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TikTok売れとは?本や商品の新たな購買行動を事例から解く

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昨今、「SNSが市場に及ぼす影響」は広く知られるようになりました。今や企業のブランディングや顧客開拓において、SNSの特性に応じたマーケティング戦略は欠かせません。

市場への影響力という面で、このところ急速に存在感を増しているのがTikTokです。「若者が歌ったり踊ったりする短尺動画」といったイメージが強いかもしれませんが、話題の共有・拡散に適したプラットフォームとして整備され、ビジネスユースにおいても無視できない影響力を持つようになりました。

こうした動向を端的に示すのが、「TikTok売れ」という言葉です。とくに2021年以降、TikTokで話題になった商品やコンテンツがブームになる現象が顕著に見られ、マーケターやアナリストの間で大きくクローズアップされています。

この記事では、「TikTok売れ」という現象が生じる原因や背景について、実際の事例を通じて考察していきます。

「TikTok売れ」とは

TikTokの画面

「TikTok売れ」は、TikTokで話題になった商品やコンテンツがヒットする現象です。

TikTok売れの事例にはもちろん、「企業側が仕掛けたキャンペーン」などが話題になり成功を収めるケースも含まれます。しかし、ここでの主な力点は「ユーザー側が面白おかしく商品などを取り上げ、影響が広まっていく」というポイントにあります。

ヒットする商品やコンテンツは多岐にわたり、食品や化粧品、雑貨といった商品のほか、本やドラマなど、一見すると短尺動画と親和性が低そうなコンテンツまでさまざまです。価格帯も幅広く、自動車や不動産物件などがTikTokを通じて成約に至るケースも見られます。

日経トレンディによる「2021年ヒット商品ベスト30」においては、その他の商品を抑えて「TikTok売れ」が1位に選出されました。商品ではなく「現象」が1位に選出された点に、その影響の大きさを見て取れるでしょう。

(参照:日経クロストレンド「2021年ヒット商品ランキング 日経トレンディが選んだベスト30」

「TikTok売れ」とUGCとの関係

上述のように、「TikTok売れ」には企業によるプロモーションが奏功する例もあります。しかしそれ以上に、TikTokを通じたヒットは「ユーザー側が面白いコンテンツ投稿を追求した結果」として生じている面が強くあるのです。

YouTubeやInstagramなどにも見られるように、SNSのユーザー数やコンテンツ数が増加していくにつれ、おのずと投稿のクオリティは向上し、プラットフォームに適した工夫がなされるようになっていきます。TikTokにおいても、ユーザー側の「話題になりそうなものを発見する目」や、「面白おかしく伝える工夫」は洗練されてきていると考えられるでしょう。

とくに投稿者が商品やコンテンツを取り上げる場合、見る側の共感を促すための創意工夫は、「購買行動を自然に喚起する」ことにつながります。

このように、ユーザー側が自ら発信した情報が、企業にとって好影響を与えるようなコンテンツをUGC(User Generated Contents:ユーザー生成コンテンツ)と呼びますが、「TikTok売れ」はまさにその代表例だといえます。

なぜ「TikTok売れ」が起きるのか

ショッピング

「SNSでバズる」といった目的に向け洗練された投稿が、副次的に企業の利益をもたらすという構図は、近年さまざまなSNSにおいて見られます。「インフルエンサー」という言葉に象徴されるように、SNS上の「拡散力」や「親近感」が購買行動を喚起するポイントになっているのです。

TikTokにもやはり同様の傾向は見て取れますが、プラットフォームの特性がその現象を引き起こしている面も多分にあります。以下では、さまざまなヒットを後押しするTikTokの特性について解説していきます。

波及効果を生み出しやすい

TikTokの特徴として、「ユーザー参加型企画」との親和性の高さが上げられます。典型的なのが「ハッシュタグチャレンジ」であり、一種の「お題」に対して多くのユーザーが投稿することで、顕著な波及効果を生むことがあるのです。

「短尺動画の共有」というプラットフォームの性質上、TikTokにおいてはとくに「即時的に興味を引ける」かつ「マネしやすい」コンテンツが話題になりやすい傾向にあります。ハッシュタグがついた投稿を見て興味を抱いたユーザーが、「自分もやってみよう」と同じタグで投稿していくような「共鳴」の効果が生まれやすいといえるでしょう。

見て楽しむことはもちろん、自分自身が参加する側としての意識を持つことで、「話題になっている事柄そのものへの関心」が高まりやすいことも特徴です。ユーザーの高い関心を呼び起こしながら波及していく点に、「TikTok売れ」の特徴を見て取ることができます。

レコメンド機能による「出合い」

TikTokのホーム画面は「レコメンド」と呼ばれ、アプリを開けばすぐに、閲覧履歴などにもとづくおすすめ動画が再生されていきます。

InstagramやTwitterなどの場合、まずホーム画面に表示されるコンテンツは基本的に「自分がフォローしているアカウント」の投稿です。一方、TikTokにおいてはフォローの有無を問わない「おすすめ」がまず表示されるため、固定的なコミュニティの垣根を越えてコンテンツが広がっていく傾向が強く見られます。

結果として、TikTokにおいては「それまで知らなかったもの」に対するユーザーの潜在的な関心を引き出しやすく、フォローの有無によらない「コンテンツそのものへの興味」をベースとした波及効果につながりやすいのだと考えられます。

TikTok売れの事例

ダルゴナコーヒー

TikTok売れの効果はさまざまな分野に及んでおり、動画で明確に使用イメージを伝えられる商品はもちろん、インスタントに魅力を伝えるのが難しいコンテンツまで、ジャンルを問わず幅広い波及効果を生み出しています。

以下では、実際にTikTok上で話題となりヒットした商品やコンテンツを紹介していきます。

「SNS映え」する商品

短尺動画という性質上、TikTokを通じてヒットする商品は「ビジュアル上の特徴」や「わかりやすいメリット」を備えているケースが多いといえます。

たとえば大塚製薬の特定保健用食品「ファイブミニ」は、発売から30年以上が経つ定番商品ですが、TikTok上で「ダイエットによさそう」などと紹介されたことにより、コンビニの日販が2倍以上に。飲料としては珍しいピンクのカラーリングも、再ヒットの一因となったと考えられます。

(参照:日経クロストレンド「ファイブミニの日販が突如2倍に 大塚製薬やI-neのTikTokマーケ」

また、地球の形を模した「トローリ プラネットグミ」も、SNSで思わず共有したくなる特徴を備えており、TikTokを通じて売上を伸ばしています。ビジュアルそのものの面白さはもちろん、「地球を食べる」という構図や、「パキッ」というパッケージの開封音、食べた後の青い舌、投稿者によって表現が異なる味、といった要素がユーザーの興味を引き、「自分もやってみよう」という波及効果につながっているようです。

2022年3月現在も関連動画の再生回数は伸びており、TikTok上で「地球グミ」と検索すると、同ハッシュタグのついた動画が7億回以上再生されていることがわかります。

(参照:TikTok内「#地球グミ」の投稿一覧

「本」もTikTokでヒット

「TikTok売れ」において特筆すべきは、ブームになるものが「すぐに消費できるコンテンツや商品」に限らないという点です。読んでみないと魅力がわからない文学作品なども、巧みな紹介動画によってユーザーの関心が寄せられ人気が再燃する、という事例が見られます。

たとえば筒井康隆さんの『残像に口紅を』は、小説中に用いられる50音が減っていくという実験的な文学作品です。1989年の発表ですが、TikTok上で「『あ』が消える小説」として紹介されたことで話題となり、11万部以上の増刷につながりました。

(参照:朝日新聞デジタル「筒井康隆さん止まらぬ増刷 TikTokで紹介、けんごさん23歳」

さらに、2019年の芥川賞受賞作、今村夏子さんの『むらさきのスカートの女』は、2021年にTikTok上で「怖くないのに不気味」な本として紹介されたことがきっかけで大きな話題に。日本出版販売による「本屋で今検索されている本ランキング」においてベスト10入り(2021年3月17日~3月23日)を果たし、朝日新聞出版による増刷も決定しました。

(参照:株式会社朝日新聞出版のプレスリリース「TikTok」で紹介され、話題再燃! 10万部超の芥川賞受賞作『むらさきのスカートの女』が大増刷決定!(PR TIMES)

TikTok売れに共通するポイントは

動画撮影

TikTok売れに共通しているのは、「自分もやってみたい」という気持ちを喚起する動画が連鎖的に投稿されている点です。多くのユーザーを巻き込むムーブメントはさまざまな形で生じていますが、以下ではとくに特徴的な傾向を整理していきます。

発見と共有

「TikTok売れ」の現象は、「すでにあるものの魅力を新しい角度から発見する」ことで生じているケースが多いです。それまで脚光を浴びていなかった商品やコンテンツも、「目のつけどころ」によって再注目されるチャンスがあります。

「新しい魅力」というと抽象的ですが、短尺動画の共有という形式を考えると、やはり「思わず人に見てほしくなる」ような魅力が重要でしょう。たとえば日常生活のなかでも、思わず「見て見て」「ちょっと聞いてよ」と共有したくなる光景や体験がありますが、このような「共有の観点」から魅力を発見することが求められます。

Instagramのように「ビジュアル的に映える」ことも大事な要素です。一方で、TikTokにおいては短尺ながら展開や動きを取り入れられるため、商品やコンテンツの魅力を「意外性」や「驚き」とともに提示することも大切でしょう。

マネのしやすさ

意外性や驚きは波及効果を生む大きなポイントですが、必ずしも視聴者を仰天させる必要はありません。むしろプラネットグミを食べたときの「青い舌」のように、日常にある「小さな意外性」を取り上げる方が、マネしやすく投稿の連鎖につながりやすいと考えられます。

動画内の一連の動作が「簡単に再現できる」ことも大切です。この点においても、プラネットグミは「歯でパッケージを開封」「食べた後に舌を出す」という流れがテンプレート化されており、これが多くのユーザーを巻き込む一因となりました。

さらに、拡散効果を見込むうえではハッシュタグも重要でしょう。企画の趣旨を明確にしつつ、ターゲット層にとって親しみやすい言い回しを用いて自然に投稿を促していく必要があります。

世界観の提示

TikTokは短尺ながら、音楽や映像効果によって「雰囲気」や「世界観」をインスタントに提示できる強みがあります。音楽によってテンポ感やテンションがチューニングされることで、直感的に情報を伝えられるのです。

TikTokにおいてはいわば「雰囲気を伝える」という視点が必要になりますが、これにより「長く説明するよりもダイレクトに魅力が伝わる」ケースも考えられます。

たとえば文学作品の魅力をテキスト上で紹介するには、相当に多くの文字数が必要でしょう。一方で、短い動画であっても音楽や語り口、字幕の強弱といった多面的な情報を取り入れることで、「どんな作品か」「実際に読むとどういう気分になるか」といったイメージを表現できるのです。

このようにTikTokは、情報の取り上げ方、提示の仕方によって実にさまざまな商品・コンテンツの魅力を伝えられるプラットフォームだといえます。今後も「TikTok売れ」の現象は続いていくと見られ、企業にとっては大きなチャンスが眠っていると考えられるでしょう。

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この記事を書いた人

鹿嶋 祥馬
大学で経済学と哲学を専攻し、高校の公民科講師を経てWEB業界へ。CMSのライティングを300件ほど手掛けたのち、第一子が生まれる直前にフリーへ転身。赤子を背負いながらのライティングに挑む。

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