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プロダクトプレイスメント

プロダクトプレイスメントとは?日本の事例と効果・メリット

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商品やブランドの認知を広げるための広告施策は、放送技術やIT技術の発展とともに多様化し、有効な手法も移り変わっています。

一方で、時代を問わず効力を発揮しつづけている手法として、「プロダクトプレイスメント(プロダクトプレースメント)」が挙げられるでしょう。古くから創作作品などを通じた認知向上の手法として用いられ、現在でもさまざまなメディア・作品で取り入れられています。

この記事では、プロダクトプレイスメントの概要や効果を解説し、日本における事例を紹介していきます。

プロダクトプレイスメントとは

映画作品

プロダクトプレイスメント(英:product placement)は、直訳すると「商品を配置すること」を意味する言葉です。具体的には、企業が商品やブランドを宣伝するために、テレビ番組や映画などの制作物のうちに自社商品を登場させる手法を指しています。

たとえば映画作品のなかで俳優が乗る自動車や、テレビドラマのなかで登場人物が口にする飲み物などが代表的でしょう。通常の広告のように商品を大々的に訴求するのではなく、あくまでコンテンツを構成する「場面の一部」として登場させることがプロダクトプレイスメントの大きな特徴です。

ユーザーが主体的にコンテンツを視聴・閲覧するなかで、自然なかたちで商品やブランドの認知を向上させたり、ブランドイメージを定着させたりすることが施策上の目的として挙げられます。

プロダクトプレイスメントの歴史

プロダクトプレイスメントは世界的に古くから実践されてきたマーケティング手法であり、すでに19世紀後半には小説や絵画、写真などの媒体において、具体的なブランド名や商品を登場させる手法が見られます。

さらに、20世紀の半ばごろから、映画やテレビの発展とともにプロダクトプレイスメントは一般的なマーケティング手法として定着していきました。

たとえば映画「007」シリーズにおいて、主人公のジェームズ・ボンドの運転する自動車は「ボンドカー」と呼ばれ、歴代ボンドカーはその高いデザイン性や動力性能を広く認知されています。1967年の『007は二度死ぬ』においては、ボンドカーとしてトヨタ・2000GTが選出され、同社の世界的な認知はもちろん、日本車のイメージ向上にも貢献した事例として位置づけられるでしょう。

あるいは1982年の映画『E.T.』には、宇宙人E.T.の好物としてハーシー社の「Reese’s Pieces」というチョコレートが登場します。主人公とE.T.とが絆を築くうえで、このチョコレートが小さからぬ役割を負うことから、同商品の認知は大きく広がり、爆発的なヒットを記録。プロダクトプレイスメントが市場に大きな影響を与えることを示す好例となりました。

近年では、HDDレコーダーなどにおいてテレビ番組のCMスキップ機能が普及したことや、映像関連のサブスクリプションサービスの利用者が増加したことを背景に、視聴者がCMに触れる機会が減少傾向にあるといえます。そうした事情から、「コンテンツそのもの」を通じて商品を紹介できるプロダクトプレイスメントの重要性が高まっているのです。

プロダクトプレイスメントに用いられるコンテンツ

プロダクトプレイスメントに用いられるコンテンツはさまざまであり、映画やテレビ番組、アニメや漫画、ゲームなどが一般的な媒体として挙げられるでしょう。一方で、「どこまでをプロダクトプレイスメントに含めるか」についての明確な線引きは難しく、たとえばマラソン大会において使用される中継車など、スポーツ中継などに登場するスポンサー製品もこれに含まれることがあります。

さらに、InstagramやTikTokをはじめ、SNSなどの投稿内でさりげなく商品を登場させる手法をプロダクトプレイスメントに含む見方もあります。ただし日本においては、2022年に改正された景品表示法により、SNSや口コミサイトなどにおける「一般消費者が事業者の表示であることを判別することが困難である表示」が規制の対象となりました。

(参照:NHK「「ステマ」景品表示法の禁止行為に指定 ことし10月から規制」

これにより、2023年10月の施行から、「広告目的でありながら、一般ユーザーの自主的投稿であると消費者に誤認させるような投稿」が行政処分の対象となる見込みです。

対して、映画やテレビなどにおけるプロダクトプレイスメントについては、現状のところ同法による規制対象としては明示されていません。こうした法制面における扱いの違いから、こと日本国内においては、「インフルエンサーマーケティング」などの宣伝と、プロダクトプレイスメントは別種のものとして捉えることが妥当だと考えられます。

プロダクトプレイスメントのメリット

映画を鑑賞する

商品やブランドについて表立ったアピールをしないプロダクトプレイスメントは、さまざまな面で通常の広告とは異なる効果をもたらします。以下ではその具体的なメリットについて解説していきます。

ポジティブな認知度の向上

テレビCMやWeb上の動画広告など、現在主流とされている広告の多くは、ユーザーが視聴しようとしているコンテンツの合間に割り込むかたちで表示されます。一般に、こうした広告コンテンツの内容は「商品やブランドの紹介」が軸になるため、明確なメッセージを盛り込める一方で、ユーザーの意向に沿わないものになる可能性も大いに考えられるでしょう。

視聴体験を妨げられるストレスは、ユーザーが広告に対してネガティブイメージを抱く要因にもなりえます。この点で、プロダクトプレイスメントの場合には、ユーザーが「みずから視聴を望むコンテンツ」のなかで商品を提示できることが利点です。

あくまで「場面の一部」として商品を溶け込ませることで、ストレスの少ないかたちでの認知向上を期待でき、ネガティブイメージを抱かれるリスクも低減できると考えられます。

物語への共感効果

具体的な場面における使用イメージを提示できることも、プロダクトプレイスメントの大きなメリットといえるでしょう。とくに、印象的な場面や魅力あるキャラクターとともに自社商品を登場させることで、好意的なイメージを効果的に形成できると考えられます。

ストーリー展開や登場人物の言動のなかで登場する商品は、物語に没入している視聴者の意識へと自然に入り込んでいきます。つまり、視聴者の「作品への共感」を土台としながら、商品の使用方法やブランドイメージなどを浸透させる効果が期待できるのです。

もちろん、このような共感や没入をベースとした認知向上施策は、作品の背景に溶け込むがゆえに「視聴者に気づかれない」という可能性も十分に考えられます。「自然さ」を何よりの特徴とするプロダクトプレイスメントは、「さりげなくアピールできる」というメリットと、「注意を向けてもらえない」というリスクが表裏一体の手法だといえるでしょう。

戦略の幅が広い

プロダクトプレイスメントを実践できるシーンはきわめて多く、場面やキャラクターにマッチする方法を工夫することで、さまざまな商品を多面的に訴求できる可能性があります。

たとえば先の『E.T.』のように、ストーリーに大きく関わるアイテムや、キャラクターが重用する持ち物などとして登場させることができれば、視聴者に強い印象を与えられるでしょう。そうでなくとも、何気ない日常的な場面に溶け込ませたり、キャラクターの性格を強調する使い方をしたりと、好印象を残すための方法は多岐にわたります。

プロダクトプレイスメントに常道や正解はありませんが、そのぶん柔軟に策を講じうることが、この手法の強みにもなると考えられます。

日本におけるプロダクトプレイスメントの事例

街

プロダクトプレイスメントの歴史は古く、国内外で数多くの実践例が見られます。以下では日本国内における特徴的な事例を紹介していきます。

映画におけるプロダクトプレイスメント

2013年公開の映画『言の葉の庭』は、アニメ映画としては珍しく、登場人物の着用する衣服や靴などに実在するブランドを数多く採用しています。現代日本のファッション模様を反映すべく、スタイリストによってコーディネートされ、「DIANA(ダイアナ)」や「FILA(フィラ)」「TRANS CONTINENTS(トランスコンチネンツ)」といったブランドが取り入れられました。

こうした細部へのこだわりは、主人公が靴職人を目指していくストーリー展開ともあいまって、作品全体の世界観を形成する一助となっています。つまり同作におけるプロダクトプレイスメントは、宣伝効果を狙った施策というよりも、あくまで作品性を高めることを目的としており、「制作的な意図」にもとづく手法として位置づけられるでしょう。

このように「宣伝ありき」ではなく「作品ありき」で進められるプロダクトプレイスメントは、商品の認知向上に直結しないケースもありますが、商品の使用を通じて作品の完成度が高められることにより、企業にとって副次的なメリットをもたらす可能性があります。

たとえば作品が評価され、多くの視聴者を獲得すれば、それだけ自社商品が消費者の目に触れる機会も増えるでしょう。仮に、視聴の際には「この商品はどこのものだろう」と意識されていなくとも、SNSなどを通じた拡散効果により、徐々に認知が広がっていくケースも考えられます。

(参照:ORICON NEWS「新海監督の新作『言の葉の庭』に実在ブランドが多数登場」

ドラマにおけるプロダクトプレイスメント

1979年から1984年に放送されたテレビドラマ『西部警察』シリーズは、建造物や車両の爆破シーンなど膨大な制作費が必要であったことから、きわめて多くのスポンサー協力により成立したという背景をもっています。

日産自動車株式会社による車両提供や、東急グループなどの大企業のほか、ロケ地の地元企業の協力も取りつけ、制作費を捻出。劇中内では多くの商品が登場し、具体的な企業名も頻繁に言及されるなど、プロダクトプレイスメントの手法が頻用されています。

とくに日産自動車によって提供された劇中車は、現在に至るまで多くのファンを獲得しています。その人気の背景として、ハードボイルドなドラマの作風が登場車種のイメージ定着に寄与した面も大きいでしょう。

また、最近の事例としては、株式会社TBSテレビと株式会社マンガボックスとの共同制作となる漫画『私がヒモを飼うなんて』において、GROOVE X株式会社の製作する家族型ロボット「LOVOT(ラボット)」が主人公のペットとして登場しています。

2023年に同作がドラマ化される際にも、LOVOTの実機が作品内に登場し、愛らしいマスコットとしてさりげない存在感を示しています。このように、創作物は「複数メディアへの展開」が可能性として考えられ、プロダクトプレイスメントの効果もその都度広がっていくと期待できるでしょう。

(参照:GROOVE X「NEWS」PDF資料「配信マンガ『私がヒモを飼うなんて』に『LOVOT』が登場!マンガボックス、まんが王国などで順次配信を開始」

AI技術を用いたプロダクトプレイスメント

現在では映像解析や加工技術の向上にともない、既存の映像内に商品イメージを挿入したり、あるいは映り込んでいる商品を置き換えたりなど、「デジタルプレイスメント広告」と呼ばれる手法が登場しています。

実際に、讀賣テレビ放送株式会社、株式会社ガイエ、株式会社ふればりの3社は、2022年から共同でデジタルプレイスメント広告をドラマ内で試験運用しています。シーン背景に看板広告を自然に挿入するなどの施策を行い、効果測定を進めていく見込みです。

(参照:株式会社ガイエ「映画「さよなら、バンドアパート」にて、AI技術を用いたデジタル・プレイスメントのトライアル運用を開始 ~ガイエ、ふればり、読売テレビによる、見る人を煩わせない新しいブランディング広告の取り組みがスタート~」

技術の発展はさまざまなかたちで広告効果の最適化を後押ししており、こうした流れはプロダクトプレイスメントにおいても同様であると考えられます。視聴者はどのようなシーンで画面のどの部分を見ているのか、作風に対してどんなカテゴリの商品が認知されやすいのかなど、効果的に認知向上を図るための方法論も深化していくと期待できるでしょう。

プロダクトプレイスメントを実践する際の注意点

プロダクトプレイスメント

プロダクトプレイスメントは視聴者への自然な広告効果が見込める一方、取り入れ方によっては適切な認知につながらない可能性もあります。以下ではプロダクトプレイスメントを実施する際の注意点を解説していきます。

作品性や物語との連続性に注意

プロダクトプレイスメントの効果を高めるうえでは、作品と商品との間の「必然的な結びつき」が求められます。脈絡なく、不自然なかたちで商品を登場させてしまえば、作品性を損なうことになりかねません。さらに、視聴者側に企業の広告意図がはっきりと伝わってしまい、企業および作品に対するイメージ低下にもつながるおそれがあります。

反対に、作品の世界観やストーリー、登場人物のキャラクターにマッチした商品の使用は、プロダクトプレイスメントの効果を飛躍的に高める可能性があります。施策としての効果を高めるうえでも、作品性を守るうえでも、制作側との密な連携と、入念な意図のすり合せが欠かせません。

プロモーション関連の規制に注意

現状のところ、創作物に実在の商品やブランドを登場させることについて、国内では広告関連の規制がなされているわけではありません。ただしEUにおいては、プロダクトプレイスメントを実施する際には視聴者にその旨を明示する必要があるなど、地域によって状況は異なり、また時代とともに規制の内容も変化していく可能性があります。

日本国内においても、宣伝であることを隠しながら商品やブランドをPRする「ステルスマーケティング」に対しては規制強化の動きが見られます。先述のインフルエンサーマーケティングに対する規制をはじめ、「そのコンテンツが広告を含むこと」の明示が求められるなか、プロダクトプレイスメントをめぐる情勢にも注意を払っていく必要があるでしょう。

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この記事を書いた人

鹿嶋 祥馬
大学で経済学と哲学を専攻し、高校の公民科講師を経てWEB業界へ。CMSのライティングを300件ほど手掛けたのち、第一子が生まれる直前にフリーへ転身。赤子を背負いながらのライティングに挑む。

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