011年小説『空のつくりかた』刊行。モットーは「人に甘く、自分にも甘く」。自分を甘やかし続けた結果、コンプレックスだった声を克服し、調子に乗ってPodcastを始めました。BIG LOVE……

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