ダイレクトマーケティングとは?「ダイマ」とは実は意味が異なる!
時代の変化とともにマーケティングの手法が多様化・効率化するなか、以前から定着している方法論として「ダイレクトマーケティング」が挙げられます。
消費者に直接アプローチをかけるクラシックな手法ですが、現在の技術環境を適切に活用することで、依然として高い効果が期待できるでしょう。
ところで近年、この言葉の意味や用法をめぐって、混乱が生じている場面も見られます。似た意味の「ダイレクトレスポンスマーケティング」や、あるいは「ステマ」と対比されるものとしての「ダイマ」など、区別がややこしく感じられることもあるようです。
この記事では、ダイレクトマーケティングの意味をあらためて確認したうえで、似た意味の言葉や異なる文脈における用法についても解説し、さらに運用上のポイントをお伝えします。
目次
ダイレクトマーケティングとは
ダイレクトマーケティングとは、顧客および潜在顧客と直接的なコミュニケーションを取ることにより、購買意欲を喚起していくマーケティング戦略を指しています。
いいかえれば、マスメディア上の広告のように「不特定多数の相手」に訴求するのではなく、ニーズや場面に応じて「個々の消費者」とタッチポイントを作ることで、コンバージョンを高めることを目的とする方法論です。
具体的な手法としては、電話や電子メール、印刷物によるダイレクトメールなどを用いるケースが多く見られます。さらに近年では、SNS上で消費者との接点を作り、交流を通じて自社への関心を高めてもらう施策も頻繁に取り入れられています。
ダイレクトマーケティングのメリット・デメリット
消費者と直接の接点を設けるダイレクトマーケティングは、ターゲットからのリアクションを引き出しやすい傾向にあります。そのため大きなメリットの1つとして、消費者の具体的なニーズを理解しやすい点が挙げられるでしょう。
さらに、ターゲット層にあわせて柔軟に戦略を変えていけることも特徴です。たとえば「若い世代にはSNSを通じたアプローチをしながら、電子機器の操作に慣れていない世代には印刷物や電話を通じて訴求する」など、相手にあわせたアプローチを取ることで訴求効果を高められるでしょう。
一方で、実践にあたって少なからずリソースが必要になる面もあります。電話応対や印刷物の作成・発送といった業務に加え、それぞれの顧客の状況を管理・共有する手間も生じるなど、適切に運用するには準備や工夫が求められるのです。
ただし現在では、顧客管理システムなどを導入することにより、顧客状況を一元的に把握することも難しくなくなっています。自社にあわせたツールを取り入れることにより、ダイレクトマーケティングを効率的に実践しやすくなるでしょう。
ダイレクトセールスとの違い
ダイレクトマーケティングと混同されやすい言葉の1つに「ダイレクトセールス」があります。ダイレクトセールスは「直接販売」を意味し、メーカーが卸業者などを介さず商品を顧客に販売する形態を指す言葉です。
代表的な例としては、自動車のようにメーカー系の販売会社でのみ商品を扱うケースや、メーカーの営業担当が客先を訪れ商品を紹介する訪問販売などのケースが挙げられます。
ダイレクトセールスは「消費者と直接コミュニケーションを取る」という点で、ダイレクトマーケティングと共通する部分はあるものの、もともとの力点は「作り手がほかの流通チャネルを介さず商品を売る」というポイントにあります。ここから、ダイレクトセールスは主に「販売形態」に関わる言葉だといえるでしょう。
一方のダイレクトマーケティングは「購買意欲を高めること」に焦点を当てていることから、「戦略設計」に関わる言葉として位置づけられます。
もちろん現実のビジネスシーンにおいては、ダイレクトセールスとダイレクトマーケティングが混在しているケースもあります。たとえば自動車ディーラーにおいて、既存顧客に点検やメンテナンスの案内を送り、定期的な接点を作りながら信頼関係を構築することで、次回の新車購入への足がかりとする場面です。ここではダイレクトセールスの過程のなかで、ダイレクトマーケティングが展開されていることを見て取れます。
スラングとしての「ダイマ」は意味が異なる
ダイレクトマーケティングは上述のように「顧客との直接的なコミュニケーションを通じて購買意欲を高める戦略」を指す言葉ですが、現在では主にネット上において、これとは異なる文脈で用いられるケースも散見されるようになりました。
とくに近年では、「消費者にそれが宣伝であると気づかれないようにする宣伝手法」であるステルスマーケティング(ステマ)という語が流通するようになり、これに対比されるものとして、ダイレクトマーケティングを「ダイマ」と称する例が見られます。
この場合、ダイマはもともとの意味からニュアンスを変え、「それが宣伝であることを隠さない宣伝手法」という面に力点が置かれます。用いられる文脈によって意味に多少の違いが生じますが、たとえばSNS上で一般のユーザーが特定の作品や商品を勧めるとき、自身の好きなものを大っぴらにする気恥ずかしさを紛らわすために用いられる例が挙げられるでしょう。
この際、投稿に「#ダイマ」というハッシュタグをつけるなどすることで、「必死に何かをアピールしている自分」に対する自嘲的な態度を示し、恥ずかしさを和らげる狙いがあると推察されます。
複雑なのは、企業によるステルスマーケティングを指摘する際に、それがあまりに露骨に行われていることを皮肉るために用いられるケースもあることです。「もはやこれはステマではなくダイマだ」というように、「バレバレのステルスマーケティング」を「ダイマ」と呼ぶことで、広告手法の拙さを批判しようとしているものと考えられます。
このように、スラングとしての「ダイマ」は対になる言葉としての「ステマ」と相対的な関係にあり、使う人の意図や文脈によってさまざまなニュアンスを帯びることがあります。
なお、「ステルスマーケティング」については以下の記事でも詳しく解説しておりますので、こちらもあわせてご参照ください。
ダイレクトマーケティングの例
ダイレクトマーケティングにおいて用いられる手法にはさまざまなものがあり、代表的な手法として以下のものが挙げられます。古典的な手段も多く見られますが、ターゲットや商品の特性によっては依然として有効であり、場面にあわせて柔軟に取り入れていくことが求められるでしょう。
Eメール
保有している顧客リストのメールアドレスに対して、メール広告やメールマガジンなどを配信し、定期的に情報を提供していく方法です。現在では顧客管理ツールの普及により、各消費者の検討段階にあわせてメールを送信していく「ステップメール」も、大きなリソースを割かずに送信できるようになりました。
また、中古車や不動産物件など、在庫が流動的な分野においては、「消費者があらかじめ設定した条件にマッチするものが見つかり次第、自動でメールを送る」といった手法も多く見られます。どのようなアプローチを取るにしても、消費者が求める情報を提供し、開封率を高める工夫が必要になるでしょう。
なお、先の「ステップメール」については以下の記事で詳述しております。こちらもあわせてご参照ください。
ダイレクトメール
チラシやカタログなどの印刷物を直接顧客のもとに届けるダイレクトメールは、印刷・郵送にコストやリソースが割かれることから、いまや非効率的な手法と見なされることもあるでしょう。
一方で、依然として紙媒体の広告を見て消費行動を決めている消費者は多く、また自動車や住宅など大きな買い物をする際などはとくに、「紙のカタログでじっくり検討したい」と考える消費者は少なくないといえます。
その他、自宅にいる時間の長い高齢者層などがターゲットとなる場合には、「印刷物を届ける」というアプローチは有効に機能しうるでしょう。
テレマーケティング
主に電話やFAXを通じて行うテレマーケティングは、顧客ごとに個別的な対応ができることを大きな特徴としています。顧客のニーズをきめ細かく把握し、それに疑問や不安を解消していくことで、長期的なロイヤルティの向上が期待できるでしょう。
一方で、顧客1人に対するリソースが大きくなる傾向にあることから、効率的にテレマーケティングを行ううえでは的確なターゲティングとセグメンテーションが求められます。「どの検討段階で電話によるアプローチをすればよいか」といった点を見定めるとともに、電話を通じて得られた内容を管理・共有できる体制も整えておく必要があるでしょう。
SNS
近年ではSNS上で、一般のユーザーとのコミュニケーションを図る企業アカウントも多く見られるようになりました。
とくにダイレクトマーケティングに適したプラットフォームの1つとして、LINEのビジネスアカウントが挙げられます。トーク画面からチラシやキャンペーン情報などへの導線を引ける点をはじめ、「利用率の高いアプリ上で消費者とコミュニケーションを取り、鮮度の高い情報を届けられる環境」が用意されているのです。
その他のSNSにおいても、フォローやリプライ、リポストなどのリアクションを通じて一般のユーザーと接点を作っている例は少なくありません。
多くのSNSにおいては、直接メッセージをやりとりするのではなくとも、自社やその商品に関する投稿をしているユーザーをフォローしたり、その投稿を拡散したりといったかたちのコミュニケーションが可能です。
これにより、消費者に「この会社は買ったあとの反応も見てくれているんだな」といった印象を与え、親近感や信頼感にもつながっていくと考えられるでしょう。
ダイレクトレスポンスマーケティングとは
ダイレクトマーケティングと近い言葉の1つに、「ダイレクトレスポンスマーケティング(DRM)」があります。両者をほぼ同義として扱う例も見られますが、DRMは「消費者から直接の反応を喚起するためのマーケティング戦略」を意味しており、「アクションを引き出す」という点を強調した言葉です。
具体的な手法としては、広告内のリンク設置や、ランディングページに置かれるCTAなど、「情報を見た消費者がすぐに次のアクションに移れる環境」を構築する施策が多く実践されています。
DRMは消費者からの問い合わせなど、顧客と直接の接点をもつ点で、ダイレクトマーケティングの一種として数えることもできます。一方で、DRMはWeb広告などを通じて「接点をもつまで」に施策の焦点を当てていることから、直接の関係を通じて信頼感や購買意欲を高めていくダイレクトマーケティングとはニュアンスに違いが生じることもあるでしょう。
ダイレクトレスポンス広告とは
DRMの主な手法の1つに、「ダイレクトレスポンス広告」があります。これは単に「レスポンス広告」とも呼ばれることがあり、広告から問い合わせなどのアクションまでをシームレスに移行できる広告形態です。
ダイレクトレスポンス広告に含まれる範囲は幅広く、「広告上に自社のURLや電話番号を載せる」というだけでも、広い意味ではこれに該当すると考えられます。ただし一般には、「消費者が思わずクリックしたくなる工夫」を凝らした広告をとくにダイレクトレスポンス広告と呼ぶ傾向にあります。
たとえばクリックによって電話アプリや資料請求の申し込みページへと遷移するCTAを設置したり、期間限定情報を掲載したりすることで、消費者心理に強く訴求し、短期的なコンバージョン向上を目標とするケースが多いでしょう。
なお、ダイレクトレスポンス広告と対になる言葉としては「イメージ広告」があります。こちらは商品の直接的なメリットなどを訴求するのではなく、ブランドイメージや認知度を高めるため、自社の雰囲気や価値観の演出に力点を置いた広告を指しています。
ダイレクトマーケティングやダイレクトレスポンスマーケティングを実践する際のポイント
ダイレクトマーケティングやDRMにおいては、消費者からインスタントな反応を引き出すため、一般に以下のような施策上の工夫がなされます。いずれのポイントもマーケティングの基本に関わるものであり、1つずつ着実に実行していくことで、確かな成果へとつながっていくでしょう。
CTAの設置
消費者のアクションを促すうえで、問い合わせや資料請求など行動に直接的につながるCTAは非常に大きな役割を担います。
たとえば「簡単15秒!無料で資料請求」などのように、「ボタンをクリックすることで何が得られるのか」を端的に示し、同時に「手間や料金」など消費者にとっての懸念点を払拭する記載が必要になるでしょう。
ボタン内の文言はもちろん、ボタンを設置する箇所や配色、文字サイズやフォントなども、コンバージョンを左右する要因です。細かいポイントについてもABテストなどを繰り返し、効果の高いデザインを見つけていくことが求められます。
ターゲティングの最適化
消費者と直接コンタクトを取るダイレクトマーケティングにおいては、「相手がどんな情報を欲しているか」をクリアに把握することが大切です。「誰にいつ、何を伝えるか」を見通すうえでは、ターゲットの属性や関心についての深い検証が求められます。
またダイレクトレスポンス広告を出稿する際にも、コンバージョン率を高めるには広告をパーソナライズし、自社の商品・サービスに親和性のあるユーザーへと情報を届ける工夫が必要になるでしょう。
まずは「どんな人がその商品を求めるのか」という面からターゲット像を鮮明にし、それにあわせたアプローチ方法を検討していきましょう。手段の1つとして広告を出稿する場合には、出稿先の媒体を選定したり、あるいはターゲットによって表示する広告を変化させたりするなど、情報提供の精度を高める工夫が重要です。
消費者にとっての利益を端的にアピール
消費者からインスタントな反応を引き出すうえでは、短い時間で商品やサービスに興味をもってもらう必要があります。それを購入するメリットをなるべく具体的に、かつインパクトのあるかたちで示し、離脱の起きないうちに消費者の関心を掴む工夫が重要です。
メリットを訴求するうえでは、消費者が抱える「悩み」に対し、その解決方法を示すアプローチも有効でしょう。「○○な方へ」「○○なことはありませんか?」と相手に呼びかけるかたちを取るなど、ターゲットが直感的に「このコンテンツは自分に向けられている」と思える工夫をしていきましょう。
「限定情報」であることの明示
DRMにおいてはとくに、消費者が即座に反応することを狙い、商品・サービスの「希少性」や「時間の制限」について訴求することが有効な手段とされます。
たとえば「在庫がなくなり次第終了」や「今週末までの限定クーポンです」などの情報を掲載することで、消費者の迅速な意思決定を促す手法などが見られます。
このように、ダイレクトマーケティングやDRMにおいては、「消費者の関心を掴み、それを次の行動へとつなげる工夫」が重要です。消費者の購買行動を入念に分析しながら、ターゲットがいつ、どんな情報を求めるのかを明確にし、的確なタイミングで情報を届けていきましょう。
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