PMF(プロダクトマーケットフィット)とは?達成手順や検証方法を解説
PMFとは、スタートアップ企業や新規事業の立ち上げ、新商品開発などの際に重要となる定義です。ビジネスパーソンにとって知っておくべきキーワードと言えます。
そこで本記事では、PMFの意味や重要性などの基礎知識から、達成するための手順や検証の仕方などの具体的な方法まで解説します。ぜひPMFについて理解し、自社のビジネスに役立てましょう。
目次
PMFとは?
PMFとは「Product Market Fit」(プロダクトマーケットフィット)の略で、「プロダクトが市場に適合している状態」と直訳できます。それでは、具体的にはどのような状態を指すのでしょうか。
まずはPMFの基本的な意味と、PMFと共に扱われることの多いPSF(プロブレムソリューションフィット)について解説します。
PMF(プロダクトマーケットフィット)の意味
PMFとは日本語で「製品市場適合度」とも訳され、プロダクトが市場に適合している状態を指す言葉です。もう少しかみくだくと、ユーザーのニーズを満たす製品・サービスを適切な市場において提供できている状態と表現できます。
たとえば、動画・画像編集などクリエイティブな作業を目的としたハイエンドパソコンは、プログラマーやクリエイター向けの市場であれば大きなニーズが期待できます。しかし、パソコン初心者やITが苦手なユーザー向けの市場で提供してしまうと、ユーザーからのニーズがほとんどない状態なので受け入れられるのは難しいでしょう。
上記は極端な例ではありますが、少しのズレから本来ニーズのある市場に製品・サービスを提供できず、失敗してしまう事例は珍しくありません。最適なプロダクトを最適な市場で提供することはビジネスにとって不可欠であるため、自社プロダクトはPMFを実現しているかを考えながら取り組む必要があるのです。
PSFとの違い
PMFと共に扱われることの多い言葉に「PSF」があります。
PSFとは「Problem Solution Fit」(プロブレムソリューションフィット)の略で、課題に対して解決策が適合している状態を指します。具体的には、ユーザーの課題解決のための最適な方法を導き出している状態です。
たとえば、仕事をしながら子育てをしているユーザーは、料理の時間を十分に確保できないという課題を抱えています。つまり「時短で料理をしたい」「手軽にもう一品作りたい」というニーズがあります。
これらの課題を解決するための策として「食材キット」「時短調理器具」「時短レシピ」などの提供が考えられます。この状態がPSFです。
通常のプロダクトリリースでは、課題解決策を見つけてからプロダクトに落とし込み、適切な市場で提供していくというプロセスをたどります。つまりPSFはPMFにつながっていくフェーズという関係性だと言えるでしょう。
PMFの重要性
PMFはビジネスの土台となる定義であり、重要性が高いと言われています。それではなぜPMFが重要なのでしょうか。そこには以下の3つの理由があります。
スタートアップ企業や新規事業を成功させる
スタートアップ企業や新規事業を始める際に、そのビジネスがPMFを満たすかどうかで結果に大きな影響を与えます。
ユーザーのニーズを満たしたプロダクトの開発だけでは、成功にはつながりません。せっかく時間とコストをかけて企業や事業を立ち上げてプロダクトをリリースしても、プロダクトが市場にマッチしていなければ失敗してしまうでしょう。
つまりユーザーの課題を解決できるプロダクトは、最適な市場において提供されることで大きな成果が生まれます。そのためスタートアップ企業や新規事業は、PMFを満たすかどうかが重要になるのです。
多様化するユーザーニーズに対応できる
常に「自社プロダクトはPMFを満たしているかどうか」を検証し続けていると、たとえユーザーのニーズが変化して市場とのミスマッチが起きてしまっても迅速に対応できます。
情報のグローバル化、購買行動のオンライン化、働き方の多様化など現代は変化の激しい時代です。それに伴い、ユーザーの課題やニーズも多岐にわたり多様化しています。
このような時代では、いつの間にか市場が変化してしまい自社プロダクトのニーズがなくなってしまったという事態も珍しくありません。
しかしPMFを常に意識していれば、市場が変化してもすぐに気づくことができ柔軟な対応が可能です。
マーケティングや人事にも応用できる概念である
PMFはプロダクト開発の際に有効な概念ですが、実はマーケティングや人事にも応用できます。
たとえば、マーケティングにおいてWEB広告を出稿する際に、ニーズのないユーザーをターゲットにして広告を配信してしまうと、コストがかかるだけで成果にはつながりません。また人事でも、自社業界と関連性の低い学部に求人を出してしまうと、なかなか希望する人材を獲得できないでしょう。
このようにPMFの概念は、少し考え方を変えてみるだけでも他の部門や業務にも応用できます。そのため、ビジネスパーソンにとって知っておくべき概念と言えます。
PMF達成実現のために必要なステップ
それでは、PMFはどのようにすると達成できるのでしょうか。PMF実現までのプロセスを大まかに3つのステップに分け、それぞれ解説します。
PSFの状態になる
PMF実現には、まずPSF(プロブレムソリューションフィット)の状態、つまり「顧客の課題を解決するための最適な方法を提供」していなければなりません。ユーザーのニーズを満たすプロダクトを開発するために、前提としてユーザーの課題を把握しておく必要があるからです。
ユーザーの課題を発見するために、市場を分析しましょう。競合他社のプロダクトを検証することで、ユーザーがどのような課題を抱えているかを見つけることもできます。また、実際の市場調査やインタビューなどで生の声を拾うのも有効です。
課題を発見できたら、どのような解決策を提供できるかを考えます。とはいえ市場が成熟している現代では、すでにユーザーの解決策となるプロダクトが多く提供されている市場も少なくありません。そこで自社ならではの付加価値を考え、ユーザーの課題に対するワンランク上の解決策を導きましょう。
MVPを開発・リリースする
PSFにより解決策を用意できた状態になったら、次はプロダクトに解決策を落とし込むフェーズです。ここではMVPの開発・提供が有効と言えます。
MVPとはMinimum Viable Product(実用最小限の製品)のことです。
Minimumという通り、課題解決のための必要最小限の機能のみを搭載します。なぜなら最初の段階でさまざまな機能をつけてしまうと、本当にユーザーが必要としている機能が受け入れられているかどうかを判断しにくいからです。
そのため、MVPには最小限の機能のみを搭載し、「あったらうれしい機能」「使う人と使わない人がいる機能」などは省いて開発します。
効果測定を行いPDCAを回す
ビジネスではPDCAにより成果を高めていきますが、PMFを達成する際にもPDCAは重要になります。PDCAをプロダクトリリースのプロセスに落とし込むと、以下の流れになります。
まずはMVPをリリースしたら、本当に市場のニーズとマッチしているのかを判断するために効果測定を行います。最初からぴったりとニーズにマッチしたプロダクトの開発は難しいため、効果を検証しながら改善していく必要があります。
- MVPに搭載されている機能でユーザーの課題を解決できているのか
- ユーザーのニーズを満たすために、もっと改良できる部分はないか
- 搭載されている機能のなかで、本当は必要ないものはないか
- 今回搭載していない機能のなかで、本当は必要なものはないか
上記の視点を主軸にMVPについて評価し、改善策を模索しましょう。そして改善策を見つけたらMVPに落とし込みます。
これらのPDCAサイクルを回しながらブラッシュアップしていき、PMFとなるプロダクトに近づけていきます。
PMFの検証方法
自社プロダクトがPMFを満たしているのかを判断するには、売上金額や顧客数の分析だけでは足りません。適切な方法で検証しなければ、本当にPMFを実現できているのか判断できないでしょう。
そこで、ここからはPMFの検証方法を5つ紹介します。一つだけではなくさまざまな方法で検証し、多角的に分析しましょう。
Product/Market Fit Survey
Product/Market Fit Surveyは、PMFを定量的に測定するために使われる調査方法です。具体的な方法は非常にシンプルなので、ぜひ覚えておきましょう。
まずはユーザーに、「このプロダクトを使えなくなったらどう思いますか?」と質問します。
ユーザーは質問に対し、以下の4つから回答を選択します。
- 非常にがっかりする
- ややがっかりする
- がっかりしない
- 該当しない(プロダクトを使用していない)
ユーザーの40%以上が「非常にがっかりする」と回答した場合、プロダクトはユーザーにとって必須のものである状態だと判断でき、PMFを達成していると評価できます。
リテンション率の分析
リテンションとは「継続」「定着」という意味をもち、リテンション率は「継続率」のほかに「顧客維持率」とも言われます。
リテンション率が高い水準で維持できていれば、ユーザーにとってなくてはならないプロダクトだと判断できます。一方リテンション率が低い場合は、「解約が多い」という状態だと言えるため、プロダクトがユーザーの課題を解決できていない可能性が高いでしょう。
また、リテンション率が急激に下降した際にも注意が必要です。ユーザーのニーズが変化したという場合だけでなく、競合他社のプロダクトに多くのユーザーを取られてしまった可能性もあるからです。
リテンション率は定期的に分析し、PMF達成度合いを測るだけでなく、何か変化が起きていないかも検証しましょう。
NPS(ネットプロモータースコア)
NPSは「Net Promoter Score」(ネットプロモータースコア)のことで、顧客ロイヤルティを数値化するための指標です。
NPSでは、「あなたはこのプロダクトを家族や友人に勧めますか?」という質問をし、ユーザーは0~10の11段階で回答します。そしてスコアに応じて下記のように分類します。
- 0点~6点:批判者
- 7点、8点:中立者
- 9点、10点:推奨者
そしてこれらの割合を算出し、以下の計算式でNPSを求めます。
推奨者の割合(%)-批判者の割合(%)=NPS
NPSの平均値は業種やビジネス形態により異なりますが、日本ではマイナスになりやすい傾向にあります。なぜなら日本人は中間点を選ぶ傾向が強く、4点~6点をつけやすいためです。
4点~6点は、分類においては「批判者」となってしまいますが、ユーザーは必ずしも批判的な視点でその点数をつけたとは限りません。
そのため、定期的にNPSを計測し、数値の変動を見ていくと良いでしょう。
エンゲージメント調査
エンゲージメント調査とは、ユーザーがどのくらいプロダクトに愛着をもっているかを調査する方法です。
エンゲージメント調査は、業種や商材によって見るべき指標が異なります。たとえば、サブスクリプションサービスの場合は、継続率や利用頻度などが該当します。買い切りの商品であれば、購入頻度や個数、購入金額などを見ると良いでしょう。
自社にとって見るべき指標を定め、適切に調査してください。
口コミ調査
口コミも、PMFを検証するために有効です。好意的な口コミが多い場合はニーズを満たしていると判断できますが、批判的な口コミが多い場合は改善の必要があります。
口コミは、SNSや口コミサイトですぐに確認できます。また、検索エンジンで自社名やプロダクト名で検索するのも一案です。
ビジネスの成長にはPMFを満たしたプロダクトが必要
PMFとは、自社プロダクトの内容が最適かどうか、適切に提供されているかどうかを判断する重要な指標となります。企業の継続的な成長には、PMFを満たしていることが大前提と言えるでしょう。
新規プロダクト開発の際だけでなく、既存プロダクトにもPMFの考え方を活用できます。既存プロダクトにおいてもPMFを満たしているかを検証し、さらなるブラッシュアップを図りましょう。
ただし、自社視点で主観的に評価してしまっては、判断を誤りかねません。本記事で紹介した検証方法を参考にしてPMF達成度合いを測定し、多角的に自社プロダクトを評価しましょう。
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