
インテントセールスとは?仕組みや費用についても解説!
インターネット上でのユーザー行動がデータ化され、マーケティングの手法が多様化する現代においては、「営業の現場」でもデータによるアプローチが普及しています。
とくに近年、効率的な営業手法として注目されているのが、ユーザーの「今、知りたい・買いたい」という意図にあわせてアプローチする「インテントセールス」です。
この記事では、インテントセールスの基本的な仕組みやメリットを解説したうえで、導入の流れや費用についても詳しく紹介していきます。
目次
インテントセールスとは

インテントセールスとは、ユーザーの行動データから「今、何に興味があるのか」「どんなサービスを探しているのか」といった意図(インテント)を読み取り、適切なタイミングで営業を仕掛ける手法です。
現在ではインターネットの普及により、ユーザーが商品やサービスに関する情報にアクセスしやすい時代になっています。そうしたWeb上の行動を捉え、「調べている=興味を抱いているタイミング」を察知してアプローチすることがインテントセールスのポイントです。
たとえば、企業向けのクラウドツールを販売する会社が、「社内DX 導入」といったキーワードで検索している企業の担当者に接触できれば、営業の確度を高められるでしょう。
このように、見込み客の「興味関心が高まっている瞬間」を逃さずアプローチできるのが、インテントセールスの最大の特徴です。
営業における「インテント」の重要性
もともと「インテント(intent)」とは、「意図」や「目的」を意味する言葉です。マーケティングや営業の分野では「ユーザーが今、何をしたいのか」という関心の方向性を表します。
とくにWebマーケティングに関連する分野では、「ユーザーのWeb上の行動に表れる、興味のシグナル」のことをインテントと呼びます。たとえば「特定のワードでユーザーが検索した」「自社の製品情報にアクセスした」などが典型的なシグナルです。
「これを知りたい」というインテントは、しばしばユーザーの課題や悩みを表します。そのためニーズにあった情報をタイムリーに提供することで、「これがあったら便利」という購買意欲へと転じやすいといえるでしょう。
この手法は、とくにBtoB領域での活用が広がっています。またMA(マーケティングオートメーション)やSFA(営業支援ツール)、CRM(顧客関係管理)といったシステムと連携させることで、さらなる効率化を果たしている企業も見られます。
従来型営業との違い
従来の営業では、企業リストや電話帳などをもとに、手あたり次第に電話やメールでアプローチをかける「アウトバウンド型営業」が多く見られました。
こうした方法は、営業担当者の熱意や対話力によって「相手の潜在ニーズを引き出し、信頼関係を築いていく」という利点もあるでしょう。
しかしその一方、相手のニーズが不明瞭な状態で接触するため、断られる可能性も高く、効率面ではどうしても課題が残ります。結果として、営業リソースを多く割いても成果が限定的になるケースは少なくありません。
この点でインテントセールスは、ユーザーの行動データをもとに「購買意欲が高まったタイミング」を狙ってアプローチする手法です。「必要とされるときに、必要な情報を届ける」という点で、よりスマートかつ再現性の高い営業活動が可能になるでしょう。
インテントセールスの仕組み

インテントセールスは、単に「興味がありそうな人に営業をかける」だけでは成立しません。ユーザーの「行動データ」を適切に取得・解析し、それを営業アクションに落とし込む仕組みがあってはじめて、大きな効果を発揮するのです。
以下では、「インテントセールスがどのような情報をもとに、どうやって見込み顧客を抽出しているのか」という仕組みをわかりやすく解説していきます。
取得されるインテントデータの種類
まず、インテントセールスは「インテントデータ」と呼ばれるユーザーの行動データを軸に展開されます。もちろん、ユーザーの興味関心や購買意欲を示すデータには多くの種類があるため、「どのようなデータを興味のシグナルと見なすか」が重要になるでしょう。
またそもそも、社内の状況によって「どんなデータが得られるか」も異なります。現在インテントデータとして用いられているのは、主に以下のようなデータです。
- 1stパーティデータ(自社データ)
自社のWebサイトへのアクセスログや、資料ダウンロード、問い合わせ履歴など、「直接自社に対してどのようなアクションがあったか」を示すデータです。
このようなデータは主にGoogle AnalyticsやMAツールなどで取得できるので、コストやリソースを抑えやすく、「どのくらい自社に関心があるか」も見通しやすい傾向にあります。
- 3rdパーティデータ(外部データ)
他社のメディアやプラットフォームでのユーザーの行動履歴であり、多くの場合インテントデータ提供サービスを通じて取得します。たとえば、特定の業界に関する記事の閲覧や、特定キーワードでの検索履歴などが代表的なデータです。
取得にコストを要する一方で、「まだ自社に興味をもっていないけれども、自社に関連する領域のことは調べはじめている」という段階のユーザーに焦点を当てることができます。
このように、さまざまなユーザーの行動履歴を組み合わせ、それぞれのシグナルが「ユーザーのどんな状態を示しているか」を把握することが営業のポイントになるでしょう。
インテントデータの解析とスコアリング
集めたインテントデータは、そのまま営業活動に使えるわけではありません。それぞれのシグナルが「どれだけ関心の高さを表しているか」を判断するために、「スコアリング」という仕組みを採用するのが一般的です。
具体的には次のように、各行動にスコアを設定する方法が取り入れられています。
スコアによってユーザーを分類することにより、たとえばスコアが一定以上に達した層を「ホットリード」として抽出し、営業担当者に振り分けることも可能になります。
このように定量化された判断基準をもつことで、営業の判断のバラつきを減らし、アプローチを効率化できるでしょう。
営業アクションへの展開方法
スコアリングによって抽出された見込み客は、一般に営業活動を自動化するSFAや、商談の進捗状況などを可視化するCRMといったツール上で管理します。
こうしたシステムと連携しながら、多くのアクションを自動化し、必要に応じて「人によるアプローチ」を展開する形が基本になるでしょう。たとえば以下のような流れが考えられます。
- 高スコアのユーザー情報を自動的に営業チームに通知
- 営業担当者が適切なタイミングでメールや電話で接触
- 資料の送付や商談の設定など、ユーザーの関心に応じた対応
このように、マーケティング部門と営業部門がツールを通じて連携し、「誰に、いつ、どんなアクションをすべきか」を明確にできる点が、インテントセールスの大きな強みです。
インテントセールスのメリットと効果

インテントセールスは、従来の営業手法と比べて「効率的かつシステマティック」に営業活動を展開できることを特徴としています。
感覚や勘に頼ったアプローチではなく、データにもとづいて営業をかけることで、成果の再現性も高まるでしょう。以下では具体的に、インテントセールスを導入することで得られるメリットについて解説していきます。
商談化率・成約率の向上
インテントセールスの大きなメリットは、「見込み客の関心が高まっているタイミングでアプローチできること」にあります。これにより、商談に発展しやすく、成約率の向上も期待できるでしょう。
反対に、行動データがない状態の営業では「そもそもニーズがない相手」に連絡することも多く、門前払いになるケースが少なくありません。
インテントデータを活用することで、「すでに何らかの課題を抱え、情報収集を始めている相手」に接触できるため、商談の温度感も異なってくるでしょう。
さらに、相手が興味をもっている内容に即した資料やプランを提示できるので、「求めている情報をちょうど届けてもらった」という印象を与え、信頼関係の構築にもつながると考えられます。
営業リソースの最適化
インテントセールスを導入し、限られた営業リソースを「本当に見込みのある顧客」に集中させることで、チーム全体の生産性を高められるでしょう。
データをもとに確度の高いリードを抽出し、営業担当者に振り分けられるため、「架電しても無反応だった」「メールを送っても未読のまま」といったロスを大幅に削減することができます。
とくに少人数の営業チームや新規開拓に力を入れている部署にとっては、このリード選定の精度が営業成果に直結することもあるでしょう。
また、インテントスコアや行動履歴に応じてアプローチ方法を段階的に変えることも可能です。「資料を見ただけのユーザーには自動メールを送る」「詳細ページを複数回見たユーザーには営業が直接連絡する」など、リソース配分を柔軟に調整できる点も魅力だといえます。
デジタルマーケティングとの親和性
インテントセールスは、SFAやMAツールなどとの連携によって、より大きな効果を発揮します。
たとえば、マーケティング部門が収集したインテントデータをリアルタイムで営業部門に渡すことで、「今どの顧客の関心が高まっているか」を即座に把握可能です。
その結果、部署をまたいだスムーズな連携が生まれ、「マーケが作ったリードに営業がきちんと反応しない」といった組織間のミスコミュニケーションも減っていくと考えられます。
さらに、リードナーチャリング(リードの育成)においてもツールの導入は有効です。顧客の関心に応じて自動でメールを配信したり、コンテンツを出し分けたりすることで、段階的に購買意欲を高めていけるでしょう。
インテントセールスの費用感

インテントセールスの費用を考える際は、主に「インテントデータを提供するサービス」と「自社内での運用体制に必要なツール」という2つの観点が求められます。
「何をどこまで外注するか」によって必要なコストは大きく異なるので、自社内の環境やニーズを考慮しながら検討することが重要です。
インテントデータ提供サービスの費用相場
外部のインテントデータ提供企業を利用する場合、月額型のサブスクリプションによる契約が一般的です。
インテントデータの提供に関する料金は、おおむね月額30万円~40万円前後が相場だといえます。このほか、シグナルを検知した際の自動アプローチや、社内の営業ツールとの連携、広告表示などのオプションが設定できるサービスもあり、充実させるほど費用は高額になっていく仕組みです。
また、インテントデータを直接提供するのではなく「特定のワードで検索した企業をリスト化して提供する」といった簡易的なサービスもあり、月額10万円以下のプランも見られます。
運用体制の整備に必要な費用相場
自社内の運用体制を整備するための費用は、規模や目的、導入するツールの種類によって大きく左右されます。
上のインテントデータ提供サービスに加え、たとえばMAツールを導入すれば、「リードのスコアリングや段階ごとのアプローチを自動化する」といった体制も構築しやすくなるでしょう。
また顧客の状況を整理するCRMを導入することで、商談状況の可視化や売上レポートなど、チーム内での共有やフィードバックが容易になります。
こうしたMAツールやCRMの料金は、基本的に月額制が採用されています。従業員数やオプション内容によって費用は異なりますが、それぞれの大まかな相場感としては、中小企業の場合で月額10万円~20万円、大企業の場合で月額40万円~100万円ほどがボリュームゾーンになるでしょう。
加えて、「自社サーバーでツールを運用したい」など、導入の際のカスタマイズが多い場合には、初期費用として数百万円を要するケースもあります。
どのような環境を構築したいかによって、導入すべきツールは異なるので、実際にサービス事業者に問い合わせることでプラン内容を確認することが重要です。
インテントデータを営業に活かす4つのステップ

インテントデータを有効活用するには、単に「関心が高い人がわかった」で終わらせず、データをもとに具体的なアクションへとつなげる必要があります。以下、インテントセールスを効果的に運用するためのステップを紹介していきます。
インテントシグナルの検出
まずはユーザー行動のうち、「関心の高まり」を示すインテントシグナルを設定します。検索キーワードや閲覧ページ、資料ダウンロードや問い合わせなど、購買意欲の変化を示すポイントを見極め、「自社の営業プロセスに適したインテントは何か」を検証しましょう。
「SFA 導入 比較」や「営業DX 成功事例」といったキーワードでの検索は、導入を検討している可能性が高いシグナルでしょう。しかし、「実際に自社製品の特性にあったターゲットであるかどうか」まではわかりません。
最初のアプローチ段階でなるべく確度を高めておきたい場合には、「自社と親和性の高そうなユーザーがどんな行動をするか」を考慮し、キーワードなど絞っていく方法も考えられます。
段階ごとのユーザーのボリュームと、リードとしての確度の高さを天秤にかけながら、インテントシグナルとして採用する指標を決めていきましょう。
潜在顧客のリスト化・スコアリング
策定したインテントによってリードを検出したら、「それぞれのリードがどのような段階にあるのか」を判断できるよう、アクションの強度や回数に応じてスコアリングを行います。これにより「関心の濃度」を可視化し、優先順位をつけてアプローチ対象を選別できるでしょう。
たとえば「自社サイト訪問:10点」「資料ダウンロード:30点」など、統一的な基準からスコアリングができるような体制を整え、段階に応じて営業のフォーカスを絞っていくことが重要です。
営業アクションの設計とタイミング調整
スコアリングされたリストに対して、どのような営業アクションをとるかを設計します。ここでは、「誰が」「いつ」「何を目的に」接触するかを明確にしておくことが大切です。
たとえば、スコアが中程度の場合にはまず情報提供メールを送付し、スコアが高い場合には営業が直接コンタクトして商談設定を目指すなど、段階的なアプローチが求められます。
また、過去に失注した相手であっても、インテントシグナルが再度強くなっていれば再アプローチの好機だといえます。こうしたタイミングの見極めも、インテントデータ活用のポイントになるでしょう。
商談化・成果測定・ナレッジ化
実際にインテントシグナルから営業活動につなげられたケースが蓄積してきたら、「どのアクションが商談につながったのか」を記録・分析し、社内ナレッジとして蓄積していきます。
これにより、「どのシグナルにどんなアプローチが有効だったのか」を再現性ある知見として共有でき、営業組織全体で活かしやすくなるでしょう。
さらに、SFAやCRMを活用して行動履歴と商談の成否をひも付ければ、次回以降の戦略立案もスムーズになると考えられます。
インテントセールスの注意点

確度の高い営業を実現するうえで、インテントセールスは有力な手法です。しかしもちろん、「インテントデータを取得するだけでうまくいく」わけではありません。
効果を最大化するためには、入念に運用体制を整えることが不可欠です。以下では、インテントセールスの導入時や活用時に陥りやすい落とし穴と、その回避策について解説していきます。
インテントデータの「精度」を過信しない
インテントデータは「顧客の関心が高まりつつある兆候」を示すものですが、それが必ずしも「購買意欲の表明」だとは限りません。
たとえば、競合他社の担当者が調査目的でWebサイトを訪問しているケースもあれば、学生などが研究の一環で調べていることもあるでしょう。
そのため、データを過信して「スコアが高いから関心も高いだろう」と考えてしまうと、営業トークが空回りし、顧客からの信頼を損なうケースも想定されます。
インテントデータはあくまで「手がかりの1つ」として位置づけ、事前の情報収集やヒアリングを通じ、相手の背景や文脈を丁寧に読み取る姿勢が求められます。
営業との連携体制を整える
どれほど有用なインテントデータを取得しても、それを営業の現場で活用できなければ効果は半減してしまいます。とくに営業チームとの連携体制はしっかりと構築しておく必要があるでしょう。
よくある失敗例として、「マーケティング部門がインテントデータを提供しているのに、営業側がそれを見ていない」「営業がどう動けばいいかの指針がない」などのケースが挙げられます。
これを防ぐには、スコアごとのアクション指針を明確にし、マニュアル化して共有することが求められます。また営業へのデータ連携を自動化し、SFAやCRM上で確認できるようにしておくことも重要です。
その他、インテントデータを活用した成功事例を共有するなど、個々の従業員がシステムの意義や目的を理解したうえで営業活動に取り込める環境が欠かせません。
短期の成果だけに囚われない
インテントセールスは確度の高いリードを発見する際に有効ですが、スコアが低いリードに対してもナーチャリングを実施していくことで、中長期的な成果が期待できます。
たとえば「まだ導入時期が明確でないものの、製品カテゴリに関心を抱きはじめたユーザー」には、定期的に有益なコンテンツを提供するなどして、信頼関係を築いていくアプローチが考えられるでしょう。
ナーチャリングを設計する際は、MAツールなどを活用しながら、シグナルの変化に応じたメール配信やコンテンツの出し分けを自動化するといった方法があります。これにより、営業の手間をかけずに関係を温めていけるでしょう
まとめ
インテントセールスは、ユーザーの「今、知りたい・比較したい・検討したい」といった関心の兆しを読み取り、最適なタイミングでアプローチする営業手法です。
従来のアウトバウンド営業と異なり、データにもとづいてリードに接触するため、「相手が求めている情報を的確にアピールできる」という点が大きな強みとなるでしょう。
インテントセールスを実践する際、まず重要なのがインテントデータの取得と分析です。どのデータがユーザーのどんな意図を示しているのかを読み取り、自社にとって有用なシグナルを見つけていきましょう。
さらに、「データをどう運用に落とし込むか」「どう現場とつなぐか」という視点も欠かせません。データを営業の現場で活かせる体制が整っていないと、整理したデータの意義も薄くなってしまいます。
営業チームとマーケティングチームがシームレスに連携できるような運用設計を行い、段階に応じたアプローチの指針をあらかじめ策定しておくことが大切です。
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